『モーニング戦隊リゾナンターR 第19話 「覚悟」』


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【劇場版予告・新垣里沙ver】

待ち続けた女、新垣里沙

ガイノイド“pepper”の旅に同行した女、新垣里沙 ― 彼女は待ち続ける

自らの命と引き換えに里沙やpepper生みの親戸倉博士を救ったアイが戻ってくるのを ― 死ぬの禁止って約束したじゃないアイちゃん

発達したシステムが人間に奉仕するNeo Tokyo Cityの老人ホームで暮らす里沙はリゾナンターやpepperの戦いを周囲の人間に話すのが日課だった

「はいはい、リゾナンターですか。 検索してもヒットしませんよ。 あなたは夢を見てたんです」 ― 改竄された過去

「私、長く生きすぎちゃったのかねえ」 ― 夢と現実の境界線を彷徨う里沙の前に現れた一人の女

「アイちゃん、帰ってきたんだね。 昔のままの姿だからすぐわかったよ」 ― 120年の時を越えた出会いは一つのシステムを起動させる。

“ガイノイド、アイとリゾナンター新垣里沙の接触を確認,akシステム始動!” ― ガイノイドアイに己の邪な野望を打ち砕かれた男の残したシステムが復讐を開始した

その標的はアイ―「アイちゃん、危ない」 「どうして、里沙ちゃん」 「あの時はアイちゃんがみんなを救ってくれた。 だから今度は私が…」 

判明した敵の本拠、WestTokyoCityにある科学技術丁の旧研究施設 ― 「私はその場所を知っている」

アイちゃんには心があるんだから、私の記憶だって伝わる筈 ― 敵の本拠に乗り込むアイに情報を伝える為にチカラを解放する里沙

重なる額と額、交わる心とココロ、そして明らかになった意外な真実―あなたは愛ちゃん、一体どうして ― 「里沙ちゃんの現在は私が守る」

時空を越えた絆を劇場で確認せよ!!

モーニング戦隊リゾナンターR 劇場版『Return to the Future』 試写会参加者募集中



第19話 『覚悟』

客席の入れ替えのために無人になった野外劇場で、愛と中澤ネットワークの面々の会談が行われていた。
愛は自分を拘束しようとしない中澤たちのことを訝しみながら、この世界の事情を探ろうとする。

思い思いの場所に位置を占める中澤たち。 一人黒い戦闘服に身を固めたロープウエイの支柱の最上部に腰掛けている。
場を仕切るスーツ姿の中澤によれば、無限に広がる並行世界の存在は、中澤ネットワークも確認していたという。
並行世界が相互干渉して、歪みを生じさせないように自分たちが動いてきたという。
「全ての世界に存在する中澤裕子が助け合ってな」

中澤は愛にいくつかの言葉を呈示した。
「蒼の共鳴」 「吉澤の幽霊」 「ダークネス2級戦闘員 サイバープログラム管理部所属 セキュリティ担当 A6357148」…。
愛が聞いたことのある名前、行ったことのある世界もある。 だが全く思い当たらない名前もある。
愛の言葉を聞くと中澤は頷いた。
異なる世界の壁を越えるだけでなく、一つの世界に複数の中澤裕子が存在することが可能だという中澤ネットワークの特質を告げ上で愛を指さした。
「それに対してあんた高橋愛。 一つの世界には一人の高橋愛しか存在できない。 
世界と世界の間の壁を越えるという点では同じやけど、うちら中澤裕子とあんた高橋愛は決定的に異なる存在や」

高橋愛の世界間の移動は、全ての世界で同時に起こる現象らしい。
全ての世界の高橋愛が、同時に次なる世界に移動することで、一つの世界に一人の高橋愛しか存在しない状況を保っている。
そして異なる世界に移動した各々の高橋愛は、独自の判断で動いているらしい
これまで旅した世界でリゾナンターの面々に会えても、高橋愛とはすれ違いで会えなかった理由がこれで判った。

