『InvisibleBlade 第七話「見えないエナジー」』


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「ほらぁ!あったっちゃろ!島ぁ!」

言い争いから数分後・・・
確かにKYの言う通りだった。行く手の先に島が見える!
でも何でマップに表示されてないの?
まさか本当に動いてるとか
ん?・・・そういえば

「マップに載ってないのに何で島があるってわかったの?」
「えりの”鷹の目”は特別っちゃよ!どんな遠くからでも見えるとね」

ふ~ん、コイツもウチと同じ感覚系の能力者なんだ
じゃあウチらを狙撃したときも・・・そういうわけか
      • そういえばウチら、お互いのこと全然話してないね
これはいい機会かも

「アンタさぁ、何でウチらのこと襲ってきたの」
「あ~?政府がその箱に90000000ダークネスの懸賞金掛けとったけん、そりゃ誰でも飛び付くっちゃろ」

あぁ、ハンターとか言ってたもんね。やっぱりそんなところか。でもね

「あのさぁ・・・」
「ん?」
「なんでウチらと一緒に来たわけ?」

最大の疑問・・・なんでコイツは当然のような顔してウチらと一緒に居るのか?
サヤシはクローン兵達を倒した後、昏倒してしまっていた
ならウチを倒して”箱”を奪って政府に持って行けばいいだけの話じゃん!

「えりは確かにハンターっちゃけど恩知らずな人間じゃなかとよ」
「恩?」

KYがニヤっと笑ってサヤシの方を見る
ブルブルブル、必死に被りを振って否定するサヤシ
恩って何さ?

「アレは助けたわけじゃ・・・」
「それに!」

喋り始めたサヤシを制するようにKYが大声を出す
うるさい!狭いんだからやめてよ!

「お前とはまだ決着ついとらんけん!降りたらまた勝負っちゃ!」

ハァ?何言ってるの?
私にはコイツの思考回路が全然わからない

「受けて立つ!」

ちょ、えええっ?サヤシまで何言ってるの?
私にはサヤシの思考回路も全然わからない
わからない・・・

そうだ、私サヤシのことも全然知らない!
先にサヤシと話すべきだよね、順番的に

「サヤシ!」

ガクーン!
うわ、ななな、何っ!?
私が声を上げると同時に機体が大きく揺れた

「うぉおおおおっ!、何か変っちゃよ!」
「わかってる!」

何だろう、ヤバい
揺れが激し過ぎ・・・んっんんんっ!
何だか身体が下に引っ張られるような奇妙な感覚
凄く・・・身体が重いっ・・・

激しく鳴り続ける計器のアラート音

「ど、どんどん高度が下がってるっちゃ!」

落ちてる!?落ちてるのこの機体?
重い・・・KYの方を向こうとしたけど首が動かせない
身体の自由が・・・効かない!

目の前のサヤシは・・・

柄に手を掛けた姿勢のまま固まってる
やっぱり動けないんだろうね
つーかこの状況で刀で何しようとしたのさ!

揺れが一層激しくなってきた
いや、揺れっていうかもう何か
機体自体がぐるぐる回ってるみたいな
身体の下からゾクゾク、寒気を感じる
何この絶叫マシーン!
やっぱり落ちてるよねコレ、凄い勢いで
こ、今回ばかりはマジでやばいんだろうね
神様ぁああああああ!

「カリン様、”監獄”から重力震反応です」
「本艦と監獄の距離は?」
「約10km、規定の距離は保っています」

報告を受けたミヤモトカリンはまた頭を捻った

重力震・・・何だ?何に使った?
重力砲の射程外の距離は維持している
こちらに撃ってきた様子もない

考えられる要素は・・・先程の友軍機!
その結論に達したとき、再び報告が飛び込む

「カリン様、先程の友軍機に関する照会結果がMAR-CHEから届きました」
「モニターに出して下さい」

ピコーン
メインモニターにMAR-CHEからの情報が映し出される

”該当エリアにJSタイプ哨戒機の派遣なし”
”該当機は抵抗勢力がJSタイプに似せた偽装機”

もしくは

”極東地区西部エリアで奪取されたJS-0625の可能性がある”

「奪取・・・ですか。その件について詳細な情報を」
「ハッ!」

我が軍のジェットストライカーが奪取されたなど聞いたことがない
第一、コントロールキーも操縦法も政府の極限られた人間
もしくはクローン兵しか知り得ないはずなのだ・・・奪取したのは一体何者なのか?

ポツーン、ポツーン・・・
ん、んん・・・何よ、冷たいなぁ
水?水・・・って!

ガバッ!顔に当たる水の滴の冷たさで私は目を覚ました
暗い・・・カビ臭い・・・石の床・・・石の壁・・・
ここどこよ!?

すぐにどこかわかりました。はい。
壁と反対の方向を向いたらしっかり鉄格子
牢屋。ウチら、捕まったんだろうね・・・

身体を起こす。うぅ・・・何だか全身が痛い
固い床で寝てたせい?それともさっきのアレのせい?

グゴォオオオオッ!

