『Invisible Blade 第拾話 「見えない明日、そして・・・」』


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「・・・シ!サヤシ!起きて!」

う・・・うん・・・かのんちゃん?、私今寝たばっかりなんだけど

「大変なの!早く起きてよ~!」

何だか騒がしい、海賊達がガヤガヤと騒ぐ声が聞こえる
 ・・・う~ん、めんどくさい。お頭の件・・・?

「ああっ!もう!さっきの件だったら説明しといてよ!」

私は毛布を被った。
寝足りない。
二度寝する。
絶対に起きない。絶対に。

「違うのサヤシ!敵よ!」

あ~、しつこい!
敵・・・敵って誰さ?
正規軍?
そんなのナントカ砲で吹っ飛ばしてよ、もう

「いいから早く起きぃ!」

ちょ、いきなり何すんの!?KYが無理矢理私の毛布を引っ剥がした
 ・・・私の中でプチっと何かが切れる音がした

「ふざけんなテメェ!叩っ斬るぞ!」

ガッと枕元の御神刀を掴み身体を起こす。
何人たりとも私の眠りを妨げるものは許さないっ!

「あ、起きた」

ぐいっとかのんちゃんが私の二の腕を掴む

「はよぅ来ぃ!」

ちょ!KYがもう片方の二の腕を掴む

私は両側から吊るされ、ズルズルと廊下を引き摺られていく
嫌じゃ~!絶対に嫌なんじゃ~!離してくれ~!

そんな叫びも空しく、到着したのは中央の指令室
ガヤガヤガヤガヤ。海賊達の騒ぎたてる声
ああっ!騒がしいっ!寝れないじゃないかぁ!

「第三防衛ライン、突破されたぞ!」
「自動砲台33から57、大破!」
「お頭は!?」
「それが、何処にも・・・」

モニターには侵攻する木偶どもの姿
時計を見る・・・5:13分
ああっ!こんな朝早くからコイツらぁ!
めんどくさやし・・・

「ナントカ砲って奴は使わないの?」

思わず小声でかのんちゃんに問いかける

「重力砲?なんか威力が強過ぎて地上で使うと色々マズいんだってさ」

そうなんか・・・つくづく面倒じゃのぅ

「お前ら!何してんだ!」

背後から聞き覚えのある声・・・お頭の姿がそこにはあった。
あちこちに絆創膏、頭には包帯。その姿に海賊達は騒然となる。

「お、お頭ぁ!どこに行ってたんっスか!」
「その怪我は一体・・・」

ツカツカと早足でお頭は私達の前に出てお頭はそんな海賊達の動揺を一喝した

「バカヤロウ!そんなことはどうでもいい!このままじゃ地上を制圧されちまうだろうが!」

確かにその通り、モニターに映っている木偶どもの中にはいつもとは違う木偶も混ざっている。
赤いレザーの服、大型のハンドブラスターを構え背中のジェットパックで空中を飛行している木偶・・・恐らくは新型だろう。
その空飛ぶ木偶どもの動きに自動砲台は対応できず次々に沈黙させられているようだ。

「全員地上に上がるぞ!俺達の手でこの本部を守るんだ!」

ざわざわざわざわ・・・暫し相談する海賊達、しかしすぐに結論は出たようだ

おぉーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!

お頭の檄に応えるような海賊達の雄叫び
ああっ!うるさいっ!眠いんだから静かにしてくれ~!
よし、この気合いなら大丈夫だ!私は寝る。寝るからな!

バッ!と両脇を抱える腕を振り払って踵を返し私は部屋に戻ろうとする
そこにまた背後からの声

「客人達!アンタ達も力を貸してくれねぇか?」

えぇっ!ちょっとやめてよ!

ガッ!私は再び両脇から腕を掴まれる・・・離せ!

「いいわ!一宿一飯の恩、今こそ返しましょう!」

かのんちゃんが威勢よく応えた。まぁそうだよね、一飯どころじゃなく沢山食べてたけど。

「報酬は幾らくれると?」

KY!いきなり金の話かい!そこは空気読んで「任せんしゃい!」とか言わんかい!
うっ、目が¥マークになってる・・・コイツ・・・しかし心配するまでもなく、お頭が淀みなく答えた

「報酬は300万ダークネス。働き次第では+200万」
「・・・悪くないっちゃね。乗った!でも何か得物が欲しかよ」
「銃なら倉庫にいくらでもある。好きなだけ持ってけ」

よし!二人が居ればますます大丈夫だ!私は寝る!
またバッ!と両脇を抱える腕を振り払って私は部屋に戻ろうとする
ガッ!とまたまた両脇から腕を掴まれる・・・ああっ!いい加減に!

