「Do it! Now」


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「Do it! Now」(かなしみの人ver)
次回予告

絵里に動物園へと誘われるさゆみ・・があまり気が進まない
さゆみは過去に 虐待された動物の心を読み その『人間に対する恐怖』
がトラウマになり 実は動物を触る事さえ無理な状態であった

動物園ではしゃぐ絵里の心を読む・・ただただ楽しんでいる・・
しかし その姿は今日のさゆみにとっては不愉快でしかなく
大ゲンカへと発展してしまう・・     そして現れる敵

おびえる動物の感情が一気に流れ込み 体がすくんで戦えないさゆみ!
絵里のチカラで動物を落ちつかせるのだが・・・数が多すぎる!
ならばと絵里は動物の避難をさゆみに託すが 触ることすら出来ない!!

       普段ポケポケしている絵里が叫ぶ!




    「今 さゆが助けに行かなきゃ誰がたすけるの!?」
「絵里はさゆの事信じてる 私には予知のチカラが無いけど わかるから!」





      『ハッ!』とするさゆみ・・・・・そして


次回かなしみ戦隊リゾナンター「Do it! Now」






  さゆみは目の前のウサギをゆっくりと撫でる・・・
 流れ込んでくる感情は恐怖などではなく 信頼であった



【本編】
「Do it! Now」((44)206ver)

恐怖は内包的な感情であり、『死』と同等に結び付かれる感覚だ。
生存という名の本能。逃避という名の反応。

そして恐怖はトラウマとして特定の対象に対して反応を覚える事がある。
ある心理学者の研究により、動物や高さが植物や自然のものよりも拒否反応を示すことを発見した。
人間は恐怖により怯えた状態になり、他者の望みに一方的に従うことがある。
その一方で同様に暴力的にもなり、命を懸けて戦うこともある。

 思い出すのも辛い"過去の恐怖"。
 其れを、否応構わず受け入れてしまうチカラを持って生まれてしまったのは不運だろうか? 


道重さゆみは悩んでいた。
昨日、亀井絵里との買い物帰りに、絵里が唐突にこんな事を言い始めたのだ。

 「ねぇさゆ、動物園に行かない?」

彼女からの約束は滅多に無いのだが、話を聞くと病院で仲良くなった看護士の
知り合いがその動物園で働いているらしく、招待してくれるというもの。
その看護士は仕事で行けないという事で、二枚入場券があるからとさゆみを誘ったそうだ。

 「この前遊園地に遊びに行ったじゃない?だから今度は動物園に行きたいなーって」

絵里は病院暮らしが長く、学校にもあまり通えず、修学旅行などの行事にも参加した事が一度も無い。
外の世界を知り、好奇心旺盛な絵里をさゆみは支えてあげることを決意していた。
だが。

 「ごめん、絵里。私はいいや」
 「え?なんで?さゆ動物とか嫌いだった?」
 「そんなんじゃないんだけど…」
 「大丈夫だよーきっと楽しいよ?ね?行こう?」


その後、絵里の強い説得に仕方なくさゆは頷くしか無かった。
待ち合わせ場所と時間を話したあと、絵里は別の話題へと話を変える。
そんな中でも、さゆみは複雑な気持ちを抱いていた。

絵里と別れ、さゆみは家路へと歩み始める。
夕陽が落ちる姿を見つめながら、さゆみは小さく溜息を吐いた。
―――その時、嫌な予感と脳裏に過ぎる、断片。

 『―――ッ!』

さゆみはその場で耳を押さえ、流れ込む"声"に必死に抵抗する。
"声"を辿ると、一匹の犬がさゆみに向かって咆哮していた。
飼い主が植えてある樹木に首輪と紐を繋げて何処かで買い物に行ってしまったのだろうか。
吠える声は尚も続くが、滑り落ちた買い物袋を掴み上げ、さゆみは逃げるようにその場から離れた。
聞きたくない。
人間の"声"にも反応するこのチカラは、当然動物にも反応する。
特にさゆみの場合は、過去に"トラウマ"を抱えていた。

 「…どうしよう」

家に着き、ソファに座って携帯の画面を開き、さゆみは呟く。
だが彼女の残念そうな笑顔を浮かべ、諦めたように画面を閉じ、明日の準備を始めた。
他のメンバーにも相談した方が良かったのかもと思い至るが、悩んで終わってしまうのは目に見えている。
自分を無理矢理安心させ、早めにベットの中へと入った。


