『リゾナンターSP シルバーランドの姫君 (1)~(4)』


※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

目次

(1)


この日、愛はあるひとりの男に自分のいれたコーヒーを飲んでもらいに新宿のある喫茶店を訪れた。

「どう?」
「前よりもコクが出てきた。あの人の味に近づいている。」
「よかったやざ。伊集院さんにどんなことを言われるか心配しとったやざ。」
「頼むからその伊集院さんはやめてくれないか。」

男はサングラスをかけており、黒人風の巨漢の男である。
とても喫茶店のマスターには見えなかった。
だが、今は愛に名前を呼ばれて妙に恥ずかしがっているものも・・・

「だって、ばあばがそう言ってたやよ。伊集院さん。」
「だからそれはやめろ!」
「何を朝から騒いでいるの、ファルコン。あら、愛ちゃんいらっしゃい。」
「美樹さん、お邪魔しています。」

実はこの喫茶店は開店する際に愛の祖母から手ほどきをうけており、ここのマスターであるファルコンこと伊集院とそのパートナーである美樹にとっては愛の祖母は恩人のひとりなのである。

「あっ、そろそろ店に戻らんと。それじゃあ、また来ます。」
「ええ、もう帰っちゃうの?」
「その方がいいだろう。そろそろあのもっこり野郎が現れるかもしれんなからな。」
「そうね、愛ちゃんを見たら冴羽さんがもっこりするのは確実だから。」
「噂だけは聞いてますけど、その人に一度でいいから会ってみたいやざ。」
「やめろ、お前とあいつが会うと店が破壊されかねない。」
「そんな大げさな・・・」

いろいろ気になることを聞かされながらも店をほおってはおけず愛は新宿を後にした。


喫茶リゾナント
「いらっ・・・・あ!愛ちゃんおかえり!」

店ではれいなが必死に接客をしていた。
その傍らでは絵里とさゆみも手伝っていた。

「今日はごめんやざ。すぐに店に戻るから。」
「いや、いいの。さゆみたちで手が足りているし。愛ちゃん、新宿から帰ったばかりなんだから少し休んでもいいの。」
「そうか、じゃあ1時間ほど上で仮眠するやよ。でも、何かあったら遠慮なくいってや。」

愛が二階に行こうとすると・・・

「愛ちゃん、待った!」
「何や?絵里?」
「1時間ほど前に愛ちゃんにお客さんが来てた。」
「あーしにか?どんな人やざ?」
「うーんとね?見た感じが愛ちゃんにそっくりで・・・でも愛ちゃんと違ってすごく高貴な印象だったよ。」

「絵里軽く失礼なことを言ってるの。」
「・・・他には・・・」
「後は亜麻色髪の乙女かな?」
「絵里、それだけでわかるわけやなかと?」
「誰かわかったやざ。」

絵里の説明だけで愛は尋ねた人が誰かわかった。
「それで何か伝言か何か残したんか?」
「うん・・・確かね・・・・はい。」

絵里がエプロンのポケットから紙を取り出した。
愛はそれを受け取ると二階へと駆け込んでいった。

魅惑の水さんルーム
愛は絵里から渡された手紙をじっと見ていた。
そこには高貴な雰囲気を醸し出す紋章が描かれていた。

「サファイアが日本に来たんか・・・そしてあーしに助けを求めとる。」


          ◇          ◇          ◇


(2)

それから2日後、愛と里沙は海外にいた。

「愛ちゃんと旅行なんて久しぶりよね。おまけにプライベートで・・・」
「そうやね。」

ふたりはレンタカーを借りて、ヨーロッパの道をずっと進んでいった。

「それにしても愛ちゃんから旅に出ようと持ちかけられたときには驚いたね。どうしたのよ?お店の事があるからよほどの事がない限り、外にも出ないくせに・・・」
「最近はれいなたちだけでもお店を任せられるようになったし。絵里やさゆの将来のケーキ屋つくりの修行のためにも任せてみようと思ったんやざ。」

