『モーニング戦隊リゾナンターR 第21話 「救済のfall」』


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【劇場版予告・「A」ver】

解答を求める女、「A」

【対象】:周囲に展開中の戦闘マシーン ― 【電磁波】【マイクロ破】によるアクセスを拒否

ならば破壊して、内臓メモリーを解析するまでだ ― 面白い、未来からの刺客というわけか―ジェットストライカー発進 【目標】:AD2131 Neo Tokyo City

旅の妨害者を排除する為のミッションに同行したのは ― また、お前か ― あひゃひゃひゃ、今日こそは私の話をたくさん聞いてもらうやよ ― 失せろ―あひゃぁぁぁ

かつてNeo Tokyo Cityの守り手としてガイノイドpepperと覇権を争ったakシステム

愛の出現は廃棄されたシステムを再起動するスイッチだった

【検索ワード】 リゾナンター ― ヒット数ゼロだと、不自然すぎる、何者かが過去を改竄しようとしている

この巨大なakシステムを破壊するには分散している制御システムを同時に破壊する必要がある ― 別れるぞ、死ぬな

巨大なシステムのプログラム言語による懐柔 ― 笑わせるなプログラムの奴隷に過ぎないお前たちと解答を探求し続ける私を一緒にするな

くそっあと一歩だというのに ― 窮地に立たされた「A」に流れ込む圧倒的なエネルギー

お前は、アイ? そうかおのれの記憶をエネルギーに変換して、この街を、仲間を見守り続けてきたというわけか

ならば、使わせてもらうぞ ― System「A」“infinity”モード起動!!

モーニング戦隊リゾナンターR 劇場版『Return to the Future』今無限の物語が始まる



グルルル・・・・
巨大な大熊猫の前腕の一撃を避けようともせず受けた
血の香り、肩を砕かれた痛み、獣の匂い、唸り声
ゴメンね、李純。
クマ科の獣の顎に頭部を噛み砕かれ……痛って、夢やったんか

「お前誰かに謝っていたぞ」

第21話「救済のfall」

早安計画の最後の生き残り、李純の獣化した姿によって襲われた愛は気を失っていた。
かすり傷程度しか負っていないことを確認した愛は「A」と情報交換を行った。

早安計画、それは世界を守る戦士を造り出すために進められた日中共同プロジェクト。
遺伝子操作、薬物投与を経てこの世に生まれた九人の能力者たちは、自分たちが世界に正義をもたらす存在だという確信と共に生きてきた。
しかし自然の摂理に背いて誕生した九人は、体内に世界の矛盾を抱えていた。
能力者として戦う日々の後に待ち受ける破滅の時。
理性を失い本能のままに殺戮を繰り返す怪物に生まれ変わる運命を回避するために九人が選んだ手段は悲劇的なものだった。
体内の崩壊因子を、身体面で活性化する薬物を摂取した上で消滅のdropに打たれ、消えていく。
しかしただ一人その運命から逃れようと仲間との約束を破ったのが、獣化能力者である李純だった。

悲惨な死に様を晒していた男たちを調べていた「A」の説明は簡潔だった。
男達の国籍は中国 - 早安計画の関係者が李純を処分しようとしたのだろう
「もっとも自分たちが処分されてしまったわけだが」

男達のある者は獣の爪のようなもので喉を切り裂かれ、ある者は頭部を粉砕されていた。
「まるで獣の牙で噛み砕かれたようにな」

凶行の犯人が獣化能力者である李純だと言わんばかりの「A」の口振りに愛は反発する。
「あの子が本気だったら私今頃生きていない」

「食事を済ませたばかりで腹一杯だったんじゃないか。それとも他に欲しい物があったのか」

そう言われた愛は警察の保管庫から持ち出した音楽プレイヤーが無くなっていることに気づいた。

          ◇          ◇          ◇

李純は資材置き場の片隅に身を隠していた。
耳には気絶させた愛から奪った音楽プレイヤーのイヤフォン

♪如果星球不下雨 那麼我們也找不到相愛的理由~

…消滅を恐れ雨から逃れた自分がこんな唄を聴いてるなんて皮肉だな

「探したよ」

自嘲する李純の前に小川麻琴が立っていた

「君に伝えなくてはいけないことがある」

          ◇          ◇          ◇

「A」と離れていた間に接触した中澤ネットワークから告げられた並行世界の高橋愛の死亡という事実と、今しがた垣間見た死のビジョンを語る愛。
夢にしてはリアル過ぎた死のビジョンは他の世界の高橋愛の最期ではないかという疑問を「A」にぶつける。

