――!!――
突然、れいなは頭を押さえて苦しみだした。
「うあああああ…っ!!」
・ ・ ・ ・ ・ ・
喫茶リゾナントにはまた新たな顔触れが増えた。
しかし、それと入れ替わるように愛は新たな戦いに向け、店をれいなに任せ留守にする事が多くなった。
そして、最近になって里沙も愛のサポートの為、リゾナントに顔を出すのがめっきり少なくなった。
さらに、戦いが続いたことによる疲労からか愛佳は体調を崩しがちになり、れいな達の勧めもあって自宅療養のような形となりリゾナントにもあまり来れなくなっていた。
新たな大きい局面を迎えようとしている、予感がしていた。そんなある時―
「キャーッ!!」
ティータイムと夕食時の谷間の時間、客は1人もいない時だった。
外で女性の叫び声がした。
れいなとさゆみはすぐに店の外へ出る。すると、女性が黒ずくめの男達に車に押し込まれようとしていた。
「お前ら何しとう!!」
れいなは怒鳴ったが、男達はちらりとこちらを見やっただけですぐに車を発進させた。
「さゆ、ここは任したと!」
「うん、すぐに行くね!」
れいなは愛用の自転車で車の後を追った。
工場が立ち並ぶ一角。稼動を止めた無人の工場の中に、車は止まっていた。
れいなは車の中を覗くも、そこには誰もいない。その時、背後で気配がした。
「来たなリゾナンター」
「ここがお前の墓場だ」
「覚悟!」
そこには、黒ずくめの男達と共に、彼らに連れ込まれていたはずの女性の姿もあった。
「くそっ…お前らグルか!」
「そういうことだ。まんまと引っ掛かったな」
「れーなをナメんな!!」
さも余裕かのような態度だった男達だったが、たちまちのうちにれいなに叩き伏せられていった。
そして最後に1人残った女も、れいなに押さえつけられ身動きが取れなくされていた。
「ハァッ…ハァッ…れいな~!」
「さゆ遅いっちゃ!もうフィニッシュ決めるとこよ!?」
女は一度さゆみの方を見ると、再びれいなを睨んだ。
「まぁ、相手が悪かったとね」
「お楽しみは…これからよ…」
女はニヤリと笑みを見せた。
「ほざけ!」
頚椎に手刀を落とされ、女は倒れた。
「え!?この女の人は!?」
「こいつもグルやったと。これでも罠のつもりだったみたい。ま、こんなもんっちゃ」
「さすがなの!そういえば、この人何か言ってた?」
「お楽しみはこれからだって…」
「ふーん…変なの」
道重さーん!!田中さーん!!
「あーみんな!もう大丈夫とよ!」
・ ・ ・ ・ ・ ・
「ぐああ…!!!!」
「どうしたのれいな!?」
「田中さんどうしたんですか!?」
「田中さん!?」
「く…くおおお……!!!」
原因不明の苦しみに襲われるれいなに、さゆみ達もなすすべがなかった。
そして次第にれいなの髪が逆立ち、眼は青く光っていった。
「う…うう……」
「れいな!?」
「田中さん!?」
「田中さん…?」
「はああ………」
苦しみが治まったれいなは、さゆみ達を見回した。
そこに、遥と優樹が駆け寄っていった。
「田中さん大丈夫ですか!?」
「たなかさん!」
「ダメなの!れいなに近寄っちゃ!」
さゆみは、今のれいなのただならぬ雰囲気を感じ取っていた。だが、さゆみがそれを言い終わらぬうちに―
ドガッ!
2人は、れいなに蹴り飛ばされていた。
「遥ちゃん!」
「優樹ちゃん!」
2人に駆け寄る仲間達。だが、そこにも―
ス…
「みんな逃げて!!」
ド ウ ッ
れいなはエネルギー波を放った。なんとか里保だけはそこから逃れられたが―
振り返ると、そこには7人の身体が横たわっていた。
「れいな…!」
「どうしたっていうんですか!?田中さん!」
れいなは答えない。ただ、不敵な笑みを浮かべた。
「…!」
それに対し、睨み付ける里保。
「うおりゃーーーーーーっ!」
里保は、れいなに飛び掛っていった。
「ジャマだ」
れいなが口を開いた。そして、再びエネルギー波を放った。
「がっ…」
吹き飛ばされ、倒れる里保。
また、エネルギー波はさゆみの頬をかすめ、ついた傷から血が流れだした。
「許しません…」
さゆみの丁寧な口調に、れいなはニヤリと笑った。
「現われたな…さえみさん…」
「…!…まさか、あなた、私を呼び覚ます為に…!?…どういうつもりかは知りませんが、ますます、許すわけにはいきません」
“さえみ”の眼が光り、空気が震えだした。そしてれいなは再び、ニヤリと笑った。
「いくぞ!殺してやる道重さえみ!!」
・ ・ ・ ・ ・ ・
「う…んん…」
「れいな!?」
「はっ…!?さゆ…?」
「どうしたのれいな?すっごいうなされてたよ?」
辺りを見回すれいな。いつも通りのリゾナントの店内。
ソファ席に座って休んでいるうちに寝てしまっていたらしい。
「うわ、すごい汗かいてるじゃん、珍しい。シャワー浴びてきなよ、店番してるから」
「う、うん…。じゃあお願い」
れいなはエプロンを外し、階段に向かおうとして足を止めた。
「ねぇさゆ」
「なに?」
「うちらって…仲間よね?」
「え?急に何言ってんの?当たり前じゃんw」
「ああ、うん、なんでもなか。なんとなく、なんとなくよ」
れいなは2階へ上がって行った。
最終更新:2012年05月31日 23:26