『InvisibleBlade 第八話「見えない悪魔」』


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すごい・・・凄過ぎる
それはあっと言う間の出来事
テーブルに皿が山積みになってゆく

工藤遥と配下の40人の海賊達はその光景に呆気にとられていた
お前ら・・・そんなに腹減ってたのか

「おかわり!ライス大盛りで!」
「トンコツおかわりまだ出来なかと?」
「一味足りないな。もう一杯頂けるか?」

三者三様、それぞれよく食べること
餃子に春巻きワンタン麺麻婆豆腐に烏龍茶だ
たった三人の為に厨房は大忙し。まぁここの料理人がたった一人なのもあるが

「お頭、アイツら結局何者ですかい?」
「あぁ、アイツらは・・・」

アイツらは何だ?工藤遥は部下に答えるのに少し躊躇した。
箱に残留していたエナジーの残滓からリゾナンター:鈴木香音のことは
よくわかった。彼女は反政府組織の一員・・・どちらかと言えば味方だ。
KYな女、ハンター:生田衣梨奈のエナジーも所持品のスニーカーズに残っていたが
正直なところ、何を考えているのかさっぱりわからなかった。
人は好さそうだがある意味危険な女かも知れない。

剣士:サヤシのことは更にわからない。
まぁ香音の話では政府のクローン兵相手に大立ち回りしたとかで敵ではないのだろうが
彼女の所持品、刀からは彼女のエナジーを全く感じとれずその人となりや目的はまるで見えなかった。
むしろ驚いたことに遥は刀自体のエナジー・・・人のエナジーを欲する心・・・を感じた。
あの刀はいわゆる”妖刀”とかそう言われる類のものだろう。
刀自体にエナジーが存在することも驚きだったが更に驚きだったのは”箱”である。
あの箱は・・・

フォーンフォーン
突然食堂に鳴り響く警報の音
チッ、また奴らか・・・お頭は眉間に皺を寄せる

「お頭!」
「放っておけ!どうせ間に合わない」
「フガフガ・・・何これ?まさかお食事タイム終了!?」

幸せそうに飯を食べていた鈴木香音が有り得ないぐらい悲しげな表情を見せる
そんなに飯が食いたいんかい!

「また政府の奴らだ、衝撃に備えとけ」

次の瞬間、ドドーン!ドドーン!と断続的な地響き

「きゃっ!これ爆撃!?」
「そう、政府の高速艦がここんところずっと付き纏っててな」
「反撃しないのか?」

サヤシが網で炭火焼きした焼き牡蠣をつつきながら冷静に呟く
けだし当然の疑問だが・・・

「間に合わねぇんだよクソっ!あの艦は速過ぎる!」

吐き捨てるようにお頭が言い放つ
レーダーで検知したときにはもう遅い
超高速で爆撃してあっという間に射程外に逃げていくのだ。
断続的に繰り返される爆撃によって監獄島の防衛システムはかなりの被害を受けていた。
少しずつ少しずつ、力を削いでこの島を制圧しようという魂胆だろう
幸いにして司令本部と動力システム、そして重力砲は地下深くに格納されているのだが
逆に重力砲が地下格納されていることで反撃が間に合わない。
かといって地上に出しっ放しにしていては間違いなく敵は重力砲から潰しにかかるだろう

「カリン様、重力砲射程圏外に出ました」
「総員、耐Gベルト解除。通常警戒モードに移行」

そろそろ頃合いか・・・
『カリーナノッテ』の超高速移動に耐える為の耐Gベルトを外しながら
ミヤモトカリンは頭を巡らせる。
今回の爆撃で監獄の防衛施設の8割近くに損害を与えた計算になる。
安全に上陸作戦を実施するにはもう充分なダメージだろう。

高速移動するカリーナノッテから兵員を乗せた強襲カプセルを投下
クローン”A”シリーズ20体が強襲カプセルによって島に上陸する
本来ならばこの兵力で監獄の制圧には充分なところであるが・・・

問題は”InvisibleBlade”
西部エリアでクローン兵8体を斬り倒したという報告がある剣士
奴の存在でプランが大きく狂う。
完璧を期すにはプラスアルファの戦力が必要となる・・・

「総員に告ぐ、1時間後に上陸作戦のブリフィーングを開始します」

これはギリギリの賭けかも知れない。だがやる価値はある
この部隊だけで任務完遂、更にInvisibleBladeを倒し”箱”を奪回すれば
確実に組織内での私の評価は上がるだろう。

