『リゾナントリゾートin利曽南島 3日目夜―やっぱり最後はバーベキュー?―』


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夏だ!
海だ!
リゾートだ!

てなわけで、旅行3日目の予定をほぼ消化したリゾナンター13名はホテルのプライベートビーチに集まった。

海の家に提供して、余った野菜その他の食材。
れいなたちがビーチバレー大会で獲得した、牛肉とトロピカルフルーツの詰め合わせ。
さゆみが海で釣ってきた魚。(海の家の料理長の手によってさばかれ済み)
野外用のコンロ。大量の炭。トングや串や人数分の箸。
それらが所狭しと並んでいる。

「よぉし!じゃあ今からバーベキュー始めっぞー!!」

愛の呼びかけに対し、うおー!という12人分の勝ちどきの声が上がった。
今この瞬間から、今回の旅行最後のメインイベント・バーベキューが始まったのだ。

「はい、ガキさん。トングでーす」
「はいよーっ」

ごく自然にさゆみからトングを受け取り、ごく自然に肉その他諸々を焼き始める里沙。
肉食ばかりのリゾナンターだけあって、多くのメンバーが目をギラリと光らせながら様子を見守っている。

「おーい!肉こっちにもあ、むぐっ!」
「いちいち言わんでもええやないですか愛ちゃん」
「向こうは向こう、こっちはこっちで楽しむデスよ、愛ちゃん」

目をギラリとさせたメンバーよりもさらに目を妖しく光らせて、愛佳とリンリンは愛の口を塞ぐ。
卓は二つで向こうは8人、こっちは5人。
明らかにこちらのほうがライバルは少ない。
周りにいた里保と香音も、うんうんと頷いた。


「ちょっ、さゆ!今れいなの前にあった肉とったやろ!」
「ケチくさー。いいじゃん、まだあるんだから」
「じつはねー、ジュンジュンはねー、くっすみさんのことがー」
「暑苦しいよー。酔っぱらうの早いよー。あっ、笹食べてみなよ笹!健康によさげな色してるよ?」
「はあ?メダルにサイン?・・・まあいいけど」
「ヤター!後で持って行きますね!」
「はいフクちゃん。お食べ」
「いいんですか!かかか亀井さんに焼いていただいたパプリカ・・・!」

「そしてこれがリンリンマンの必殺ギャグ・・・・・・“ポテト!”Say!」
「「ポテト!!」」
「アヒャー!マジ面白れー!」
「いや笑いどころがわからへん。あ、そろそろ新しい炭取ってこな」

思い思いに盛り上がるバーベキュー。
束の間の平和を満喫するかのようなバーベキュー。
やってることは普段と大して変わらない気がするバーベキュー。

しかし、これだけのメンバーが集まって平和に食事が終わるはずもなく。

「取り消して!今の発言取り消さないと本当に怒るよ!」
「なんで?里保ちゃんかわいい言っただけだよ?」
「被ってるって言ってんの!りほりほ大好きキャラまで真似しないでよ!」
「まねじゃないもん!わたし、ちっちゃくて動きにキレがある子大好きなだけだもん!」

「おう鞘師。その肉食べて腹壊す未来が見えたで。愛佳がのけといたるわ」ヒョイ
サッ「結構です。生焼けの肉程度でお腹を壊すほど水軍流はヤワじゃありません」
「先輩の心遣いは素直に受け取っとくもんやぞ」ヒョイ
サッ「心遣いって、育ち盛りの後輩から大きい肉を横取りすることがですか」


それぞれの卓でそれぞれに勃発する騒動の種。
さゆみとジュンジュンは、里保を愛でる権利を巡って。
愛佳と里保は、目の前のとびきり上等そうな肉を巡って。
今、嵐が吹き荒れる・・・!


「上等だぁ!表に出ろやぁ!」
「のぞむところダ!」

「いっぺんおまえとはケリつけなあかんと思ってたんや・・・」ヒョイ
サッ「あなたのこと先輩として尊敬してますが、勝てないと思ったことは一度もありません」

「道重さん!ジュンジュンさん!光井さんと里保ちゃんも!」

ひょうきんだけど案外常識人キャラの香音が二組を止めに入る。
なにしろさゆみとジュンジュンは身長があるし、愛佳と里保は勝つためには手段を選ばなさそう。
こいつらが暴れたらえらいこっちゃなのだ。

「あぁ~、でも私一人じゃ止められっこないよ!助けてください高橋さん!」

振り返る香音。
助けを求めた先には、みんなの頼れるリーダー・高橋愛。
だが。


「れいな、食べカスついてる」
「えっ、どこ?」
「ここ。ってか、これ」
「!? ちょ、愛ちゃん!」

びっくり仰天、頬を赤らめるれいな。
きょとんとする愛。
れいなの口元についていた食べ物のかけらを、愛が指ですくって食べたのである。

「なんじゃそりゃあっ!それ天然でやってるなら凄過ぎるんですけど高橋さん!ってか田中さんの雰囲気も
 いつもと違い過ぎるんですけど!なんか乙女な感じで、ぜんっぜん声かけられないし!」

