■ ドロシーシステム -石田亜佑美- ■


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目次


■ ドロシーシステム -石田亜佑美- ■


『カムオン!リオン!』

大気が渦巻き、その少女の足元に"何か"が凝縮された。
姿は見えない。だが、"何か"かがそこにいる。
しかし、"能力者"、高橋愛には見えている。

 逆巻く鬣、鋭い牙、巌のごとき体躯

それはまるで、獅子の石像がそのまま動きだしたかのような姿をしていた。

『リオン!アタックモード!』

少女の号令が闇を貫く。
獣の咆哮は少女と、高橋にのみ聞こえているのだろう。

『GO!』

『リオン』と呼ばれた獅子の幻獣は、引き絞るゆみが如く、
たわめた総身を低く伏せ、
一気に高橋の…その喉笛めがけて殺到する。

だが

「ボリン!」

ムッシャ、ムッシャ、ムッシャ…
咀嚼、"それ"は突然現れた。

「リ、リオン!そんなっ!」

喰われている。獅子の石像が巨大なアギトに噛み砕かれ、悲鳴をあげている。
巨大な口、無数の棘、二対の腕に二対の脚…この世ならざる魔獣が、そこにいた。

「イリュージョナリービースト…その怪物はそう呼ばれてるんやろ?」

「お…お前もDシステムを持っているのか!?」

「D?ああ、あーしのコレは"ある人"から…いや、いまはあーし自身の力やよ。」

「そんな…Dシステム無しで直接IBを使役するなんて…ありえない…ありえないっちゃ!」

「あーしの名前は高橋愛…石田亜佑美ちゃん。あなたをスカウトしに来た。」

「スカウト?…ふん!断る!Dシステムは渡さない!」

「…あーしは…」

『カムバック!リオン!』

号令とともに、半ば喰われた獅子が空に四散する。

『カムオン!バルク!』



連続して放たれた号令は、まるで力士のような体格の、板金鎧に身を固めた巨人を出現させる。
巨人?だが鎧の隙間からは、なにも見えない。空洞。
巨人では無い。巨大な鎧そのものが動いている。

『バルク!アタックモード!』

巨人はその背に負った巨大な鉞を手にとり、主人の号令を待つ。
殺戮の、その合図を。

「無駄やよ…石田亜佑美。」

高橋は冷徹にそう宣言する。

『GO!』

巨人と、魔獣が、激突する。



■ セットドキュメントヒトミ -吉澤ひとみ- ■


「念動力?ああ"一応そういうことに"なってるわな」

遠い昔、あの人の念動力について聞いてみたことがある。
石川さんと目が合うと、二人で
ばつが悪いような、悲しいような不思議な顔をして笑った。
あの頃、あーしも、みんなも、あの人の能力を、ずっと【念動力】だと思っていた。

――――――――

吉澤ひとみ【念動力(サイコキネシス;psycho kinesis)】
 意思、精神の力で手を触れずに物を動かしたり、破壊したりする能力。
 特に吉澤のそれはまるで直接手で操作しているかのような繊細さと
 反対に巨大な猛獣が暴れたかのような破壊力とをあわせもっていた。

吉澤ひとみ【幻想の獣(イリュージョナリービースト;illusionary beast)】
 吉澤ひとみが【念動力】と偽っていた能力。
 『組織』の見解における能力の根源"D"、通常は他の能力者同様、
 いわゆる超能力という形で現実世界へ干渉する。
 だがごくまれに、超能力とは違った形をなして現実世界に干渉することがある。
 古くは陰陽師の式神、世界各地に残る"懲らしめられた怪物が改心して英雄の家来となる"話、
 西洋の悪魔召喚等の逸話の中にもごく少数ながら"これら"の及ぼした事例が、含まれているという。
 通常その実体は自分および同質の能力者同士にしか知覚しえないが
 いわゆる霊感の強い人間のなかにもごくまれに知覚する者がいるという。
 能力者の根幹にかかわる秘密ゆえ、組織でも一部の者しかこの事実は知らされてはいない。
 吉澤ひとみのもつ"それ"は四足の獣のような体躯に巨大な口だけの頭部、
 不自然に生えた四本の腕、背中にびっしり生えた長い棘と非常にグロテスクな姿をしている。




■ インプデントアンサー -石田亜佑美- ■


静寂

石田亜佑美、そう呼ばれた少女が地に伏している。
すでに満身創痍。もはや戦う力は残されていない。

「うそ…IBだけじゃなしに…ぜんぶウチとおなじ力…」

「全く同じ能力というわけじゃないんやよ。
それにあーしはあなたの思考が読める。だから常に先手をとれる、決して後れをとらん。」

「認めない…認めないっちゃ…ウチは負けない。ウチはこんなところで負けるわけには!」

「石田亜佑美。現実をうけいれなさい…あなたはあーしに敗北した。」

「!」

「誤解してほしくないんやよ…あーしはあなたのDシステムを奪うために来たわけじゃない。
ただ…助けてほしい人達がいる…
あーしにはもう出来ないことをあなたに…
"あなたたち"に…だからあなたをスカウトしに来た」

 沈黙…



「石田亜佑美、あなたは強い子…でもその力をもってしても、あなた一人だけでは戦ってはいけん…
元に今、たった一人のあーしにすら、あなたは勝てんかった。」

高橋はそっと膝を折る、石田亜佑美の頬に触れ、その額に額を合わせる。

「!?今の…今の人達は…」

「あーしが守りたい人達…あなたに助けてほしい人達…そして、あなたの力になってくれる人達」

石田に見えたものはそれだけでは無かった。
が、石田は何も言わぬことに決めた。もう、答えは出ている。

「わかりました、高橋愛さん。あなたの申し出を受けます。
でも、ウチ…私はまだ完全に負けたとは思っていません。
あなたとは経験が違いすぎた…それだけです。
私はすぐに追いつく…私はもっと強くなる。あなたよりもっと。
必ずあなたを倒します。それまでの間だけ、あなたに従います。」

「生意気な、とっても良い答えやよ。石田。」





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