『リゾナントリゾートin利曽南島 3日目昼(2)―何はともあれビーチバレー―』


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夏だ!
海だ!
リゾートだ!

てなわけで、海の家組とは別働隊の3人はビーチバレー大会の会場へとやって来た。

「田中さーん、Aブロックのコートってどこ~?」

大会登録メンバーその2・村のキャプテン こと久住小春が声を張り上げる。
小春はバレーボールの経験者だ。
聞いた話では、子供のころ住んでいた新潟の村でバレーのキャプテンを務めていたらしい。
なもんで、実は小春のメンバー登録は本人の了承を得る前に決めていた。
エントリーの締め切り時間も押し迫っていたことだし。
難航したのは、もう一人の補欠メンバー決めだった。

急な話で、しかも補欠は絶対試合に出られるとは限らない。
なによりリゾナンターには運動神経が優れた子が少ない。
登録メンバーその1・なんちゃってヤンキー略してニャンキー こと田中れいなは悩みに悩んだ。
でもエントリーは早くしないといけなかったから、とりあえず適当なメンバーの名前を書いて運営本部に提出した。
それが、結果的に功を奏したようで。

「あー!Aブロックはこっちって看板ありますよー!」

登録メンバーその3・ハンドスプリンガール こと生田衣梨奈は、案内板を見つけてピョコピョコJUMP!する。

そう、衣梨奈の名前で登録したのがよかった。
れいながみんなにそのことを伝えると、
『生田の名前書いたなら生田が出ればいいじゃん』
『他の人が出るとえりぽんさん(笑)の名前名乗らなきゃいけないんですよね?w』
という意見が生まれたのだ。

衣梨奈のビーチバレー参加は、それはもうあっさりと決まった。
当初は接客に未練を残していた風の衣梨奈だったが、今はもうビーチバレーモードにメリハリ!切り替え!している模様。
切り替えが早いのはいいことだ。それに話してみると結構素直で扱いやすい。
我ながらいい人選をしたとれいなは自らのファインプレーを讃えた。
誰も讃えてくれない分、自分で自分を讃えるしかなかった。


「もう!Eブロックのコートってどこよ!」
「あ、この辺でいいみたいですよ。案内板が立ってる」

とそこに後ろから、やけに特徴的な甲高い声と妙にアナウンサーじみた声が聞こえてきた。
なんか、聞き覚えがある気がする。
嫌な予感満点で振り向くれいな。

「あれ?リゾナンターの・・・・・・なんだっけ。えーっと・・・た、田中?」
「わあ~!偶然ですねー」

そこにそびえ立つのは、二つの胸囲もとい脅威。
なんとダークネスの粛清人RとDr.マルシェが水着姿で突っ立っていたのだった。

「なな、なんでおまえらがここに!」
「田中さん下がって!こいつらは敵!小春たちとは到底相容れない敵なんだよ!」
「敵!?敵なんですか!?ビームとか出ちゃうんですか!?」
「ってオイ!生田!」
「あー、ごめん。ビームは出ない」
「まゆげも小指もセクシーも石川さんのキャラじゃないですもんね」
「いやセクシーはあるよ。セクシーベイベーでアングリーなエンジェルハートだもん」
「・・・はい。続いて、次のニュースです」
「そこ流しちゃうんだ!?ツッコんでよ、どうせなら!」

途中で衣梨奈のKYが空気感染したのか、敵二人はれいなたちそっちのけで漫才を繰り広げる。

なん、こいつら。れいなの警戒心が30下がった。
なんだこの二人、しかしそれにしてもギギギ。小春の警戒心が20下がって15上がった。
おもしろーい、この人たちウケるっちゃけどー。衣梨奈の警戒心は初めからゼロだった。

「で、ごめん。なんだっけ?」
「なんでおまえらがここにおるか聞いてるったい!」
「組織の慰安旅行ですよ。年に一度の」
「いあ・・・?なにそれ?」
「なんだろ、“みんな一年お疲れ様旅行”って感じですかね?」
「わかった!アイドルがファンクラブイベントや写真集撮影を口実に南の島でのんびり~、みたいなことですよね!」
「・・・あんたね、お話と現実をごっちゃにしないでくれる?しかも全然違うから」