「そんなことを知ってどうするというのだ」

「自分の命が今まさに消えようとしている瞬間に、奪おうとしている相手に心から謝っていた」

その理由が判れば、李純という娘をどうしたらいいか判る気がするという愛を「A」は黙って見つめる。

          ◇          ◇          ◇

大量の警察車両が公園に到着した。
警官隊と話しているのは小川と話していた研究者だった。

「二年前の同時失踪事件の容疑者、李純は獣化能力者です。 血に飢えた野獣を早急に見つけなければ」

警官隊に緊張が走る。

          ◇          ◇          ◇

囲まれてるぞ - わかってる

李純を捜している愛と「A」を赤い光点が包囲している。

この戦闘メカ、前にも私を襲ってきた ― 私にもついさっき仕掛けてきたぞ

「行け」

「A」が彼方を指差した

「修復が上手くいったかテストするには格好の相手だ」

チカラを発動させる愛に声をかける。
「お前はお前だ、他の世界の高橋愛など参考になどするな」

頷いた愛が光となって消えた。

          ◇          ◇          ◇

窓を破って侵入した管理施設の中で小川麻琴と李純が話している。

中止された早安計画に興味を抱いた人がいた ― ソッカー
その人が無敵の軍団を構成する不死身の兵士を欲していた ― ソッカー
その人、保田圭という人は君に関心を持ち、その生態を観察させる為に研究者を派遣した ― ソッカー
その研究者は熱心に仕事をし過ぎたようだ ― ソッカー
その結果君を追いつめたらしいことに保田さんは心を痛めている ― ソッカー
李純、君の人としての意識は既に混濁しかけて… ― ソッカーソッカーソッカーソッカー

「ねえ、李純。 もしも、もしも仲間と同じ最期を迎えることが出来るとしたら君はどうする」

麻琴の掌に薬剤の入った小瓶が載っていた。

「決して強制はしない、これは君が決めることだ」

「ホントにミンナとオナジヨウにキエレマスカ。 オナジトコロへイケマスカ?」

李純の手が小瓶に伸びようとする。

「待って、純 」

蒼い光と共に高橋愛が現れた。

          ◇          ◇          ◇

【対象】:周囲に展開中の戦闘マシーン ― 【電磁波】【マイクロ破】によるアクセスを拒否

ならばお前たちを破壊して、内臓メモリーを解析してやろう。
「A」と「A」を包囲する戦闘マシーンに大粒の雨が落ち始める。

          ◇          ◇          ◇

この娘は正しいことをしようとしている ― そんなことはない
彼女は遅かれ早かれ人類の脅威となる ― 違う、この子は人を守ろうとした結果こんな姿になってしまった

人の理性と獣の本能が混濁しつつある李純を放置することの危険性を説く麻琴に対して、愛は感情的に否定することしか出来なかった。

一度人間の味を覚えてしまった獣はもう他の味じゃ満足できない ― だって、だって、だって

李純を挟んで一触即発の状態でにらみ合う愛と麻琴
その時壊された窓からガス弾が撃ち込まれた― ちっ ― 麻琴が“反射”を発動する

サーチライトが室内を射る、空にはヘリコプターの爆音。

「これが現実だ、もうその娘の生きる場所はこの世界にない」

跳ね返されたガス弾の直撃を受けて悶絶する警官。

ちぇっ、遠巻きに見ていた研究者が舌打ちをする
あの【反射】能力者が一緒だと手こずりそうね ― 研究者の身体が小刻みに震えだす。

李純を逃がそうとする愛、それを制止する麻琴
外で悲鳴が聞こえる
宙を舞い、地に這う警官隊。
その中心にいるのは研究者だった ― あの科学者、あんなところで何やってるんだ
警官隊の皆さん、任務ご苦労様、そしてさようなら ― 研究者の身体が裂け、大量の血が噴出する ― バカな人間一人からあれほどの血液が!
クカカカカカ、積年の恨みを果たす時が来た-邪眼の霊幻道士が降臨した。
研究者の抜け殻から吹き出した血は愛たちのいる施設を取り囲むように広がり、尚もその面積を広めていく
そうして出来上がった血の池の中から何者かが頭をもたげて…。

