『モベキマス結成&ドラマ記念 学園潜入』


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目次

プロローグ

鴎卵学園
今日、里保は書道部で字を書いていた。

「いや、鞘師さん。うまいね、これなら賞をとるのは確実ね。ぜひともうちの部に入ってくれない?」
「えっ、そうですね。考えときます。」

里保はこういった会話を入学してからずっと行っている。
人並み外れた運動神経のよさと器用さからあちこちの部から勧誘を受けている。

そして放課後・・・
「ねぇ、なんで里保ちゃんは部活に入らないの?」
「だって、部活に入ったら時間が縛られるでしょ?私の立場だとそれよりも帰宅部にいたほうがいざという時に動きやすいから。」
「普通の生活が送れないんだね。」
「そんな事を言っているずっきは何か決めたの?」
「いや、私元々運動はそこまで得意じゃないから。とは言っても文系の部でもあったものはないし。モノマネ部とかないのかな?」
「それよりも補修大丈夫なの?こないだの期末テストで先生にふざけるな、許さないって言われたでしょ?」

実は先日、期末テストがあり、その中で香音は理科のテストで答案にふざけた答えばかりを書いて、先生に叱られたのだ。

「大丈夫、大丈夫。いざという時は力を使って、逃げればいいんだから。」
「先生がいないからって勝手なことばっかり・・・」

ゾクッ!
里保は突然、後ろを振り返った。

「どうしたの?」
「誰かに見られている。」
「えっ、もしかして先生?」

里保は水軍流である程度気配を掴むことができる。
ここまで怪しい気配はただものではない。
里保は気配のした曲がり角まで走りこんだ。

ガバッ!
誰かに抱きつかれる感覚に里保は襲われ、それを振りほどこうとしたが・・・

「りほりほ、会いたかったの。」
「えっ?道重さん、どうしてここに?」
「りほりほに会いたくって来ちゃった。」
「会いたいからって・・・・なんで制服着ているんですか?」

確かにさゆみの格好は鴎卵学園の制服であった。

「りほりほに会うためならどんなことでもするの・・・ふふふふ。」

完全に変態の目をしているさゆみに対して里保は思った。
(さっそく亀井さんに言いつけよう。)

実は最近、さゆみが里保に依存しすぎて絵里が嫉妬心を抱いているというわけではないのだろうが、さゆみにたいして怒っているのだ。

「さゆは里保ちゃんに依存しすぎ!絵里ちゃん、怒っちゃいますよ!」
という風にだ。
それを知った里保はさゆみ対策として絵里との連絡を密に行っているのだ。
すると・・・

「もう、里保ちゃん急に走らないでよ。」
「さゆ、どこいったちゃか?」

そこに香音となぜかれいなも現れた。

「あれ?道重さん、それに田中さんも何で制服姿でうろちょろしているんですか?」
「ああ、さゆおったとね。それに里保ちゃんにずっきも。ちょうどよかったけん。聖ちゃんと衣梨奈ちゃんの部屋でミーティングすると。」

鴎卵学園・中等部女子寮の聖と衣梨奈の部屋

そこにはすでに聖と衣梨奈がさゆみとれいなをもてなすためにお菓子を大量に用意して待っていた。

「えっと、今回れいなとさゆが鴎卵学園に来たのは・・・潜入捜査のためと。」
「「「「潜入捜査?」」」」

「うん、以前りほりほと香音ちゃんには鴎卵学園での事件解決のために入学をしてもらったけど、今回は別の事件が起きてさゆみたちが行くことになったの。」
「それで何があったんですか?」
「生徒が消えたとよ。学園から・・・」

それは鴎卵学園から匿名で警察に通報があったことから発覚したらしい。
鴎卵学園の生徒がひとりずつ行方不明になっているという内容だった。

「そして、今回以前にも愛ちゃんに学園潜入を依頼した警察の偉い人から依頼があって、さゆみとれいなが生徒としてこっそり調べることになったの。」
「それで私たちは何をしたらいいんですか?」

好奇心旺盛な衣梨奈が首を突っ込み始めた。
リゾナンターの一員である以上何かやらないと気がすまないのだろう。

何もせんでいいと。それに今日を期にれいなたちとは赤の他人ということにしてもらうけん。」
「何でですか!衣梨奈たちも手伝いたいです!」
「だめっちゃ!潜入任務というのは危険なものやって、愛ちゃんがいっとった。もしも事件を調べているれいなたちの事がばれたら4人にも危害が及ぶけん。
4人は一応混乱させんために事情を話しただけやけん。いいと?」
「わ、わかりました。」

れいなの激しい剣幕に4人は何も言い返せなかった。
とは言っても里保はその方がいいだろうと思っていた。
自分はともかく香音は戦闘未経験、聖は多少なんとかなるだろうが、衣梨奈に至ってはもしも何かあって力が暴走するような事があれば取り返しのつかないことになるかもしれない。