「まあわかりやすく言えば玉突きみたいなもんやね。 それともダルマ落としとか」
暢気そうに言ったジャージ姿の中澤を怖い目で睨みつけると、スーツの中澤は話を続けた。
仲間を救うために、世界を救うために動き回る高橋愛の行動は、事態の複雑化の一因となっているという。
「ほんま、どもならんやつやで。 高橋愛っていう女は」

スーツ姿の中澤は愛に一つの提案を示した。
全ての世界は自分たち中澤ネットワークが守る。

事態を複雑にする要因の一つである高橋愛は世界を巡る旅をやめ、今居るこの世界、つまりポロリ星人の世界に留まり続けて欲しいという。
一人の高橋愛が旅をあきらめることが、他の高橋愛の世界間の移動にどんな影響を及ぼすのか、観察してみたいと言う。
「元居た世界に戻れる保証のないあんたにとっても悪い話やないやろう」

中澤の提案は魅力的だった。
愛が同意すれば、解体されたリゾナントの再建にも陰ながら助力するという。
「この世界はおもろいで~。 ぽろり、ぽろりと言い張る姐さんがラスボスやねんから」
仲間と笑って暮らせる日々が戻ってくることを強調する。

旅を止めるといえば、小春や愛佳の笑顔と一緒に過ごせる。 心が傾いた愛だったが、不審な点があった。
自分がこの世界に来る前にいた筈の別の高橋愛と何故交渉しなかったのか?
全ての世界の高橋愛が同時に異なる世界へ移動するという特質に合致しないかに思える中澤の提案を問い糺す。

「自分、まんざらのアホでもないな。 実は空きが出来てきとるんや。 所々の世界にな。 その影響を受けてこの世界にもしばらくの間、高橋愛は不在だった」
これ以上は言わん、察しろと中澤は言った。

愛の顔色が変わる。
「まさか…命を落とした…」

「かわいそうに若い身空で散りはった高橋はんもおる」
だからせめてあなたはこの世界で生きなさいと、若女将風の中澤が諭した。

愛の身に起こる世界間の移動は、一見愛の意志とは無関係に行われているように見えて、愛の意志が重要らしい。
テレポーターである愛が並行世界を巡るという意志を有し続けることで、世界の移動が発生するという。

「つまり並行世界の間でテレポートが行なわれているわけやな」

スーツ姿の中澤は愛に決断を迫った。 現状で自分たちが晒せるカードは全部晒したと言う。

愛の返事はNOだった。
「たとえ私が笑って暮らせても、その笑顔のために誰かが苦しんでいるなら意味はない」

中澤たちは色めきたった。。

「予想はしてたけど鼻持ちならへん主人公意識やな」 「そういうの、うちは嫌いやないけどな」 「悪いことは言わへん。 考え直しやす」
ポロリ星人は沈黙を守っている。

しかしスーツ姿の中澤から余裕は消えなかった。 
奇襲を仕掛けた際に、命を奪うことさえ出来た愛のことを縛りもせずに、屋外に連れ出したのには理由があるという。

支柱の上に陣取った中澤の能力は【毒放出】。
体内であらゆる種類の生体毒を生成し放出することが可能だという。
「あの支柱の上からは久住小春や光井愛佳がいるミラーハウスの空調ダクトが丸見えや」

そこに遅効性の毒を叩き込むという中澤の言葉が終わらないうちに、支柱の最上部にテレポートしようとした愛だったが…。

光に包まれた愛の体が一瞬、消えたかと思うと、2メートルぐらい上空にまた現れて、舞台に落ちた。
「何をした」

自分が力を発動した瞬間、スーツ姿の中澤が宙を引っかくような動作をしたことが、瞬間移動の失敗に繋がったと直感していた。

スーツ姿の中澤の能力は【空間裂開】。
威力こそ大きいが、有効射程は短いその能力を発動すれば、空間の状態に変化が生じ、愛が認識している空間座標をリセットしてしまうという。
「空間座標の三次元的認識は、1プラス1イコール2みたいな簡単な数式じゃ求められへん」

