■ シーデマンデッド -岡守時秀- ■



 ■ シーデマンデッド -岡守時秀- ■

都内某所、高層マンションの一室、虎刈りにチョビヒゲの男が一人。
いや、一人ではない。男の後ろ、いつの間にか一人の女が壁に寄り掛かっている。
「元気そうっすね…でも、そうやって人の部屋勝手に入るの悪い癖っすよ"姐さん"」
「忘れてへんやろな?」
「なんすか?」
「アンタ、自分の仕事忘れてへんやろなっていうてんの」
「やだなぁ姐さん。
何度も言ってるけど、俺、別に組織の人間ってわけでも、組織に雇われてるわけでもないんすよ。
あくまで趣味でやってるだけなんすから。
それに報告は上げてるじゃないすか。ちゃあんとやってますよオレ」
「あんなペラッペラの作文、報告とは言わんわ」
「そんで、姐さん自らお説教ですか」
男が椅子に座ったまま、くるりと振り向く。
「見れば見るほどぶっさいくな顔やな」
「マジすか?オレ割と気にいってんすけどねコレ。」
「顔も声もしゃべりかたも、なにからなにまでぶっさいくになっとるやん。前の…」
「前のオレのがよかったすか?姐さん意外と面食いっすよねw」
「だまれドアホ」
「冗談っすよー更年期っすか?勘弁してくださいよ」
「マジこのハゲ」
「…殺しますか?俺を…"俺たち"を…そうしてくれるんなら…」



―そうしてくれるなら―

長い…沈黙

「…すまん…」
「なーんすか?いいんすよもーマジになっちゃって。
長い付き合いじゃないすかぁやめましょうよそういうの。」
「…せやな…」
「もー意外と姐さんかわいいとこあんだからなー。パンツ盗んじゃおっかなもー…
…え?どん滑りですか今の?」
「なぁ…もしかして…情が移ったんか?あの子たちに」
「またもーなにいってんすか。ただの趣味ですよ趣味。知ってるっしょ?
単なるストーカーっすよオレ。
ただ若い子が好きなだけですよ。情とかそういうんじゃないっすから。」

「わかっとるとおもうがあの子らは…」

「…ま…いい子ではありますよ、四人とも。
楽しいですよ、見てて…
素直で、やんちゃで、とびきり危険で…
『あの頃の』姐さん達ほどじゃないですけどね」

「…」

「心配しなくても大丈夫っすよ。関係ないっす。あのお姫様たちが死のうと生きようと」



…うそやん…

…明日香のとき…アンタは…あんなに…あんなに必死に…

「え?なんすか?」
「…なんでもないわボケ」
「オレ、姐さんの描く未来図、結構気に入ってんすから…付き合いますよ、最後まで。」
「あたりまえや。いまさら嫌やゆうても最後までやってもらうわ。」
「そうそう。やっぱそうじゃないとね姐さんは。」



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最終更新:2012年02月01日 20:55