「じゃあ、今日さゆみたちがここに来たのはあくまで学園の案内を聖ちゃんが任されたことへの一応の挨拶ということにして。それじゃあ。」

そう言って、さゆみとれいなは部屋を後にした。

「ちょっと、言い過ぎたと?」
「いや、あれでいいと思うの?りほりほや聖ちゃんはともかく好奇心旺盛な衣梨奈ちゃんや香音ちゃんは何をしでかすかわからないから。」


          ◇          ◇          ◇

高橋愛の不安


「さゆみんと田中っちの事、心配?」
「何や、がきさん。あーしの心でも読んだか?」
「いや、読まなくても愛ちゃんの事は顔を見ただけでわかるから。」

その日、喫茶リゾナントでは昼ごはんを食べに里沙が来ていた。

「まぁ、私もスパイの経験とかあるから潜入捜査のつらさはわかるよ。それに愛ちゃんも経験者だし。」
「うん、まぁ今回の潜入がそこまで過酷やないと思うけど、聖ちゃんたちもおるんやし。ただ・・・」
「ただ?」
「もしも・・・今回の事件の犯人があーしが潜入した時のやつと同一人物やったら・・・」

それは2年近く前にさかのぼる。

愛は警察機構との窓口となっている特務機関のKに依頼され、私立咲坂高校で起きた超能力関係の事件を潜入捜査することになった。

愛が潜入した数日後、アメリカのMIT(マサチューセッツ工科大学)を飛び級で卒業し、咲坂高校に転入してきた燈馬想という青年と知り合い、図らずも彼と一緒に身の回りで起きた事件を解決していった。
そしてそんな中、学園で事件を起こしている謎の存在にたどり着こうとした。

「もはやこの学校に用はない。」
「待て!逃がしてたまるか!」

不覚にも愛は一歩手前でその犯人をとらえるどころか自らが捕まり、犯人を取り逃がしてしまった。

その事を思い出した愛は少し落ち込んだ表情をしている。
また里沙はそれを察した。

「あの時のことを悔いても仕方ないわ。美術教師として潜入していたまこっちも言ってたじゃない。あの状況じゃあ仕方ないって。そういえば、愛ちゃんはあの燈馬君とは仲良くしていたみたいだけど・・・」
「なぁ!何言ってるやざ!リゾナンターは恋愛禁止やよ!」
「まだ、私そんな事を言ってないじゃない。」

咲坂高校で行動を共にした燈馬想とは捜査が終了してから会ってはいないが、愛は特に気にしてはいないはずだが・・・

「とにかく、あーしの心配ごとはもしもあーしが2年前に取り逃がした奴が今回の一件に関わっているんやったら、油断ならんよ。」
「そうね、用心に越したことはないわ。そのためにも私たちでしっかりとしたバックアップをしないとね。」

その頃、凰卵学院では・・・

「ここが凰卵学院か・・・まだ男女共学したばかりだから、男少ないだろうな。」

ひとりの眼鏡をかけた青年がとぼとぼした感じで学院の門をくぐった。
しかしあまりにもとぼとぼと歩いていたせいか前方不注意であった。

ドン!
「イタッ!」
「イテッ!」

すると青年の目の前にれいなが尻もちをついていた。

「気をつけると!なにぼぉーとしとると!」
「ごめん、ケガなかったか?」
「ふん、伊達に鍛えてなか!だけど・・・れ、いや二ーナに激突した責任はとってもらうと!」
「責任って!」
「二ーナの召使いになってもらうけん!」
「ええ!」

学院では愛の心配事以外にも心配事が増えそうであった。

           ◇          ◇          ◇

第1の事件


キーコンカーンコーン!
「お昼休みと!一樹、食堂に行って二ーナの好物の明太子パンを買うてくると!」
「だから、なんで俺がきみの命令を聞かないといけないんだよ!」
「ほぉ・・・先日、二ーナに激突したことを忘れたと?」

れいなは怪しい笑みを浮かべながら一樹に近づく。
ついでに腕の骨を鳴らすおまけつきだ。

「わ、わかった。今すぐ行ってくるよ・・・」

一樹はまるで逃げるかの如く教室を後にした。
せっかく愛のおかげで丸くなったと思ったれいなは再び不良の本性が戻ってしまったのだろうか?
その様子を溜息つきながらさゆみは見ていた。

(れいな、ここにきた目的を忘れてるのかしら?それにしてもりほりほが近くにいるのに一緒に学園生活をエンジョイできないなんてさゆみにとって拷問と同じなの!)

さゆみも学院にきた目的を忘れかけているような気がするが、ふたりがそのような心境になるには訳がある。
ある失踪事件調査のために身分を偽って潜入したふたりであったが、早くも半月が経過し手がかりがまったく得られないのである。
潜入捜査自体が初めてのふたりにとってはそろそろ緊張の糸が切れかかっているのだ。

(そうだ、直接接触しなくても隠し撮りならりほりほの学園生活を納められる。ぐふふふ・・・)

よからぬ考えを起こして、さゆみは携帯を片手に教室を後にした。

さゆみは里保や香音のいる教室をこっそりと覗いていた。
ふたりは机を並べて、弁当を食べていた。

(食堂ではなく教室で弁当を食べているりほりほ・・・これはいい学園生活の一枚なの!)

里保に気付かれないようにシャッター音を消して、携帯カメラのシャッターを切っていた。

(いいの!りほりほ、もっと笑って!ああ、最高!)

