『Invisible Blade 最終話 「奇跡の光、そしてまたまた見えない行先」』


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私は咄嗟に駆け寄って崩れ落ちるKYの身体を支えた
手にぬるっ、とした生暖かい感触・・・血の感触
背後から右の肋骨あたりを貫通されてる。とめどなく流れ出す血
そんな・・・こんなのって・・・

「誰か!医療班!」

お頭が海賊達に叫ぶ。

「ゆ、油断したとね・・・ハンター失格っちゃ・・・」

口から血の泡を噴きながらKYが呟く

「喋らないで!今メディカルキットを持ってくるから」
「よかとよ、これじゃどの道もう・・・助からない・・・っちゃよ・・・」

力なくKYが私の手を握った。震えている冷たい手・・・力弱く握り返してくる
そんな・・・そんな・・・

「しっかりして!諦めちゃダメ!」
「そうだ!まだ報酬も渡してねぇだろうが!」
「報酬は・・・ハカタシティの妹のとこに振り込ん・・・で・・・」
「バカヤロウ!今現ナマで持ってくるから弱気なこと言ってんじゃねぇぞ!」

どんどんKYの身体が冷たくなっていく。私は手を握って励ますことしか出来ない

「かのん・・・この前、なんで一緒に来たか・・・ってえりに・・・聞いてきよったね」
「いいから!無理して喋らないでよ!」
「ハンターになって・・・どんどん獣人どもを倒して・・・えりはハカタの英雄だったっちゃ・・・でもえりは知っとった、みんなが影でえりの”鷹の目”の力のこと、気持ち悪がっとったこと・・・」

やめてよこんなときに自分語りとか。死亡フラグみたいじゃない!

やけん・・・同じ”能力者”のアンタ達に会えてえりは嬉しかったっちゃ・・・なんだか初めて仲間に出会えた気がして・・・やけん・・・えりは・・・」
「もういい!わかった、わかったから。私達はこれからもずっと仲間よ!だから死んだら許さないから!」

かのんちゃん達の様子を見ながら私はただ呆然と御神刀を握り締める。
私は・・・何も出来ない。剣の力は無力だ。
敵を斬る、ただそれだけじゃないか。誰も護れてないじゃないか。
何だったんだ、今までの修行は。ただ木偶達を斬り倒して調子に乗ってただけ?
何が闇を祓う剣だ・・・人一人救えないじゃないか

(出来るよ!)

?!誰だ!私は剣を構える

「サヤシ!どうした!まだ敵が居るのか?」

お頭が怪訝な顔で問いかける・・・いや、誰の気配もない・・・

(りほりほなら出来るよ!その子を助けること)

「誰だ!」

空に向かって叫ぶ、返事は・・・ない

 ・・・いや、私は今の声を聞いたことがある
どこで聞いた?頭をフル回転させる・・・そうだ!あの声
夢の中で見た光の戦士の一人、癒しの光の能力者の声!
 ・・・私はショックでおかしくなってしまったんだろうか?幻聴、ってやつか?

(諦めないで!りほりほなら出来る!)

ああっ!うるさいっ!この状況で私に何が出来るって言うんだ!そもそもりほりほとか気安く呼ぶな!

突然バチバチっ!と頭の中に火花が走る・・・幼い日の祖父との記憶

「かつじんけん?」
「そう、活人剣。太古の剣聖が書物に記した奥義じゃよ」
「どんな奥義なの?」
「ワシもその書物を読んだんじゃがの・・・正直なところよくわからんかったよ」
「じっちゃんにもわからないことがあるんだね」
「剣というものは人を斬るのみではない、人を活かす剣こそ正しい剣の道、のようなことが書いてあったんじゃがのぅ。まぁなかなかその極意には辿り着けんもんなんじゃろうな」

活人剣・・・人を活かす剣・・・そんな剣があれば・・・
ダメだ!じっちゃんですら辿り着けなかった奥義を今の私が使えるがはずがない!

(出来るの!その剣なら!りほりほが願えばきっと!)

ああっ!いい加減に黙ってくれ!私には・・・

”御神刀は心の剣、おんしの心の映し鏡じゃ”
”御神刀は心の刃。おんしが願った姿にいかようにも変わるんじゃ”

私の・・・願い
今の私の願い、それは・・・

(そう、願うの!りほりほにはその力がある!)

活人剣・・・夢の中の癒しの光・・・この手に感じた暖かい光・・・
出来るのか・・・私に・・・

いや、やるしかないんだっ!

「ちょっとぉ!?KY!KYっ!しっかりして!誰かぁ!誰か早く!」
「あああっ!畜生っ!医療班はまだかっ!」

もう嫌だ!サヤシは何だか一人でブツブツ言ってておかしくなっちゃったし
こんなのってないよ神様・・・お願いします、どうかKYを助けて!