あれは!! ― 愛、里沙、絵里…8人のリゾナンターが血まみれの姿を現した。

何でアンタだけ生きてるの、ズルい、苦しいよ、純姐裏切ったデスか

自分への恨み言を口にするその姿を目にした李純は許しを乞いながら施設の隅で頭を抱える。

「何で人と人の絆を汚す真似をする」

血の色で彩られたリゾナンター達の中に飛び込んだ愛が蹴りを一閃させると、八人は塵となって消えていった。

「乱暴なことをする。 そやつらはあの獣人の仲間であることに間違いは無いというのに」

「本当の仲間なら一人だけ生き残ったことを呪ったり恨んだりしない」
愛は怪しの霊幻道士を睨みつける。

お前は人か ― 遥か昔に人であることをやめた、無限のチカラ、永遠の生命を求めてな。

霊幻道士の瞼は下から閉じ、皮膚は鱗で覆われ、背中からは翼が生え、手には鋭い爪が伸びている
左右に開く口からおのれの出自を愛に明かす。

獣人の村、虫に変化する能力者、涙を流す機械仕掛けの人形、共鳴という絆で結ばれた9人の戦士たち
そんなファンタジーと現実が交錯する世界を彼は己の手中に収めようとした

「正直言えば世界などどうでもよい、そこに生きる人間どもの生命を思いのままにしたかった
そしてそれはもう少しで叶う筈だった、あの女、かなしみ戦隊のジュンジュンがワタシを欺かなければな」

かなしみ戦隊 ― かなしみを抱えた少女達が闇を打ち払うために繋がった集団
霊幻道士はそのメンバーの一人ジュンジュンと浅からぬ因縁があるらしい
三回だ ― 霊幻道士だった存在はそう言って自分の腕を誇示した
三本の指で数字を示したつもりなのだろうが、手首から上が鉤爪に変化してしまっているため読み取ることは叶わない。

一度目は中国全土の能力者のチカラを取り込もうとした。
その野望を砕かれた男は最期に残した詛いで死者たちを操り、ジュンジュンの故郷を侵そうとした。
その詛いもジュンジュンとリンリンの請いに応じて駆けつけたリゾナンターが打ち破った。

