『リゾスレ4周年突破記念 精神干渉と破壊の少女たち』


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新垣里沙は緊張する。
だされたコーヒーカップを震える手でつかみながら緊張のうえでののどの渇きを潤そうとしていた。
リゾナンターの中でも極めて冷静沈着なこの少女が珍しく緊張しているのには訳があった。

「緊張するのだ。安倍さんの家・・・念願の安倍さんの家だ。」

そう、ここは里沙が尊敬してやまない安倍なつみの家なのだ。

「ごめんね、待たせちゃって。」

するとなつみが里沙のいる部屋に入ってきた。

「いいえ、大丈夫です。でも、光栄です。安倍さんの家に招かれるなんて。」
「そうでもないべさ、正確に言うとここは裕ちゃんの家なんだから。」
「でも驚きました。まさか安倍さんがあの安倍裕次郎代議士と結婚していたなんて。」
「みんなには隠していたからね。」

なつみの言う裕ちゃんというのはダークネスの中澤裕子のことではない。
将来の総理大臣候補として注目されている人気若手代議士の安倍裕次郎議員のことである。
どこでどうであったのかは定かではないが、なつみは裕次郎の妻となっていた。

「それで安倍さん、私を呼んだわけというのは・・・まさか一緒にドライブとか。」
「できればそういう楽しい話をしたいべさ。でも、そうもいかないべ。」

ここはとある研究所のモニタールーム
白衣を着たひとりの男がモニターをじっと見つめている。
そこにはひとりの少女が大勢の戦闘員を相手に戦いを繰り広げている。

「所長、どうです。あの子の調子は?」
「いや、すばらしいよ。かつて田中れいなをテストした時とは比べ物にもならないほどだ。」
「テスト中に脱走されることなんてないでしょうね?」
「当たり前だ、あの時の反省は忘れてはいない。もしかしたらリゾナンターを倒せるんじゃないのか?」
「でも、その前に別の人間の命を奪ってもらうかもしれませんよ。」

数日後、都内のとある会場で安倍裕次郎議員の演説が行われた。

「ありがとうございます。わたしはこれからも誠心誠意努力していく所存であります。」

力強い演説をする裕次郎をなつみはそばで温かい眼差しで見守っている。
そして演説を聞いている一般市民の中に里沙が紛れ込んでいる。
もちろん、裕次郎の演説を聞くのが目的ではない。

「暗殺ですか?」
「裕ちゃんにはまだ言ってないんだけど、そういう噂がささやかれているべさ。なにせ、裕ちゃんって正義感の強い人だからそれを気に食わない人から恨まれてるって話でさ。」
「もしかして裕次郎さんを守る役目を・・・」
「そうがきさんに頼みたいんべさ。暗殺とかそういう諜報的なことはスパイしていたがきさんが一番詳しいでしょ?」

スパイの話自体は里沙にとってあまり触れてほしくない事実なのだが、なつみは悪気がないので仕方がない。
それに自分の経験や技術をなつみが買ってくれているだけでもうれしいのだ。

「まぁ、あくまで噂だからあまり気を張り詰めないほしいべさ。」

「とは言われたけど、今のところ異状はないからいいけどね。」

里沙があらゆる可能性を考慮して見回っているが、今のところ異状はない。
しかし事態を大きく揺るがす存在はすぐ近くまで迫っていた。

(衣梨奈は正義の味方になりたかったと。でも、でしゃばりすぎて大けがした。本当に死ぬかと思ったけど、目が覚めたらベッドの上やった。)