ああっ!うるさい!耳障りな音!
そのイビキの主は・・・やっぱりお前か、KY!
大の字になって髪グシャグシャで気持ち良さそうに寝てる

スピースピー・・・

その横でサヤシがこれまた気持ち良さそうに寝てる
一体どんだけ寝るんだい?キミは?

「・・・だよな」

ん?二人の寝息に混じって誰かの声が聞こえる
会話?明かりの洩れる通路の曲がった角の部屋から漏れてる
私はそっと耳を凝らす

「・・・何者ですかね、アイツら?」
「正規軍には見えねぇんだけどなぁ」

男達の声。
かなりのだみ声のせいかKYのイビキをバックにしてもハッキリ聞こえる

「それにしてもロクなもん持ってねぇな」
「抜けない刀、開かない箱、大量のスニーカーズ・・・ガラクタばっかりだ」

箱!?サヤシの刀も!
当然か。そりゃあ捕まったら身ぐるみ剥がされるよね。
つーかKYはスニーカーズ何個隠し持ってたのさ?

「おいお前ら!」

新しい足音と共に男達以外の声が聞こえる
掠れた声だけど・・・女の子?

「お頭!調べましたがコイツらロクなもん持ってません!」
「どう見ても正規軍には見えませんねぇ」

お頭?コイツらはいわゆる賊系のモノ盗りの人達かな?
でもお頭って・・・

「どけお前ら、その刀貸してみろ」
「ヘイ」

女の子がお頭???だよね?最近の賊事情ってどうなってんの

「んっ、おっ?ちくしょう、抜けねぇなぁ」

ハスキーな声の女の子、”お頭”がサヤシの刀を弄っているらしい
たぶんそれ、サヤシ以外には抜けないよ

「それに何のエナジーも感じねぇ。むしろ俺と同じかもな、この刀は」

エナジー?エナジーって何だろう?
俺と同じ?何言ってるんだろうねあの子は

「おいっ、そっちの箱寄こせ!」
「へいっ!」

今度は”箱”を弄る気だ。どうなっても知らないよ~

「蓋も何もねぇな?」

そう、開かずの箱なのよそれ

「じゃあ、エナジーを、と。ん・・・」

だからエナジーって何なの?何してるわけ?

「んっ、おうっ・・・おおおっ!おぅわぁああああああああ!」

女の子の様子がおかしい!一体何が起きてるの?まさか箱が何かしたんじゃ!?

「大変だ!お頭がぁ!」
「しっかりして下さい!」

部屋の曲がり角から眩しいぐらいの光の明滅が漏れている
これはエラいことになるかもしれないんだろうね

「うるせぇお前ら!大丈夫だ!・・・ハァ・・・ハァ・・・」
「お、お頭!」

おっ、大丈夫?光の明滅が止まった。
でもあんまり大丈夫そうな息遣いじゃないんだけど

「つーか思い出したぜ、この箱。”EGG”の教科書に載ってたやつだ・・・」

ガタンッ!椅子を蹴るような音がして
カツカツと早足の足音がこっちに近付いてくる
こっちにクルー!

えっ?
曲がり角から現れたのはドクロマークの海賊帽を被った
小さくて華奢な茶色い髪の女の子
この子があんなシブい声を出してたの?
そしてこの子が”お頭”?

どんどん近付いてきて牢の目の前で女の子は足を止めた

いかにも海賊って服装だけどコートはだぼだぼ
なんか可愛いな、この子。垂れ目で顔も可愛いよ、うん。
私達より年下かな?

あれ・・・?私は何か違和感を覚える
何だろう、服かな?コートの中の黒い服、どっかで見たような・・・
そんな私の思考を遮るように女の子があのシブい声を発した

「おいリゾナンター!どういうことか説明してもらおうか!」

うえええっ!?何でその名前を知ってるの!?
色々説明が欲しいのはこっちなんですけど!

「お前らなんで”箱”なんか盗んだ?それにJSをどうやって操った?あん?」

べらんめぇな口調で女の子~お頭が一気に捲し立てる
あわわわ・・・そんな一気に聞かれても

「なんだあの刀は?なんで抜けねぇんだ?そっちの剣士は一体何者だ?おい?」
「い、いや、あの・・・一から説明しますとですね」

圧倒された私が答えようとすると横からもの凄くデカい声

「アンタらうるさかよっ!今何時だと思っとうと!?」

厄介な奴が起きた・・・KY、アンタはホントにKYだね
しかもなんか寝ぼけてるし、最悪

「「KYは黙ってろ!」」

お頭と声が被った
思わずプッ、と吹き出しそうになる

ん?・・・なんでこの子はKYがKYなことまで知ってるの?

「貴方何で・・・」
「こっちが質問してんだ!先に答えやがれ!コンチキショーめコノヤロ!」

ううっ・・・なんでこの子がお頭なのかわかった気がする
もんのすごい仕切り屋さんなんだろうね
これはこっちから話さないとラチがあかないかな

「わかったから落ち着いて。そう、私はリゾナントの街から来たリゾナンターの一員よ」

私は一から順を追ってお頭に説明を始めた

私が”見えない街”リゾナントから来たこと
現ダークネス政府への抵抗組織”リゾナンター”の一員であること
仲間達と共に”預言書”にある世界を変える力、”箱”を政府の施設から盗み出したこと
追撃で仲間達と離れ離れになり箱を託されて一人で逃亡したこと

「なんね、アンタ。レジスタンスだったとか」

ああっ、KY邪魔!

