『Variable Blade 第一話 「蒼の剣士とチョコレートの魔術師」』


※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。



(前章までのあらすじ)
預言書にある「世界を変える力を持つ箱」を政府の施設から盗み出した鈴木香音は何とか政府軍を振り切るも
賞金に目の眩んだならず者、ハンターの一団に襲撃される。過酷な砂漠でチェイス中に遂にバイクのエンジンが爆発。
絶体絶命の危機を謎の剣士、サヤシに救われる。

その後、新たなる追手KYに襲撃されるがサヤシが辛くも撃退。そこへ更に政府のクローンサイボーグ部隊が現れる。
KYの助け?もありギリギリでクローンサイボーグ部隊を退けるサヤシだったが昏睡。

そこへ戦闘機、ジェットストライカー部隊が容赦なく襲い掛かるが箱の謎の力が発動し部隊は同士討ちに。
1機残ったジェットストライカーは箱に制御され、香音、サヤシ、なぜかKYを乗せて勝手に監獄島に向かう。

監獄島に待ち受けていたのは政府に反逆した元囚人、お頭とその配下の海賊達だった。
一度は囚われる香音達だったが同じ反政府勢力ということで釈放、もてなしを受ける。

その晩、監獄島を覆う瘴気の正体を追っていたサヤシは地下の重力エンジン動力室でお頭と出会う。
重力エンジンのコア、古の闇の戦士のエナジーを吸収したお頭は暴走、闇の戦士に意識を乗っ取られてしまう。
しかしサヤシの御神刀の真の力、そしてお頭自身の意思で闇の戦士のエナジーに勝利しこれを再び封印する。

更に夜が明けると、島は政府軍のカリン率いるクローン部隊の襲撃を受ける。
海賊達、そしてお頭、KY、サヤシの活躍で何とかカリンとその部隊を退ける一行だったが
クローン兵の生き残りにKYが胸を貫かれ重傷を負う。死の淵にあるKYを前に何も出来ない香音達だったが
サヤシが新たなる剣の力、活人剣を開眼しKYを治癒する。

そこへ政府軍の東部方面軍統括、マノが現れ香音達に共闘を呼び掛けるがお頭がその申し出を一蹴。
お頭の仲間?のジャンパー、マサキの力で箱と共に一行は遥か北へと飛び去るのだった。

(ここまであらすじ)
あ、ナレーション終わりですか?今お聞きの通りこれまでもピンチの連続だったんですが
ま た も ピ ン チ で す 。
このノンストップでせわしない展開はもう少し何とかならないんだろうかね・・・

          ◇        ◇          ◇

獣人、私達人類を永きに渡って苦しめてきた脅威。でも大昔は獣人なんて伝説の存在だったらしい。
彼ら獣人がこんなにも大量に世に現れたのは気紛れな獣人族がたまたま人を噛んだためとも
または獣人族の遺伝子を元にしたウィルス兵器が何らかの事件で漏れ、パンデミックを起こした為ともいわれている。
何にせよ、獣人に噛まれたものは獣人になってしまう可能性があって更に獣人達自身の生命力、繁殖力も爆発的。
獣人を狩り、撃退する”ハンター”なんて職業が出来るぐらい私達にとって身近な脅威・・・それが獣人。

そんなトリビアしてる場合じゃない!こんにちわ、鈴木香音です。
その獣人の脅威に私達は今まさに、晒されているんです!
どこかの雪山のど真ん中で、無数の獣人達が私達が取り囲んでいる状況
唯一の脱出手段だったジャンパーのマサキちゃんは・・・お頭のマインドブラストで気絶してる!

「ちょ!お頭何してんのよ!」
「あ?うっせーなぁ、犬っころどもぐらい俺が始末してやんよ」

いや、元気のいいのは結構だけどね・・・アレ見てよアレ

ドドドドドドドドドドドドド!

遠くの方に見える盛大な雪煙。アレが全部・・・だよね?

「来るっちゃよ!チッ!AKBは置いてきたとか!?」

KYが舌打ちする。
対獣人用ライフル・・・ジャンプのときに置いて来ちゃったんだね
まぁあってもあの数を捌けるとは思えないけどね。。。

盛大な音にお頭もくるっ、と後を振り返った
暫しの間の後、見る見る顔が青褪めていく

「・・・やっべぇ!マサキ!起きろ!」

いや、アンタがKOしたんでしょうが!

マサキちゃんの頭の周囲にはまだくるくると星が舞っている。
これはしばらくは起きないんだろうね。

あんまり気は進まないけど・・・起こすしかない!
雪に顔を突っ込んで爆睡してる剣士に私は駆け寄る

「サヤシ!サヤシ!起きて!」

ごめん、今朝も無理矢理起こしたのにホントごめん。
でもキミに頼るしかない!目覚めろ、最強の剣士!