本部での表彰式、居並ぶ幹部達からの称賛の声
「なかなかやるじゃん」
「貴方はEGGの誇りよ」
「すごいすごーい!」
そして総帥からの表彰・・・

「・・・リン様、カリン様?」
ハッ!副長の声で我に返るカリン。浮かれるにはまだ早い。早過ぎる。

「じゃああのおっさん達は全員元囚人ってことっちゃか?」
「まぁそういうことだ。反乱した流れでそのまま海賊にな」

ふ~ん、どおりでガラが悪い人達だと思ったわ
食事と爆撃が終わって一段落、お頭と私達三人は”艦長室”と呼ばれる部屋で
まったりとくつろぎながら話していた。

「こんな監獄に入れられてたんじゃかなり凶悪な人たちなんでしょ?」
「凶悪っていうよりは正規軍のはみ出し者なんだけどな」

あのおっさん達も元正規軍ってこと!?じゃあこの島って・・・

「そう、ここは政府に逆らった軍人を投獄する為の監獄だったのさ」

私が聞くよりも早くお頭が答える。この子はなんだか勘がいいみたいだ

「まぁもっとも大昔は能力者を捕えて実験や洗脳をする施設みたいだったけどな」

実験!?洗脳!?なんだか恐ろしい!政府は影でそんなことをしていたの!?

「この”力”が無ければそれを知ることも無かったんだけどな・・・」

自分の手を見たお頭の表情が一瞬暗く曇る・・・
そうだ、この子は私がリゾナンターであることやKYがKYであることを話す前に知っていた!

「貴方の能力って・・・」
「俺の能力は”エナジードレイン”そして吸収したエナジーから情報を読み取る力、それから・・・」

私の質問にお頭が答える
ちょ、ちょっと待って!一人でそんなに沢山能力を持ってるの!?それに・・・

「エナジーって何だっちゃ?」

KYが私の聞きたいことを代弁してくれた。珍しく空気読めてるよ、うん

「まぁ人の精神エネルギーみたいなもんだ。東洋風に言うと”気”って感じか」

ふ~ん・・・つまりこの子は人の心的エネルギーを吸ったりしてそこから情報を読み取るのが能力なのか
え!?そうだとするとじゃあ

「私達のエナジーを貴方は吸ったの!?」
「いや、直接の吸収やリーディングは俺の身体や精神にもかなり負荷があってな。所持品に残ってたエナジーの残滓から読ませてもらった」

な~んだ、そうだったんだ
てっきり”エナジー”を吸われたからあんなにお腹が空いていたのかと

「その力を使うのはなるべく控えた方がいい」

ずっと黙っていたサヤシが口を開く
その眼差しはいつにも増して真剣だった
そういえばさっきも何か言ってたっけ?ショウキ?とか何とか

「わかってるさ、そんなことは」

また舌打ちしてお頭は苦い表情をした
何なの?二人だけに通じる会話はやめてくれる?

「ははぁ~ん、アンタ何かこの子に知られたくないことがあるっちゃね?」

KYがニヤニヤしながらサヤシの頬を指でつつく
KYがいつものKYに戻った・・・
いや、それはかなり違うと思うよ、うん

「・・・野郎!ふざけんな!」
「やんのかテメェ!」

ん?私の超聴力が騒がしい音を捉えた
怒声、バキッ!ドカっ!殴り合うような音
ワーワー言う男達の歓声
これは・・・

「なんか食堂で喧嘩してるみたいだけど?」
「チッ、またか!しょうがねぇな」

お頭が勢いよく席を立ち、食堂に向かう

「おっ!喧嘩喧嘩ぁ~!これは見物やね~」

KYも嬉々としてお頭についていく
はぁ、血の気の多いことで。

 ・・・でも少し興味ある。
お頭がどうやってこれを収めるのか
私も行く行く~!

「か、かのんちゃん!?私も行くよ!」

一人残されそうになったサヤシも慌てて付いてくる
結構可愛いところもあるんだね

「おい!テメェらやめろ!」

食堂に着くなりお頭が男達を一喝する
しかし男達は殴り合いをやめず、周囲の野次馬達も騒ぐのをやめない

「あの剣士の子の方が可愛いだろうがボケ!」
「いや、かのんちゃんの方が可愛い!」
「あんなデヴのどこがいいんだコノヤロ!」

喧嘩の原因は呆れる程ささいなことのようだ、が・・・

デヴぅ!?ふざけんなコラ!ぽっちゃりとか言い方があんだろうが!
思わず私を支持するおっさんの方を応援したくなる衝動を抑えて
私はお頭の出方に注目した

バチ・・・バチバチ・・・
何、この音?