愛のその言葉に里沙は軽くため息をつく。

「愛ちゃんさ・・・・本当に嘘つくの下手だよね。本当のことを言ったらどうなの?カメから聞いてるよ、手紙をもらったんだって。」
「やっぱり、しっとったか。実はあの手紙は今から行くシルバーランドの王女・サファイアからやったんやざ。」
「サファイア・・・聞いたことがあるわね。あれ?確かサファイアは男じゃなかった?」
「この話は里沙ちゃんだから話すんや。ほかの人には内緒やよ。あれは5年ほど前やった。」

愛は昔の事を里沙に話した。
      • あれはまだばあばが生きとった頃・・・里沙ちゃんに再会するもっと前の話。
あーしはばあばの許しを得て、世界中を旅したんやよ。広い世界を見て、いろいろ学びたかったんやざ。
そんな旅の中で訪れたのがシルバーランドだった。・・・

 ・・・シルバーランドはヨーロッパの大きな国のひとつで今では珍しい王政を敷いていた国やったやよ。
あーしがサファイアに出会ったのはそんなシルバーランドの広い高原だったやよ。あの時は驚いたやざ。目の前にあーしがおったんやから・・・

「誰!」
「別に怪しいものやないよ!」

 ・・・でもさらに驚いたのがサファイアが女だったという事実やざ。・・・

「なんで愛ちゃんはサファイアが女だって気付いたの?愛ちゃんは初対面の人にはあまり能力使わないじゃない。」
「実はのぉ・・・里沙ちゃん・・・あーしがサファイアにあった時、あの子お風呂に入っとったんや。」
「じゃあ!愛ちゃん・・・・サファイアの・・・・を見たの?」

愛は静かにうなずいた。

「まったく・・・」
「それから妙に気が合ってのぉ・・・サファイアは自分の悩みをあーしに打ち明けたんやよ。」

「男と女か・・・あんたは女でいたいんか?」
「実は先日、隣国のゴールドランドからフランツ殿下がお忍びでまいられたの。その時、私は亜麻色の髪のかつらをかぶって身分を偽り、一緒に踊ったの。」
「ははーん、ほれたんやざ。」
「うん。でも、告白はできない。私は公式には王子。そんなことは許されない。」


「正直、その時何も言ってやれなかったやざ。でも、何か困ったときにはあーしを頼ってくれって。それで喫茶リゾナントを教えたんやよ。」
「それでサファイアがこないだリゾナントに来たわけね。それで手紙の内容は?」
「詳しくは書いてなくて、ただ助けての文字だけ・・・サファイアは剣の達人で男勝りなところがあるから、めったに弱音は吐くことはしなかった。
おそらく今まで苦しいことはあったはず。だから、この手紙を見た時すぐにいかなきゃと思ったんやよ。すまんなぁ、本来ならあーしだけで行くのに。」
「いいのよ、連れてっていったのは私のほうだし、何かあったら力になれるだろうから。」
「ありがとう、里沙ちゃん・・・」
「さぁ、もうすぐシルバーランドよ。]

          ◇          ◇          ◇

(3)


愛と里沙はシルバーランドに入国した。
ふたりはしばらく滞在できるようなホテルを探した。
この国にはMの支部も刃千吏の施設もないから自分で探すしかないのだ。

「参ったね。どのホテルも満員だって。」
「そうか・・・あーしが来た時はそうでもなかったんやけどなぁ。」
「それにしてもどうもおかしいのよね。町の中に町の人以外に観光客とも思えない怪しげな連中がうようよいるよ。」

里沙はスパイとしての経験があるためなのか怪しげな人間はすぐさま見抜いてしまう。

「そうやのぉ、サファイアの手紙に関係があるんかもしれん。」

その後、ふたりはあてもなく街のはずれに車を走らせていた。
ホテルに泊まれないというのは正直想定外だったので野宿の準備などしていなかった。

「それにしてもこのままじゃあ、車で寝泊まりか・・・」
「小さな村にでもいけば、宿屋ぐらいあるやろう・・・あれ?あれはなんやざ?」

道の横に大きテントのような施設がある。
車や荷物がおかれており、看坂には旅行公司と書かれている。

「もしかしたら宿泊施設かもしれんで。」

愛は車を駐車場に止めた。
中に入るとすぐ近くに受付があり、そこには日焼けをした40代ぐらいの男性がたっていた。

「旅行公司へようこそ。」
「あの、ここは宿泊施設ですか?」
「はい、旅行公司は現在規模を拡大中のモーテルチェーンでございます。私、このモーテルのオーナーのリンと申します。現在、部屋は開いておりますので・・・」
「そうか、じゃあふたりでお願いします。」
「かしこまりました。」

