『とりっくおあとりーと』


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「ハロウィン終わったね」
「そうですねぇ」
「掃除も大変だったね」
「そうですねぇ」
「誰かさんがランタンを壊したりとか、誰かさんが
 カボチャのスープとかこぼしたりとかね」
「そうですねぇ」
「誰かさんはいつのまにか寝てるしね」
「そうですねぇ」

グニュ。
新垣里沙が亀井絵里の頬をつね、絵里も里沙の頬をつねり返す。
グギギギギギギ。
里沙の頬はまるでパンのようによく伸びる。
対して絵里の頬は徐々に赤みを帯びて行き、「ギブアップ」の合図を出した。

 「もーガキさん痛いじゃないですか」
 「頬のつねり合いで勝てないの知ってるくせにやるからでしょ」
 「ムキになるところが子供ですよね」

グギギギギ、ゴメンナサイゴメンナサイ

 「何やっとるの二人共、椅子から転がってまうで」
 「あ、一番浮かれてた人がやってきた」
 「魔女の画像をさゆが待ち受けにしてましたよ」
 「嘘ッ、ちょ、さゆ!さゆどこ行ったん!」
 「どこって、掃除したあと買いものに行って来るって出掛けたじゃん」

愛は諦めたように両手に掴んでいたコップを二人に差し出す。
漂う匂いはコーヒーではなく、カボチャの香ばしくも心が躍るスープだ。


 「昨日の分がまだ残っとるから、二人ちょっと手伝ってよ。プリンもあるで」
 「にしても変わってますよねーオレンジのかぼちゃなんて」
 「外国ではパンプキンがオレンジらしいよ、それ以外は別なんだって」
 「出た、ガキさんが言いたいだけの豆知識」
 「いいじゃん、カメみたいに忘れたらそれこそ無駄になっちゃうけどね」
 「絵里は重要なことは頭に叩きこんであるから良いんですー」

スプーンで掬って飲む里沙と、コップごと口で啜る絵里。
愛が自分の分であるカボチャプリンに口を付けた時、不意に絵里が呟いた。

 「そういえばトリックオアトリートってやったこと無いですよね」
 「んー?何、やってみたいの?」
 「というかなんでしたっけ、いたずらする代わりにお菓子をねだるんですっけ」
 「そうそう、外国のオバケとかに仮装してね、皆なかなか似合ってたよ」
 「でもあんなにもどこで仕入れて来たの?ショップとか?」
 「ん?うんまぁちょっとしたツテがあっての、あとさゆからもアイディア貰った」

里沙と絵里は「あー」と納得したような表情をしてスープを啜る。
どうりでサイズや特徴その他諸々が個人個人に合うと思った、と。

 「でもあの4人のサイズとかいつ調べたんやろ」
 「アイツにかかれば簡単なトリックですよ」
 「なにいきなり探偵っぽくなってんの」

あの4人とは最近店の常連になった女学生の事だ。
愛が誘ったらしく今回のパーティではいろんな意味で盛り上げ役を買ってでてくれた。

 「にしても皆飽きんと毎年やってくれるなぁ、あーしは嬉しいけど」


 「まぁこうして集まる日があってもいいんじゃない?いつかは
  こうして出来なくなるかもしれないんだから、その分もね」
 「ガキさんは真面目だなぁ」
 「何?今が大事っていうのがカメの口癖じゃなかった?」
 「そうなんですけどねー、ま、でも絵里だって時々思いますよ。
  あーこうやってずっと居られたらいいのにって」

スープのおかわりを愛に言って、カボチャプリンを食べる絵里は
どこか哀愁を漂わすように呟いた。

 「でもそうなっちゃって、皆が慣れて大切にしてくれなくなるのもアレなんで。
  絵里はこうしてプリンの味を覚えるわけですよ」
 「分かるけど分かんないって言っておくわ、カメがそんな
  真面目な話するなんて面白くないもん」
 「それって褒めてます?」
 「さーね、まぁ来年もカボチャくらい被ったら?お菓子くらいあげるわよ」
 「じゃああーしもちょうだいよガキさん」
 「愛ちゃんはあげる側でしょうが」
 「お化けに年齢なんて関係ないやよ」

愛は笑って里沙に言った。
年齢関係無く、誰もが変身して楽しむことがイベント。
そんな期待感が、愛は何よりも大好きだった。

 「そういえばあの4人、楽しんでくれたかな?」
 「ああさっきお礼のメール来とったよ、律儀な子達やわホントに」
 「無事に学校にも行けたみたいで良かったよ、私達よりも
  早く起きて支度してたらしいから」


 「じゃ、絵里は二度寝のじゅんびしよっかな」
 「うん、カメはもうちょっと成長しようか」
 「子供は寝て育つ、これ常識っていう話」
 「カメには適応されないみたいよ?」
 「それを振り切ってでも絵里は寝るかくごでありますっ」
 「誰なのよアンタは」

とりっくおあとりーと。
おかしをくれないといたずらしちゃうぞ。
とりっくおあとりーと。
そう言われたら高らかに叫ぼう。  
Happy Halloween!