「ワタシが無限のチカラを手にしようとする度にあの女が邪魔をする。 現世はおろか地獄にまで首を突っ込んできおって」

伝わってくる醜悪な気配 ― ワタシは冥界に堕ちて来た死者の魂を食らって力を蓄えることにした

一体何人の人の魂を餌食にした ― お前はこれまでに喰らった飯の分量を覚えておるとでもいうのか

かつて霊幻道士だった存在の物言いに鼻白む愛。

「だがまあ二十万を越え、三十万に少し足らずというところか」

その言葉を聞いた愛の目が険しくなる。

あらゆる人間の魂を無差別に喰らった結果、かつてないほどのチカラを手に入れたという男。

今のワタシなら奴らに負けやしない ― 獣化能力者であるジュンジュンやリンリン、その仲間のリゾナンターにガイノイド「ペッパー警部」

かつて霊幻道士だったモノは自分に仇なす存在を次々と挙げていき、彼女たち全員が力を合わせても今の自分には及ばないと豪語した。

「しかしそうなってみると少し物足りなくなってしまった。 捕まえたあいつらを生かしたまま身体の内側から喰らってやるぐらいでは気が収まらん」

そう思った男はある考えに取り付かれた。
それは並行世界の融合が進行し、世界間の障壁が弱くなりつつある状況を利用した企てだった。

「やつら、かなしみ戦隊リゾナンターの前に、人の肉を喰らい血の味を知り、人外の化け物に変わり果てたもう一人の李純を送り込んでやる」

まさか ― 邪悪な者の言葉を耳にした愛の顔色が変わる

「中国の兵隊さんたちをやったのはオマエの仕業なのか? 身体の中に崩壊の因子を抱えた李純を追い詰めて獣に堕として自分の世界に連れ帰るために」

「あれは愚かな女だ。折角ワタシが仕留めて捌いてやった食材を、何に怯えてか口にしようとはしない。 口にすればくだらない理性など吹き飛んで楽になれるというのに」

お前だけは許さない ― 心の内から噴出する怒りに髪の毛を逆立てながら人外の化け物を睨みつける愛。

地面の血の流れている部分と汚れていない部分。 その境目から障気が立ち上り、巨大なドームが形成されていく

「よく言われるよ、お前は許せないとな。 
もっともその言葉を口にした勇ましい人間も手足を一本ずつ喰らってやると泣いてワタシに頼むのだ。 早く楽にしてくださいとな、クカカカカ」

瞬間移動のチカラを発動させた愛は、霊幻道士の胴体付近の空間に裂け目を生じさせ、跳躍した自らの身体で打ち砕いた。

やった…か ― クカカカカカ、勇ましいお嬢さんだ。 お前の魂はさぞや素晴らしい味がするのだろうな ― この化け物が!

化け物は自分が喰らった三十万の魂はある時は盾となって自分を守り、ある時は槍となって仇なす者を貫くと豪語した。

「つまり三十万の軍勢がワタシと共にある。 ワタシを倒すには三十万の魂の内のどれか一つに存在するワタシの核を破壊しなければならない」

十分だ ― 何だと ― たとえ三十万分の一の確率でもゼロでなければ十分だ

血の色をした地表から十数人の兵士と数十人の警官が姿を現した。 その姿は牙で噛み砕かれ、爪で切り裂かれた無惨な状態だった。

「では手始めにこいつらと戦ってもらおうか。さっき取り込んだばかりの魂の残骸だ」

         ◇          ◇          ◇

君はずっと自分の奥底から沸き上がってくる衝動と戦い続けてきたんだね ― ああ

施設の中では小川麻琴と李純が向かい合っていた。

破壊と殺戮の衝動が突き上げてきたら、仲間の顔を思い浮かべ、お気に入りの歌を口ずさんで堪えてきたと明かすジュンジュン。
そんな彼女に麻琴は優しくしかし厳粛な態度を貫く。

しかし、もう限界に近いね ― ああ、わかってる

麻琴から受け取った小瓶を握りしめると李純は言った。

「仲間を裏切った罪を償う時がやってきた。 でもその前にやらなければいけないことが、行かなくちゃいけないところがある」

          ◇          ◇          ◇

外部とは閉鎖された空間、血の色をした地表から次々と現れる化け物の駒たち。
かつては人として生きながら、今は化け物の手兵に変わり果てた魂と愛の戦いが続いている。

自分は化け物に囚われた魂を解放している。 判ってはいても、対峙する彼らを塵に帰すごとに心に澱が積み重なってゆく。

「お前、こんな子供たちまで喰らったのか」

そして今愛の目の前には数百人の子供がいた。
血と泥で汚れた顔、手足が折れ曲がっている。

「現世で血と肉を味わいながら魂を喰らうのはたまらないが、実に手間がかかる。
その点災害などで大量に冥界に導かれた魂を一気に喰らうのは、実に効率的だ」

今愛の前に姿を現した子供たちは、四川の大地震で犠牲になった子供たちだと事も無げに言い放つ。

「この外道が!」
子供たちを塵に帰すことは、囚われた魂を解放すること。
判ってはいてもその姿を目の当たりにして、チカラが振るえずにいる愛は徐々に追い詰められていくが…。

血の色をした障壁を破り、外部から侵入してきた者がいた。
それは銀色の輝きを湛えた大熊猫とその背中に跨った小川麻琴だった。
大熊猫に獣化した李純が爪を閃かせる度に、化け物の傀儡となった死者の魂が浄化されていく。

李純たちがこの空間に侵入する際に破壊した血の色をした障壁は修復され、穴が塞がっていく。

「無様だな」
麻琴の声は冷たかった。
愛は愛で自分と敵対している筈の麻琴が危地に飛び込んできた真意を図りかねる。

麻琴は猛威を振るっている李純を指し示した。
「彼女とあの霊幻道士の能力の基本ベースは同じ獣化能力だ。 だからあいつの核の在処も感じることが出来るらしい」
そう言って麻琴は愛に促した。