だが、さゆみは里保の写真をとるがあまりに自分のことを眼中に置かなかった。
その背後に人影がいることも知らず・・・

チクッ!
「うっ!」

首筋に何かを刺されて、さゆみは携帯をポケットに入れてその場を後にした。

「一樹め、明太子パンを買うのにいつまでかかっとると!」

れいなは一樹がいくら待っても戻ってこないのでイライラしていた。
そんなれいなの背後にさゆみがいつの間にか立っていた。

「あっ、さゆ・・・いや、さゆり。一樹がまだ戻ってこんと。」
「ちょっと、話があるんだけど。」
「うん、ここじゃあいけんと?」
「例の一件についてだから・・・」

れいなとさゆみは人気のないところへと出ていった。

「それで話ってなん?あれ、がきさんからだ。」

話し始めようとした瞬間、れいなの携帯が鳴った。
かけてきたのは里沙のようだ。

「あっ、がきさ・・・くっ!」

突然、さゆみがれいなの首を両手で絞め始めた。
れいなは携帯を落としてしまった。

「さゆ・・・どうしたと!」

れいなは後ろに目線を向けるとさゆみの眼はどこかうつろだ。

(もしかして、誰かに操られとると?それにさゆにしては力が強すぎる!)

確かにれいなはさきほどからさゆみの手を振りほどこうとしているが、なかなか離れない。
とても普通の状況ではなかった。

バキッ!
れいなは蹴りをさゆみに入れて、さゆみから離れた。
さゆみは両手を上に掲げて、れいなに迫ろうとしている。
あの様子はまるでピンクの悪魔のようだ。

「さゆ!目を覚ますと!」

れいなは下手にさゆみを攻撃できない。
操られているとしてもれいなにはそれを解くすべがない。

「さゆ!」

ピクッ!
れいなの言葉に反応したのかさゆみの体が止まった。

(だめ!れいなを傷つけちゃダメ!絵里と約束したんだから!)

それは絵里が病気の悪化のためにリゾナンターを離れた時の約束だった。

「さゆ、今まで絵里を守ってくれてありがとう。今度は絵里の代わりにみんなを特にれいなを守ってあげて。れいな、ああ見えて突っ走って無理するタイプだから。これは絵里との約束だよ。」

(みんなの傷をいやせるのはさゆみだけ!さゆみがみんなを・・・れいなを傷つけちゃ駄目なの!)

さゆみの体は動いたりとまったりしている。
必死に自分の体を抑えようと抵抗しているのだ。
だが、次第にさゆみはれいなに再び襲いかかろうとしている。

(駄目!)

ピクッ!
さゆみの動きがまた止まった。
今度は完全なる静止であった。その首筋からピアノ線が見えた。

「危なかったわね。」
「がきさん!」

さゆみの背後にはピアノ線を伸ばした里沙の姿があった。
ピアノ線が首筋を離れるとさゆみは眠ったように倒れていき、それを里沙が支えた。

「がきさん、さゆは?」
「大丈夫、この針を取り除いたから。今は洗脳を解かれて気を失っているだけだから。」
「針?」
「この針がさゆみんの意識を朦朧とさせると同時に操っていたのよ。」

里沙はれいなにさゆみから取り出した針を見せた。

「こんな針一本で・・・・でも、誰がこんな事を?」
「わからない。でも、おそらくは私たちが追っている事件の犯人だと思う。さゆみんと田中っちの正体を知って仕掛けたかもしれない。私が応援にきて正解だったわ。」
「そういえばがきさん、その格好は?」

里沙の格好は確かにいつもの格好ではない。
いつもはかけないメガネに白衣まで来ている、これではまるで保健室の先生だ。

「実はこの学院の保健室の先生が産休に入ってね。裏から手をまわして、私が保健室の先生として潜入したのよ。」
「がきさんが来てくれると百人力と。」

確かにスパイ経験のある里沙が来てくれるのは心強かった。
だが、その姿を見つめる黒い影があった。

          ◇          ◇          ◇

矢島警備隊


鳳卵学院潜入から半月が経過、れいなとさゆみは学院内を歩き回っていた。

「さゆの一件からしばらく経ったけど、何も手掛かりがないと。」
「短気はいけないの。こういうのは辛抱が一番なの。さゆみだってあれ以来反省して、りほりほにうつつを抜かすのを控えているんだから。」
「やけど、勉強をするのは苦痛と!やっぱり勉強はさぼって屋上で寝るのが一番と!」

ドン!
れいなが前を見ずに歩いていたために誰かにぶつかった。

「なんと?」
「前を見て歩きなさい!もしも転んでけがしたらどうするの?」
「何言うと?」

れいなは機嫌が悪いために素直に謝らず、相手に食ってかかった。
相手の女性は仁王立ちでいる。

「さすが、転校した早々に不良として有名になっただけはありますね、町田二ーナさん?」
「れ、二ーナは不良じゃなかと!」

れいなは相手の女性に殴りかかった。
パシッ!
だが、女性はれいなの拳を軽く受け止めた。

「なっ!」
「そうやって殴りかかるのがもはや不良の証。あなたは喧嘩を売る相手を間違えているわ。私は矢島警備隊・隊長の矢島舞美。あなたを逮捕するわ。」

ガチャ!
れいなの手に手錠がはめられた。

「あっ、ちょっと待つと!さゆ、さゆはどこと!」


鳳卵学院中等部女子寮

さゆみは聖の部屋にいた。

「ええ!田中さん、矢島先輩に喧嘩を売ったんですか?」
「そんなに有名な人なの?やばそうだから、れいなを置いて逃げてきたんだけど。」
「この学院一の武道の達人です。正義感が強くてそれを校長に認められて、学院内の秩序を守る矢島警備隊を設立して学院内に目を光らせているんです。」