高次元方程式で表される空間座標の認識に、小数点以下一万分の1の誤差が生じても瞬間移動者にとっては致命的だという。
「運が悪ければ遠い宇宙で流れ星になってたかもしれへんで」

愛がチカラを発動させる際に生じる僅かなタイムラグ。
その瞬間を狙って【空間裂開】を発動することで、愛の翼を打ち折ることが出来ると勝ち誇った。

「うちのこのチカラの前にはあんたは無力だ」 「戦いには相性というものがあるからなあ」 「言うたらじゃんけんのグーチョキパーみたいなもんですわ」

「改めて聞くで。高橋愛、並行世界を巡る旅を止めて、この世界に留まってくれ…」
中澤の声が途切れた。

「悪の親玉のあんたらがなんでそこまでして世界を守ろうとする。ちゃんちゃらおかしいわ」 愛が笑っている。

スーツ姿の中澤はここぞとばかりに声を上げる。
「私たち中澤には中澤の正義がある。悪の組織ダークネスもその手段でしかないわ」

「自分はあんたらの申し出を断る」 愛に迷いはなかった。
小春達や他の入場客の命を平気で危険にさらす中澤たちが守ろうとするもの。 それは世界に住む人々の幸せではない。

「支配だ。 お前たちは自分たちが支配するために世界を守ろうとしてるだけだ」

愛の怒りを、スーツ姿の中澤は平然と受け流した。

愚民たちは支配されたがっている。
未来に影を落とす重大な問題から目を背けるばかりか、今ある危機をいかに克服するかという決断さえしようとしない。
自分たちはそんな愚民たちに代わって世界を動かしているだけだとうそぶいた中澤はジャージ姿の中澤に指示を飛ばした。
「気ー使いの姐さん、飛びっきりきついやつを一発お願いします」

愛を抵抗出来ないようにして、何らかの処置を施すつもりらしい。
よっしゃとジャージの袖をまくりながら愛に近寄る気功使いの中澤の前に立ちはだかったのは…、高橋愛だった。

「??」

「ののは世界の破壊者、高橋愛なのれす。わたしは全てを破壊するのれす」 「しゃべり方以前に着てるものが違うがな」

気功使いの中澤は辻希美に対して、邪魔をしないように告げた。
「大人しくしてへんかったら、たとえポロリの姐さんの秘蔵っ子でも容赦せんで」  

「いやれす」
希美は訴えた。

高橋愛を装って喫茶リゾナントを窮地に追い込んだ辻希美は、リゾナントに関わる全ての人々が悲しむところを見てしまった。
リゾナンターの面々に常連客の人たち。
「最初はイタズラしてるみたいで楽しかったけど、みんなの顔が曇っていくのを見てたら、心が痛いよ」

もうこれ以上リゾナントやリゾナンターに手出しはしないでと手を広げる辻の剣幕に、【気功】使いの中澤は辟易した。
「あんたもいい加減大人の事情いうもんを理解せな」
なだめるように己の手を辻の肩に触れさせると、辻の体が震えて崩れ落ちた。

「貴様ぁぁっ、何をした」 ポロリ星人が沈黙を破る。
「大丈夫。 寸勁を軽く徹しただけや」 【気功】使いが説明する。

とんだ茶番や。 スーツ姿の中澤は冷笑を浮かべながらその様子を見守っていた。
もちろん高橋愛への警戒は怠ってはいない。

ふん、まだ跳ぼうとするのか。
一瞬光った愛の瞳。 そして何より【瞬間移動】と【空間裂開】。
同じ領域の能力者同士の感覚が愛のチカラの発動を中澤に教えてくれる。
【空間裂開】を高橋に直撃させる必要はない。
愛が跳ぼうとするこの瞬間に手近なところで、空間を引き裂いてやれば…。

脳天と右肩に強い衝撃を受けて崩れ落ちた中澤は辛うじて見届けた。
彼女の真上の空間に出現した愛が体勢を立て直して、中澤に回転蹴りを炸裂させた瞬間を。
何故防げなかった?
割れた脳天からの出血で視界が狭くなっていく。
タイムラグが無かった?