そう、実は悪の組織ダークネスの年に一度の慰安旅行は2日前から始まっていたのだ。
オーストラリアや韓国や香港inこんこんなんてこともあったけど、今年の旅行地は国内外の金融不安や先の自粛ムードに配慮して利曽南島に。
ついでに触れておくと、旅行参加者である幹部の皆さん十数名はこの先の老舗旅館にお泊りしている。

「奇遇ですよね。リゾナンターのみなさんも旅行ですか?」
「そそそそれは機密情報やけん、教えんもん!」
「そんな警戒しなくてもいいのに。あたしたち今オフだもん。暴れたりする気なんかないわよ」
「しんよーできないね、そんなの!」
「本当ですよ。私たちだってビーチバレー大会が中止になったら困りますから」
「やっぱり参加するんですか?」
「当然よ。最近体がなまってたからね。運動不足を解消させてもらわなくっちゃ」

ゴゴゴ、とRの後ろに炎のオーラが見える。
赤く燃えたぎるそれは、暑苦しいアスリートのそれだった。
一方で、その隣に立つマルシェは青い炎のオーラを纏っている。
赤い炎よりも静かだが、温度は赤を優に超えている。
この二人、本気だ。
本気でビーチバレーをしに来ている。

「やるからには優勝を狙うわ。あたし負けるの嫌いなの。あんたたちも出るんだったら覚悟しておきなさい」
「AブロックとEブロックなら、私たちが当たるのは決勝ですね。そこでお会いしましょう。
 もっとも、そこまで勝ち残っていたら、の話ですけど」

不敵な笑みを残し、去っていく二人。
悔しいことにその嫌味な姿が様になっていて、余計にれいなはイラッときた。

「小春っ!生田っ!あいつらにはずぇーったい負けられん!決勝で叩き潰してやるとよ!」
「おう!あの二人は敵だ!小春たち・・・いや、全人類の敵だ!」
「悪の女幹部って感じでかっこよかったとー!また会いたいですね!」
「「おまえはこっち側の人間だろうよ!!」」

各々思いの違いはあるけれど。
とりあえず、れいなと小春と衣梨奈の三人は決勝まで勝ち残るという決意を確かにした。



「村のキャプテンアターック!」
「ぐはっ!」
「猫だまし!」
「ぬぉ!」
「かーらーのー・・・肉球ブロック!」
「わぁー!」
「フレッフレッ、こ・は・る!フレッフレッ、れ・い・な!」

小春とれいなの大技小技が炸裂し、バトンを振り回す(けどよく落とす)衣梨奈の声援が響き渡る試合展開。
れいなたちのチーム“CanCamメープル07”は順調に大会を勝ち進んでいた。
次はいよいよ決勝戦、運命の大一番を迎える。

「どおりゃー!これで終わりよっ!!」
「きゃー!」
『強い!強いです、“チャーミー&ビューティ”ペア!またしても圧勝で決勝進出~!』

歓声で隣のコートが沸きたった。
どうやら向こうも決着がついた模様だ。

『決勝はAブロック代表“CanCamメープル07”と、Eブロック代表“チャーミー&ビューティ”で争われることになりました!』

番狂わせなどもなく、決勝の相手はすんなりとあの二人に決まった。
決勝戦は一時間後。
そこで賞品の牛肉とフルーツの盛り合わせ、正義の味方としての責任、Aブロック代表としての誇りetcを賭けた魂の死合が始まるのだ。
負けるわけにはいかない。なにがあろうとも!

そこでれいなは無い知恵を精一杯振り絞って考える。
果たして自分たちはあの二人に勝てるのか、と。

見たところ、あの二人は強い。
試合中一度だけ許されている交代枠をここまで一切使わずに勝ち上がっている。
れいなたちに限らず他のチームは疲れたらもう一人と交代、という要領で戦ってきたというのに。

だが、逆に考えればそこが勝ちへの狙い目だ。
いかに負けず嫌いな体力お化けのスポーツ馬鹿×2と言えど、真夏の太陽の下でここまで連戦を繰り広げて疲れが溜まっていないはずがない。
長期戦に持ち込めば、れいなたちにも充分勝機はある・・・はず。