ガタン!
れいなが聖の部屋に駆け込んだ。
手にはまだ手錠をはめられたままだった。

「さゆ!やっぱりここにいたと!れいなを置いて逃げるんじゃなかと!フン!」

れいなは気合で手錠の鎖を引きちぎった。

「田中さん、よく逃げられましたね。矢島先輩から逃げたら半死半生の目にあわされるって有名ですよ。」
「ふん、今度は返り撃ちと!」
「れいな、そんな事は禁止なの!潜入捜査が駄目になるの。」

ガチャ!
すると衣梨奈が部屋に戻ってきた。
妙に楽しそうな顔をしている。

「田中さん、聞きましたよ。矢島先輩に喧嘩売ったみたいですね。」
「生田・・・なんでそんな楽しそうと?れいながひどい目にあってなんか楽しいと!」

れいなは衣梨奈を睨んでいる。

「まったく他人事みたいに・・・えりぽんは以前矢島先輩に5時間も説教されてたじゃない。」
「まぁ、確かにそんなことがあったけん。でもさっき、矢島先輩にあったら田中さんを追っていたみたいで・・・」
「まさかここを教えたんじゃなかとね!」
「言おうと思ったら、緊急連絡が入ったみたいでどっかに行っちゃいま・・・あれ?」

するとれいなが拳を鳴らして衣梨奈に近づく。

「生田!あんたも一樹同様召使いにしてやると!」
「きゃあー!」
「ああ、ほんとえりぽんはKYなんだから。」

あきれるさゆみと聖であった。


校長室
矢島舞美は校長室に入り、校長に向かって敬令をした。

「ご苦労だね、矢島隊長。急な呼び出しをしたのはほかでもない。ある事件が起きた。」
「事件と申しますと。」
「この学院の生徒の情報が入ったファイルが消えた。君も知っての通りこの学院には超能力を使える生徒も多数学園生活をしている。もしもそのファイルが何か悪事に利用されたら大変だ。学院の生徒を守るためにもファイルを探してくれ。」
「了解しました。」

舞美は校長に敬令をして、部屋を後にした。


2-A組の教室
毎度の如く一樹は明太子パンを買いに行かされていた。
れいなは本当は衣梨奈にも買いに行かせたかったようだが、さゆみに「潜入捜査を始めた時の決まりを忘れたの!」とくぎを刺した。

「はい、これ。」
「ありがとう。あんたは本当にいい奴と。」

一樹は本当に疲れ果てている。
だがその一方でれいなの召使いになれてしまっていた。
すると教室に舞美が入ってきた。

「あっ、あんた!また、れいなを逮捕しにきたと!」
「今日はあなたに用はありません。」

そういうと舞美は一樹の方に向いた。

「えっ?」
「佐藤一樹、あなたに聞きたいことがあります。警備隊本部までご同行を願います。」
「僕が?なんで?」
「それは二ーナも聞きたい。こいつは二ーナの召使いはしとるけど、警備隊に目をつけられることはしとらん!」
「残念ですが、それをお教えすることはできない。さぁ、来なさい!」

一樹は舞美によって教室から連れ出された。


保健室
「生徒の情報の入ったファイルが盗まれた!」
「田中っち!しー!この話は生徒と警備隊の一部の人間しか知らないんだから。私から漏れたとばれたらまずいのよ。」

れいなたちは里沙のいる保健室にいた。
一樹が警備隊に連れていかれたことに何かあると思い、里沙なら何か知ってるだろうという考えからだった。

「防犯カメラである程度犯人の人相は絞り込めたみたいだけど、あとはアリバイ調べみたいだけど、生徒がそんなものを盗んで何か特があるのかな?」
「じゃあ一樹は運悪く容疑者リスト入りしたとね。」
「無実が証明されればいいけど・・・」