瞬間移動する際に、タイムラグがあることは愛も自覚していた。
空間座標を三次元的に認識するために時間を費やしていることも判っていた。

愛が瞬間移動の能力を使って空間を跳んだ時、出現先にある空間を押しのける形で出現する。
出現先に何かが存在すれば、物体であれ生命であれ、高橋愛によって引き裂かれる。
そんな惨劇を防ぐために、愛は跳ぶ先の空間の座標認識を完璧に行う。

でも本当に早く跳びたい時には、誰も居らん何も無い空中目指して跳ぶことにしとるんよ。
空間跳躍後の修正のために、精神も肉体も酷使するからあんましやりたくないんやけど。

【空間裂開】で【瞬間移動】を妨害する中澤を倒すため禁じ手を使った愛は、返す刀で突っ込んできた気功使いの顎に回し蹴りを見舞うが…。
…硬い、これも気の一種?
ジャージ姿の中澤が体内で練った気を攻撃、防御、回復に使い分けながら戦うことを知った愛は長期戦に持ち込まれることを嫌った。
掌底での打撃を捌き、中澤の背後を取ると首に両腕を回した。
「無駄や」
寸経で愛の肘を破壊しようとした瞬間、中澤は空中に移動させられていた。

「ちょおおおおおおっ」
上空数百メートルから真っ逆様に投げ出された中澤は死を覚悟したが、再び現れた愛の蹴りによって軌道修正させられた。
圧縮空気で膨らまされた動物型のバルーンでバウンドした中澤は、ポロリ星人ショーの入場待ちをしていた子供たちの前に落ちる。

「おーい、ポロリ星人の仲間が攻めてきたぞ」
うわぁと目を輝かせ気功使いに群がる子供たち。
「痛い、こらガキども。やめんかい」

手加減を知らない子供たちに散々な目に遭わされる気功使いだったが、中澤ネットワークきっての武闘派の名にかけて子供たちに手は出さない。
大勢の子供たちに仰向けに手足を抑えられた【気功】使いの顔を、ズボンと一緒にパンツを降ろした子供が跨いで…。
「ぶりんこうんこが輝いて見える~♪」 

「うあぁぁぁぁぁぁぁぁ」



「あなたは能力者じゃないし、戦う人間でもない」
【毒放出】能力者を倒しに行こうとした愛の腕を若女将風の中澤が掴んで離さない。
温泉宿の女将として生きている彼女は、世界を支配するなんて大それた考えは持っていないという。
「せやけどウチがウチのことを信じたらな、誰が信じるというねん」

温泉宿の女将に過ぎない中澤に手荒なことも出来ず、手をこまねいていた。

嘘!
ポロリ星人の格好をした中澤が、ローブウエイの支柱を垂直に駆け上がっていく。
【毒放出】能力者を殴り倒すと、その体を肩に担ぎ、愛の目の前に飛び降りてきた。
「地球の重力はポロリ星の二百分の一しかないぽろりよ」
気を失っている【毒放出】者の中澤を舞台に横たえると、愛を掴んでいた中澤に辻希美を面倒見てくれるように頼んだ。

良かった。園内に毒が撒かれなくて。
最悪の事態を回避できたことに、胸を撫でおろした愛だったが…。
速い!!

