「愛と太陽に包まれて」


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「愛と太陽に包まれて」(かなしみの人ver)

次回予告
             どしゃぶりの雨
以前親から暴力を振るわれていたれいな 最近は家出された事や自立しようとする
  行動をまのあたりにした親が 心を改め親子の仲を取り戻しつつあった
そんなれいなをいつも見守ってきた愛 愛は机で突っ伏して寝むり夢を見る・・

 -少しずつ自分から離れていく少女・・必死で追いかける自分がそこにいた-

本当は離れなければならないそれが1番良い事 けれどもとてもツライ想いが駆け巡る





     愛は寝言を・・・「れいな 行かない・・で・・・」

   れいなは机で眠る愛を見つけると 何も言わず肩にそっと毛布をかけた
       愛が目を覚ますと 横に並んでれいなが寝ている




    れいなは寝言を・・・「・んん・・何処へも行かんっちゃ・・・」

     自分とれいなを包み込む様に毛布を被せ 再び愛は眠りにつく

         -出来れば同じ夢で出逢えるように・・・-


次回かなしみ戦隊リゾナンターR「愛と太陽に包まれて」

        雨は上がり 少し朧な月がふたりを照らしていた




【本編】
「愛と太陽に包まれて」((44)747ver)

あの日も、どしゃぶりの雨だった。
いつかの景色、ただひとり、背中が叫んでいた。
自身の本当の"家"の前で、ただ棒立ちのまま俯いていた野良猫。
顔は帽子で隠れている上に雨でぼやけているが、その表情は手に取るように分かった。

入ろうとしても、入る事を拒む自身を自分の腕で強く抱きしめる。
抱きしめてあげれば良かったのにと今では思う。
ひとりきりを、やがてふたりに出来るように。
そして、今でも少女は待っているのだろう。

 心が言葉を。

だが、本当に抱きしめてあげるのは、自身ではない。
背中がひとり叫んでいても。
その背中にあたたかさと優しさを篭めて上げられるのは、少女が最も強く願う人物。

 足跡に咲いた花。
 いつかの風景で、少女は待っていた。



 「愛ちゃん、オーダー!」
 「はーい、ちょっと待ってーっ」

今日も喫茶「リゾナント」は常連客で満員だった。
長蛇の列は並んでは居ないが、それでもこんなお店に出入りしてくれる
人達が居る事に、愛は言葉で言い尽くせないほどの感謝を日々感じている。
笑って談笑する者、料理を絶賛してくれる者、自身の時間を自由に過ごす者。
待ち合わせだろうか、窓の外に笑顔で手を振り、カランコロンと来客の鐘を鳴らす。

 「いらっしゃいませーっ、こちらにどうぞっ。お待たせしましたっ、悲しみハンバーグ定食です」
 「注文いいですかー?」
 「はーい、今行きますねーっ」

それをれいなは笑顔で席へ招き、お客へ料理を出し、他のテーブルへ注文を聞きに行く。
ウェイトレス姿も最初の頃よりも完璧に着こなし、愛はその姿を見て微笑んだ。
思えば、今では何でもそつなくこなせてはいるものの、初めの頃は本当に大変だったのだ。

 来客の呼び鈴。ラストオーダーギリギリの時間に現れた少女。
 よろめきながら無言でカウンターに座るその姿に、愛はふと悟る。
 注文もしなかった筈なのに香ばしい匂いが漂う厨房から出てきた愛が差し出した料理。
 それを大粒の涙を流して口に運ぶ光景を、愛は黙って見守った。

 「家に、帰りたくない」

そう言ってしばらく置く事を条件に働いてもらう事になったのだが、これが本当に"笑わない"のだ。
常連客から何度も苦情が出ているものの素知らぬ振り。
あの頃は、こんなにも見違えるとは思ってなかった。

 「愛ちゃん、どうしたと?」 
 「え?あぁ、ううん、なんでも無いよ。あ、これあそこのお客さんのやよ」
 「分かったけんっ」

だからこそ、最近思うのだ。
れいなは十分苦しんだし、十分愛の元で成長してきた。
悪と戦う日々を過ごし、共に戦う仲間と日々を過ごし、既に"触れ合う"事に慣れた筈。

 だからこそ、愛は、想うのだ。
 信じているから、信じているからこそ会わせてみようと。

それは、喫茶「リゾナント」の定休日のある昼下がり。
いつものメンバーがテーブルを囲む中で、愛が里沙に耳打ちをする。
れいなに悟られないように、徐々にバラバラに時間を過ごしていた8人へと伝えていく。

 「あ、いっけない。今日ちょっと用事があったんだった」
 「絵里もさゆとお買い物してくるね、夕方にまた来るからー」

それぞれが今日に限って次々と帰っていくのを見ながられいなは首を傾げたが
偶然だろうと深くは考えなかった。
リンリンの姿を最後に、店内は愛とれいなのみになってしまう。

 「あ、しもた。野菜の数がもう無いかも」
 「れいなが買ってくるっちゃよ、何が欲しいと?」
 「や、あの、ええよ。あたしが買ってくるで、れいなお留守番しといてくれる?」
 「え?でも今日定休日やけん、お客さんなんか…」
 「その、もしかしたら宅配便とか来るかもしれんやよ。やからお願い」
 「んー分かったっちゃ…」

そして愛もまた、店内を後にする。
窓から覗くと、カウンターの中で雑誌を読み始めていた。
姿を確認した後、愛はある"待ち合わせ場所"へと足を運ぶ。
植物公園の中にあるベンチに座っていた男女が、愛を見つけた。

 「今、れいなが一人でお店に居ます。他の子達が帰ってくる前に、会ってあげて下さい」

その言葉と真剣な眼差しに、男性がゆっくりと頷く。
女性が、微かにお辞儀をし、男性に促されるように公園を後にする。
愛はゆっくりと深呼吸をして、その結末が上手く行くようにと願った。