矢島警備隊本部取調室
バン!
舞美は机を強く叩いた。

「いい加減白状しなさい!あなたが犯人なのはもうわかっているのよ。」
「だから僕はファイルを盗んではいません!」
「まだしらばっくれるのね。これを見なさい!」

舞美が取り出したのはファイルが保管されている部屋の防犯カメラの映像だ。
そこには確かに一樹の姿が映し出されている。

「これは何かの間違いだ!」
「いいわ、今頃、私の仲間があなたの部屋を捜索しているから。ファイルが出てきたら終わりよ。」


鳳卵学院男子寮

「矢島警備隊の工藤遥です。これより佐藤一樹の部屋の捜索を行います。みなさん、ご協力よろしくお願いします。」

令状を手に警備隊の4人の少女たちが男子寮内をずかずかと入っていった。

それを見ていたれいなは・・・

「ますますあいつの立場が悪くなっとると。こうなったられいなたちであいつの無実を晴らすしかないと。」

そして・・・

「それで私を呼んだわけですか。」

事件現場にはれいな・・・そして聖がいた。

「聖ちゃんのサイコメトリーで本当に一樹が盗みを働いたかを見てほしいと。」
「わかりました。この部屋のドアノブで何とかなるかもしれません。」

そういうと聖はドアノブに触り始めた。
そしてその瞬間、聖の頭の中にこのドアノブを通じて映像が頭に入っていく。

「はぁはぁはぁ!」
「聖ちゃん・・・大丈夫と?」
「わかりましたよ、この事件の犯人。」


警備隊本部
夜中まで続いた取り調べで一樹の気力は限界だった。

(もう死ぬ・・・駄目だ。正直に言おう。)
「あの、矢島さん・・・」
「何?」
「あの実は・・・」

一樹が何か言おうとした瞬間・・・

「ちょっと待つと!」

取り調べ室のドアをれいなが勢いよく開けた。

「あなた!今は取り調べの最中よ!出ていきなさい!」
「一樹は無罪やけん!取り調べるならこいつを取り調べると!」

するとれいなはボコボコな状態の男子学生を引っ張りこんだ。

「その人は?」
「ほら、さっきみたいに変身すると!」

バキッ!
れいなは蹴りを入れると男子学生の姿が変わった。

「あっ、僕だ!」

学生は一樹の姿に変わった。

「これは変身能力者。」
「そうと、サイコメトリーを使える子に現場のドアノブを見てもらったと。そしたらファイルを盗んで部屋を出た途端変身を解いたこいつのビジョンが見えたと。それにこいつの部屋から、これが出たと!」

れいなは生徒の情報が入ったファイルを机に叩きつけた。
舞美はすかさず中身を確認する。

「これは間違いない。じゃあ、私は間違った人を取り調べしてたの。」
「そういうこと、じゃあ一樹は無罪やけん。返してもらうと。」

そういうとれいなは一樹を引っ張り、取調室を出ていった。
それと同時に舞美はボコボコの男子学生をにらんだ。

「よくも私に飛んだ恥をかかせてくれたわね。どうしてこんなことをしたかじっくりと聴かせてもらうわよ。」
「ううー!」

すると男子学生は急に気を失った。

「えっ、ちょっと?なんで気絶するのよ!」

急なことに動揺する舞美は気付かなかった。
男子学生の首筋から針が抜け落ちたことを・・・

「ありがとう、無実を晴らしてくれて。」
「いいとよ、二―ナは弱い者いじめは好かんし。無実の人がひどい目見るのは嫌と。」
(君にはけっこういじめられているけど、悪い人ではないんだな。)

一樹はどうも憎めないれいなに好感抱き始めている。
理不尽なことはするものもその奥底には何か秘めている。

「さぁ、取り調べで疲れろうから。早く寝て疲れをとると。じゃあ、お休み!」
「お休み!」

そう言って一樹は男子寮に戻ろうとした。
するとれいなが呼びとめた。

「あっ、そうやった。明日朝一で明太子パンよろしく!」
「くぅー!やっぱりパシリかよ!」

ほんの少しでもれいなの感謝した自分を悔い改める一樹であった。

          ◇          ◇          ◇

見えない悪意


「うぉー!」
「頑張れ!」

この日、鳳卵学院の全生徒・教職員が武道場に一堂に集まった。
会場には胴着を着た生徒が数人いる。
今日は鳳卵学院生徒対抗の武術大会である。
この学院は「文武両道」がモットーであり、腕自慢の生徒たちが互いの腕を競い合い伝統行事であった。

「りほりほ!頑張るの!」

この大会には里保も出場している。
本人はれいなたちの潜入捜査のこともあるのであまり目立ちたくなかったのだが、里保の才能を感じ取った警備隊の隊長・矢島舞美がぜひとも出てほしいということなのでやむなく出場した。
だが、さゆみによる里保かわいさの声援は何とかしてほしいものだ。

「はぁー、あれじゃあ私と道重さんの関係がわかってしまうじゃないですか。」

本当にさゆみとれいなに潜入捜査が向いているのかを疑問視してしまう里保であった。
とにかく今は集中をするべきだ。
本来なら目立つべきではないが、水軍流を極めるものとしては技を競い合うのは悪くない。

さきほどから順当に一回戦と二回戦を勝ち抜いている。
自分を誘った舞美も勝ち進んでいる。
里保は3回戦の相手を見る。

須藤茉麻
学院内では食いしん坊の生徒で学食のおばさんたちの間では有名である。
だが、意外にも武道でも指折りの人物らしい。

「Aブロック第3試合!鞘師里保!須藤茉麻!前に!」

審判の呼び出しにふたりは前に出た。
すでにふたりからは闘気がみなぎっていた。

「それでは始め!」

審判の合図にふたりは構えた。
しかし・・・

「うっ!」
「えっ?」

茉麻は急に腹を押さえて、倒れた。

「大変だ!鳥海先生!」

里保が叫ぶと保険医の里沙が駆け付けた。
ちなみに鳥海というのは里沙が学院で名乗っている偽名である。

「痛い!痛い!」
「これはいけないわね。タンカー、タンカー!」

非常事態で3回戦は里保の不戦勝ということになった。

そしてその頃、観客席で見ていた聖、衣梨奈、香音は・・・

「ああ、須藤先輩運ばれちゃったよ。」
「食べすぎかな?よく私たちと一緒に学食で豚骨ラーメン食べとったから。」
「そりゃあ、大食いするよ。あの豚骨ラーメン美味しかった・・・あれ?私もお腹が・・・」
「痛い!痛い!」
「香音ちゃん!聖!どうしたと!・・・あ、衣梨奈も痛い・・・」