翌日。
30分遅めに言っておいた時間通りに絵里の姿が現われる。
「ごめんごめん」と何処か悪びれた様子も無いテンポで謝罪し、さゆみの手を取った。
さゆみはあまり寝付けなかった所為で少し寝不足だったのだが、力なく笑う。


 「さゆ、なんか顔色悪くない?」
 「え?う、うん、ちょっと寝不足で」
 「あ、なんだ。そんなに楽しみにしててくれてたんだーじゃあ早く行かないとねっ」

入場し、絵里は颯爽と動物の居る檻へと引っ張り出し始めた。
絵里にもさゆみと同じチカラを持っているが、【精神感応】ではない。
だから彼女はさゆみの気持ちに気付かないまま、楽しい一日を送る事に期待している。

さゆみは、徐々にではあるがそんな身勝手さに苛立ちを思えていた。
人の心は常人には決して見える事は無い。
だが絵里は、さゆみのこれまでを知る人間であり、傍に居る人間の一人だ。
それなのに、と思ってしまう。
楽しそうに、嬉しそうにしている絵里の心を覗き、さゆみは次第に不愉快になっていった。

受け答えに違和感を覚えたのだろうか。
絵里はさゆみを近くのベンチに連れて行き休憩させると、ある言葉を投げ掛ける。

 「さゆ、全然楽しそうじゃないね」
 「別にそんな事ないよ」
 「嘘、そりゃ絵里がムリヤリ連れてきたんだけど、さゆがそんなんだと全然楽しくない。
 イヤならイヤってちゃんと言ってくれたら絵里だって」
 「だから違うってばっ」

声を荒げるさゆみの姿と声に歩行中のお客の視線が集まった。
絵里も驚いたように見開いた目で見つめる。

 「絵里は全然分かっちょらん。さゆみだって、絵里と遊びに行けて凄く嬉しいもん、でも…」
 「じゃあ何が不満なの?ハッキリ言いたいことがあるなら言って?」
 「…絵里に言ったって、意味無いもん」


ムッと、絵里はその言葉に表情を歪ませる。
さゆみは内心で「しまった」と思ったが、本音に近い言葉ではあった。
いくら彼女に打ち明けたとしても、それを治す意志がなければ意味が無い。
今の自分では克服できるものではないと、何処かで思っている証拠だった。

 「あ、そう。じゃあもう良いよ。さゆなんか知らない、勝手にすればいいじゃん」

絵里は立ち上がると、どこかへ走って行ってしまった。
追いかける気は起こらず、まだ怒りは納まらなかったが、先程の喧嘩は明らかにさゆみの所為だった。
一人になった途端、言い知れない不安に駆られながらこれからどうするかを模索する。
その時だった。

 「道重さゆみだな?」

さゆみが座っていたベンチの前に現われる黒装束の男。嫌な予感がし、さゆみは男から逃げようと身構える。

 「フフ、悪いが、我々はお前の"過去"を調べさせてもらった」
 「え…?」
 「亀井という少女を使えばお前も来るだろうと思っていたが、まさかこんなに上手く行くとは。
 どうだ?"恐怖"に囲まれた気分は?」
 「!?なんで…っ」
 「闇を生み出すという事は、こういう事なのだよ」

男は懐から小型の機械を取り出し、スイッチを押した。
すると周りの檻に居た動物が一斉に悲鳴のような雄叫びを上げ始めたのだ。
客達は突然暴れだした動物からの恐怖に駆られ、逃げ出し始める。

 『――――――ッ!』


昨日の比ではない大量の"声"が、さゆみの脳裏へと波の様に押し寄せる。
頭を抱え、その場に座り込んでしまった。
全身が震え、悲鳴を上げそうになったその時。

 「さゆ!」

背後から聞こえた、絵里の声。

 「さゆ!大丈夫!?さゆ!!」

だが、直接流れ込む"声"への抵抗によって言葉を返すことが出来ない。
絵里はさゆみの震える肩を掴んで揺すってみるが、さゆみはただ首を振るだけ。

 「さゆになにをしたのっ!?」
 「お前も愚かだな。この少女の"恐怖心"も知らずにこんな場所へ来るとは」
 「え?何の、事?」
 「幼少時代、この少女は虐待された動物を見てしまった。
 その時に感じ取ってしまったのだろうな、『人間に対する恐怖』とやらを。
 チカラによって周りから苛まれていた少女にとって、その感情は同調されやすかったのだろう」