 ―――誰でもひとりだけど、独りじゃない。
 手を伸ばして触れ合って、抱きしめ合って生きるんだ。
 それに何も怯える事は無い。

 だからこそ、愛は、決めたのだ。少女を悪夢から目覚めさせるために。



愛が店に帰ってくると、れいなはたどたどしく「おかえり」と言った。
目尻を拭うと「何でもないっちゃよ」と笑顔を浮かべる。
「そっか」と軽く言って、厨房へと買い出した野菜を持って行くと、れいなが背後から寄って来た。

 「どうしたん?」
 「……今日」
 「ん?」
 「…ううん、れいなも手伝うけん」

この時、れいなが何を言おうとしたのかは分からない。
だが、その声と表情は、とても穏やかなもので、愛は安心していた。
これで良かったのだと。

 ―――それから何度かれいなと偶然を装って"両親"を引き合わせ、その度に愛は見守り続けた。
  日に日により元気になっていくれいなに、愛は嬉しい気持ちになっていく。
  だがその中で、ほんの微かな気持ちが湧き上がっていた事にまだ気付いていない。

喫茶「リゾナント」の定休日。
この日もメンバー達は来ず、れいなは鼻歌交じりに外出する準備をしていた。
本人によれば、知り合いと買い物をしに行く約束をしていると言う。

 「じゃあ愛ちゃん、行って来るっちゃ。夕方には帰ってくるけん」
 「別に夜になってもええよ、なんなら一緒にご飯でも食べに行ってもええから」
 「何言っとるとよ、愛ちゃんと食べに帰ってくるけん。いってきます」
 「……いってらっしゃい」

カランコロン。
鐘が静まり、愛は溜息を吐く。
とりあえず明日の準備をしてから洗濯と掃除をし、それからは自室でDVD鑑賞でもしよう。
愛にとっても、こうしてのんびりとした時間を過ごすのは久しぶりだった。
れいなもまた、久しぶりの団欒を楽しむに違いない。
嬉しい気持ちが湧き上がり、愛は洗濯物を取りに洗面所へと向かった。

 これで良かったのだ。これで…れいなが、幸せになれるなら―――



―――鈴の音。
ささやかな風に揺れる花。
向こうの空に三日月が浮かんでいる。
その下に、"少女"が立っていた。

少女は―――"田中れいな"は月明かりに手を伸ばして、其れを掴もうとしているようだった。
その表情はとても哀しく、涙を流しながら、手を伸ばしていた。
触れたいと、抱きしめて欲しいと命一杯伸ばして。

れいなが愛を見ている。
何かを言いかけて、その言葉を飲み込んだ。
それから笑って、涙を零しても、少女は何よりも笑っていた。
何故か、映画を見ているようで、背を向けて歩き出した背中に向かって、思わず叫んでいた。


 ――――――ッ。

ただ、微かにしか声が出てこず、少女は、ただ背中を向けて離れていく。

 ――――――ッ。

夢の筈なのに、夢じゃない。
それは、自分が何よりも願っていた事だった筈なのに。
現実ような夢。夢のような現実。
愛は、精一杯叫び続ける。
そして。


 ――――――れいな 行かないでッ

愛は自分の声で目が覚めた。
冷たい空気が部屋の中を包んでいる。
どうやら最近の寝不足からか、机で寝てしまったらしい。
時間は夜の7時を回っている。
あぁ、やっぱりか、そう思った時、ふと体に毛布が羽織られている事に気付く。






 隣には、れいなが居た。

口がもごもごと動いたかと思うと、寝言のように呟く。

 「・んん・・何処へも行かんっちゃ・・・」

愛は、自然と頬に熱いものが流れた。
袖で拭い、自分とれいなを包み込むように毛布を被せ、ポンポンとれいなの背中を優しく叩いた。
面と面を向かうように、愛はれいなの顔を見つめた後、ゆっくりと目を閉じる。

  出来れば、同じ夢で出逢えます様に。

目を閉じて、耳を澄まして、両手を広げる。
独りじゃないと、嘘をつけない声と、見えない羽根を感じて。

どしゃぶりだった雨は上がり、朧な月をれいなは見上げ、振り返る。
足跡に咲いた花。
いつかの風景で、少女は待っていた。

 おかえり
 ―――ただいま



【解説】
作者同士が申し合わせたわけではないだろうが、今回のトリビュート企画では愛れなの過去を描いた予告編が三つも描かれることになった。
(スレへの投下順とは異なるが)親からのDVに悩み家を出たれいなが、温かさを求めて立ち寄った喫茶リゾナントに住み込み、ウェイトレスとして働く中で愛からの愛情を受けて忘れていた笑顔を取り戻す過程を描いた「抱いてHOLD ON ME!」
愛を助ける為にリゾナンターとして戦うことになったれいなが、初めての戦闘でチカラを暴走させてしまい、愛に怪我を負わせて仕舞ったが、そのことで生まれた更に強い絆を描いた「Ambitious!野心的でいいじゃん」
そしてそのニ作品の延長上にあるのが本作 「愛と太陽に包まれて」((44)747ver) である。
リゾナンターして過ごした日々は愛とれいなの絆を強くしただけではなく、れいな自身を人間的に成長させて強くした。
だからこそ、れいなを本当の家族と和解させようとしながらも、れいなと離れたくないという背反する思いに悩む愛の姿が描かれた今作は、精緻な文章で綴られた愛の心情と、ある種幻想的で静寂さを感じさせる夢の描写が相まって、読んだ者の胸に多大なる感動を呼んだ。
と同時に、原典を書いたかなしみの人のストーリーテラーぶりが再評価されることとなった。



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