「う、う~ん・・・サイダー・・・しゅわしゅわぽん・・・うひひひ」

寝言?サイダー?何言ってんの?それどころじゃない!

「サヤシ!サヤシ!このままじゃ全員死ぬわ!貴方の剣の力が必要なのよ!」
「なんで私を誘わないの?ん?ん?・・・」

アカン、完全に夢の世界や!しかも何の夢なのさ?
これはマズい・・・マズすぎる・・・最終手段に出るしかない!

「起きろー!コノヤロー!元気ですかっ!」

バチーン!サヤシの頬を思いっ切り平手打ちする・・・ゴメン、でもこうするしか

「雪山で寝るなー!死ぬぞー!」

バチーン!バチーン!往復で叩く。どっちにせよ雪山で寝るの危険だし!

「・・・こ、来ないで下さい!だから、りほりほとか気安く呼ばないで!」

コイツ起きん!しかも夢の中でなんかピンチに陥っとる!

タタタタタタタタタ!KYが身に着けていた小銃をぶっ放した
えっ!?もう奴ら来たの!
キャインキャイン!と声を挙げて雪道を転げ落ちる獣人達の姿が見える
でも中には弾を食らいつつも怯まず突撃してくる獣人も!

「ちっ!やっぱコレじゃ仕留めきれんとね。数も多過ぎっちゃ!」
「つーかやめろ!こんな雪山でそんなの撃ったら雪崩れ起きっぞ!」

た、確かに!・・・格闘戦しかないの?
でもこの中でマトモに格闘戦が出来そうなのは・・・サヤシだけじゃん!

「じゃあどうすればよかとよ!」
「俺がマインドブラストで暫く時間を稼ぐ!その間に考えろ!」

お頭が地面の雪に手を当ててオレンジ色のエナジーを走らせた
地面一面を走るエナジーが坂道を上がってくる獣人達の先鋒隊に襲い掛かる

ギャワワワワワン!キャインキャイン!
エナジーのショックで転げ落ちていく獣達、でも一時凌ぎに過ぎない!

ガサガサガサッ!えっ!?近くの茂みから音!
まさか・・・まさか・・・そんな!やめてよ!

ガサアッ!ワオォーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!

ひぇえーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!獣人っ!
茂みから突然半分犬、半分人間みたいな醜悪な生き物が私に飛び掛かってきた!

避け・・・いや、サヤシがまだ寝てる、でも・・・
いや、ダメだよ!そんなの!

私はバッ、と両手を拡げてサヤシを守るように獣人の前に立ちはだかった

スローモーションみたいに獣人の鋭い爪が私の頭に迫る
あぁ、ウチ死ぬなこれ・・・いや、万一サヤシが助かればさっきの活人剣とかで直してくれるかな?
いや、頭吹っ飛ばされたらいくら何でも直んないかな・・・あぁあ、やっぱ幸薄い人生・・・咄嗟の判断、間違えたかも
私は目前に迫る鉤爪に・・・目を閉じた

ヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュ!ザンッ!

えっ!?何、今の音?

私は目を開く

ブシャーッ!ぶーっ!生暖かいドス黒い液体が顔に掛かった、おえっ
獣人の・・・血!おええええっ!
獣人の腕が吹っ飛んで・・・いや何かに斬られて血が噴き出している。
のたうち回って悶え苦しむ獣人・・・助かった!

ヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュ!

あの音!私は音の方を見る
視線の先には、銀色に輝くブーメランのような物体
曲線的な軌道を描いて宙を舞っている
でもブーメランにしちゃデカいね?

そのままブーメランの行き先を追う。私達の背後の崖上・・・
ブーメランの行き先に二人の人影が見える・・・私達以外にも人が居た!

二人の人影の内、青い服を着た方が片手でパシーン!と巨大なブーメランを受け止めた
その青い人影が私に向かって叫ぶ

「見上げた度胸だな!気に入ったぞ!」

落ち着いた感じの女の子の声・・・一体何者?

でもあの子小さくない?
ブーメランの方があの子よりデカいような?いや、ブーメランがデカいのか?

そんなことをぼーっと考えていたら背後からボオッ!という音が聞こえた
メラメラ、パチパチ・・・焦げ臭いっ!

私はバッ!と振り返る

そこには、全身を蒼い炎に包まれて悶え苦しむ獣人の姿があった。
さっき腕を斬り飛ばされた獣人・・・な、何なのこれは!?
あっという間に蒼い炎は獣人の身体を焼き尽くし、骨だけにしてしまった。
カラカラカラ、と崩れ落ちる骨

「たあぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!」

さっきの青い服の子の声・・・うええっ!
青い服の子は背後の高い崖から前宙して思いっ切り飛び降りてきた!
アホか!死ぬぞ!

