『VariableBlade 第三話 「ちちはは天狗と氷の魔女」』


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「ぶはっ、ハゥぅ!貴様何をする!」

魔法で造り出されたチョコレートの噴水から救出された蒼の剣士、ダーイシがチョコレートまみれで
イイクボさんに掴み掛かる

「落ち着いてダーイシ、私達の目的は剣術ナンバーワン大会じゃないはずよ」
「貴様に何がわかる!剣士には絶対に負けられない戦いというものが・・・お前ら何がおかしい!」
「ブフォ!!」
「プッ、ウケるぜw」

パラパラパラっ・・・
ダーイシが喋る度に低温で固まったチョコレートがポロポロと全身から落ちる
その様を見てお頭とマサキちゃんがいちいち笑うのだ
これはマズい、そのうちこの人キレる・・・ここはフォローしないとマズいんだろうね

「さっきは有難うございます、ウチのサヤシが失礼をして済みません。取りあえず服を着替えては・・・」
「あ、あぁ・・・」

服の話題を振ったら蒼の剣士、ダーイシは俯いて黙りこんでしまった。
えっ?私何か悪いこと言った?

「いや、ダーイシはいつも一張羅だから・・・」

バツが悪そうにイイクボさんが口を開いた。
そうか・・・それはスマンかった

「ねー、いっちょうらってなにー?」

マサキちゃんがイイクボさんに無邪気に尋ねる

「あ?つまり貧乏ってことだろ」

言ってはいけない一言をさらっとお頭が言い放った
暫し、シーン・・・と場が静まりかえる
こ、これは何とかしないとマズいんだろうね!

「ま、マサキちゃん!ジャンプしてダーイシさんに服を取ってきてあげて!」
「いや、私はいい、この服は古い友から貰った大事な・・・」
「了解っ、じゃあ行こうかだーいし!・・・ぴょこぴょこぉ~、ジャーンプ!」
「ちょ、な、何をするやめ・・・うわぁあああああああ!」

ちょ!確かにいきなりかい!
マサキちゃんとダーイシの周囲の空間が歪みジャンプで何処かへと飛び去ってしまった
一体どこ行ったのさ!?ちゃんと帰ってくるか超心配なんですけど

「大丈夫だ。マサキのジャンプは跳ぶのが3人ぐらいまでなら狙った場所へ跳べる」
「そ、そう・・・えっ?じゃあ私達が跳んだジャンプは?」
「・・・まぁそういうことだ」

監獄島から脱出したときのジャンプはいちかばちかのランダムジャンプだったらしい
う~ん、こうしてちゃんと命がある分アタリだったのかハズレだったのか・・・

じー・・・何か嫌ぁ~な湿った視線を感じる。私はその視線の方向を見る
サヤシ?・・・あ、もしかしてさっきの

「かのんちゃんのバカ・・・」

そう言ってサヤシは拗ねた顔でぷいっと横を向いてしまった。これはまためんどくさいことになったんだろうね。



とうっ、シュタッ!私はいついかなる時も油断していない。
急に妙な能力で何処かに飛ばされたとしても華麗に着地す・・・

「どーん!」
「うぉっ!」

背後からいきなりの衝撃・・・さっきの能力者かっ!

「貴様っ!どういうつもりだ!」
「うへへへ」
「うへへじゃない!此処は何処だ!?」

妙な場所だ、恐らく何処かの山の頂上・・・切り立った岩壁が四方を囲む
辺りを見回しても道らしきものはない
赤いゲートのようなものがある、ゲートには◇を連結させた紙の飾り
何か宗教的なモチーフのゲートのようだ

「うへへ、ここはまぁちゃんのウチだよ」

まぁちゃん?・・・コイツの家ということか

「いいから早く元の場所に戻・・・」

!?
急に周囲が暗くなった、私を覆う巨大な影・・・背後の気配・・・二人か
地面に映るシルエット・・・鳥?いや、人間?どちらにせよ異形の姿だ
私は銀牙と月光に手を掛け、バッ!と振り返った
一人は男、赤い鼻の伸びた面を被り、もう一人は女、黒い鳥、カラス?のモチーフの面を被り
背中に各々、白と黒の大きな翼が生えている。

「あれぇ、まぁちゃんお友達?なんまら可愛い子だべさ」
「ブフォ!!でも茶色まみれじゃのう」

異形の者達は極めて普通に人語を話し始めた。少々訛りは酷いが。
どうやら敵意は無いらしい

「彼らは?」
「まぁちゃんのちちとははだよ~」

ちち・・・はは・・・父・・・母・・・コイツの両親か

「ブフォフォフォ、風呂にでも入ってゆっくりしていくがよい」
「安心するべ、そのう○ちまみれのお洋服は洗っておくべさ」

ちっ、違う!・・・チガウ・・・違う違う違う違う違う違う違う違う!!!
これは断じて、断じてその・・・アレじゃあない!!!

