『InvisibleBlade 第九話「見えない壁、見えた刃」』


※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。



「何をしている?」

その声に遥は振り返る。そこには鋭い眼差しをした剣士の姿。
サヤシ・・・いつの間に

「テメェには関係ねぇよ。なんでこんなとこに来た?」
「この島を覆ってる瘴気の源を探しててね」
「へぇ、それでここに来たってわけか」

二人の間に暫しの沈黙が流れた
先に口を開いたのは遥の方

「・・・奴らに勝つにはこの力が必要なんだ」
「愚かだな、その力はお前には使いこなせない。もうよせ!」
「こなせるとかそういう問題じゃねぇんだよ!自由の為には力が必要なんだっ!」

コアのエナジーを吸収した遥の身体は闇の中で蛍のようにぼんやりと光を放っている
エナジーが身体が漏れて出している・・・過剰なエナジーを吸収したことは明らかだ

「自由とは!」

突然サヤシが大声で叫ぶ
その勢いに遥は少しビクっ!と身体を震わせた

「自由とは自分の力で切り拓くもの!自分以外の大きな力を頼る者は必ずその力に呑まれる!」

また暫しの静寂
クックックッ・・・
その静寂を破ったのは遥の口から漏れた笑い声だった

「ご大層なこと言ってくれんじゃねぇか、だが俺は・・・俺は・・・」

遥の身体から漏れていた光が徐々に輝きを増していく

「アタシはこの力で自由を手に入れるんだよーーーーーーーーーーーーー!」

ドーン!爆発的なエナジーの放散、衝撃波が動力室全体に広がる

「クッ!」

その衝撃で里保の身体も軽く吹き飛ばされ後方の柵に背中をしたたか打ちつけられた
そして金色に輝く遥の身体はふわり、と空中に浮かび上がる

「フッフッフッフッ・・・アーッハッハッハッハッハッ!」

アタシ・・・と言った。笑い方も遥のものではない。
まさかっ!

「お前か!瘴気の正体はっ!」

背中の痛みを堪え、身体を起こしながら里保が叫ぶ
その叫びを無視して遥?は言葉を続けた

「やっと身体が手に入ったぁ!ちょっと脆いけどとりあえず表に出れたよぉ!」

違う、完全に遥ではない。その瞳は金色に輝き、邪悪な笑みを浮かべている

「お前は・・・お前は何者だっ!」

遥・・・に憑依した存在、強大なエナジーがチラリとサヤシの方を見る
そして手を開いて里保に向けた
反射的に里保は横っ跳びに身を躍らせる
ベコンっ!と先程まで里保のいた場所のスチールの床が嫌な音を立ててグシャグシャに歪んだ

「口の利き方に気を付けなよ。久し振りの娑婆でご機嫌なんだからさ」

この力、尋常じゃない・・・今まで戦った木偶達とは違うあまりに強大な邪念
床を転げながら里保は背中の御神刀に手を掛ける
このままではお頭はあの邪念に呑まれてしまう。その終着駅は間違いなく”破滅”だろう。
出来るのか・・・私に・・・でもっ!

「その邪念!私が断ち斬る!」

目を瞑り、集中する
亡き祖父の顔が、声が、言葉が瞼の裏に浮かぶ

「御神刀は心の剣。おんしの心の映し鏡じゃ。」
「心?」
「そう、御神刀は心の刃。おんしが願った姿にいかようにも変わるんじゃ」
「でも里保の剣は見えないよ?」
「それはおんしの心が澄んでおるからじゃ。おんしが何か強い想い、強い願いを持てば必ず剣はその姿を見せる」

初めて使う力・・・でもこの日の為にずっと修行してきた
御神刀の存在理由、本当の力、今こそっ!

「はぁああああああああああああああああああああああああ!」

ゆっくりと里保は御神刀を引き抜く
鞘の中からはいつもの見えない刀ではない、光り輝く刀身がその姿を現した
その光は金色のエナジーにも負けない紅い光
真紅の剣・・・邪悪を断ち、お頭を救いたいと思う熱い気持ち、これが今の私の心の刃!

「フン、そんなオモチャでアタシとやろうっていうのかい?いい度胸だね」

再び憑依された遥が里保に向けて手をかざす
同時に、床を蹴って低い姿勢で里保は遥に向かって突進する

ベコベコベコッ!今度は先程まで里保が居た地点の床がめくれ上がり
粉々になった破片が宙に浮く

「ちょこまか逃げても無駄だよ!」

遥が人指し指をクイっと自分に向けて曲げると
浮いた床の破片が一斉に背後から里保に向かって襲い掛かった

あの破片は何か特殊な力で操られている・・・斬っても恐らくは無駄
斬った破片がまた襲い掛かってくるだけだろう、ならば!

