『InvisibleBlade 第四話「見えない刃」』


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上空を輪になってゆっくりと旋回する漆黒の機体
比類なきステルス性能と策敵能力を持つダークネス正規軍の哨戒機
『ジェットストライカー』
その闇の狩人が1機、2機・・・8機・・・

狙いは恐らくこの”箱”だろう
もうダメかもしれんね・・・いや、もうダメだ
鈴木香音は箱を抱きかかえてへなへなとその場に崩れ落ちる

”箱”がある以上いきなりバルカンやミサイルをぶっ放してはこないだろう
でもアレに乗ってるのは”アイツら”なんだ

旋回していたジェットストライカーが各々ホバリングを始めた
予想通りだね・・・
キャノピーが開き、”アイツら”が地上10mの高さから次々と勢いよく飛び降りてくる

ガシュン!ガシュン!ガシュン!

アブソーバーの音を鳴らし、派手な砂煙を挙げて次々と着地する”アイツら”
黒いラバーの全身スーツ、全く同じ動き、全く同じ体型、全く同じ顔・・・
違うのは首に付けている認識票の”A”で始まるナンバーだけ

正規軍のクローンサイボーグ兵、通称『A』だ

並みの銃弾なら跳ね返すナノスキン装甲、ある程度はダメージを受けても回復する再生能力
常人の10倍はあるといわれるパワー、そして何よりも恐ろしいのは

「話通じないんだよね、アイツら・・・」

命令厳守、機械仕掛けのお固いアタマの非情なデク人形なところだ
そんなのが8人も来たんだよ・・・終了でしょこれ

はっ、と香音は我に返る
サヤシは?
こうなった以上せめてあの子を巻き込まないように大人しく箱をアイツらに・・・
アイツらに・・・

えっ?

「でぇやぁあああっ!!!」

香音は声を聴いた
そして見た

遠くの方で
ポーン、と勢いよく飛ぶクローン兵の首を
左手で勢いよく”見えない刀”を振り抜くサヤシを

ちょ・・・香音は震えた。ゾクゾクが止まらなかった。

フォォーン・・・不吉な音が聞こえる・・・あの音!
あらゆる物質を崩壊させるクローン兵の内臓兵器”超振動ブレード”の音
腕に”超振動ブレード”を纏ってサヤシに襲い掛かる別のクローン兵

「危なっ・・・」

叫ぼうとした瞬間、クローン兵の腕が”見えない刀”でまたポーンと斬り飛ばされる

サヤシ・・・サヤシ・・・

「サヤシーーーーっ!!!」

香音は叫んだ。なぜ叫んだのかは自分でもわからない。
でも叫ばずにはいられなかった。

「”当たり”のようですね。ヤグチ様」
「やっと見つけたぞ!InvisibleBladeぉ!!!」

香音達が居る砂漠から数十キロ離れた場所の上空を横切る巨大な影
全長400m、全幅1km。ジェットストライカー搭載数150機。搭載クローン兵300名。
古の遺産、反重力エンジンで宙を舞う輝ける漆黒の蝶

ダークネス正規軍極東地区西部方面軍旗艦:空中空母『シャイニングバタフライ』

そのブリッジで巨大な艦に似合わぬ小さな艦長、ヤグチマリは激昂していた

「増援を送りますか?」 

副長が恐る恐る尋ねる

「当たり前だぁ!ウチの庭で散々好き勝手してくれた報いを受けさせてやる!」

ヤグチはバン!とサヤシとクローン兵達の戦いが映っているモニターを叩く

極東地区西部方面、ヤグチの管轄エリアでは1年ほど前から奇妙な事件が起こっていた
クローン兵”A”シリーズが次々と何者かに”斬られ”、活動停止状態にされていたのだ
しかも活動停止、とは言ってもただ単に動けなくされたというレベルではない
普通”A”シリーズは首を飛ばされようが、足を破壊されようが再生ナノマシンの力で
自力再生し活動再開するはずなのである。

しかし、1年前から現れた謎のテロリストに斬られた”A”シリーズは再生ナノマシンが
働くどころか完全に活動を停止し二度と起動しない状態になっていたのだ。

西エリアの技術者を総動員して回収された”A”の残骸を解析・・・
そして遂には中央政府のメインコンピュータ”MAR-CHE”までも使って解析したが
”A”の活動停止の原因は”不明”だった。

そうこうしているうちに、西エリアの”A”シリーズは次々と”斬られ”活動停止に追い込まれて
いった。その数はこの1年間に50を超え・・・100体の大台に乗ろうとしていたのだ。

鋭利な断面・・・そこを解析しても何の物質的痕跡もなく何を使って斬ったのかも
わからない。いつしか、正規軍の中で謎の襲撃者はこう呼ばれるようになった。

見えない刃 ”InvisibleBlade”

当然、この事件はダークネス政府の定例幹部会議でも大きな話題となった。

「ぎゃはは!ナメられてるんじゃねぇの?」

北エリアの統括官”魔女”の嘲笑が今も忘れられない
外様のくせに・・・

「ヤグチ、アカンで。たとえ小さな火でも大火事になることだってあるんや」

闇のエリート家系、10代続く伝統あるヤグチ家の名誉を傷つけられた
ゆうちゃんの前で恥をかかされた・・・ちくしょう・・・ちくちょう・・・

InvisibleBlade、絶対に許さない!



