『季節外れのお参りに』



「なにをお願いするの?」と彼女は言った。
「お願いごとを言ったら叶わないから言わない」と私は返した。
「つまんない」と彼女は言う。
「つまんなくていーんだよ」と私は笑う。

お願いごとなんて決まってるんだ最初から


どうかいつまでも平和でありますようにと―――


青臭くても、そう願うんだ。



恥ずかしいから、言ってやらないけど。

「まーちゃんは決まってるよ!」と彼女は言う。

派手に神様を起こすように鈴を鳴らして手を叩いた。

「明日もみんなで仲良くいられますよーに!」

そうして彼女は目を瞑って三回くらい同じことを言っていた。
神様に念押しするようにしているその姿は、やっぱり青臭いんだけど、嫌いじゃない。

「ねー、くどぅーはぁ?」

彼女は目を開くとしつこく聞いてきた。
隠すのも恥ずかしいけど、いまさら話すのも恥ずかしいから、やっぱり内緒にしようって思う。

「おみくじで大吉出たら教えてあげるっ!」と私は言った。
すると、「まーちゃんも引くぅ!」と彼女は走り出す。
無邪気な彼女を見ていると、きっと彼女は大吉を出すんだろうなってぼんやり思う。

小さくなる背中を見つめながらいちど振り返る。
神様は私たちのお願いを聞いてくれるだろうか。

「ケチケチすんなよっ!」と悪態をつき、私はまーちゃんの背中を追いかけた。














最終更新:2012年08月01日 01:42