「はぁあああああああああああああああああああああ!!!」

サヤシが天に向けて剣を構えている・・・嫌だ、ホントにおかしくなっちゃったの?

「おいサヤシ!お前こんなときにふざけ・・・」

サヤシに掴み掛ろうとしたお頭がビクッ、とその身体を震わせた

「なんだよこのエナジー・・・」

カッ!と眩しい光が私達の目に飛び込んできた
サヤシの剣から放たれる光・・・ピンク色の光
その光は雲を割って天を貫いて輝いている

くるっとサヤシが私達の方を向く
鋭い眼光、ちょ・・・まさか!

「活・人・剣!HealingBladeぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

きゃ~!!!やっぱりサヤシ狂っちゃってた!
私とKY、お頭に向かって長大なピンクの光の剣が振り下ろされる
こんな結末って酷い!ふざけんなファッキン神!ブルシット!
襲い来る光の奔流に目を閉じる・・・幸薄い人生だったわ・・・


 ・・・ん?あれ?

何これ?何だかあったかい・・・身体の芯からポカポカする
これは・・・温泉!?

そんなわけないか。私はそっと目を開く
サヤシの剣のピンクの光に包まれている私達。この光は何なの?

えっ?・・・さっき転んだときの膝の擦り傷が塞がっていく
躓いたときの爪先の痛みもどんどん消えていく

この光って!

バッ!と抱きかかえているKYを見る
胸の傷が・・・どんどん塞がって・・・塞がった!
ちょ!これって!

「サヤシっ!」

私が叫ぶと同時に光がふっ、と消える
サヤシが何だか糸の切れた凧のようにくるくると回り始めた

「やっ、たぁ・・・ひゃっほい!」

どでーん!そう言い残して大の字になって倒れるサヤシ
すごい、すごいわ・・・これは奇跡の剣よ!

「すげぇ!すげぇ!っておい!大丈夫かサヤシ!?」

お頭がサヤシに駆け寄る
すぴー、すぴー、といつものサヤシの寝息が聞こえてきた
多分大丈夫だ

御神刀・・・神の剣・・・なの?・・・神様、さっきはゴメン

パチパチパチパチパチ

すぐ間近から誰かが拍手をする音が聞こえてきた
サッと私は音の方を見る。そこには黄色いドレスを着た女性が立っていた。
背は・・・そんなに大きくない。どちらかといえば可愛い系の顔。
でも・・・その大きな瞳の奥には何か・・・獣のような獰猛さを感じる

「アンタは!」

お頭が立ち上がりサッ!とリボルバー銃を構える
えっ!この人は敵?

「いきなり失礼。興味深いものを見せてもらいました。実に素晴らしい!新しい能力の可能性を感じます」

お頭のことを気にすることもなく余裕の表情。声のトーンからももの凄い余裕を感じる。
この人・・・只者じゃない。

「東の統括官様が何しに来やがった!」
「そうカリカリしないで、くどぅー。カリンを倒したのは子達はどんな子達なんだろうって会ってみたくなってね」

確かに敵意は声からは感じられない。でもなんだろう、この嫌な感じは。

「貴方達は実に素晴らしい。反逆者として埋もれていくには惜しい存在です。どうです?私ともに新しい時代を築きませんか?」

えっ!勧誘!?・・・正規軍、だよねこの人

「かのん!耳を貸すな!コイツは俺達を自分の野望の駒にしたいだけだ!」

そう、この人から感じる嫌な感じの正体・・・それは・・・

「野望だなんて人聞きの悪い。優れた者がこの世界を統治する、それをただ実現したいだけですよ私は」

「あの~・・・」

うわっ!ビックリした!突然の背後からの声。今度は誰よ!?
振り返るとそこにはちょっとぽけーっとした顔の女の子が立っていた。

「皆さんはくどぅーの仲間ですか?」

くどぅー?お頭のこと?しかしなんかイライラする喋り方・・・

「だ、誰よアンタは!」
「あっ、え~っと、サトウマサキことサトウマサキです!」

サトウマサキコトサトウマサキ・・・?
随分長い名前・・・

「マサキ!いいところに来た!」

お頭が女の子:マサキにバチーンとエナジーを飛ばす
えっ!?何?

「あ、了解ぃ~!ぐるぐる~、ジャンプ!」

えっ!?消えた?
ジャンプした瞬間、空間が歪んで女の子はフッ、と跡形もなく消え去った

「ジャンパーの仲間まで見つけたのですか?相変わらず社交性と口の達者さだけは素晴らしいですね」
「おいおい、随分なご評価だな」

お頭は銃を降ろさない。この2人、過去に何があったの?

ぴょい~ん!と変な音がしてまた私の前にマサキちゃんが突然現れた
ジャンパー・・・まさか瞬間移動なの!?