「見なよ、サヤシ」
「ここまでされてもやらんとか、アンタは」

そーっ、と私は後ろを振り返る・・・ちょ!やめてよ!
そこには土下座するお頭の姿があった

「頼むサヤシ!俺に、俺達にその力を貸してくれ!」

シーン・・・何とも言えない空気
海賊達の視線が痛い・・・
うっううん、コホン!私は大きく咳払いをしてこう言い放った

「この剣は闇を祓う剣。断る理由はない!」・・・ひゃっほい!決まった!・・・でも眠くて死にそうだ・・・

「だがっ!」

私は大声で続ける

「これはこの島を、お前達の自由を守るための戦いだ!私達は力を貸すだけだ、それをゆめゆめ忘れるな!」

よし、予防線!これで仮眠の時間ぐらいは・・・ドスっ!
うごぉっ、私は両脇腹に予想だにしなかった衝撃を受ける

「ちょっとぉ!せっかくカッコ良く決まったのになに上から目線でエラそうなこと言ってんのよ!」
「アンタのそういうとこ・・・えりは嫌いっちゃよ」

かのんちゃんとKYの両サイドからの容赦ない肘打ち・・・痛いよ・・・
脇腹の痛みに堪える私に今度はお頭が歩み寄ってきた

「昨日は済まない・・・」

珍しく神妙な顔でお頭がボソッと囁く
こういうウェットな感じはちょっと苦手だなぁ。。。うん

「気にするな。正直、お前が奴の攻撃を封じてくれなければ勝てなかった。アレは私とお前、2人の勝利だ」

そう言って私はポン、とお頭のアタマを叩いた

「でも俺があんなことしなければ・・・」

お頭はまだもじもじしている。ふぅ、しょうがないなぁ

「確かに昨日は自由とは自分の力で切り拓くものとは言った。だが一人の力には残念ながら限りがある」
「えっ?」
「仲間と共に切り拓く自由があってもいいんじゃないか?現にお前にはこんなに沢山の仲間達が居るじゃあないか」

うおっ!
ばしーん!と突然背中に衝撃を感じる

「サヤシぃ!アンタたまにはいいこと言うじゃない!感動した!」

げほげほっ、背中を思いっ切り叩くかのんちゃんの平手の威力・・・結構クルわこれ
戦う前にどんどんボロボロになっていく・・・

「仲間・・・か」

えへへ、とお頭が少しはにかみながら笑った
笑顔は初めて見たけど笑うと歳相応なんだね、この子

「色々有難うな、サヤシ!」

そう言ってお頭は少し鼻をこすって海賊達のところに戻って行った
頑張れ、小さなお頭。

よし!立ち直ったぞ。これでもう大丈夫だ!私は寝・・・

「寝るな!」
「いい加減に覚悟ば決めた方がよかとよ!」

もう読まれていた。両脇からガッと力強く腕を掴まれる。
いつの間にかKYも倉庫から武装フル装備で戻ってきている。
ライフルに小銃にパンツァーファーストに・・・弁慶か、お前は

私はそのままの体勢でズルズルと地上へと続く高速エレベーターまで引き摺られていった
うぅ、勘弁してくれ・・・眠いんだよぅ・・・

チーン!無情に響く到着の音
せめて地上に着く間寝かせてくれ、頼む・・・


脆い。脆過ぎる。
予想外に抵抗が少ない。何だ?何かの罠か?

侵攻するAシリーズの遥か後方、ミヤモトカリンは上空から侵攻の様子を見つめていた。
親衛隊から借りた新型、”A-Blaster”5体が想像以上の戦果を挙げていることは事実だが
それにしても脆過ぎる。

ここまで抵抗が無いと最悪、島ごと自爆の可能性も想定した方がいいかも知れない。
どちらにせよ敵の動きが読めない以上、まだ自分が前に出て一気にカタを付ける局面ではない。
もう通常型のAシリーズは自動砲の銃弾を浴びながらも敵本部棟のすぐ目の前まで近付いている
このまま呆気なく終わるか・・・

おおおおおーっ!