お頭の周囲にかすかにオレンジ色の火花のようなものが見える
あれが・・・エナジー?なのかな
バチバチバチバチバチバチ

火花が一層勢いを増していく・・・そして

「やめろって言ってんだろバカヤローーーーーーーーーー!!!」

バリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリ!
お頭の叫びと共に火花が喧嘩をしている男達と野次馬を包み込み
バチーン!と激しい音と共に火花が弾ける
刹那、男達は一斉にドーンと尻モチをついた
なんかシュールな光景・・・

「お、お頭!スイヤセン。ついカッとなって・・・」
「スイヤセン!スイヤセン!」

暫くの後、男達は皆我に返り立ち上がってお頭に平謝りだ
これがお頭の力・・・

「ねぇ、今一体何をしたの?」
「マインドブラスト・・・エナジーを直接ぶつけたのさ」

吸収だけじゃなく放出も出来るってこと?
つまりこの子は精神エネルギーをある程度操れる能力者か
あれ?なんだかお頭の顔色がなんだか悪い・・・

「大丈夫?顔色悪いけど?」
「あぁ、大したことねぇ。これぐらいはな・・・」

お頭は少しフラフラした足取りで部屋に戻っていった
男達も各々、少ししょんぼりした様子で各自の部屋に戻っていく

「あれだけの人数に同時にショックを与えるほどの気の放出・・・かなりの負担のはずだ」

部屋へと戻っていくお頭の背中を見つめながらサヤシが呟く
お頭のこと心配してるのかな?サヤシなりに

あれ?そういえばKYは?

「アタタタタタ・・・なんか目の前がバチーンっていって頭の中が弾けたみたいになりよぅ」

どうやら野次馬に紛れていてマインドブラストに巻き込まれたらしい
このショックで少し空気が読めるようになるといいんだけど
やれやれ・・・しかし政府軍も来てるようだしこの先どうなるんだろうね
まぁお腹も一杯になったし、今日は寝るかな・・・あれ?そういえば私達の部屋は?

「以上が作戦の概要です」

カリンの説明の後、ざわつくブリーフィングルーム

「艦長・・・」
「大丈夫なのですか?」

当然であろう。カリンがクルー達に説明した作戦内容は意外なものだった。
艦長、カリン自らがクローン兵と共に強襲カプセルで監獄に上陸
白兵戦で監獄を制圧

「皆さんの不安はよくわかります。しかしこれが一番確実な方法です」

クルー達はカリンのもう一つの顔を知らない。
正しくはもう一つの顔の方がカリンの本当の顔と言えるだろう

カリンは決してただの指揮官、戦略家ではない
実は彼女自身こそがこの艦に搭載されている最強の兵器

「副長、不在中の指揮はお任せします。任務完了したら信号を上げますので」

政府の能力者養成機関”EGG”で開発された戦闘マシーン
”m1201”ことカリンがその真の力を実戦で見せるときが来たのだ

「作戦開始は明朝5:00、Aシリーズのカプセル搭載準備を開始して下さい」

さて、私も準備をしなければなりませんね。栄光への道を歩むための準備を

「カ、カリン様・・・」

副長は見た、ブリーフィングルームから去っていく
カリンの周囲をぼんやりと囲む紅の輪を

AM1:00 ”監獄”動力室
皆眠りにつき、誰も居ないそこにお頭~工藤遥の姿があった

「悪りぃな・・・アンタの力、また借りるぜ」

重力エンジンの中枢、”コア”の部分に遥は手を触れる

「んっ!くっ・・・あぁあああああ!」

眩い光の明滅と共にエナジーの奔流が遥の中に流れ込む

それは、悪魔の力

カプセルの中に横たわる女
重力エンジンのコアとして封印された古の戦士の荒ぶる魂
脳死状態のはずの彼女が発する強烈なエナジー

どこか歪んだ、それでいて自由奔放な
その黄金の輝きに、遥は魅せられていた

力だ、自由を得る為には力が必要なんだよ
何物にも縛られない圧倒的な力が!