全力で疾走しながら、里保は刀を伸ばす
一撃で、決める!

「でぃやああああああああああ!」

縦の一閃、宙に浮いている遥に向かって里保は伸ばした刀を振り下ろす
ガツッ!手応え・・・しかしこれは

「・・・ふふっ、そんなナマクラでアタシのグラビティウォールは破れないよ」

見えない壁、遥の前に形成された見えない壁に刀は阻まれていた
グラビティ・・・重力?

カランカラーンカラーンという音が背後から聞こえた
床の破片が落ちた音?・・・と、いうことは


「チッ、この身体じゃあんまり無理は効かないようだね」

遥に憑依した存在が憎々しげな表情を浮かべる
そう、遥の身体ではあの邪悪なエナジーの力の全てを行使することは多分できない
恐らく今は防御だけで手一杯なのだろう
ならば勝機は充分にあるっ!里保は刀を持つ両手に一層力を込める

「その目、気に入らないね・・・何がそんなに不満なんだい」
「お頭の身体から離れろ!」
「お前こそ邪魔すんな、この子も自由、私も自由、これはWINWINの関係だよ!」
「違うっ!お前はその自由で何をする気だ!」

里保がそう言った瞬間、グインっ!と身体全体に力が掛かった
身体が・・・重い。この島に来るとき落ちる戦闘機の中で感じた力と同じ
御神刀を持つ両手もどんどん鉛のように重くなっていく・・・マズい

「決まってるじゃないか。アタシをここに閉じ込めた奴ら、人類を皆殺しにするんだよ!」

遥に憑依した女が感情を爆発させた
同時にピシッ、ピシピシッと嫌な音が響く
遥の周囲、宙に浮かぶ赤い小さい粒・・・アレは・・・血!?
遥の顔、身体、ところどころが小さく裂け金色のエナジーと共に血を噴き出している
防御と攻撃、明らかに遥の身体の限界を越えた力を女は同時に行使し始めた
急がねばっ!しかし・・・
グンッ!ますます身体に掛かる力は重くなっていく
周囲の床がへこみ始めた・・・このままではっ!

「目を醒ませお頭っ!お前は自由を、自由を得るんじゃなかったのかっ!」

お頭の意識、遥自身の意識が少しでも戻ればそこに隙が生まれるはず
里保は顎を動かすのもやっとの状況で必死に遥に語りかける
頼む、邪悪な力に負けないでくれ、目を醒ましてくれ!

「この子は自由さ!私と共に永遠の自由を得る・・・自由・・・を・・・」

バチ、バチバチバチッ
遥の周囲にオレンジ色の火花が散り始める
黄金のエナジーと違う色、オレンジ色のエナジー

「や、やめろ・・・なぜ逆らう?力を望んだのはお前だ・・・うっ、くうっ・・・」

遥が頭を抱えている
フッと里保の全身に掛かっていた力、重力が消え失せた
応えてくれたのか、私の声に

「サ・・・ヤシ・・・今だ・・・」

お頭、遥自身の声

「俺を・・・斬・・・れ・・・」

 ・・・今、自由にしてやる

重力の壁は今だ健在
この重力の壁、これも邪悪なエナジーが造り出したもの・・・いわば心の壁、邪念の塊

里保は目を瞑り、再び集中する
邪念を断つ、強い心
 ・・・人類を皆殺し?絶対にそんなことはさせない!

「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

ピシッピシピシッ、重力の壁が軋みを上げ始めた

「・・・バカな・・・グラビティウォールが・・・」

遥に取り憑いた女が再び表に出てきて苦悶の表情を浮かべる

「・・やめ・・・ろ・・・この子の身体がどうなってもいいのか?」

いいはずがない、だから”お前”を斬るんだ!
ガ、シャーンとガラスの割れるような音が響く。
それは重力の壁が粉々に砕けた音

もう阻むものはない!
私は一気に、御神刀を振り下ろす
ざ、シュッと確かな手応え、真紅の光の刃がお頭の身体を縦に一閃する

「サヤシ!ちょ!何してんの!」
「うおっ!・・・お頭を斬っとぅ!」

同時に耳に響く声
かのんちゃん、KY・・・遅いよ、来るならもっと早く来て

「ぎゃああああああああああああああああああああっ!」

絶叫と共に、金色の邪悪なエナジーがあちこちに弾け飛んだ

「何何何?!何これはー!?」
「うぉおおっ!ド派手やねー!」

驚いてる場合じゃない!