猛スピードで駆け寄ってきた中澤の右腕が、愛の首を襲った。
これってプロレス技のラリアット。って突っ立ってたら首が持っていかれる。
中澤の攻撃をそのまま受けて後方に回転する。

膝から着地した愛を踏みつぶそうと数十メートル上空に飛び上がる中澤。
その攻撃を避けながら愛は訴えた。
子供たちに愛され、【毒放出】を防いだポロリ星人とは戦いたくない、と。

踏み破った舞台の下に潜り込みんだ中澤は、飛び上がって舞台を突き破り、愛の足を掴んで振り回すと、柱に向かって投げつける。
ポロリ星人の中澤は【超人】的な体力で暴れ回りながら、愛の甘さを糾弾していく。
【気功】使いの生命を助け、【若女将】の中澤に手を出さなかった愛には覚悟が足りないと言う。
「ウチが動かんかったら毒姐さんが毒を放出しとったで。何をもたもたしとる!!」

中澤ネットワークには幾つかの不文律が存在するという。
中澤ネットワークの面々が一つの世界に集結する場合は、集結する世界を統括する中澤の要請あるいは承認が必要だという。
並行世界の融合問題への対策として、世界の破壊者高橋愛に接触するプランに賛同した【超人】中澤は、高橋愛の空白地帯であった自らの統括する世界に網を張ることには同意した。
しかし一般人に危害を加えることまでは認めていないという。
「せやから、ウチが毒姐さんのことを止めたのは筋を通しただけや」

          ◇          ◇          ◇

【変身】能力で愛を翻弄した辻希美は、本来は中澤とおなじ【超人】体質の人間だった。
【超人】のチカラを持て余し、失敗を重ねる辻の指導を、同じ【超人】体質者中澤が行うことになったのは自然な成り行きだった。
中澤の厳しい指導により、チカラの使い方に格段の進歩を見せた希美に中澤は釘を刺した。
能力者といえども無敵のスーパーマンでなければ、不死身の怪物でもない。
能力者だからこそ、おのれの限界を見極める必要があるという中澤の戒めを、希美は素直に聞いていたが…。

ののはアホやった。 それもずば抜けたアホやっちゅーのをウチは忘れとった。
非番で町に出かけていた辻希美が、大火に包まれた一軒家の中に子供を助けるために飛び込んだという知らせを受けた中澤は現場に急行した。
希美の活躍で子供は無事に救出されていた。
しかし希美本人は子供を火から守るために、全身に大火傷を負っていた。
希美が生存していたのは【超人】のチカラの効用ともいうべき強靱な生命力のおかげだった。

全身の皮膚が焼けただれて、痛かったろうにあいつは子供のことを気遣った。
大丈夫、助かって良かったねと子供の顔をのぞき込もうとする希美の前から、子供は遠ざけられた。
この化け物をどうにかしてという親の叫びと共に。
それは火傷で全身の皮がズル剥けで、白い骨まで見えてるののが動いて話しかけたら、大抵の人間はビビってもしょうがないやろうな。
しゃあけど自分らの代わりに子供を助けてくれた者に言っていいことやない。
あいつらをミンチみたいにしたろうと思ったウチを止めたんはののやった。
痛くないはずはないのに、全然平気だといって崩れてしまった顔で笑顔まで作りよって。

【超人】体質とダークネスの科学力のどちらがかけてもののは死んどった。
その二つがありながら、ののの身体が元に戻るには時間がかかった。
処刑かと間違ってしまうぐらい過酷な治療、拷問かと思うようなリハビリの間中、ののは笑っていた。
自分が苦しむ顔を見せたら、ウチがメチャクチャなことをしてしまうと思ったんやろうな。

傷が癒え戻ってきたとき、ののは笑顔をなくしとった。
笑顔だけやない、怒ることも泣くことも出来ん仮面を被ったような表情しか出来んようになってしまった。
崩壊した細胞を再生するために大量投与した成長促進剤、再建しきれんかった顔の皮膚の代用として使った人工皮膚の所為やと科学者は言っとった。
でも、それは違う。 ほんまはウチがののの貌を奪ったんや。
今から思えばののはあの時泣いても良かったんや。
化け物やと恐れたあいつらのことを憎むべきやったんや。

ののの色んな感情は死んだわけやない。
でもその感情を表情に出すことは出来んようになってしもうた。
表情で感情を表せんというこては、他の誰かと感情を共有出来へんってことや。
そんなののをウチは手元に置くことにした。