「銀牙!月光!」

シャキーン!という音と共に青い服の子のブーメランが眩しい銀色の光を放った
何何何!今度は何なの?・・・えっ?アレは・・・

スノボですか!?

銀色のブーメランはいつのまにか銀色の板にその姿を変えていた
シャキーン!と青い服の子はボードを足に嵌める・・・そ、そういうこと!?
ん、ええっ!こっちに飛んできてる!?女の子は空中でボードを制御し、こっちに向かってきた

バシャーン!着地の激しい雪煙が私の顔に掛かる・・・ぶーっ!今日はこんなんばっかり!

「ゴメン、話は後だ!」

顔に掛かった雪を払う。初めて青い服の子を間近で見る。
黒髪ぱっつんでやっぱり身体はかなり小さい。そしてほっそい。。。ウラヤマシイ
目が合った・・・黒目がちの不思議な目。何だろう、何かが違う?
動物・・・みたいな、といったら失礼だけどでもキラキラした綺麗な目。

着地した青い服の子は私にウィンクすると勢いよくボードで滑りだした

「どけぃ!お前達は下がっていろ!」
「何ねアンタ、うおっ!ぶっ!」
「あ?何だテメ・・・うおっ!」

KYとお頭の顔にも派手に雪をぶっ掛けて、女の子は銀のボードで滑り降りていく
とんでもないスピードだ・・・怖くないのかな、アレ。。。
どんどん青い服の子は滑り降りていき獣人達の群れ、本隊に近付いている

えっ、ちょ、嘘ぉ!?
あの子たった一人であれだけの獣人の群れとやり合う気なの?無謀すぎる!
ボードが派手にジャンプした。天高く、前宙の姿勢。
そこでまたボードが銀色に眩しく輝く・・・銀の光は、今度は二つに分かれた!

ぼふっ!と派手な雪煙と共に着地する蒼い服の子
その手には・・・一対の銀の双剣・・・アレ、剣だったの?

「蒼の剣士・・・」
「あ?何だそりゃ?」

ぼそっ、と雪まみれの顔でKYが呟いた

「北の方から流れてきたハンターから聞いたことがあるっちゃ。北では蒼の剣士が獣人を全部倒しちまうからハンターは商売あがったりだって」
「ええっ!?まさかあの子が!?」

青い服の子・・・蒼の剣士が翼を拡げるように双剣を構えた
無数の獣人達が輪を作って彼女を取り囲む

ワォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオーーーーーーーーーーーーーーーン!
獣人の一匹・・・隊長格だろう、の雄叫びとともに獣人達が四方八方から蒼の剣士に襲い掛かる
フッ、と蒼の剣士の姿が見えなくなった・・・えっ!?何?
ギャワン!キャイン!キャン!キャイィイン!

次々と獣達の悲鳴だけが聞こえる

「アイツ、とんでもない速さで動きよぅね」

見えるのかKY!
 ・・・すっかりガヤポジションな台詞を吐きそうになった

彼女の姿は確かに見えない・・・けど

次々と獣人達が蒼い炎に包まれていく・・・いや、凍りついている獣人も見える
アレは・・・あの不思議な剣の力?

「太刀筋は全般的に軽い、が的確な位置を狙ってる。剣の力に助けられている部分もあるが」

うおっ、背後からの突然の声!
サヤシ・・・もっと早く起きてよ!しかもなんかまた上から目線だし!

「見てないでアンタも助けに行きなさいよっ!」

どごっ!イラっとした私は後ろからサヤシを蹴っ飛ばした

「か、かのんちゃ・・・うわぁあああああああああ!」

つるっ、と滑ってサヤシは坂を転げ落ちていく・・・やばっ!もしかして雪苦手だった?

「とぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおーーーーーーーーーーーーっ!」

突然、背後から甲高い声が聞こえた
あ、そういえばもう一人居たね、蒼の剣士と一緒に
茶色い何ともいえない不思議なデザインの服を着た女の子
やっぱりあの子もかなりの実力者・・・

「きゃぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!」

ぼふっ!

 ・・・えっ!?
か、顔から落ちた・・・いや、何かの間違い・・・じゃなさそうだ

「痛ったぁ~」

嘘ぉ!生きてる・・・顔から落ちたのに!