「お前は最大限のチカラでその核を撃ち抜くんだ。 その間無防備になるお前の背中は私が守る」

迷いの感じられない麻琴の言葉に愛は戸惑った。

「勘違いするなよ。 正義のミカタを目指してた私がこんな悪党みたいなことを言うのは不本意だが…」
一瞬の逡巡が感じられた。
「お前は私がこの手で倒す。 こんな場所であんな奴に倒されるだなんて断じて許さない」

群がっていた霊幻道士の傀儡を一掃した聖獣が跪き、その背中を愛に見せている。
「わかった。 あいつを倒すまで私の背中は麻琴に預けるから」

愛は李純の変化した大熊猫に跨った。
その背中を守るようにして麻琴もまた…。
二人が背中に乗ったことを確認した大熊猫は頭をもたげて一点を見つめると、四肢を駆使して進撃を始めた。

「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」

蒼い光が煌めいた。

          ◇          ◇          ◇

フォトンマニピュレイト、滅びの光、邪悪な存在の昇華、解放された囚われの魂。
かつて霊幻道士だった化け物の核を消滅させたことで、空間と外部を隔絶していた障壁も消えた。
そこは郊外の緑地公園の敷地の中、地面にはこの場で肉体と魂を喰われた警官達の遺骸が横たわっている。
無惨な有様の遺骸に大きな雨粒が落ち始めている。

その光景が意味することを悟った愛は李純の姿を捜す。
そうしている内にも雨足は本格的なものになりつつある。

…生きたい

痛切な声が愛の心に響いた。

…エナイ

今度は啜り泣くような声を耳が捉える。
霊幻道士との戦いが繰り広げられた場所から少し離れた小高い所で、生まれたままの姿で雨を受け止めるように浴びている李純の姿が目に映った。

「純!!」

駆け寄った愛は、消滅のdropから李純を守ろうと、自分の身体で覆い隠すように抱きしめた。

「キエナインダ。 オガワサンニモラッタクスリヲノンデアメニウタレテモキエナインダ」

嗚咽と共に胸の内を愛に告げる。

「ミンナトノヤクソクヲヤブッタカラミンナノトコロニイケナイノカ?  ココロノドコカデマダイキテイタイトオモッテイルカラショウメツシナイノカ?」

…そんなことはない。純が生きていたいという気持ちを否定するような仲間なんていない。


心の中から溢れ出てくる思いを上手く言葉に出来ない愛は、もう一人の高橋愛の顔を思い浮かべた。
世界を守る正義の味方として戦っていく宿命を根底から否定されながら、それでもこの世界を守るために出来る最善の選択をした戦士だった。
絶望的な現実に心折れそうになった仲間を最後まで、毅然とした態度で導こうとしたリーダーだった。
その人は世界に仇為す前に雨と共に消えてゆく運命から、ただ一人逃れようとした李純のことを最後まで心に留めた仲間だった。
自分自身の消滅が進行していく不安な時間の中、最後まで李純のことを気にかけ、その思いを誰かに伝えようとした人間だった。

…なあ、純。 あんたに伝えなきゃいけないことがある。
私のことをどういう風に説明したってあんたには判ってもらえないと思う。
あんたの仲間の高橋愛から受け取ったメッセージがある。 
見えない壁に阻まれて声は伝わらなくて、唇の動きを読むことしか出来なかったので、どこまで正しいか自信がなかったけど、今なら判る。

「…あなたは生きて。 私たちの分も。 どんなにつらくたって生き抜いて…」

それが消滅のdropに打たれ、消えていった高橋愛が最後の最後までこの世界に残したかったメッセージ。
消えることを恐れ、世界の脅威、モンスターに堕ちてでも生きる道を選んだ李純へ伝えたかった思い。