宿泊手続きを済ませて、愛と里沙は部屋に入った。
部屋の内装はモンゴルかどこかの民族の居住区みたいなデザインであった。

「それにしても変わったモーテルよね。」
「まぁ泊る所が確保できたんやからええやん。それよりこれからどうするやざ?」
「そうね、私は今のシルバーランドの現状でも調べてこようかな?愛ちゃんは?」
「あーしはサファイアに会えるか城の近くまで行ってみる。」
「そう、くれぐれも無茶はしないでね。」

ふたりは別れ、愛はお城に・・・里沙は町に行くことにした。

里沙が町を歩くとやはりおかしな雰囲気だった。
街に活気がない。
とりあえず街の人に話を聞いてみることにした。

「あのすいません、何かあったんですか?町全体が沈んでいるようなんですが?」
「あんた、何も知らないんか?実は数日前・・・」

城門近く
愛は城門を物陰から窺っていた。
もちろん正面からは入れないが瞬間移動でいきなり城にはいるのも遠慮していた。
状況もわからずにいきなり飛びこむのは賢明ではなかった。

城門にはふたりの衛兵がいて、中央には小柄な濃い緑色ぽい服をきており、顔の特徴は・・・

「麻琴にそっくりやの・・・」

確かに瓜二つであるここの王女が愛にそっくりなのであれば他にも知り合いのそっくりさんがいるのではないかと思ってしまう。

その麻琴のそっくりさんはふたりの衛兵の間をうろちょろしている。

(困ったなぁ、私はいい人すぎる・・・秘密を守るのになれていない。)

急に愛の頭の中に心の声が飛んできた。
「なんや、今の心の声は?」

すると麻琴のそっくりさんが衛兵に向かって・・・
「実は本当に毒をもったのは・・・聞くな!」

「ああ、あの人の声か・・・でも物騒な話やな。」
「その話聞かせてもらおう。」

すると近くの階段から帽子をかぶり全身黒の衣装を身にまとい、顔を仮面で隠している謎の人物が現れた。

「お前は?」
「私はリボンの騎士・・・亡き王からの使いだ!」
「捕えろ!」

麻琴のそっくりさんは衛兵にリボンの騎士をとらえるように命じて、衛兵は斧を持って攻めかかってきた。

ザクッ!パシュ!
するとリボンの騎士は素早い剣裁きで衛兵の服を切り刻んだ。

「ひぇー!」

麻琴のそっくりさんも逃げようとしたがリボンの騎士に阻まれて、剣を突き付けられている。

「誰だ、誰が王を殺した!」
「知らない!私は知らない!」
「目には目を・・・歯には歯を!この剣の先には毒が塗られている!誰が王を殺した。」
「大臣だ!大臣が毒を塗った!」

脅しに負けて、麻琴のそっくりさんはペラペラと秘密をしゃべった。
その返答にリボンの騎士は一瞬たじろいでいるようにも見えた。

「去れ!去れ!」

麻琴のそっくりさんが走り去るとリボンの騎士は剣をしまった。
そして顔を隠している仮面をとった。
愛はその顔を見て、驚いた。

「サファイア!」
「愛!」

そうリボンの騎士こと愛が探していたシルバーランドの王女・サファイアであった。

          ◇          ◇          ◇

(4)


愛はサファイアに招かれて、王家の庭へとやってきた。
庭には色彩豊かで美しい花がたくさん植えられていた。

「なぁ、サファイア。あーしここにいてええんか?」
「大丈夫、愛は私のお客さまだし、それに本来ここは王族しか入れないから秘密の話をするならここの方がいいから。」
「そうか・・・それであの手紙のことなんだけど・・・」
「うん、実は・・・さっき聞いた通り私の父である国王が亡くなったの。毒をもられて。」
「じゃあ、もしかして次期国王は・・・」
「そう、私になるの。でも、問題が山のようにある。」
「何や?」