「だ、大丈夫ですか?」

思わず声を掛けてしまった。きっと何かしようとして失敗したんだ。
そう思いたい、うん。

「は!はぅう・・・これはご親切にスミマセン!」

私が声を掛けると女の子はピッ、と真っ直ぐして顔に付いた雪をばしゃばしゃと払った
相変わらず素っ頓狂な声を挙げながら・・・

肌の色は浅黒い、身体はほっそりとしている。服は・・・やっぱり見たこと無い類の服
どうやって縫ったのかわけのわかんない何とも言えない構造のローブだ
なんか、こう・・・だまし絵っていうかそんなインチキ臭さを感じる。センスは独特で悪くないけど。
かなり南洋系の濃い目の顔だね、何でこんな雪山に?とりあえず話を聞いてみよう、うん

「貴方達は何者なの?」
「ハイっ!さっきの剣士はダーイシ、私と目的を同じくする同志ですっ!」
「目的?貴方は?」
「ええっと、わたくし、ダン・ハゥ・クゥ・ハゥ・オオアクマール・チョコバッター・ド・メッシ―・・・」

ちょ!サトウマサキコトサトウマサキより長ぇ!そんなの覚えられんわ!
あ、私の怪訝な顔に女の子は気付いたようだ

「あ、えーと皆さんの世界風に言うと”イイクボハルナ”って感じですかね」

最初っからそう言え!・・・え?皆さんの世界?どういう意味?

「も、目的って何?」
「あ、わたくしラブベリーナ魔法学院の卒業試験で課題を出されましてこの世界に参りました」

魔法・・・学院・・・だと?
可哀想に、さっき落ちたショックで頭が・・・

「ま、まぁ落ち着きましょう、後でゆっくり・・・」
「魔法!?アンタ魔法が使えるっちゃか!?」

うっ、また厄介な奴が現れた。そんなわけねーだろ!
お前は黙って・・・

「はいっ!お近づきの印に・・・×#%@C△・・・」

わけのわからん言語、いや、呪文?・・・なんだこれ・・・
いかん、ダメだ!この子は完全に・・・早く!早く病院に!

「★チョコレィタス★」

ボワッ!と私の手に妖しい煙が!

「おおっ!」
「おわっ!何だこりゃ!」

同じくKYとお頭の手にも怪しい煙が!

「わーい!チョコレートだぁ!」

いつの間にか起きていたマサキちゃんの手にも・・・
みんなの手にいつの間にか謎のマグカップが!
いい薫り・・・芳醇で・・・濃厚な・・・チョコレートドリンクの・・・

「うっ・・・うまか!何ねこれは!」
「うめえ!うめえぞこん畜生!」

そう、この薫り・・・飲まずにはいられないっ!
たとえ怪しい術で出てきた飲み物であってもっ!
どんなリスクを負ってでも飲む価値が・・・これにはあるっ!

私がマグカップに口を付けようとしたその時
目の前にイイクボハルナが手で半分顔を隠して斜め気味で立つ変なポーズで立ち塞がった

「お前は・・・『きゃ~!こんな美味しいチョコレートドリンク飲んだことな~い!これでご飯三杯はいける~!』と言う」

は?何言ってんの?そんなバカなコメント私がするわけ・・・ゴクっ

「きゃ~!こんな美味しいチョコレートドリンク飲んだことな~い!これでご飯三杯はいける~!」

ハッ!まさかっ!これが魔法の力なのっ・・・!?


坂道を滑り降りて・・・いや、滑り落ちているその時、唐突に”それ”は私の手の中に現れた。
甘く、芳醇で、香ばしい薫り
未だに眠気に襲われていた私はその薫りに刺激され、自然と”それ”を口へと運んだ

 ・・・旨い!
甘さの中にもしっかりとしたカカオの香ばしい風味
それでいて後に残る苦みや嫌味はなくすっきりとした喉越し
この味は恐らく伝説の”サイダー”に比肩する極上の味わいだ!

身体の芯がどんどん暖かくなっていく・・・眠気が一気に吹っ飛んだ!
身体に残っていた疲労感も、なんだか知らないがビンタされたように痛かった頬も
全て全て癒されていく・・・すごい、すごいぞこの力は!

目の前に獣人達の群れが迫る・・・蒼の剣士が奮闘しているがいかんせん数が多い
御神刀を握り締める・・・出来るのかっ!私にっ!

「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」

御神刀を抜く・・・光と共に、御神刀の新たな姿が目覚めた

「猪・孤・麗・剣!Chocolate Bladeぉおお!」

違う!これじゃない!これじゃないんだ!
慌てて私は茶色の刀身・・・いや、棒を頭からサクサクと齧る

「な、何しとんじゃ・・・お前は」

うっ・・・蒼の剣士に軽蔑の眼で見られた

次から、次からは本気出す!