生田衣梨奈は正義の味方にあこがれて、とある喧嘩を止めようとした瀕死の重傷を負った。
そして目が覚めた先にあったのはダークネスの研究施設であった。

「君を正義の味方にするために訓練しよう。」

衣梨菜はダークネスの出した様々なテストをパスした。
もともと運動神経はそこまで悪くなかった。
そして特殊な能力が彼女の戦闘を助けていた。

「君の最初の任務は悪徳政治家とそれに取り巻く愚か者たちの排除だ。」

ダークネスは衣梨菜を巧みな催眠で操り、正義を行っていると思っている人形に仕立てた。
そして今、安倍裕次郎の演説会場に足を踏み込んでいる。

キィーン!
「くっ、何今の?」

里沙の頭に強烈な衝撃が襲った。
精神系の能力を使う里沙はこういった精神攻撃に耐性ができている。
しかし周りを見渡すと明らかに異常が起きていた。

「うう・・・うぉー!」
「ぎゃー!」
「ひやー!」

会場にいた人たちが急に発狂をし始め、安倍裕次郎の方へと襲いかかっていた。
見ると演説をしていた裕次郎も苦しそうだった。
事前に里沙が精神的な攻撃への防壁をかけていたが、それでも苦しそうだ。
なつみは裕次郎を保護しようと駆け寄っていた。

「どこかにこの状況を作り出している奴がいるはず・・・どこ!」

里沙は精神を集中した。
この混乱した状況の中、この原因を探し出すのは困難だがもとを断たねば最悪の事態になりかねない。
里沙の頭の中には精神が崩壊したような悲鳴ばかりが聞こえてくる。

(本当にこれでいいのかな?)
(うん、ひとりだけ違う・・・もしかして・・・)

里沙はこの混乱の中、ひとりだけ精神状態が違う存在を見つけた。

目の前が大混乱に包まれているのを衣梨菜はじっと見つめていた。
衣梨菜の力は精神破壊。
里沙のように精神をコントロールするのではなく、直接破壊してしまうのだ。

(正義の味方ってこんな光景を望んでないようなはず。正義の味方はみんなが幸せになることを願っているはずと。)
(正義を行うことには必ず暴力がつきもの。世の中はそうやって正義がなされていくのよ。)

衣梨菜の頭の中にひとりの女の声がささやかれた。
ダークネスのマッドサイエンティスト・Dr.マルシェである。
彼女が衣梨奈に話しかけているのだ。

(これが私たち、ダークネスの正義なのよ。)
(違うわ、あなたたちのやっていることは正義じゃない。まったく反対の悪に変わりないわ。)

衣梨菜の頭の中にもうひとりの女の声が聞こえてきた。

(あら、がきさんいたのね。また余計なおせっかいを・・・愛ちゃんに似てきちゃった。)
(私たちはもともとおせっかい焼きよ。あさ美ちゃん、その子を解放しなさい。)
(解放?何か勘違いしているわね。その子は自分の意思で行っているのよ。)
(ふざけたことを言わないで・・・私もかつて闇に投じていたからわかる。あなたたちのやりかたわね。)

かつてダークネスのスパイをしていた里沙にはわかっていた。
まだ世間の右も左もわからないようなこの少女に巧みな洗脳を仕掛けていることは・・・

(一体誰!衣梨菜の頭の中で話しかけているのは誰っちゃ!)
(彼女はあなたの敵よ。構わず倒して。)
(その声に耳を傾けてはだめ!あなたがやっているのは正義でもなんでもない!)
(もうわからない!衣梨奈にはわからんちゃ!)

キィーン!
さらに強烈な衝撃が里沙の頭を襲う。
衣梨菜の精神破壊が暴走しかけているのだ。

(まずい、あの子の精神自体が崩壊しかけている。こうなったら・・・)

里沙は暴走している衣梨奈に駆け寄る。
そして衣梨菜の頭の中に侵入し、あるイメージを伝える。

(私は新垣里沙。あなたのあこがれの正義の味方のひとりよ。)
(正義の味方・・・)

衣梨菜の頭の中にこれまでのリゾナンターの戦いのすべてが注ぎ込まれていく。
たとえ敵であろうと命を奪わない。
仲間や人々の危機には必ず駆け付ける。

(これが本当の正義の味方・・・よかった、衣梨奈は正義の味方に会えたっちゃ。)

衣梨菜の精神は眠りについた。
それによって精神破壊も収まり、人々ももとに戻った。

「こんな純粋な子を平気で駒みたいに利用する。ダークネス、それにマルシェ絶対に許さないから。」

怒りに身を燃やす里沙の様子をマルシェはモニター越しに見つめていた。

「やっとがきさんも私を敵として認識してくれたみたいね。でも、怒りは禁物よ。怒りは平常心をなくして取り返しのつかないことをしやすくなるんだから。」


          --終--