『虹 ~君にあえたら~』



――逢いたい 夢の中ででも――

――逢いたい 写真のひとつでも――

――逢いたい 愛してくれた一人一人に――

――伝えたい 僕も愛していました――


「聞こえるの?かのんちゃん」
「うん」
「…。」
「…。」
「1年かぁ、早いね」
「うん。でも、どんなに経っても忘れられないし、忘れちゃいけないんだろうね」
「うん」
「今はこんなにきれいで穏やかなのにね、海って」
「それが、灰色になってみんな飲み込んじゃうんだよ」
「…。」
「…。」
「神様っていじわるだね」
「え?」
「みんな何も悪いことしてないのに、どうしてみんなを悲しませるのかな」
「う~ん…」
「…。」
「…。」
「わかった!」
「え!?」
「好きな人にはいじわるしたくなるって言うじゃん!」
「えー?」
「でもさ、好きなんだからそのうちきっと告白されるんだよ!」

「えー何それw」
「あ~、やっぱりおかしいかなぁ」
「…でも、そうなるといいね」
「だよね!だから、神様が告白するまで、私たちができることをやっていかないとね!」
「うん!」

そう言うと、里保は岸壁から身を乗り出し、手を水につけた。
その手を振り上げると、周囲には霧状になった水分が広く立ち込めた。やがて――

「うわぁ~!虹だぁ~!!りほちゃんすごい!本当すごい!!」
「できることをやっていかないとね。これで、少しでも気持ちが安らいでくれる人がいたらいいな」
「そんなのされたら私やりにくいなぁー」
「いいじゃんいいじゃん、やってよ」
「私、たくさんの声が聞こえるでしょ」
「うん」
「その声が届けばいいな、って祈るの」


――君にあえたら 何もいらない もう何も…――

――君にあえたら 何もいらない もう何も…――

――そして伝えたい ありがとう――

――今伝えたい 私も愛しています――


「届くといいね」
「そうだね」








最終更新:2012年03月11日 10:58