するとサファイアはシルバーランド周辺の地図を取り出した。

「このシルバーランドの隣国にゴールドランドがあるの。」
「ああ、あんたの好きなフランツ殿下がいる国やな。」

そういうとサファイアは悲しげな表情を浮かべた。

「実はフランツ様に王毒殺の疑いを掛けられて、王子としての私はフランツさまに憎まれてしまった。」
「でも、さっきの話やと、毒を盛ったのは大臣なんやろう?殿下にその話をして・・・」
「フランツ様の無実を訴えても無駄よ。あの方は自分の誇りを汚されたと思い怒っておられる。誰が毒を盛ったかは関係ない。」

その話に愛は溜息をついた。

「あんたらは一体いつの時代の人間なんや。死んだ人を悪く言うつもりはないけど、あんたのお父さんも女を男を偽ったり、
それをかたくなに守るあんた、それに名誉に慮るフランツ殿下。難しい生き方をしとるで。」
「私もそう思えればどんなに幸せか。私は愛がうらやましい。」
「王家の人間ではないあーしが言ってもしょうがないか。それであーしは何を手伝えばいい?」
「大臣のたくらみを掴むのを手伝ってほしいの。あの狡猾な大臣がどこにスパイを放っているかわからなかったから、ずっとひとりで動いていたけどそれももう限界。」
「あーしがそれを手伝えばええんやな。任せるやよ。」
「愛・・・ありがとう。」

だが、ふたりは知らなかった。
すぐそばの花壇に小型のカメラとマイクが仕込まれていることを・・・

「ふーん?愛ちゃんが来るなんて・・・あの王女様も愛ちゃんに似てるなぁと思っていたけど、まさかお友達だったなんてねぇ。でも愛ちゃんはお友達を救えないわよ。」

城下町
里沙は城下町でシルバーランドの現状を調べていた。
今調べているのは王が急な病で亡くなったことと大臣が急に隣国のゴールドランドの侵攻を警戒しているとのことだった。
それに関して里沙は興味深い話を聞いた。

「実は男たちが兵役以外に駆り出されているようなのよ。あの鉱山の方に?」
「鉱山?何かでているんですか?」
「噂だと未知の鉱物らしいのよ。」
「未知の鉱物・・・」

大臣の館
「このままでは・・・私の息子が王になる道が閉ざされてしまう。」

シルバーランドの大臣は少し男前で長身の男であった。
よく見れば吉澤ひとみによく似ている。

「勝手なことをするからこうなるんですよ。」
「Dr.マルシェ。」

そこにいるのはダークネスの科学者・Dr.マルシェであった。
そしてその脇にいたのが・・・

「何だ、その魔女みたいな奴は?」
「あっ、ご紹介します。こちらは我らダークネスの氷の魔女・藤本美貴さんです。」
「何こいつ?よっしーにそっくりじゃん。まさかこいつに協力するの?」
「こいつとは何だ!私はこの国の大臣だぞ!」

美貴にとっては大臣の顔は宿敵でもある吉澤ひとみによく似ているせいで嫌な気分になったようだ。
大臣もプライドの高い人物であり、以前サファイアにボンクラ呼ばわりされたことに腹を立てたことがある。

高笑いを残して大臣はその場を後にした。
美貴はマルシェに近づいて話しかける。

「いいのか?あの大臣が政治の実権を握れば、国が乱れるぞ。それにゴールドランドのこともある。」
「安心してください。政治はあの方の息子がそれとなくやってくれますよ。幼いながらにとても賢い方のようですから。それに国が乱れても私たちの計画に支障はありませんから、それにゴールドランドよりも一番心配なのは愛ちゃんの事ですよ。」