「ちが・・・」
「いいから早く脱ぐぅ!ぴょこぴょこ~、ジャーンプ!」

ぶーん、という音と共に私の周囲の空間が歪む・・・チッ!また跳躍か!
私は跳ばされても着地出来るよう、再び身構える
ぴょいーん!と跳躍の音、今度は何処に跳ばす気だ!

 ・・・ん?さっきと同じ風景
跳んでいない?一体今何を・・・妙に体が軽い気が・・・

「ブフォ!!見事につるぺたじゃのぅ!」
「ちょっとアンタぁ!何見てるべさ!」

バキッ!赤い面の男の顎に炸裂するカラス面の女の拳
その後、数秒して私は二人の言葉の意味をようやく理解しその場にしゃがみ込んだ。

「きゃあああああああああああああああああああああああ!」

嘘だ嘘だ嘘だ!
見ず知らずの男に裸に見られた・・・そんなの絶対嘘だ!

「じゃあお風呂行くよ、ぴょこぴょこ~、ジャーンプ!」

跳躍!?この体勢で?ふざけ・・・
ドボーン!

あ、あ・・・あっちい!!!
突然何処かの水中に投げ出された私はその熱さにたまらなく跳び上がった
周囲は一面雪を被った岩肌、湯気が立ち込めている・・・温泉?
熱さに身体が慣れ、冷静に状況を判断できるようになったところで
ぴょい~んと音がなり目の前上空の空間が歪んだ

ドボーン!

あっちい!誰かが落ちてきて飛び散る湯が顔にかかる
目に入って視界がぼやけた・・・跳んできたのはアイツだろう

「うへへへ、お待たせ」

別に待ってない!うっすらとシルエットが見えてくる・・・マサキとかいう能力者
許さんぞ・・・度重なる恥辱の連続、絶対に許さん!

「おいっ!きさ・・・」

貴様っ!と言いかけたところで目に入った湯と湯気でぼやけていた視界がハッキリした
 ・・・嘘だ。そんなの嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ!

「ん~、どうしたの~?」

ガキのくせに私より・・・大きい。そんなの絶対嘘だっ!!!



「これしか無いのかっ!」

温泉から上がった後、いきなり私の服を転送した能力者マサキが代わりに持ってきた服を見て私は愕然とした
これを・・・私が着るのか?

「えー、かわいいじゃんいちごー」

全面に苺のプリントの服・・・一体何処で手に入れたんだコレは

「着てみなよ~、絶対似合うからぁ」
「いやいやいや、似合うとか似合わないとかじゃなくてだな!」
「えー、わがままだなぁもう。じゃあコレはー?」

熊とロバのプリントのTシャツ。これならまだ・・・

「なんまら可愛いシャツっしょ~?超お買い得だったんだべ。なんと990ダークネス!」

”はは”が出てきて自慢げに解説してくれた
安い・・・だがなかなか味があるシャツだ。熊族とロバ族が平和に共存している心暖まる絵柄がポイント高い
服は値段じゃない、素材じゃない。作り手の想い、着る者の想いこそが重要なのだ
気に入った!私はシャツを手に取り袖を通す

「まぁ、ピッタリ!よかったべさぁ、まぁちゃんの胸がキツくなって着れな・・・」

あああっ!言うな!それ以上は言うな!あーあーあー聞こえない!聞こえないぞ!

「いま父ちゃんが芭蕉扇で青い服乾かしてるから。あ、気に入ったならその服はあげるべさ」

芭蕉扇?なんだそれは?疑問に思った瞬間、ビュウウウウウウウウウウウウウウウ!と物凄い風の音が近くから聞こえ
音のした方を見ると青い物体がひらひら宙を舞って谷底へ落ちて行っている・・・って、ちょ!あれ私の服じゃん!

「おぉ、スマンのぅ。少し力が入り過ぎてしもうた。」



ノースランドのおよそ真ん中らへんに聳え立つ巨大な氷の城、ノーザンクロス
その天守閣の広間の玉座に座り、水晶玉を冷たい目で見つめる人影があった。

「ヘケート様、サンダーウルフが討ち取られました」
「あぁ、今見た」

登城してきた配下の女性士官の報告にだるそうな声で応える喪服のような黒いドレスの女
氷の魔女と呼ばれ1000年近くもの永い間ノースランドの住人に恐れられてきたヘケート、その人である。

「如何されますか?」
「あ?アイツはまだ死んでねぇよ。ねぇショージ?」

魔女は微動だにせず隣に立つダビデ像なような筋肉の屈強な男に語りかけた
すると、微動だにしていなかった男の胸の筋肉がプルプル、プルプルと震え出す

「ミ、ミ・・・」
「その名前で呼ぶんじゃねぇよ!黙っとけこのごくつぶしが!」

何事か言葉を発しようとした男を一喝する魔女
シュン、と悲しそうな顔をする男・・・そんなやり取りを無視して女性士官が言葉を続ける

「死んでいないとはどういうことでしょうか?」
「アイツにはアタシの魔力を与えてある。つまり”永遠”の力もほんの少しだけアイツの中に入ってるのさ、ねぇショージ?」
「ミ、ミ、ミk・・・」
「だからその名前で呼ぶんじゃねぇよ!またかき氷100杯一気食いさせるぞオルァ!」
「か、かき氷100杯・・・」