ののが笑ってみせた時は驚いた。
ほんまは笑ったんやない。
笑っている他の誰かの顔をコピーしただけやった。
収縮自在の人工皮膚、細胞活動の活発な【超人】体質、そして何よりどんな形であれ笑顔を取り戻したいっていうののの強い意志。
色んな要素が絡まりあって、ののは【変身】能力者とし生まれ変わったんや。

そんなののの為にウチはこの遊園地を建てた。
配下の連中、そして他の世界の中澤はウチの頭がおかしなったと思うたみたいや。
能力者を子供の内に発見するためやと誤魔化して建てたこの遊園地には子供たちの喜怒哀楽、全ての表情が詰まっとる。
今のののにはそれが必要や。
コピーでも、擬態でも、物まねでもいい。
【変身】能力を足がかりに自分の顔を見失ったののが、いつか笑顔を取り戻すその日まで、うちがののの生きる場所を作る。

高橋愛よ。 あんたからは世界を破壊する悪意なんて感じられへん。 むしろ何とかして世界を救おうという善意に満ちとる。
あんたが能力を全開したら、たかが【超人】体質のウチなんか秒殺されてまうのに、ウチのこと傷つけたないからこんな風に逃げ回って。
でもな、あんたのその善意が、優しさが世界を破壊するんや。
あんたが旅を続けたいんやったら、ウチの屍を越えていけ。
その覚悟がないんやったら…ウチに殺されろ!

誰にも明かしたことのない、明かすつもりのない胸の内を押しつぶす勢いで、中澤は拳を握りしめた。

「ええ加減にせえよ、自分」 中澤は宣告した。
もう間もなく「ポロリ星人ショー」の最終公演が始まる。
客入れのアナウンスが始まったらミラーハウスに向かい、その中にいる人間を全て殺す、と。

「アンタは誰かの血に染まった手で子供たちと遊べるのか」 逃げることを止めた愛が中澤の顔を睨みつける。

「ポロリ星人なんか生きていくための方便じゃ」
リゾナンターの命を奪うと口にした瞬間、変貌した愛に中澤は目を見張った。
狂気を宿した瞳、おのれが闇に堕ちても守るべき者を守るという意志の力。
…もう一踏ん張り根性見せてみろやっ、高橋愛。

目の前の中澤がいくら【超人】体質を誇るといっても、その体力も移動速度も生物の領域を少し踏み出した程度だ。
ならば、問題ない。
瞬間移動の出現地点の座標を中澤の居場所に設定すれば、自分は中澤を…破壊することが出来る。
そのために必要な演算処理に必要な単純かつ膨大な計数処理には、ポロリ星人ショーの行列待ちをしてる子供たちの脳細胞を少しずつ借りよう。
【瞬間移動】と【精神感応】
二つのチカラが中澤を倒すために動き始め、瞬時に解答は出た。

さようなら、ポロリの中澤さん。
あんたは決して悪い人やないけど、あんたが小春や愛佳の命を奪うというなら、わたしはあなたを…。

「待っててぇぇぇ」
中澤の前に辻希美が立っていた。 先刻【気功】使いの中澤から愛を守ろうとしたときのように。

「そこを退いてくれませんか、辻さん」 冷ややかに愛が告げる。

「だめれす。 退かないのれす」 大きく手を広げて、愛の前に立ちはだかる。

辻希美は言った。
裕ちゃんは本当はとても優しい人間だからヒドいことはしないで欲しいと。
「さっきののは愛ちゃんを助けようとしたんだから、今度は愛ちゃんがそのお返しをする番でしょ」
希美の子供じみた要求に愛は言葉を失う。

愛の様子に力を得た希美だったが、その頬が乾いた音を立てた。
「裕ちゃん、どうして」

「お前はガキや」 中澤は辻を突き放した。
その時の感情で誰を助けるかを換える辻の生き様を難詰する。
「揺るぎない信念を持った者同士やったら、たとえ命のやり取りをした後でも、酒を酌み交わすことも出来るけどな」