「取ってきたよ~、箱」

は、箱ぉ!?マサキちゃんの手には確かに”箱”があった
何何何!?箱をどうする気なのよ!?
私の心配を察したかのようにお頭が口を開く

「おいマサキ、その箱持ってその人達と一緒にどっか遠~くまで飛べ」
「え~っと、三人以上だと行き先が・・・」
「そこは言わなくていい!でも火山の火口とか海のど真ん中とか宇宙空間とかはダメだぞ」

ちょちょちょ!何言ってんの?
何かすっごく不安なんですけど

「逃げる気ですか?箱は返してもらいますよ」

黄色いドレスの女が私達に手を向ける

「急げマサキっ!」
「了解っ!ぐるぐる~、ジャーンプ!」

私の周囲の空間が歪む。気を失っているサヤシとKYの周辺も。
そして・・・お頭の周辺も。

「ば、バカっ!俺はいい!」
「え~っ?そうなの?でももう止まんないよ」
「嘘だろおい!?」

ゾクゾクっと身体の下から寒くなるような感覚が襲ってきた
飛ぶの?私飛ぶの?

と、飛んだー!ひぇえーーーーーーーー!どんどん地上が遠くなっていく
一体どこに行くんじゃーーーーーーーー!うわぁああああああああ!ちょ、待っ・・・

「行ってしまいましたか・・・」

監獄島に残された黄色いドレスの女、東部方面軍統括官マノエリナはふぅ、とため息をついた
しかし次の瞬間にはもうカッ、と目を見開き指をパチーンと鳴らした
切り替えが早いのが彼女のいいところでも悪いところでもある

「メイ!」

ぴょい~ん!と音がして空間からツーテールの女の子が現れる。

「はいっ!」
「北の方に飛びました。ジャンプの軌跡は追えますね?」
「もちのロンですっ!」
「もし、行き先が”北エリア”なら私達の管轄外です。手出しはせずに監視して状況報告に留めて下さい」
「お安いご用でいっ!ではでは行きますよ~、ぴょんぴょんぴょ~ん!!!」

勢いよくジャンプしてメイが彼方へと飛び去った

パチーン、とまたマノが指を鳴らす
ピロロロロロ、と通信端末が鳴る音

「あ、もう制圧しましたよぉ。重力エンジンもリナプーが潜入して無力化しましたぁ」
「御苦労です」

ピッと通信端末を切った後、マノはニヤリと微笑む

「面白いですね。そっちに行きましたよ、貴方はどうします?氷の魔女」

ピロロロロロ、とまたマノの通信端末が鳴る

「例の街、発見しました。ただなんか変な力で護られてて入れないんですよね~」
「わかりました。こちらが落ち着いたら増援を送ります」

キーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!

どさっ!

嘘ぉ!顔から落ちた。
でもそんなに痛く・・・冷たっ!
この感触、この冷たさ、これは・・・雪!?
どがっ!

ぐえっ!誰かが上に落ちてきた

「あ、ごめ~ん!うへへへへ」

うへへじゃないよ!アンタジャンプのプロじゃないのか?

どさどさどさっ
他の面子も次々に落ちてきた

「おいマサキ!テメェ!」
「ごめんごめ~ん、でもほんぶの中に悪い奴らも入ってきてたしぃ、くどぅーも逃げた方がいいかなって」
「何だとぉ!?それを早く言えよオイ!」
「いたいいた~い!命の恩人に向かって何すんのぉ?まぁちゃん怒るよ?」

掴み合いの喧嘩が始まった・・・この寒いのに子供は元気だねぇ

「う・・・ううん、何か寒かよ、えり、死んだっちゃか?」

残念ながら死んでいません。しっかし寒い。
私達は何処かの雪山に飛ばされたようだ。ってかここ何処よ!?
サヤシは・・・この状況でも寝とる。すごいわ

ウォオオオオオオオオオオーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!

声が聞こえた。獣の遠吠え。距離は割と近い

「あの声はっ!」

KYが顔色を変えてガバッと起き上がる

「あの声は獣人っちゃよ!」

ウォオオオオオオオオオオーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!
ウォオオオオオオオオオオーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!
ウォオオオオオオオオオオーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!
ウォオオオオオオオオオオーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!

さっきの声に呼応するようにあちこちから遠吠えが聞こえてきた
すごい数、数え切れないほどの遠吠え、唸り声その他もろもろ

私達・・・囲まれてる!?何処か他のところに飛ばないと!

「マサキちゃん!」

私の声と同時に重なる声があった

「マインドブラストパァーンチ!」

バチーン!マサキちゃんの顔面に炸裂するお頭のパンチ
大の字になって気絶するマサキちゃん

ちょ、何してくれちゃってんのよ!
また絶対絶命!・・・どうなっちゃうの、ウチら!