旅行公司
愛と里沙はいったん旅行公司に戻った。

「なるほどサファイア様の頼みは大臣の悪事を暴くことか・・・確かに大臣は胡散臭いわよ。」
「毒を盛ったことは大臣の腹心を吐かせたからわかったけど、サファイアは別の企みがあるみたいと言っていたやよ。だから戴冠式を終わらせてもそれを暴くまではあえて大臣を追及しないみたい。」
「そう、それなら私もいくつか心あたりがあるよ。まずは鉱山のことだけど、あの大臣鉱山の発掘以外にも何かあるみたい。」
「わかったやよ、あーしは明日の戴冠式に潜入するやざ。大臣が何をするかわからんから。」

翌日
愛は戴冠式へ出席するためにドレスアップしていた。

「愛ちゃん・・・あなたはサファイア様に瓜二つなんだから余計なトラブルは避けるのよ。」
「わかっとるやよ。まぁあーしは女の格好をしとるからサファイアの男装姿とは勘違いせんとは思うけど。」
「私はもう少し大臣の周辺を探ってみる。」

愛は城まで徒歩で向かっていた。
「はぁ、やっぱり車を使えばよかったやよ。」
「その必要はないわよ。あんたは戴冠式には出席できないんだから。」

するとそこには漆黒のドレスを身にまとった氷の魔女の姿があった。

「ミティ。どうしてここに?まさか・・・ダークネスが関係しとるんか?」
「ご名答。まさかあんたたちが来るとは思わなかったけど、あんたが戴冠式に行くと私たちの邪魔になるから。ここは通せんぼ。」

愛は驚愕した。まさかダークネスが関わっているとは思いもしなかった。
となると城にいるサファイアにも危険が迫っているのは明白。
急いで城に向かわないと・・・

愛はミティを無視して瞬間移動しようとする。
だが・・・飛べなかった。

「どうして?」
「おいらもいるんだよ!今回はお前らに邪魔されるわけにはいかないんだよ!」

ダークネスの幹部・矢口真里もいる。
これはただ事ではない。
それにこの様子では自分のすべての能力は封じられているに違いない。

「あんたはここでおねんねしてな!」

ミティが氷の刃、真理が念動刃をたくさん放った。
愛は戦うよりも城に向かうことを優先して、走りだした。
しかしそれが攻撃への防御をおろそかにした。

バシッ!ザクッ!
愛の背中に氷の刃と念動刃がまともに当たった。

「あっ!」

バシャーン!
愛は川に転落した。

「死んだかな?」
「さぁ?わからないけど、深手は負わせた。それに城では今頃・・・」

シルバーランド城
その頃、城では順調に戴冠式が行われていた。
すでに王冠をかぶり王となったサファイアは出席者のいる場所を眺めるがやはり愛の姿はない。

(愛、来ると言っていたのに?もしかして何かあったのか?) 

サファイアが不安そうな顔をしていると王妃がささやいた。

「サファイア、不安にならなくてよい。あなたにはお父様がついておられる。」
「はい、お母様。」

サファイアを女として見てくれる王妃はサファイアの揺れる心を支えてくれる大切な人であった。
しかし王妃の心は国民をだました罪悪感に満ち溢れていた。

「それでは・・・みなで祝杯を!」

大臣の号令とともに出席者全員に祝杯が渡された。
もちろん、王となったサファイアや王妃にも・・・

「王に乾杯!」
「「「「乾杯!」」」」

全員が祝杯の酒を飲んだ。
すると王妃の様子がおかしくなった。

「母上?」

サファイアの呼びかけにも答えずとつぜん、髪を振り乱して、叫びだした。

「王は・・・サファイアは・・・女だ!」

王妃の叫び声は戴冠式の会場に響き渡った。
出席者のほとんどは唖然としている中、大臣だけは笑みを浮かべていた。

「王は・・・嫌、サファイアは国民を裏切った。これは王妃の告白で明らかだ。サファイアと秘密を隠していた王妃は重罪!この者たちを牢に入れろ!」

大臣の命に従って衛兵たちがサファイアと王妃を取り押さえた。
もはや言葉も出ずにサファイアは抵抗もできない。
そして大臣はサファイアから王冠を奪い取り、自分の息子の上に掲げた。

「この国の憲法で王はわが息子が受け継ぐ!」

その言葉とともに大臣の息子に王冠が被せられた。
大臣の息子は事態がわかっているのだろうか、とても無邪気に笑っていた。