「・・・様、ヤグチ様!」

副長の声でヤグチは我に返る

「うるさいっ!何だっ!」
「”箱”の回収はどうなさいますか?」
「そんなもんはどうでもいい!あの細い目の糞ガキに全戦力集中しろ!」
「しかしアレは”MAR-CHE”の判断では回収しなければ後々の脅威になると・・・」
「うるさいっ!おいらの言うことが聞けないのかっ!」
「も、申し訳ありませんっ!」

わけのわからない”箱”あんなガラクタが盗まれたから何だっていうんだ
そもそも”MAR-CHE”みたいな旧時代のポンコツの言うことなんか聞けるか!
ヤグチマリは直ぐにモニターに向き直り、ヤキモキしながら戦況に見入った

キィイイイン!
袈裟斬りにした木偶人形の身体が崩れ落ちる

「5人・・・」

流石に左手一本はキツい・・・ただでさえ固いコイツらを斬るのはかなりの”気力”が要る
さっきのKYにちょっと油断し過ぎたかな・・・あと3人っ!

やや遠く、後ろに居た木偶人形の左手が変形する・・・ブラスター!
させないっ!伸びろっ!

剣は・・・届いた!

伸びた御神刀に頭を貫かれた木偶人形は明後日の方向に派手にブラスターをぶっ放し、倒れる
あと2人・・・

つっ・・・眩暈がする
もう少し、もう少しだけ・・・

霞む視界の中、木偶が2人並んで走ってくる・・・まとめて横薙ぎで斬るっ!

「うぉおおおおおおおっ!」

目いっぱい剣を伸ばし、振る!

手応え!1つ・・・2・・・
気力が・・・斬れ味が鈍って・・・1体目の木偶を斬りきれないっ・・・

跳んだ!?横並びの右側、2体目の木偶の身体が宙に舞い
腕のブレードを構えて私に躍りかかってくる

ヤバいっ!

「おおおりゃー!」

突然、後ろから腰に凄い衝撃
私は顔面から砂に倒れ込む・・・ぐはっ!

「まだ決着はついとらんけん!」

背後からタックル
さっきアッパーで寝かせたKY・・・
今でスカ・・・マジで空気嫁・・・

ガシュンっ

やや後ろで鈍い音

跳び上がって踊り掛かってきた木偶人形は私が倒されたことで
勢い余って私とKYを飛び越えて後方に着地したらしい

「起きぃ!」

KYが私の胸倉を掴んで引き起こそうとする

「バカ!後ろ!」

反転した木偶人形が手刀を構えて襲い掛かってくるのが見える

「あ?」

KYがぼーっと後ろを振り向く、間に合え!
最後の気力、御神刀をKYの脇の下の隙間からから突き出すっ!

ガシュンっ!

一瞬の静寂・・・

木偶人形の手刀はKYごと私を貫こうとする体勢のまま停止し
私の左手には木偶人形の胸に御神刀が突き刺さった手応え

間に合った・・・
私は心に念じ、木偶の身体の中に御神刀の力を開放する

”正しき理(ことわり)に還れ・・・しゅわしゅわ~、ぽんっ!”

木偶人形の目から光が消え、ガシャッと崩れ落ちる

「ちょ・・・」

KYが何か言おうとしている
恐らくはまだ状況が把握できてない
後はこのKYをぶちのめ・・・

「アンタぁ!」

突然KYがデカい声で叫んだ
は?なんかKYの目がうるうるしている
気持ち悪い・・・

「えりのこと助けてくれたとか!」

そうじゃない、そうじゃないよ
結果的にはそうかもしれないけど

いや、そんな顔近付けられても・・・



「”A”シリーズ8体、全滅・・・」

モニターに映る絶望的な光景、副長の力ない呟き
正規軍が誇る無敵のクローン兵士が無残にもバラバラに

「キーッ!増援はまだかまだかまだか!」

ヒステリーを起こしたヤグチが副長に掴み掛る

「集結にはまだ暫くかかります・・・個々に襲い掛かってもおそらく勝ち目は・・・」
「アイツら逃げちまう!そうだ!ジェットストライカーってリモート操縦できたよな!」
「は、しかし下手に火器を使うと巻き込まれて”箱”が壊れてしまう可能性が・・・」
「だからあんなガラクタどうでもいいって!さっさとミサイル一斉発射だ!」

いいのかなぁ・・・どうなっても知らねぇぞぉ
副長は心の中でぼやきながら
サヤシ達の上空で待機しているジェットストライカーのリモートコントロール指示を出した。

「攻撃準備!」