逃亡中にハンターの一団に襲われたこと
謎の剣士”サヤシ”に救われたこと
空気読めない女”KY”に襲撃されたこと
その戦いの最中に更に政府軍のクローン部隊に襲撃されたこと
”箱”の謎の力でジェットストライカーを乗っ取り逃亡していたこと

「えりはKYじゃなかとよー!フクオカシティ最強のハンターやけん!」

はいはい。わかったから黙っててね
ここまで一気にお頭に説明した。疲れた・・・
黙って聞いてくれていたお頭が再び口を開く

「ふむ、嘘はついてねぇようだな。箱のエナジーから見えたビジョンと同じ感じだ」

エナジー?ビジョン?
もしかして感応系の能力でも持ってるのこの子
ん・・・えっ!?
私はさっき感じたこの子の服、インナーの違和感の原因に気付いた

「その服、正規軍の・・・」

そう、この子が海賊コートの下に着てるのは・・・着崩してはいるけど
まぎれもない正規軍の軍服じゃん!

「あぁ、今度はこっちが説明する番みたいだな。俺はクドウ、クドウハルカ。”元”正規軍だ」

元正規軍・・・ってことは敵ではない感じ?

「まぁ色々とわけありでな、今は軍を抜けて海賊をやってる」

うん、まぁ見るからに海賊だよね
でも軍を抜けるってそんなに簡単じゃないんじゃ・・・

「なんで軍を抜けたの?」
「あん?まぁ簡単に言うと面白くねぇからだよ」

勝ち組なのに面白くないんだ
なんだかなー
でも何かわかる気がしないでもない

ずっとずっとこの世界を支配し続けている千年王国
すっと同じ政府、ずっと同じ制度、ずっと同じシステム
無法地帯、弱肉強食
それでいて
サイボーグ達に監視されて
実は自由なんか無い世界

そんな世界を私は変えたいんだ

根っこはこの子も一緒なのかな?

「おい海賊、御神刀を返してもらおうか」

ビクッ!おわわああああ!びっくりした!
サヤシ、起きてたんだ

「御神刀?あぁ、アレなら返すぜ。つーかお前、あんなもん使ってると死ぬぜ?」

死ぬ?お頭があの刀に触れたとき何か言ってたっけ?
俺と同じ?・・・だっけ?意味分からん
でも確かにアレを使った後、サヤシはいつも昏睡してる
もしかしてやっぱり身体に悪いのかな・・・

「お前こそその身体で全ての力を受け止められると思うな。瘴気が見えるぞ」

サヤシ?何言ってんの?
この子達の会話はさっぱりわからない・・・
お頭がちょっと舌打ちしたみたいだけど
図星?ってやつだったのかな?

でも次にお頭の口から出たのは意外な言葉だった

「お前ら出な、飯を用意してある」

ええっ!?いきなり釈放?
それに・・・ご飯!!!!!

やったぁー!久し振りにマトモなご飯にありつけるー!

色々あるけど今はどうでもいい!!!
私のアタマの中はご飯のことで一杯になった

ご飯ご飯~♪♪♪


なるほど・・・”箱”ですか

西部方面軍が”箱”を奪われた上に
奪回に向かったクローン兵部隊は最近噂の”InvisibleBlade”に撃退され全滅
ジェットストライカー部隊は”箱”発信の謎のハッキングで相討ち
JS0625機はハッキングされたまま賊を乗せて逃亡

最新の情報、しかも西部方面軍が詳細情報を出し渋ったため少々時間がかかった
最終的にはJS625らしき機体の情報提供をエサに事件の情報を吐き出させたが。

これは新政府始まって以来、前代未聞の大事件ではないだろうか
西部方面軍が詳細を隠したがる気持ちもわかる。

ミヤモトカリンは頭をフル回転させる
”監獄”が
  • JS0625を海上で撃墜したとすればそれはそれで終わり。箱も恐らくは粉々か
  • JS0625が監獄島上に撃墜したとしてもそれはそれで終わり。箱は粉々だろう

問題は
  • JS0625が撃墜されていない場合。重力震は重力砲ではなく捕獲のための重力キャプチャー

わざわざ哨戒機一機落とすのに虎の子の重力砲を使うだろうか?
このケースが一番可能性が高いのではないか?

そうなると箱を奪った賊は存命の可能性があり、箱は健在だろう
この事件について中央からの要請、命令等は未だ発令されていないが・・・

「チャンス・・・ですね」

元々この部隊の任務は”監獄”の制圧。任務の遂行に何の問題もない。
ついでに箱を奪った賊、噂のInvisibleBladeも退治し箱を奪還すれば・・・私、英雄じゃないですか!
ミヤモトカリンは部下達の目も憚らずに思わずその場でクルクルっ、とターンした