檻を壊そうとする動物を必死に落ち着かせようとする飼育員。
だが脱走を試みる動物達に追いかけられる客達は、我先にと出入り口へせめぎ合う。
子供の泣く声。客達の悲鳴と怒号。そして動物の咆哮。

 「そんな…っ」
 「我々が手を出すほどでもないな。自身の中にある『闇』で潰れてしまえ」
 「―――ッ! させない、絵里が何とかしてみせる!」

黒装束の男が消えた後、絵里はチカラを発動する。
とにかく動物達を落ち着かせなければ。


【風使い】としての自身のチカラで、暴走する動物達を死角の方へと追い込んでいく。
だがチカラの威力の限度を考えると、あまりにも数が多すぎる。
特に小さな動物はとてもではないが手が回らない。その時、絵里はさゆみのチカラを思い出す。

 「さゆ、さゆからあの子達に呼びかけて!」

【精神感応】は携帯で言う所の"受信"と"送信"だ。
言葉を交わさずに通信できるのであれば、さゆみの言葉も動物に届く。
だが、さゆみは怯えきってしまい、絵里の言葉に左右に首を振ってしまう。

 「今、さゆが助けに行かなきゃ誰がたすけるの!?」

触れる事すら出来ない事実を知ってもなお、絵里はさゆみに叫んだ。

 「絵里はさゆの事信じてる!私には予知のチカラが無いけど、わかるから!」

チカラで感じる事だけが全てではない。
その事実を知ったからこそ、絵里は信じていた。さゆみの中に元々宿っている力を。

 「さゆ!あれ!」

絵里の視界には、脱走した象が錯乱して小動物の群れに突進しようとしていた。
あの足に踏まれてはひとたまりも無いのは明らか。
だが自身の両手の中を手放すことは出来ない。叫ぶ絵里に、耳を押さえ続けるさゆみの背中。

 ―――ほんの数秒前から発動した【予知能力】。
 思い出すのは、あの日の事。


 愛されず、毎日の日々が恐怖で覆われていた"アノ子"を救えなかった自分の姿。
 思い出したくないはずの記憶がフラッシュバックのように蘇り、予知する光景と重なる。
 聞きたくないと耳を押さえて差し伸ばすことが出来なかった少女。
 だが、もうあの頃の自分にだけは―――戻りたくない。







 ―――離した手。
  其れは確かに、恐怖の中で唯一つの"未来"を掴み取っていた―――


世界はオレンジ色の夕焼けに覆われている。
動物園はあの騒動からは考えられないほどの静寂に包まれていた。

 「一時はどうなることかと思ったけど、まぁなんとかなって良かったね」
 「ごめんね、絵里、その、いろいろと」
 「いいよもう、絵里こそ悪かったから、これでおあいこ。あーでも、ちょっと騒いだらお腹すいちゃったなー」
 「じゃあ皆のところに行こっか。連絡しなきゃね」

さゆみは自身の腕の中で眠るウサギに別れを告げ、毛並みを撫で上げる。
触れた時に初めて分かる暖かさと、感情。
生存という名の本能でもなく。
逃避という名の反応でもない。

 傍に居ると言う、"信頼"の証だった。




【解説】
虐待された動物が心に抱いていた「人間に対する恐怖」に感応してしまい、動物に触れることが出来なくなったさゆみ。
そんなさゆみが絵里に誘われて、気が乗らないままに赴いた動物園で遭遇した敵の襲撃。
動物たちを避難させるにはさゆみの力が必要だが、トラウマで体が動かないさゆみを激励する絵里の言葉、そして信頼。
絵里との友情を支えに困難な壁を越えるさゆみの姿を描いた「Do it! Now」の本編を描いたのは・・・ (44)206 名無し募集中。。。 の人だった。
作家としての名前こそ明かさなかったものの、冒頭の『恐怖』に対する深い考察や、極め細やかに描かれたさゆみの心情は、作者の高い筆力を物語っている。
リゾスレのテンプレに記載されている能力の設定においては、さゆみは治癒能力者として設定されているのは周知の事実である。
『癒し』という言葉はさゆみの代名詞になっており、切り離せない存在でもあるのだが、かなしみ戦隊シリーズにおけるさゆみの役どころは、(動物の心をも読めるという意味では)愛よりも高度の精神感応者であり、予知能力者である。
そんな独自の設定を忠実に作品に織込み、更にかなしみの人の予告編に描かれていない部分を格調高い文章で描き切った佳作が本作である。



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