ん?声?銃声に混じって確かに人の声が聞こえた
カリンは双眼鏡の倍率を高くし、本部棟に焦点を合わせる

無人だった本部棟の中やバルコニーにちらちらと人の影が見える・・・反逆者達だ
各々、砲台に付いて対戦車砲、ガトリング砲を地上を侵攻するAシリーズに向けて放ち始めた

今頃上がってきたのか。随分と遅い抵抗だな・・・
単純に指揮官が無能なだけだったか
いや・・・待て、まさか!

カリンは腕のマイクに向けて指示を発する

「A-Blaster1-5、散開し本部棟から離れろ!退避だ!」

その指示で本部棟周辺の無人砲台を攻撃していたA-Blasterが飛翔し、散開する
次の瞬間、ヴォン!という音が響き、本部棟周辺の空間が歪み始めた
重力キャプチャー!しまった!


「よし、上手くいった!最大出力、このまま押し潰せ!」

私達がこの島に来たとき発動した”重力キャプチャー”がクローン兵達を捉えた
強力な重力場で侵攻してきた大半のクローン兵達が次々にペシャンコに押し潰されていく
なんて恐ろしい兵器なの!でもこれで勝利確定なんだろうね

と思った矢先、もの凄い爆風が私達を襲った!

「うわあああーっ!!!」

ドガーン!
うぉおおおおっ!私の隣、二つ向こうの砲台が丸々吹っ飛んだ
ドガーン!ドガーン!
上の方からも・・・下の方からも・・・

爆発音と海賊達の悲鳴、絶叫が聞こえてくる
ブラスターの攻撃・・・遠くの方に空飛ぶクローン兵が見える、アイツらはキャプチャーに掛かってない!
このままじゃマズい!

ピュニニニニニニニ・・・なんか嫌ぁ~な音が私の前から聞こえてきた
恐る恐る、私は正面を見る

空飛ぶクローン兵が真正面でエネルギーチャージ満タンのブラスターを構えてる!!!

やばーーーーーーーーーーーーい!!!

一目散に逃げ出そうとした私の耳に、聞き覚えのある銃声が鳴り響く

ズキューン!・・・
この音は!

次の瞬間、私に向けてブラスターを構えていたクローン兵の頭がバコッ!とスイカのように粉々に吹き飛んだ
クローン兵は失速し、明後日の方向にブラスターを撃ちながら回転して地上へと落下していく

銃声の方向、背後、上の方・・・中央の尖塔、本部棟の頂上を見る
そこには昇り始めた眩しい朝日をバックに颯爽と超長銃身の対獣人用ライフル、AKB-48を構えるシルエットがあった

「危なかよ、アンタらは下がっときぃ!」

KY!?助かった!!!
これはいいKYだよ、うん。やれば出来るじゃん!
さすがは変態ハンター!

「さぁ、どんどんいくっちゃよ!MVPで500万ダークネスゲットやね!」

ズキューン!ズキューン!ズキューン!ズキューン!

KYの遠距離狙撃で次々に空飛ぶクローン兵達が撃ち落とされていく
すごい、これが鷹の目の力なの・・・

ん?紅い光・・・その時、不思議な紅い光の輪が私達の正面、空に浮かび上がった
何あれ?

「あれは、カリン!」

お頭の声を私の聴力が拾った。何?知り合い?
まぁ元正規軍だから有り得なくもないんだろうね

 ・・・ってことはアレ、敵だよね

これはまたヤバい予感がするわ

「何ねアイツ!」

KYも紅い輪に気付いた
輪の中央には黒い正規軍の制服、白いベレー帽を被った女の子のシルエット
あの子、宙に浮いてる・・・どう見ても能力者じゃん!

「やられる前にやるしかなかとね!」

確かにそれが正しい!先手必勝!
KYが輪の中央の能力者に向かってライフルを構え・・・放つ!

ズキューン!コーン!

 ・・・輪は消えない
えっ?まさか外したの?

「ちょっとー!百発百中じゃなかったのー!?」
「いや、確かに当たったとよー!」

再びKYがライフルを構える

ズキューン!コーン!
ズキューン!コーン!
ズキューン!コーン!

何かが跳ね返るような音がしている
 ・・・輪は消えない。能力者は健在だ

「無駄だー!そいつはシールドビットで防御してる!」

奥の方で指揮を取っていたお頭が慌てて飛び出してきた
えっ、シールド?何?効いてないってこと?