「…ああ、いかにもあの人の言いそうなことだ。 きっとあの人が私に言いたかかったんだろうな」

自分を抱きしめる愛にそう言った李純は、小さく呟いた。
自分自身に言い聞かせるように。
愛の耳には「イキテヤル」と聞こえた。

クシュン。
霊幻道士の企てを打ち破った戦士とは思われないような、かわいいくしゃみをした李純が愛に頼んだ。

「ところで何か着るものないですか?」

世界に裏切られた早安の戦士たちを冥界に誘った消滅のdropは、絶望に満ちた世界を白く染める救済のfallと姿を変えて降り始めていた。

        ◇          ◇          ◇

【視覚センサー】:全対象の破壊を確認
群がる戦闘マシーンを苦もなく撃破した「A」は残骸から回収したメモリーチップを解析して、その製造元を割り出した。
AD2131だと、面白い
並行世界間で時間の進行にズレが生じていることも、個々の世界で時間の進む速さが違うことも認識済みだがこれほど乖離した例は初めてだ
さしずめ未来からの刺客というところか
ならば今度はこちらから出向いてやろう

近郊の飛行場に待機させてある愛機、ジェットストライカーの機関を遠隔操作で起動させた「A」の指先でチップが砕け散った。

         ◇          ◇          ◇

早安計画の被験者たちは能力に関与する因子を人為的に欠落させることで生まれた能力者だ
欠落した部分を修復しようと活発化する細胞の機能が彼女たちのチカラの根源だ
つまり、彼女たちは最初から不安定な存在だった
やがて崩壊の運命が訪れることは必然だった

季節外れの雪が止み、所々が白く染まった景色の中で高橋愛と小川麻琴が対峙している。

何故そんなやり方で能力者を生み出したかって?
早安計画に携わった人間は恐れたんだろう
能力者が自分たちの手駒であることをやめ、個人の意志によって動く人間になることを。
いにしえの中国の王朝の時代から、強力な軍を握る者はその反乱に怯えたものだ。
だから彼女たちの寿命を自分たちで掌握したかった。
彼女たちが早安の正義に疑問を抱き、自分たちに反旗を翻した時には、最小限の犠牲で粛清するために
雨が消滅のdropだというのも彼女たちの深層心理に組み込まれた暗示だ。

「何が言いたい」

早安計画について説明する麻琴の顔を見つめる愛のまなざしはいつになく厳しかった。

「…彼女、李純が抱えていた問題は何一つ解決していないということだ」

保田圭の指示によって調合した細胞の活性剤を摂取した上で、消滅のプログラムを起動させるスイッチである雨に打たれてなお、この世界に存在し続けている李純。
それはいくつかの偶然が重なって生まれた奇跡のようなものだと。

「あの娘の中には依然として、人間性を失い怪物として覚醒する因子が存在している。 それはお前も感じ取っている筈だ。だから…」

李純を永遠の眠りにつかせるべきだと麻琴は愛に告げた。

「人間としての尊厳を彼女が保っていられるうちに。 それが彼女の願いでもあ…」

麻琴の言葉は愛の否定によって途中で遮られた。

「違う。 あの娘は生き続けることを望んでいる」

「あの娘はいずれ絶望の夜明けを迎えることになるぞ。 そしてこの世界の人間は脅威に晒されて…」

「麻琴」

愛に名前を呼ばれた麻琴はその口調の力強さに戸惑った。

「あの娘の現在はこの世界の正義を守ろうとした結果訪れたものや。 だったらこの世界もあの娘の絶望と不安、苦しみを分かち合うべきだと思う」

「世界の脅威を解き放つつもりか。 いずれ人を襲う怪物に覚醒するあの娘を!!」

世界を守る者という立場を逸脱した愛の態度を麻琴は詰ったが、愛は揺るがなかった。

「私が世界を守りたいのは、そこに私の大切な人間が生きているから。 もしもこの世界が李純のことを拒絶するなら、私は…この世界を壊せる」

愛の決意に気圧された麻琴はしばらくの間言葉を失った。


「麻琴はエラいよ。 私のことを憎いはずなのに、それでもあの霊幻道士を倒すために私を助けてくれた。 
でもそんな麻琴でも李純に危害を加えるなら私は許さない。 麻琴が正義の味方であるなら、私は李純の味方になる。 たとえ世界を敵に回してでも」

火花を散らしにらみ合う二人だったが、やがて麻琴の口から笑いが漏れてくる。
「なるほどな。 肩を並べて戦ってみて、あるいはと思ったがでも違った。 やはりお前は世界の破壊者で、私の敵だ」

