『社会見学』


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喫茶リゾナント
この日のリゾナントに見慣れない顔があった。

「喫茶店をやって楽しいことがありますか?」
「そうね、お客様の笑顔かな。ここには常連さんも多いし、時には相談に乗ったりもするから。」
「じゃあ、大変な事は?」
「大変なことね・・・」

愛はカウンターでコーヒーを淹れながら、小学生の女の子の取材に答えていた。
女の子はハスキーな声で見た感じ男の子に見える。

「それにしても今日はもうひとり来るんじゃなかったの?」
「そうなんすよ。もうさっきメールしたら寝坊したって。」

ガランガラン!
リゾナントのドアが開かれて、ぽくぽくした感じの女の子が入ってきた。

「おはよう~遥ちゃん。」
「優樹!それはないだろう!高橋さんを待たせているんだぞ!」
「あ、ごめんなさい。」

優樹と呼ばれた少女はあまり悪びれる様子もなく、笑顔を見せてカウンターに座った。

「ほら、挨拶!」
「私、佐藤優樹です。遥ちゃんとは同級生です。」
「よろしくね。」
「じゃあ、すいません。改めて、社会見学の取材よろしくお願いします。」


愛は喫茶リゾナントの仕事を遥と優樹に見せた。
普段通りの接客や飽きさせないための新メニュー作り、買出しでの悩みなどを事細かに見せた。

「今日はありがとうございました。」
「また、来たくなったら遠慮なく来てね。子供用のメニューもあるから。」
「はい。まーちゃん、また来ます。」

社会見学も終え、ふたりは帰宅の途についた。
しかし・・・

「遥ちゃん・・・さっきから何を考え込んでいるの?」
「優樹、あの喫茶店おかしいぞ!」
「おかしい・・・あっ、メニューの名前がおかしい!」

ズテッ!
遥は大げさにこけて見せた。
それは遥の求めた答えではなかった。

「あれは高橋さんのセンスの問題だ。うちが気にしているのはあの店の秘密だよ。」
「秘密?」

それは遥が地下への扉を見つけた時であった。

「あ、遥ちゃん。そこは単なる地下室やから。」

愛が妙にうろたえているような感じであった。
遥はその様子がどうにもおかしかった。


その数日後の日曜日・・・
「手伝わせてほしい?」
「はい。社会見学の一環で実際に働いてみたいんです。」
「うーん、まぁ難しいことやないやろうから。今日1日やったらええやろう。」

週末はよくメンバーも手伝いにくるのだが、ここ最近みんな忙しい。
いつものれいなとのふたり体制であったので、小学生の社会経験のためにも少しぐらいは手伝ってもらってもいいだろうと考えていた。

「いらっしゃいませ!」

遥は仕事の覚えがよく手際の良かった。
れいなに仕事の手順を指導させていたのだが、もはやれいなが手を出すほどではなかった。

ジリリリリリ!

「はい、喫茶リゾナントです。おう、がきさんか?今日は仕事じゃなか・・・えっ!わかったやよ、れいなと一緒に行くやよ。」

愛は電話を切ると、れいなに耳うちで何かを伝えるとれいなは急いで地下へと降りていった。
そして・・・

「ごめん、遥ちゃん。急用が出来て、今日は店を閉めないといけなくなったやざ。」
「そうですか、わかりました。」

遥は帰り仕度をして、リゾナントを後にした・・・はずだった。

「何かおかしい。あの人たち、何か隠している。」


それは遥の直感であった。
遥は帰ったと装ってリゾナントの裏口で動きがあるのを待っていた。

「遥ちゃん!」
「うわっ!優樹、驚かすなよ!てか、どうしてここに!」
「遥ちゃんと遊びたいと思って、家に行ったらおばちゃんがここにいるって。」
「たくっ・・・今は忙しいから遊ぶのはまた今度・・・」
「あっ、高橋さんがでていくよ。」
「えっ!」

優樹は裏口からでていく愛を指差した。
そして表の方かられいなもやってきた、どうやら表のドアにCLOSEの表札をかけたのだろう。
遥はふたりの後を追いかけた。

「優樹、お前は帰れ。」
「ええー!まーちゃんも尾行したいよ。」
「やめておけ、優樹はどんくさいから、失敗する。」
「嫌だ、連れていかないのならここで大声あげちゃうから。」

今にも優樹が声を荒げそうだ。
この尾行を成功させるためにも優樹を黙らせないとならない。

「わかったよ。ただ足は引っ張るなよ。」
「はーい。」


ふたりは愛とれいなの後をつけていく。
愛とれいなはある場所で立ち止まった。
そこに里沙も駆け付けた。

遥はいよいよ怪しくなってきたと思い、身構えた。
すると里沙は愛とれいなにがみがみと説教されているように見えた。
そして3人は移動を始めた。

「遥ちゃん、あの人たちはいっちゃうよ。」
「うん。」

遥と優樹は3人を追いかけて、走り始めた。
そして角を曲がると・・・・

「うわっ!」
「はい、探偵ごっこはここまでね。」

そこには里沙が仁王立ちで待ち受けていた。

「あなたたち一体何者?」
「残念だけど、あなたたちが危険な目に会うから教えられない。あなたたちは今日の事を忘れてまっすぐ家に帰る、分かった?」
「「分かりました。」」

里沙の精神干渉で遥と優樹は大人しく家に帰っていった。

「たくっ、子供に後をつけられているのに気付かないなんて。」

里沙は呆れながらも愛とれいなの後を追った。