聖たちもお腹を抱えて倒れた。

保健室
聖たちの事を聞いて、れいなとさゆみが保健室に駆けつけた。
最初は単なる食べすぎかと思ったが、里沙からとんでもない報告があった。

「毒?」
「そうよ、ちょっと体を調べたら毒の成分がでてきたのよ。幸い、強い毒性じゃなかったから、命に別条はない。少し安静にしていれば元気になるわ。」
「それはよかった。りほりほがずっと気にしていたから。これなら安心するの。」
「でも、どうして4人に毒を盛られたと?」

れいなの問いに里沙も頭を悩ませているようだ。
「聖ちゃんたち3人だけなら私たちを狙ったものかもしれないけど、須藤さんも同じ毒を盛られているのがね。」

数時間後
里保が保健室に見舞いに来た。

「みんな、大丈夫?」
「うん、きちんと休めば元気になるってさ。」

里保はショックをうけていた。
普段は元気があまり余るほどある香音がここまで弱っているのを見たことがなかったからである。

「しっかり休んで元気なずっきを私に見せて。」
「うん。」

その場を去ろうとしている里保の手を香音が握った。

「どうしたの?」
「さっき、新垣さんたちの話を聞いて思い出したんだけど、私たちと須藤先輩、学食で同じものを食べたんだけど・・・」
「同じもの?でも、それなら4人だけのはずがないよ。」
「いや、だって私たちが食べた豚骨ラーメン。4人だけで学院にあるやつ全部食べちゃったもん。」
「そうなの・・・わかった。助かった。」

里保は保健室を出る時に拳を強く握った。
怒っていた。仲間を苦しめた奴を里保は許せないのだ。

「えっ!豚骨ラーメン!」
「はい。ずっきによると試合前に売り切れになるまで食べていたみたいです。」
「まったくあの食いしん坊。田中っち、矢島さんにこの事を伝えて、調べてもらって。」
「えっ、あいつに頼むと?」
「仕方ないでしょ?この学院で捜査を公式に認められているのは彼女たちだけよ。彼女たちの協力を得るのは重要よ。私は校長に話をつけてくるから。」
「わかったと。さゆはどうすると?」
「4人の様子をみてくるの。」

その頃、保健室で休んでいる香音たちは大事をとって眠っていた。
そんな中、香音たちの頭の中に・・・

(目覚めよ。我、しもべたちよ。)

その声に従い、4人は静かにベッドから起きあがった。

「みんな、さゆみがわざわざお見舞いにきた・・・の」

さゆみが保健室の訪れると目の前の出来事に唖然となっていた。
4人は明らかに正気を失った目をしている。
これはれいなから聞いた自分が操られた状況によく似ていた。

「どういうことなの・・・あっ!」

いきなり聖がさゆみの首を締め始めた。

「く、苦しい。や・・めて。」

バキッ!
すると里保が保健室に飛び込んできて、聖をさゆみから引き離し、当て身で気絶させた。
里保は素早く衣梨奈、香音に当て身を当てて、気絶させた。

「りほりほ・・・どうやら。」
「みんな、操られているみたいですね。」
「そ、そうなの。」

里保は目の前の状況をすぐさま、理解できたようだ。
だが、里保は茉麻には戦いを仕掛けなかった。
いや、できなかったのだ。

「このひと、やはり手ごわいですね。懐に入れなかった。」

すると茉麻は手に力を加えて、保健室の壁をまるで斬るかのような動作をした。
シャキーン!
すると壁に大きな線が入った。

「あっ、もしかして鋼鉄化?」
「いえ、あれは斬体化でしょう。」

さゆみはダークネス粛清人Rの力を思いついたが、里保はすぐにそれは違うと見抜いた。
それと同時に予想以上に厄介なことになったと感じた。

「はぁ!はぁ!」
「道重さん、聖ちゃんたちを安全なところに。保健室はめちゃくちゃになると思いますので。」

さゆみは里保の指示で急いで聖たちを保健室から外に出した。
茉麻は手や足を繰り出して、それと同時に周りのベッドなどは切り裂かれていく。
里保は水軍流の力でなんとか茉麻を抑えたいが、全身が凶器となっている茉麻に手も足もでない。

(このままじゃあ、りほりほがやられるの・・・何か何か武器になるものを・・・そうだ。)

さゆみは何かを思いつき、早くはない足でどこかへと向かった。

ガチッ!
里保はイスを掴んで、振り下ろされた茉麻の手を受け止めた。
だが、すぐに真麻の力によってイスは真っ二つに切れた。

(もうあの力を受け止めきれるものがない。避けるのも少しきついかも。)
「りほりほ!」

さゆみの声とともに里保は飛んできたものを受け止めた。
その手にあったのは・・・

「これは日本刀。」
「武道館にかざっているのを持ってきたの!」
「ありがとうございます。」

里保は日本刀を鞘から抜くと、刀の峰を返した。
峰を返すということは相手を殺さずに倒すということだ。

「これであなたと互角に戦えます。」
「うぉー!」

キン!キン!キン!
里保は茉麻の凶器とかした手足の攻撃を刀ひとつで返していく。
これほどの猛攻を刀一本手にしたからといって、返せるわけでもない。
それほど里保の技術がずば抜けているのだ。