思わず香音も、コントのツッコミ役みたいなツッコミが飛び出るというものだ。
普段は人に威嚇ばかりしている猫が飼い主の前でお腹見せてゴロニャン、な場面を目撃したような気分。
可愛いけど邪魔をしてはいけない。邪魔したら引っかかれそう。
愛たちを見なかったことにして、香音はもう一人の頼れる先輩に助けを求めることにする。

「新垣さん!みんなを止めてくださ・・・」

「う~ん、やっぱお土産は日本酒のほうがいいかなあ」
「ちょっとガキしゃーん。まだのむんですか~?」
「私じゃなくて先輩たちへのお土産だからね。結局この夏の慰安旅行も参加できなかったし」
「オゥ!ガキはんにも先輩がいるですか!」
「そりゃいるよー。中澤さんでしょ保田さんでしょ吉澤さんでしょ、それになんといっても安倍しゃん!でしょー・・・」
「いっぱいいるですね!ダークネスの幹部たちみたいな名前だ!」
「やだやだー!新垣さんは衣梨奈だけを見ててくれなきゃやだー!」
「ちょっとがきしゃーん。まらのむんれしゅかぁ~?」

「っておい!どう考えてもダークネスの幹部の名前じゃん!まだスパイ設定続いてたのかよっ!つーかあんたたちも気づけよ!」


頼れるもう一人の先輩は、酔っぱらい二人と普段のテンションが酔っぱらいな未成年一人に囲まれすでに出来上がっていた。
どっからどう見ても、助けてくれそうにない。

そうこうしているうちに、メンチ切りまくりの4人のほうに動きがあった。

「里保ちゃん、ジュンジュンと組もうね!一緒にあの人やっつけるだよ!」
「あ゛ー!ちょっとなにドサクサに紛れてりほりほとくっついてんの!離れてよ!」
「大丈夫ですよ道重さん。すぐにあの小生意気なガキんちょ、道重さんの前に引っ立ててやりますから」
「タッグバトルというわけですか。・・・面白い。受けて立ちましょう!」

ジュンジュンの隣に里保が、さゆみの隣に愛佳が立っている。
二つのバトルが交わって一つになったようだ。
戦闘力に長けたジュンりほ、計略に長けなんとなくしつこそうなさゆみつ。
まともにやり合えば前者だが、後者がまともにやり合う気がしない。
まさに嵐の予感である。


なんかもう諦めたけど、一応念のため万が一ということもあるかもしれない。
香音はほんの微かな期待を胸にゆっくりと後ろを振り返って、その名を呼んだ。

「・・・聖ちゃーん」

聖は中学三年生にもなって年下にローマ字のスペルミスを指摘されるようなおバカさんだけど、
いざという時は香音たちのお姉さんという感じで頼りになる。
もしかしたら、ひょっとして、ともすれば・・・?

「今の私があるのはきらりちゃんのおかげなんです。久住さんあってこその聖っていうか・・・キャッ、言っちゃった!」
「ふーん。あ、梅干し食べる?」


うん、少しでも期待した私がバカだったんだろうね。

愛はれいなと戯れていて、里沙は絵里やリンリンや衣梨奈と飲んだくれている。
聖は小春に近づいて2ショットをねだるつもりだろう。
誰も、ジュンジュン・里保vsさゆみ・愛佳のバトルを止める気配がない。
バトルに気づいているかどうかも怪しい。
なにやってんだろう自分、と考えて香音は空しくなってきた。

「・・・はあぁ~」

盛大にして重厚なため息を一つ。
今日一日の疲れをすべて乗っけたかのような深い深いため息。

香音は人の声が“聞こえ過ぎる”。

拾わなくてもいい声まで拾えてしまう性質なのだ。
聞きたくない言葉を今までいっぱい聞いてきた。
それで損してきたことだってたくさんある。

だから、たまにはいいか。
こういうことにしても。

「・・・・・・知ーらないっと!」

くるりと反転。
なんでもなかったような顔をして食事に戻る。
見て見ぬ振り、聞いて聞かぬふりだ。
みんなが事に気づくまで、香音はなんにも知りません。


「里保ちゃん、合体だよ!」
「はい!行きます!“ライド・イン・パンダ”!」
「ジュンジュンめぇ!さゆみを差し置いてりほりほと合体なんて許せない!・・・でも、パンダに跨るりほりほ超ラブリー~!!」
「・・・言うとくけどな、鞘師。この場合は“ride in”より“ride on”のが適当やからな」
「うぐっ!!」
「バウ!?」
「ああ!間違いを指摘されたショックでりほりほが落ちた!」
「フッ。知ったかぶりの優等生は打たれ弱くてあかんなぁ」

先程まであんなに頭を悩ませてくれた喧騒もBGMに変えて。
誰も周りを気にしていないなら、今がチャンスだ。
網の上に残された肉や魚もまだ箱の中に眠ってる野菜も、みぃーんな一人で食べ尽くしてやる!

香音は焼いた。
焼いて焼かれてまた焼いてを繰り返して食べた。

聞きたくない声をシャットアウトして食べ続ける術を身につけた香音。
しかし、今日のような喧騒はリゾナンターにおいて日常茶飯事だ。
スル―したくなるような馬鹿馬鹿しいやりとりはこれからも数多く巡ってきて、そのたびにドカ食いした結果
成長期の女子中学生にふさわしい拡張を遂げるようになることを、彼女はまだ知らない。