「小春!生田!」
「はーい?」
「なんですかぁ?」
「決勝は、粘っこく粘っこく行くけんね!あいつらに楽をさせんよーに!」
「「はーい」」
「そんでなんとしても勝利して、優勝賞品の『牛肉とフルーツの詰め合わせ』を手に入れるとよ!」
「あーあ。衣梨奈は賞品よりも新垣さんとデートする権利が欲しいなぁ・・・」
「「はあ!?」」

せっかくれいながメンバーの士気を高めようとしてるところで、水を差すKY。
れいなと小春は眉を吊り上げる。
つーかなに、その若干憂いのある横顔。
どこの恋する乙女だ、おまえは。

「バカじゃないの?生田ちゃん、ブァカじゃないの!?」

小春も声を荒らげる。
いいぞ小春!もっと言ってやれい!

「ちょっと最近にーがきさんに可愛がられてるからって調子乗んないでよね!」

ってオイ!(←れいなボイスで)

「にーがきさんの相方は小春だよ!?だってにーがきさん、小春が耳元で騒いでる時が一番迷惑そうな顔するし!」
「そんなことないですよ!この前衣梨奈が深夜1時頃に新垣さんに電話した時の
 『電話してくるのはいいから、もう少し早い時間にしてくれない?』って声のほうがよっぽど迷惑そうでしたもん!」

ガキさん・・・(涙)
れいなが同情を寄せている間にも、小春と衣梨奈の「里沙の困らせ自慢」はエスカレートしていく。
さして里沙に興味も執着もない身としては、ぶっちゃけかなりどうでもいい。
っていうかあの人の一番の困った顔は任務以外で長時間れいなと二人きりになるとわかった時の顔じゃなかろうか?

「じゃあ、次の試合でアタックをたくさん決めたほうが勝ちっていうのはどうですか!」
「甘いね!バレーはただアタックすればいいってもんじゃないんだよ!レシーブだってブロックだって大切なんだから!」
「じゃあじゃあ、アタック決めたら3点、ブロック決めたら2点、レシーブなら1点っていうのは?」
「いいよ、受けて立つ!最終的にポイントが高いほうが勝者だ!」
「負けません!」
「小春だって!」

れいなが対抗なのか自虐なのかよくわからないことを考えているうちに、なんか話がついたらしい。
動機と目的はともかく、二人のやる気はさっきまでとは段違い。
闘志がオーラとなって目に見えるようだ。
これなら決勝だっていけるかもしれない。

「よぉし!田中さん!」
「な、なんね?」
「小春と生田ちゃんどっちが何点とったか、外できちんと数えててくださいね!」
「ちゃんと公正に見ててくださいよ!」
「はぁ!?・・・ちょ、ちょお待って!」

慌てて二人のマシンガントークを止めに入る。
今なんと言ったか、この二人は。
『れいなが外で公正に数える』?

「だって自分たちで数えてたら、ズルし放題じゃないすか」
「それに絶対途中でわかんなくなっちゃうし。試合に集中できないですよ」

それは確かにそうだろう。
だけどそれってつまり、“れいなは試合に出ずに横で黙って見てろ”という意味に他ならないのでは―――

「見てろぉ!勝ってにーがきさんにいっぱい褒めてもらうのは小春だぁ!」
「衣梨奈だって、勝って新垣さんに“生田、成長したね”って言ってもらって、金メダルにサイン書いてもらうんですっ!」
「あの、もしもし・・・・・・」

他人など目に入らないといった感じでヒートアップする二人。
れいなの声など聞いちゃいない。
こうなったら、ちょっと癪だけどガキさんに電話して、二人を落ち着かせてもらおうかな。
そう考えて携帯を手にとったところで、れいなはふと思った。


れいな、ガキさんの電話番号登録しとったとかいな・・・?


で、結局。
れいなとガキチル二人の温度差は縮まらないまま、“CanCamメープル07”は決勝を迎えた。
決勝は利曽南島ビーチバレー大会史上稀に見る激戦の末。
れいなたち“CanCamメープル07”が勝利した。
ただしその試合で、登録メンバーその1となっていた人物がコートの中に入ることはなかったという。