紅い光の輪が高速回転を始めた・・・なんかヤバい感じ
輪はどんどん加速して、紅色はだんだん濃くなって赤へと変わっていく

ボッ!

うわっ!輪が火・・・いや炎の輪になった!
何、この妙な匂い!おえっ

「総員退避だーーー!!!お前ら下がれ―!!!」

お頭が大声で叫ぶ。やっぱりヤバいんだろうねコレは

炎の輪は更に高速で回転して・・・
そして無数の輪に分裂して・・・
曲線的な軌道を描いて・・・

一斉にこっちに飛んで来るっ!

ドガーン!

爆発!?ただの火の輪じゃなくて爆発するの?
炎の輪の着弾と共にあちこちで起こる爆発、海賊達が派手に吹っ飛ばされてる姿が見える
何これもう戦争じゃん!うわああああああ、こっち来んなぁーーー!

私は踵を返して一目散にエレベーターへと駆け出した
だってこんなところで死ぬわけにはいかないもの!
ドガーン!斜め上の方からから爆発音

「うわっちゃあああああああああああああっ!!!」

中央の尖塔にも炎の輪が着弾、爆発するのが見えた
今のはKYの声?・・・死ぬな!イキロ!

ボボボボボボボボ!

何、嫌な音・・・嫌だまさか・・・そんな、やめてよ
私は走りながら後ろを振り返る

キター!炎の輪がまるで私を追尾するようにこっちに飛んできてる!!!

ガッ!うわああああっ!爪先に鋭い痛み
何かに躓いた!?
どってーん!と私は派手にコケてしまった
最悪・・・

炎の輪は・・・もう目前まで来てる!ヤバい!神様!
私は目を瞑って祈る・・・奇跡を!

「でぇやあぁああああああああああああああ!!!」

この声!
私は瞑っていた目を開ける

見えたのは、鞘を背負った見慣れた背中
そして真っ二つになって左右に分かれて
スローモーションみたいに明後日の方向に飛んでいく炎の輪

背中が振り返る

「大丈夫?かのんちゃん」

背中の主・・・サヤシが振り返って二コリ、と笑った瞬間
左右に飛んで行った炎の輪が爆発し、その紅い光が私達を照らした

げほげほげほ・・・すんごい煙
そして何ともいえないオナラみたいな嫌ぁ~な匂い
本部棟のあちこちが炎に包まれている
あの能力者、なんて恐ろしい奴なの!

私達海賊軍は”炎の輪”の攻撃で想像以上の大ダメージを受けていた

この場で倒れていないのは私、サヤシ、そして・・・
真正面から敵の能力者と対峙してるお頭だけ

「カリーン!相変わらず卵の腐ったみてぇな匂いだなぁ!」

お頭が能力者に向かって叫ぶ
そう、何なのこの匂い?

「硫黄・・・だね」

まるで私の思考を読んだかのようにサヤシが呟いた
硫黄・・・そうか!だから爆発するんだ

「あいつは自分の気を燃焼させて炎を造り出してる。混ざってる硫黄みたいな成分はアイツが生来持ってる独特の気かな」

気・・・アイツもエナジーを操れるってことなの?
でもお頭と比べてかなり戦闘的な使い方だよね
これはちょっと分が悪いんじゃ

「久し振りですねK1027。EGGの昇格試験以来ですか?」

空中の能力者、カリンが口を開いた
別にお頭の挑発に怒っている様子もなく、極めて冷静で穏やかな口調
今さっき、地獄のような攻撃をしてきた相手とは思えないぐらい

「その名前で呼ぶんじゃねぇよ!俺は工藤遥だ!」
「ふふっ、折角の栄誉を捨てて人間ごっこですか?」

あのカリンっていう子、穏やかとかじゃなくて単に慇懃無礼な嫌な奴なんだね
でも人間ごっこって・・・お頭とあの子は一体

「昔の誼です。降伏してこの島を明け渡せば貴方の助命だけは上層部に嘆願しましょう。」
「いらねーよバーカ!どうせモルモットにされて終わりなんだぜ、俺達は」
「モルモットにされるのは力の無い者だけですよ」
「・・・そうだな、じゃあ俺はモルモットにされねぇように必死に抗うことにするぜ」

モルモット?お頭が言ってた洗脳や人体実験のこと!?
それって大昔の話じゃなかったの?