女性士官が眉間を指でつまむ。想像するだけで頭がキーンとしたのだろう。

「アタシに逆らう奴ら、少しは楽しませてくれそうじゃないか。退屈なんだよ、永遠っていうのもさ」

魔女は一瞬だけ遠い目をした後、口元をほんの少しだけ動かして冷たい微笑を浮かべた



「かのんちゃんのバカ・・・」

そう言い放ったサヤシの目は少し潤んでいるように見えた
さっきは少し言い過ぎたかもしれない

「サヤ・・・」

声を掛けようとした瞬間、私の耳はその”音”を捉えた
ゴロゴロゴロゴロ・・・上!?
私は無我夢中でサヤシに駆け寄る

「サヤシ、危ないっ!!!」

もうタックルのような形でサヤシの身体を抱いてその場から押し出す

「ちょちょちょ!かのんちゃ・・・」

ビシャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!

背後で鳴り響く雷鳴の音・・・間に合った!
振り向くと落雷がさっきまでサヤシの居た場所の雪を一瞬で溶かし水蒸気を発生させていた

ウォオオオオーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!

同時に、獣の声・・・この声は

「どこだぁ!蒼の剣士!」

水蒸気の靄の中から現れたシルエット、それはダーイシが倒したはずの狼獣人達のボス!
胸にはダーイシが双剣で付けた「×」の字型の傷・・・でもその傷が塞がりかけている
死んだはずなのに一体どういうことなの!?

「ミ・・・いや、ヘケート様!感謝するぜぇ!暗黒魔力マンセーーーーーーーーーーーーーー!」

狼獣人がマンセー!と叫ぶと同時に「×」の字の傷跡から何かドス黒い力が溢れ出し、完全に傷を塞いだ

「気をつけて!その獣人から禍々しい魔力を感じます!」

イイクボさんが高い声で叫んだ・・・魔力?アイツにも魔法の力があるってこと?

「蒼の剣士はどこだぁ!人が名乗ってる途中に斬りやがってあの小娘!」

狼獣人は激しくご立腹のようだ・・・そりゃ一度殺されてるから当然なんだろうね

「いいだろうそこの狼、私が代わりに相手になる。名を名乗れ!」

そう言いながらぬっ、と私の身体を隠すようにサヤシが一歩前に踏み出た・・・てっ、敵にも上から目線!?

「お、おぅ!俺様はヘケート様配下の一番隊隊長、雷の牙ことサンダーウルフだ!」
「では私も名乗ろう、私は鞘師の一族の末裔、サヤシリホ!」

リホ?リホっていうんだ下の名前・・・今更だけど初めて知った

「あ?お前噂のインフルエンザブレードだな!面白ぇ!この俺様が黒焦げにして喰い殺してやるぜぇ!」

凶悪な牙を剥き出しにして狼獣人が身を構える
バチ・・・バチバチバチバチ・・・
姿勢を低くして全身に力を込めた獣人の身体に青い光が走り始めた・・・さっきの雷ってやっぱりアイツが!?

「かのんちゃん!私と逆に走って!」

そう言い放って私を突き飛ばすとサヤシは明後日の方向に走り始めた
逆に・・・って
サヤシ、まさか私を攻撃の的から逸らすためにわざわざ派手に名乗ったの!?

ビシャーン!ビシャーン!ビシャーン!ビシャーン!
狼獣人の身体から次々に雷撃が放たれる
サヤシが走った後に次々と走る雷光、溶けて濛々と水蒸気になっていく雪

「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

剣も抜かず必死に両手を振って走るサヤシ
何とかギリギリで雷撃を避わしているけど全然余裕無さそう
その行く先は・・・

「おいバカ!こっち来んな!」
「こっ、これはマズいことになったとね!」
「う、嘘ぉ!」

慌てて背を向けて走り出すお頭、KY、イイクボさん

「ガハハハハハハ!さっきの威勢はどうした?逃げるだけか?」

このままじゃやられるのは時間の問題
ドキドキドキドキ、自分の心臓の鼓動が大きく聞こえる
どうする?香音
いや~、足が震えてきた。嫌だ嫌だ嫌だ、嫌だけど、怖いけど
      • でもやるしかないよね

「ヘーイ!そこの漏電ウルフマン!ウチと貿易するぅ?」

出来るだけデカい声で叫んだ、中指を立てて変顔をしながら
一瞬でもこっちに注意を向ければサヤシ達が反撃してくれるはず

「あぁん?何だテメェ!ナメてんのか?焼豚にすんぞ!!!」

キター!やっすい挑発に乗って狼獣人がこっちを向く・・・って焼豚ぁ!?ふざけんなゴルァ!