「すきあり!」

里保が思いっきり茉麻の腕をはじいた瞬間、素早く体に刀を叩きこんだ。
茉麻はゆっくりと地面に倒れこんだ。
里保は刀を鞘におさめた。

パシャ!
「りほりほ・・・かっこいいの。」

さゆみはいつの間にか携帯を取り出して、里保をとっていた。
里保はその姿を見て、溜息をつくしかなかった。

その後、毒の成分を突き止めた里沙たちの手のよって4人の体内にある毒は完全に除去された。
ちなみにさゆみが武道館から持ち出した刀は丁重に元の場所に戻された。

「道重さん、こんな頑丈なガラスからどうやって刀を持ち出せたんですか?」
「りほりほ・・・それは知らなくていいの。」

武道館のガラスはまるで最初からなかったかのように消滅していた。

          ◇          ◇         ◇

迫る悪意


豚骨ラーメンへの毒物混入事件で学院内は厳戒態勢をとっていた。
学院の秩序を守る矢島警備隊の隊長である舞美は校長と今後の事を話しながら廊下を歩いていた。

「矢島隊長。かなりまずい状況になりそうだね。」
「はい、申し訳ありません。まだ豚骨ラーメンに毒を入れたものがわかりません。警備隊も厳重な警備をしていますが・・・」
「頼むよ。できれば風紀委員会に主導権を・・・」

バン!バリン!
突如、窓ガラスが割れ、校長が床に倒れた。

「校長先生!しっかりしてください!誰か!誰か!」

2-A組教室

「ねぇ、聞いた?校長先生襲われたって。」
「襲われた?どうして?」
「よくわからないけど・・・」

校長が襲われたという話は学院中に広まった。
先日の毒物混入事件で学院中は騒ぎになっている上の事件であった。

「れいな、事件の事聞いた?」
「聞いたと・・・何かわかったと?」
「さすがに今回の事件は詳しいことまでわからないの。でも、さすがに今度は警備隊だけでは手に負えないと思うの。」
「警察の介入というわけか。」

すると一樹があわてた様子で教室に飛び込んできた。

「あっ、一樹!明太子パンはどうしたと?」
「それどころじゃないよ!校門で大騒ぎになっている。」

鳳卵学院・校門
事件の報告を受けて、警察の車両が大勢来ており捜査員もいる。
しかし校門のところで生徒が並んでおり、足止めを食らっている。
ちょうどれいなたちが様子を見に来ると・・・

「我々は事件の報を受けたのだ。中に入れろ!」
「まぁまぁ。校長先生の狙撃事件が起きたんですよ。生徒さんだけで済む問題でもありません。」

血気盛んな若い刑事を年配のベテラン刑事が抑えながらなんとかして中に入れてもらおうとしていた。
そして並んでいた生徒のひとりが前に出る。

「この学院の事は私たちが処理します。お引き取りを・・・」
「帰れる訳ないだろう。中に入れろ。」
「よろしいのですか?そろそろ命令がくると思いますが。」

すると年配の刑事に制服警官が血相をかいて、耳元に何か囁きにきた。
それを聞いて、年配の刑事も戸惑いを見せ、若い刑事の元に行った。

「おい、上から引き揚げろと命令が来た。」
「そんな山さん。どうしてですか!」
「とにかく今は引き上げだ。どの道、ほおってはおかないさぁ。」

警官たちはあきらめて、校門から去っていった。
それを見て、前に立った生徒はほくそ笑んだ表情を浮かべて、振り返った。

「さぁ、戻りましょう。」
その声に従って、生徒たちは中に引き上げていった。


矢島警備隊本部

「いったいどういうことよ!せっかく呼んだ警察を返すなんて!」
「理事長命令です。」
「何が理事長命令よ!校長先生が襲われたのよ!」
「あまり偉そうな口を利かないでください。あなた、ご自分の立場をわかっておられるんですか?あなただって有力な容疑者なのよ。」

矢島警備隊は現校長の肝いりで設立されたが、舞美の前にいる吉川友率いる風紀委員は鳳卵学院の理事長が設立した学校治安維持集団であり、設立されたばかりの警備隊よりも規模が大きい。

「校長先生が倒れた今、学校主導権のすべては理事長にあります。それにあなたの身柄もこちらで抑えさせてもらうわ。」

それ以来、学院内の雰囲気が変わった。
登校から下校まで終始あらゆるところで風紀委員が目を光らせており、特に委員長の吉川友、その部下である清水沙紀、徳永千奈美は怪しいとにらんだ人間は片っぱしから連れていき、厳しい取り調べを受けているということだ。

「今、下手に動いたらまずいからしばらくはおとなしくしといて。」

里沙から当分通常通りに学校生活を送るようにれいなとさゆみに言い渡された。
そんな中・・・

「何で私があんたの代わりに明太子パンを買わなきゃならないの!」
「だって、君は彼女と一緒にいること多いじゃないか!僕はもうパシリはお断りだ!」
「いいの?そんなこと言っちゃって・・・二―ナにボコボコにされるの。」