「残念です。同じEGGの同胞として貴方のことは評価していたのですが・・・」
「腐った卵と一緒にすんなよ!俺は・・・俺は人としてこの世に産まれたんだ!」
「フッ、そうですか。随分と短い”人生”でしたね」

バチ、バチバチバチ・・・お頭の周囲にオレンジ色の火花、マインドブラスト!
一方、カリンを囲む紅い輪も再び高速回転を始める

「無駄ですよ、貴方のマインドブラストでは増幅された私のエナジーシールドを破れない」
「そいつはどうかな・・・」

ガチャッとお頭が懐から古めかしいリボルバー銃を取り出す
バチ、バチバチバチ・・・オレンジ色のエナジーがリバルバーに集まっていく

サヤシが剣を構えて走り出した。ここからはかなり距離がある。間に合うの?

ゆっくりとお頭がリボルバーを構える。カリンの”輪”はヒートアップして発火を始めた。
ど、どうなっちゃうの!私は緊張に手に汗握ることしかできない

パン!パン!
先に仕掛けたのはお頭の方だった。
エナジーを纏ったリボルバーの銃弾がカリンを襲う

バリ、バリバリバリ!着弾とともにカリンの周囲にオレンジ色の火花が走る
弾は・・・届いていない。走る火花でカリンの周囲に張り巡らされているシールドの姿が露わになっただけだ

「無駄だと言ったでしょう?」
「ノーダメージじゃないはずだぜ」

パン!パン!パン!パン!
お頭が次々と銃弾を発射する。効いてないように見えるけど、何故?
着弾するたびに、オレンジ色の火花は勢いを増していく・・・火花が消えない?
弾けるのではなく、オレンジ色のエナジーはずっとカリンの周囲のシールドの表面を走っている

「エナジーの過負荷でビットをショートさせる気ですか?残念ながらそんなヤワな出来では・・・」
「違ぇよ」

お頭はニヤリとしながら指差した。剣を伸ばし、カリンの間近まで迫ったサヤシを
えっ、まさかお頭は注意を惹いただけ?

「チッ!InvisibleBlade!」
「でぃやああああああああ!」

伸ばした真紅の剣がカリンのシールドに叩きつけられる
カイーン!と固い音・・・シールドは、割れない!

「ハッハ!無駄です!私のエナジーを数十倍に増幅したこのシールドを破ることは出来ない!」
「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

グイン!確かにシールドは破れていない。でもサヤシの気合いの剣圧でどんどんカリンの高度が下がっている

「貴方がInvisibleBladeですか?噂ほど大したことはないですね。そろそろお遊びは終わりにしましょう!」

カリンが炎の輪を腕に構え、スイングする・・・ヤバい!このままじゃ!

ズキューン!

聞き覚えのある銃声
そしてカリンのシールドの一部でポム!と小さな爆発が起こる
フッ、と一瞬カリンのシールドが薄くなる

「何っ!」
「その浮いとるち~っこい玉っころで能力を増幅しとぅとか?残念やけどえりの狙撃は針の穴も通す精度っちゃよ」

KY!生きていたの!?
棟の中段のバルコニー、服はちょっと焦げて顔は煤汚れてるけどライフルを構えてピンピンしてるKYの姿があった

「ビットの一つや二つ!痛くもかゆくも・・・」

ズキューン!ズキューン!ズキューン!ズキューン!
ポム!ポム!ポム!ポム!

次々と撃ち落とされていく”玉”・・・いや、私の目じゃ全然見えないぐらい小さいんだけどね

「き、貴様っ!!!」

苛立ったカリンが炎の輪をKYに向けて放った。危ないっ!

「うおっとぉ!とわっ!」

ハンドスプリング!飛んできた炎の輪をくぐって飛び降りるKY・・・アンタ、とんでもない奴だわ
大爆発に包まれる中庭をバックに華麗に宙を舞う狙撃主・・・アクション映画かい!


パン!パン!パン!
今度はお頭のエナジーリボルバーが火を噴いた
バチン!バチバチバチッ!シールドに今まで以上の火花が走る

「ビットは残り2ヶぐらいか?もうすぐショートするぜぇ?」
「貴様ら・・・貴様らぁ!」

再び、形成される炎の輪。カリンの怒りを現すかのように今までより大きい

「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

バリバリバリバリ!えっ!サヤシの剣にお頭のオレンジ色のエナジーが集まっていく・・・

ウォン!
何この音?・・・何か深い、心地よい響き
二つの音が重なって・・・響き合うような

ズキューン!