「KY!」

私は上を指差す、間に合ってくれ!

「うぉおおおおおっとぉ!?」

私の意図はKYに通じたようだ・・・良かった、空気読んでくれて
猛ダッシュで階段を駆け降りるKY
全身から力が抜けていく・・・へなへなと私はその場に崩れ落ちる

「うぉおおおおおおおおおおおっ!」

どさっ
ズサー
間に合った
顔面から滑り込んだKYが見事に空中から落下するお頭の身体をキャッチした!

「痛かー!」
「ちょ、ナイスキャッチw」

かのんちゃんが笑っている。いや、もっとこう、緊迫感を、ね?

「やっぱり斬れてなかね?一体どうゆうことっちゃ」

KYが怪訝な顔をする。まぁ当然だろう。どう見ても伸びた刀がお頭を斬ったようにしか見えなかったろうから

ただKYは”鷹の目”でお頭の身体が真っ二つになっていないのを捉えられるはず
だから私は指差しでKYに指示したし、KYも素直にダッシュしてくれたんだ

「ちょっとぉ、真夜中に喧嘩しないでくれる?すんごい音が地上まで響いてきたんだけど?」

かのんちゃん・・・いや、あの別に喧嘩してたわけじゃないんですけど・・・

「ねぇ?何で斬れてなかと?何で何で?」

ああ、うるさい。うるさいよKY、でも・・・有難う

ああっ、質問は一度に一つずつにして下さい!
そんなことよりお頭の心配をしましょう!

「そうだ!お頭!」
「大丈夫、息はあるとよ。少し怪我はしとぅけどな」

確かにエナジーが漏れたときの小さな傷があるけど息もあるし怪我は軽そうだ。
海賊達に見つからないように部屋に運んで安静にしておかなくては・・・

「刀、見えよったね?何で何で?」
「その前に何でお頭と喧嘩なんてしてくれちゃってるわけ?追い出されたらどうすんのよ?」

いや、また質問ですか・・・まぁ状況が分からない以上納得もいかないのはわかります。ハイ。
私はこうなった経緯と御神刀のこと、この島の邪悪な瘴気の正体について説明した

「心の刃?なんだかカッコよかねー、えりにも使えよぅ?」

使えません。この剣を使えるのは鞘師、柄師、鍔師、剣師の限られた一族だけです。

「つまりお頭はそのバッドエナジーの力でバッドトリップしちゃったのね?ハハン」

かのんちゃん、何そのキャラ?外人?

「心の刃で物理的にじゃなく邪悪な念だけを断ち斬ったとね。何だか剣の達人みたいやね」

いや、一応達人のつもりですが

「で、そのバッドエナジーの源がこのバッドガールなわけね。」

そう、誰だか知らないけど封印されてるこのバッドガール。
エナジーだけであれだけ強かったわけだから生前のコイツはどんだけ強かったんだい
誰だか知らないけど封印してくれてよかった。本当に有難う。

えっ?もう3時?
色々とかのんちゃん達に説明してる間に随分と遅い時間になってしまった

眠い・・・眠過ぎる・・・今日はちょっと無理をし過ぎた
初めて剣が見えたよじっちゃん・・・私の心の色は真紅なんだね

「ちょっと!サヤシ!聞いてる?この状況をどう海賊達に言い訳すんのよ!ねぇ!」

かのんちゃんの声が遠くに聞こえる
ゴメン・・・今日はもう無理・・・おやすみなさい
私の意識は深淵へと落ちていった

 ・・・

夢の中、またあの光景。光と闇の戦い。
今日は色も見える。音も聞こえる。

「そんなことはさせんとね!」

猫の様な身のこなしの女が宙に浮いている女に向かって叫ぶ
宙に浮いている女・・・あれはさっきカプセルに封印されてた!

街はもう壊滅状態。女の強大な力が周囲の瓦礫を舞い上げている
反重力の嵐、なんて強大な力!

戦士達が瓦礫の中から立ち上がる。いつも夢に出てくる戦士達
みんなボロボロ・・・でも目は死んでいない
光・・・蒼い光。戦士達は皆、蒼い光をその身に纏っている

 ・・・もしかして、貴方達が!?