そういうと立ちすくんでいる一樹を尻目にさゆみは不敵な笑みを浮かべてその場を去ろうとしたが・・・

「立川さゆりと佐藤一樹ですね。風紀委員会です。少し来てもらえますか?」

その頃、れいなは食堂で明太子パンを購入しようとしたら、里沙が駆け付けた。
そして里沙が伝えたことは・・・

「さゆと一樹が校長襲撃の容疑者にされた?」
「そう、それでさゆみんは用具室、一樹君はボイラー室に押し込まれたわ。どうやら監禁状態にして無理やり自白させる腹つもりのようね。」
「そうな・・・ふたりはそんなことをせんと!」
「あ、田中っち!」

するとれいなは里沙が止める間もなく用具室のほうへと向かった。
だがその頃、用具室のほうでは先客がいた。

「道重さん、聖です。」
「フクちゃん?どうしたの?」
「道重さんが心配になって、差し入れを・・・ドアの隙間から入れますから、見てくださいね。」

聖はボイラー室のドアの隙間からあるものを入れた。
さゆみはそれを手にとると顔に喜びの表情が・・・

「これはりほりほの写真!」
「こないだ一緒に撮った写真です。これで元気出してください。」
「うん、さゆみ頑張る!」

さゆみが喜んでくれたことに満足して、聖はその場を後にしようとすると・・・
目の前に異様な機械の鎧をつけたロボットのようなものがたっている。

一方、れいなは用具室に向かう途中にボイラー室が通り道であったのでついでに立ち寄った。

「一樹・・・」
「二ーナか?」
「一樹、大丈夫と?しっかりすると、二ーナが絶対に出してやるけん。」
「そう・・・ありがとう。」

一樹はれいなの事を信頼していないわけではない。
かつて矢島舞美に逮捕された時にもれいなによって無実を晴らされたことがあった。
しかし一樹はこの閉鎖空間で気力を失いかけている。

「しっかりする・・・一樹!できる限り扉から離れると!」
「えっ?どうして?」
「いいから!」

れいなの目の前にはさきほど聖の前に現れた得体の知れないロボットが現れた。

「どうやら、これはれいなたちをおびき寄せる罠みたいと。」


そのころ、聖はカードを取り出して、緑の炎でロボットを攻撃するがどうやらあんまり効果がない。
物おじせずに聖に迫っている。
その時、聖にある人物の言葉が頭に浮かんだ。

「使ったら、とってもお腹が減る!」
(ジュンジュンさん・・・)

今は中国に帰っているジュンジュンの事を頭に浮かんだ。
かつて自分を狙った存在から助けてくれた。
そしてこの力も・・・

「使ったら、体力がかなり使われる。一発勝負。」

聖はカードに力を込めた。
力は次第に聖の体に集まっていき、体が肥大化し、体毛も生えてくる。
聖の体はパンダに変化していく。

バコッ!
獣化した聖がロボットを片手で掴みながら校舎の壁をぶち破った。
ロボットは聖に対してあまりにも無抵抗な動きをしている。
防御はするものも攻撃はしてこない。
だが獣化したことで理性というものがない聖にはそんな疑念はない。

「ぐぉー!」

バキッ!
聖の強烈な一撃でロボットは吹き飛ばされていき、姿を消した。
そして聖は人間の姿に戻っていく・・・生まれた時の状態で

「きゃあ!忘れてた!もう、どうすればいいのよ!」

その頃、れいなはロボット相手に拳をぶつけるがこちらもあまり効果がないようだ。
それに聖の場合と同じくロボットはまったく抵抗してこない。

(こいつ、何で攻撃してこないと?何か試されている感じが・・・もしかして。)

れいなはこのロボットの意図をくみ取った。
このロボットはれいなの力を読み取ろうとしている。

(なら、跡かたもなく潰したほうがよかね!)

れいなは自分に力を込めた。
そして共鳴増幅能力も発動した。

「これでも喰らえ!」

れいなの共鳴増幅でパワーアップした強烈なパンチはロボットを跡かたもなく粉砕した。

「れいなを喧嘩ばかり強い単細胞やと思うんやなか!」

その後、矢島警備隊の設置した防犯カメラのおかげでさゆみと一樹の無実が証明された。
どうやらさゆみは腐った明太子パンを食べたためにトイレに行っており、一樹は空き教室の黒板にれいなの悪口を書いていたらしい。
だが、結局校長襲撃犯はわからずじまい、学院の主導権は理事長と風紀委員会が握ることになった。

理事長室
「ふふふ、監視はロボットだけがしていたわけではないわ。田中れいな、あなたの力はこの監視カメラでちゃんと記録させてもらった。」
「失礼します。」

理事長室に吉川友が入ってきた。
その後ろには清水沙紀、徳永千奈美によって連れられて、後手に手錠をはめられ拘束されている舞美の姿があった。

「御苦労さま、吉川委員長。」
「あなた・・・一体何が狙いなの?」
「それを知る必要はないわ。あなたは当分の間私たちの邪魔をしないでね。」

プスッ!
舞美の首筋に針が刺され、舞美は意識を失った。