「残り1つっちゃよ」

ウォン!三つ目の音!
この音も混ざって響きが増していく
この響きに・・・私も参加したい!

「行っけぇええええええええええええええええええええ!!!」

精一杯、大きな声で叫んだ。今の私に出来るのはこれぐらい。
四つ目の音・・・響いた!

バチーン!カリンの背後に飛んでいた最後の”玉”がエナジーを増幅し切れずに弾ける

「ふざけるなぁ!」

ガッ!シールドを破られたカリンが炎の輪でサヤシの剣を受け止める

「カリン、降参しろ。おめぇの負けだ」
「いい加減にしないとコイツでドタマ吹っ飛ばすっちゃよ」

そう、貴方の負けよ。たった一人でよく頑張ったとは思うけど

「まだだ・・・任務は・・・任務は必ず達成する!」

ボオオオオッ!カリンの火輪が炎の勢いをより一層増した
 ・・・まさか!?

「みんな離れてー!そいつ自爆する気よ!」

私にはわかる、声の響きで。
今のはやけっぱちになった人間の声!
ヤバいっ!このままじゃサヤシ達は!

その時だった、カリンの背後の空がガシャーン!とガラスのように割れた

「あれは転移・・・まさかっ!」

お頭がそう叫んだときにはもうカリンの身体は割れた空の向こうの空間に飲み込まれていた
ブンっ!サヤシの剣は勢いよく空振りになり、床を思いっ切り両断する。

「ふぅう・・・」

私はその場にへなへなとへたり込む・・・勝った・・・の?


どさっ!
ミヤモトカリンは空の割れ目から転移され絨毯の上に落ちた

「ここは・・・」

そこは見覚えのある部屋
響くピアノの音、この曲・・・『Glory days』!

「カリン、何故”箱”の件をすぐ私に報告しなかったの?」

声の主、ピアノの奏者。
手の震えが止まらない・・・

「独断専行、貴方の悪いところです。しかも無様に負けそうになって」
「お、お赦し下さいっ!事は急を要すると判断したんですっ!」

ジャーン!
グインっ!ドスっ!
ピアノの不協和音と共にカリンの身体が宙に浮き、壁に叩きつけられそのまま磔の形になる

「言い訳は許しませんよ。貴方はEGGの面汚・・・カリーナノッテ艦長は罷免。6か月の謹慎を命じる!」
「あ、あぅう・・・」

項垂れることしか出来ないカリン。栄光への道が・・・今、閉ざされた。

「さて、”箱”の在りかが明らかになりました。貴方達の出番ですよ」

ダークネス政府東部方面統括官、その傍らに控える6人の精鋭。

夕陽のような黄昏色に輝く巨大戦艦、東部方面軍旗艦”Glory days”が”監獄”にその進路を向けて動き始めた。

「ありがとよ客人達・・・何とか勝てたな」

お頭がウチらに向かって頭を下げる。まぁウチは殆ど何もしてないんだけどね。まぁとりあえずは良かった、うん

「・・・奴は逃げたのか?」

サヤシはいまいち釈然としない様子だ

「あぁ、ゲートが開いた。アレを使える奴は限られてる・・・次は本隊が来る可能性大だな」

本隊!こんなボロボロの状態でそんなの来たら終わりじゃない!どうなっちゃうのよ!

「報酬!報酬ぅ!」

KY・・・この空気でそれかい!つくづくKYだのぅ

「あぁ、わかったわかった。アンタすげぇな・・・少し見直したぜ」

確かに今回はKYが居なければ勝てなかったかも・・・ウチも見直したわ

「当ったり前っちゃん!えりはハカタシティ最強のハン・・・」

ドシュッ!

えっ・・・?何?一瞬、何が起きたのか分からなかった

隣でサヤシが剣を抜く。ごふっ、口から血を吐くKY。
KYの胸を貫いた黒い手。背後に立つ影・・・クローン兵の生き残り!

「KYっ!!!」

私が叫ぶと同時に、サヤシがクローン兵の首を飛ばし・・・KYがゆっくりと崩れ落ちた