そう言って愛に背を向けると、その場を立ち去ろうとする。

「待てやっ」

かつての友の唐突な行動を問い質そうとする愛に背中越しに答えた。

「確かに彼女は世界の脅威だが、あの霊幻道士のように世界の壁を越え、全ての生命を危険に晒す存在ではない」

「じゃあこのままにして?」

「ああ。 しかし怪物として、魔獣として覚醒した瞬間、彼女は狩り立てられることになる。 この世界の人間の手によってな」

通りすがりのお前にそのことの罪を背負えるのかという言葉を残し、小川麻琴は去って行った。
頑なな旧友の背中を見つめる愛の視界に、再び散らつき出した雪が映る。
その空に向かって言葉を発した。

「生きたいと思うことが罪だっていうんなら、その罪は全部私が背負う」

          ◇          ◇          ◇

時空を隔てた原野。
白い雪が中空に漂っている。
静止した時間の中に存在する二つの人影。
完全に静止した人影の背後に廻ったもう一人の腕が閃いた。
そして時間は動き出し、雪が地表に降り積もっていく。
白い大地に倒れ伏す女の身体から、紅い液体が流れている。
自分に手傷を負わせた女に対して、それでも戦意を消さずに這い寄っていくが…。

「あなたの頑迷さにも呆れてしまうわね」

静止した時間の中で敵を倒した保田圭が往生際の悪い相手に宣告する。
「この世界に永遠なんか存在しない。 でももしもあなたがそれを求め続けるというのなら、永遠を殺す者として私はあなたを倒す」

「…わたしは、わたしは……」
永遠を追い求める魔女の目から力が失われ、その身体に雪が降り積もっていく。

    • 続く--

【次回予告】
ありふれた町並み、変わらない日常。 魔女ミティが率いるダークネスとリゾナンターの戦いが繰り広げられていく。
暗黒魔獣イカカニゴン、共鳴レールガン”リゾナントバスター”。
激戦を目の当たりにした愛はリゾナンターの面々が自分の知らない顔だったことに驚く。
「あんたら、一体何物?」
戦闘員の一人と接触した愛は意外な事実を知らされる。
「この町は新しい記憶を蓄積できなくなってしまったあの方に、終わりなき日常を過ごしていただくための場所」
語られる氷の魔女誕生の真実、そしてもう一人存在した炎の魔女。
「亜弥ちゃん、美貴ね亜弥ちゃんのことずっと待ってたんだよ」 氷の魔女と「A」の邂逅が世界を揺るがせる。
モーニング戦隊リゾナンターR 第22話「Aya The Witches」
全て凍らせて、思いを守れ



【劇場版予告・小川麻琴ver】
絆を断ち切った女-小川麻琴

リンリンの前に屈した小川 -実力で上回ってるあなたが遅れを取ったのは、あなたには欠けているものをあの娘が持ってたということよ

私に何が足りないっていうんですか? - あんたに無かったもの、それはかけがえのないものを守るという強い意志
だったら私は保田さんのことを守ります -あらうれしいわね

お前は私が絶対だと信じていた人を傷つけた、だから私はお前を…保田を負傷させた「A」を追って120年の時を越える小川

どういうことだ、この世界のいかなるサーバーにもリゾナンターの情報は保存されていない - 削除された歴史 - 動き出すシステムは麻琴をも巻き込んでいく

何なんだあのビルは - 変形して巨大ロボットになったぞ

自らの中枢部への攻撃を防ぐためにakシステムが起動させた巨大ロボットの標的は新垣里沙

戦う術を持たない里沙を守り苦境に立たされる愛 - お前をこんな鉄の塊に殺させるわけにはいかない、お前を倒すのは私だ

麻琴、あんた - 行けよ、お前はさっさとこのクソいまいましいシステムと決着を付けてこい

全長180メートルの巨人は反射能力者麻琴をも追いつめてゆく

アナタのチカラは大切なモノを守るチカラです - リンリン、あの中国人わかったようなこと言いやがって

ああそうだ、たとえ歩く道は違っても、違う星の下で暮らしても、別々の時を生きようとも、新垣里沙は私の大切な仲間だああああっ

私たち人間はお前らみたいなシステムに負けやしねえんだよ

モーニング戦隊リゾナンターR 劇場版『Return to the Future』 能力者とシステムの最終決戦が今始まる