『星の巡り。- Reader crybaby -』


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いつも見上げてばかりいる、蒼い空。

目を閉じるのがとても怖くて。
一度真っ暗になってしまった視界はもう戻って来ないんじゃないかって。
もう、このまま目覚めなくなってしまうんじゃないかって。

そう思うのはきっと。
空っぽだったのに、いつの間にか、たくさんで溢れそうになってるから。
だから、目を開けるのが怖いときがある。
楽しいくて、嬉しくて、優しくて、温かい。
全部が、夢から醒めてしまうんじゃないかと。

幻のように。
でもたくさん感じて生きて来た。
遠くとか、近くとか、いろいろ。

けれど結局、ひとりだってことに気付く。
皆そう。
それでも笑ってるんだよ。皆が皆、幸せそうに笑ってた。

 さよならを繰り返して。

ボクらはいつも、繰り返しては、また繰り返す。
楽しいのも、悲しいのも。

 だからもう、空っぽなんかじゃないよ。
 それを言葉にするのは凄く簡単なのに、少し、照れる。

きっと。
皆が想う、皆が求めるその名が、今は誇らしいから。


 泣き虫リーダー

その言葉で、目を覚ます。
遠くの方から闇から光が溢れて。

コーヒーの匂いがした。
いくつものカップの中で、淹れたばかりだと湯気が揺らめく。
初めて入れたコーヒーは飲めたもんじゃなかったな。
薄く笑う。

あれから、どれくらい―――。

夢を見ていた。
遠い遠い、まるで宇宙を旅していたかのような、とても長い時間を。
この世界の時は今でも、並行する世界の時間は異なる。
"現在"も"過去"も"未来"も。

彼女はまだ、こう呼ばれている。

 泣き虫リーダー

頼り無いと言われた事も何度もあった。
しっかりしろと言われた事も何度もあった。
頑張れと言われた事も何度もあった。

その度に、泣いて、その度に涙を零す。
繰り返して、繰り返す。
そうする内に、本当に泣き虫になってしまった。

 だがそう呼ばれる度に、近くには仲間が居た。


頭をワシャワシャと撫でられた。
笑った顔が周りに集まった。
冗談混じりの言葉が飛び交った。

少なくとも彼女にとって、何故これだけしっかりしている人たちが
自分のような人間の周りに居るのか不思議になったこともある。
というよりもこの人たちの方がちょっと「変」なんじゃないかとも。

 「貴方の方が一番変でしょ、確実に」

そんな訳ない。
自分は皆のようにできる人間じゃないから。
それとも自分がここに居るのが「変」なんじゃないのだろうか。

 「何言ってんの、ホントに変なら誰も構ってあげないよ。
 誰も気付かせてあげないよ。誰も助けないよ。
 それでも皆が集まってるっていうのは、そういう事なんだよ」

彼女の言うことは少し理解するのが難しい。
でも、彼女が言うことももっともだと思った。

負傷した傷が痛む。
目を開けて、其処には涙を溢れさせた皆の顔があった。
安堵する表情、怒った表情、喜ぶ表情。

 ――― 夢を、見ていた。

コーヒーの湯気が揺れる喫茶店。
テーブル席に促された彼女の真後ろのテーブルに誰かが座った。
もう待ち合わせの時間はとっくに過ぎている。


その時、窓から見慣れた顔が現れて、手を振っている。
彼女が立とうとすると、後ろのテーブル席に座っていた誰かが立つ。
反対の方向に視線を向けると、窓から人が手を振っているのが見えた。

 あぁ、そうか。

店内のBGMがゆっくりと、次の曲を流し始める。
彼女が動くと、誰かが動く。まるで鏡の様に。
鏡の誰かは振り向き、鏡の彼女と視線を交わした。

安心したような表情に、彼女も安堵する。
扉の方に振り返り、背中越しに手を上げて合図をした。
誰かもそれにならって、合図をする。

 またね、泣き虫リーダー

それは誰かへのエール。それは彼女へのエール。
満たされたまま置かれるコーヒーはただ其処に。

 掌から見える『A』と『R』の刺繍に、微かな天穹の蒼が彩られていた。