『風の行く末、未来への路、つづいていく青空』


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今日も雨が降っていた。
大地を潤すはずの天の恵みは、局地的に降り続き、人々に甚大な被害を与えていた。

こういう雨はあまり良くないと直感的に思う。

アスファルトを濡らしたことで、特有の匂いが鼻をつく。
夏の雨は爽やかだが、どこか危うさも秘めている。
嵐を起こし、街を覆うのも夏の雨だとぼんやり考えた。


風で雲を動かすことはできなくはない。
しかし、自然の摂理に反したことはあまりしたくない。


そのとき、ふいに雨が止んだ気がした。
見上げると、そこには小さな傘が差してあり、持ち主である彼女は寂しそうに笑っていた。

「風邪、引きますよ?」

いつだったか、風が騒いだ日にも彼女は現れた。
私はクスッと笑うと「そうかも」と返した。

「なんかね、空見てると落ち着くの。雨に打たれるのも好きなんだぁ」
「だからって体に悪いですよ。せめて傘さしてください」

彼女の意見はもっともで、私は大袈裟に肩を竦めた。

相変わらず彼女は、私に優しい。
というか人に優しい。
そこまで気遣いせずとも、私はだいじょうぶだよと伝えたいのだが。

「………此処にいますから」

私がぼんやり考えていると、彼女はふいに重苦しい言葉を吐いた。
思わず「え?」と返すと、彼女は切ない瞳をこちらに向けていた。
その瞳は確かに、雨に濡れていた。

「みんな此処にいます。絶対、あなたをひとりにはしません」

それは何処までも真っ直ぐで何処までも力強い言葉だった。
明確な意志をもった言葉は光り輝き、優しさと温もりを放ちながら心を揺らす。
それは小説やドラマで聞くようなセリフに近い。
しかし付与された意味はそれよりも、もっと重い。

「……守ってくれる?」

わざと試すように訊ねると、彼女は目を細めてニッと笑った。

私よりも年下で、生意気な笑顔を持つ彼女だか、それでも彼女の放つ温もりは私を包み込んで離さない。
優しい香りを持った彼女はふとした瞬間に私の隣で笑っている。

「喜んで」

その笑みは不敵なくせに温かい。
なんだかそれがとても生意気で腹立たしくて
でも結局は優しくて、私はどうしようもなく笑ってしまった。


あーあ、結局また、助けられちゃったねと呟くと、お互い様ですという言葉が返ってきた。


雨はやまない。
天に居座るのは重苦しい黒雲ばかりだった。

だけど確かに、青空はその上にある。

見えない場所に輝いた空を、私は確かに瞼の裏に映していた。



そこにいる仲間のために、もう少しだけ足掻いてみようかと、走り去った風に呟いた。

だれにも聞こえないような小さな決意は
激しい雨と風に流されていったが
確かに彼女はそれを汲み取り、聞こえない振りをして遠くの街を見た。



きっともうすぐ、晴れそうだった。