心強い庇護者であり続けた中澤の思いも寄らない言葉に、目を白黒させながら、それでも弁解を試みようとした辻に対して…。

「…失せろ。私の前から」
中澤は辻にダークネスからの追放を宣言した。
中澤の一連の言動に作為を感じ取った愛だったが、中澤の断固たる口調が異論を挟むことを許さない。そして…。

「こいつの所為でなんかしらけたわ」
戦意を消した中澤から早急な退去を求められた。
閉園時間になっても姿を見た時は、完全決着をつけると念を押された。
「そん時はさっきみたいにはいかんで」

「ポロリ星人ショー」の最終公演の時間が迫っていることを知らせるアナウンスが園内に響いた。
心の中からこみ上げて来た感情を、表現する術も無く、立ち尽くす辻希美を愛は見守ることしかできなかった。

さあ~、みんなでポロリ大魔王をやっつけよう。
司会者に煽られた子供たちがカラーボールを投じる。
「痛いぽろり、やめるぽろりよ」
泣きながら逃げ出したポロリ星人、飛び上がって喜ぶ子供たち―その数分後。
舞台裏ではちゃちな鏡台の前で中澤がメーク落としをしている。
その様子はどこか寂しげに見えなくもなかったが、鏡に映った人影を見て顔を、心を引き締める。
中澤に歩み寄ってきたのは愛だった。
振り返り愛に話しかけた中澤は、閉園時間までの退去を促すと共に、愛の甘さを指摘する。
「さっきウチとやり合ったときはええ線行ってると思うたけどな」

並列分散型の中澤ネットワークには序列は存在しないという建前を守りながら、持ち前の政治力で自分の意向を通してきた【空間裂開】能力者。
彼女との間に遺恨を作ったばかりか、取り逃がしたことは愛のこれからにとってマイナスにしかならないという。
「まあ、ウチには関係ないけどな」

自分を詰るような愛の視線に気づいた中澤は大きく溜息をつくと、辻とのことを話し出した。
やがてこの世界を後にする愛には、真意を伝えてもさしつかえないという前置きをして。
「さっき言った以外にも中澤ネットワークにはいくつかの掟がある。それは…」

中澤裕子が他の世界の中澤と連携を取って行動しているという事実は、部下に知られてはならないという不文律だ。
中澤による支配を確固たるものにしているその要因を知った部下には…。
「死あるのみや」

息を飲んだ愛に中澤は言った。
ネットワーク内の法の番人的な存在である【空間裂開】能力者と辻希美が顔を会わせたのは想定外だった。
あの女は並立世界の融合や高橋愛への対策を立て終えた時点で、辻希美の粛清を求めてくる公算が大きい。

「だから、あんたは…」
小さく頷くと中澤は話を続ける。

「これまでのウチはポロリ大魔王とかいう悪役を演じてきた。 でもそれじゃあかん」
だから本当の悪になって、中澤ネットワークの掟を破ると明言した。

「だったら何もあんな風に…」 

辻希美の粛清を拒んだ場合、【空間裂開】能力者自身が他の中澤を率いて、この世界に乗り込んでくることになる。
「そうなった場合、あいつが真っ先に狙うのはののや」

だから辻希美は自分の側から離れ、人混みの中に紛れるべきだと中澤は愛に告げた。
「ののの生きる場所はウチが作る」
自分の思いを伝え終えて、鏡の方を向いた中澤は愕然とした。

愛が二人いる。
そして今、自分と話していた愛が光り輝くと、ずっと自分の側にいた者の顔に変わった。

「裕ちゃん」
お前は追放した筈やと突き放す中澤に、辻希美は言った。
「追放されたんだから、ののはしたいようにするれす」
そう言う辻の顔には悲しみを乗り越えた喜びの表情が宿っていた。

「のの、お前、その顔どうしたんや」

見捨てたと思った中澤さんの本当の気持ちを知ったんやから、それは笑顔だって取り戻すやろ。
愛が中澤の胸に飛び込んでいく辻希美の姿を見守っていると…。

ゴキッという音がした。
「のの、ちょっと放し」 中澤の顔が苦痛に歪んでいる。

そういえば辻という人も元々は【超人】体質やったな。

うわっ、顔を舐めるな。放せ。ののはもう中澤さんを絶対に放さないれす。
二人の【超人】がもつれ合い、ぶつかった壁が崩れると、そこは歌謡ショー仕様に模様替えされた舞台だった。
サイリウムを手にした子供たちが立ち上がってショーが始まるのを待っている。

「一度結んだ絆を頼りに、二人で探したあの日の笑顔。 
取り戻すまでが長かった分、もう流しません、しょっぱい涙。
さあ歌っていただきましょう。 浪花の歌姫、中澤裕子。 悔し涙 ぽろり」

鏡台から取り出したマイクを手にした中澤は、辻希美を首にぶら下げたまま立ち上がると歌いだす。
子供たちはサイリウムを振りながら、さびの部分でオイ!オイ!と合いの手を入れる。

「ねえ君たち。 今はまだいいけど君たちが二十歳ぐらいになった時、あのオバさんはもう軽く五十…」

ギロリ。 中澤が物凄い目で愛を見つめている。
怖ええ。 這々の体でその場を後にする愛。
何か物凄く濃厚だったな。 思いを胸に振り返るとそこには辻と子供たちの満天の笑顔。
…あの笑顔には敵わないな。

 --続く--

モーニング戦隊リゾナンターR 第19話 「覚悟」

【出演者】
高橋愛:高橋愛
久住小春:久住小春(?[Koha-Mitsu](09)690 『決行☆売り上げ奪還大作戦』 )
光井愛佳:光井愛佳(?[Koha-Mitsu](09)690 『決行☆売り上げ奪還大作戦』 )

ポロリ星人:中澤裕子(ハロー!モーニング ―ミニモニ。ぴょ~ん星人―)
辻希美:辻希美([Kusumi](02)255 『屋上のリゾナント』)

【空間裂開】能力者:中澤裕子(ダークネスノベル 保護の全う)
【気功】使い:中澤裕子([Junjun](15)730 『譲れない戦い』)
【若女将】:中澤裕子([11](02)760 「恋愛レボリューション21」)
【毒放出】能力者:中澤裕子(???)

間賀時夫(『狂犬は闇夜を奔る』)



忘れとった。
愛は息を切らしてミラーハウスに駆け込んだ。
【ポロリ】の中澤によれば、このミラーハウスは【空間裂開】能力者によって出口の無い迷宮に作りかえられていたらしい。
しかし、愛によって倒された能力者が退散したことでその効果は消えているはずだという。
もう帰ったんかな。 記憶を頼りに足を踏み入れた愛は、聞き覚えのある二人の話し声を耳にする。
「・・リゾナント・・・好き」「・・・・ります」

何を話しているのかと愛が耳をそばだてると…。
「高橋さんですよね」 小春に気付かれてしまった。
鏡の壁越しに小春が話しかけてくる。
「高橋さんは何者ですか?」

浪費によってリゾナントを取り壊しに追いやった愛が偽者だということは、かなり前から判っていたらしい。
捕まえて口を割らせることも考えたが、敢えて泳がせることにしたという。
「だってあんなバカが関わってるんですから、高橋さんの命がすぐ危険に晒されるとは思えませんでした」

そしてこの遊園地に愛が現れることを愛佳の予知能力で知り、駆けつけてみれば…。
「あなたはあの偽者とは違う。 でも私たちの知っている高橋さんでもない。 お願いします、私たちの高橋さんが何処にいるか教えてくれませんか」

必死に訴える二人の様子に、愛は返す言葉を失った。 辛うじてこう答えるのが精一杯だった。
「私にもわからないけど、いつか必ずあなた達のところに帰ってくるはずだから」

「待ってください」 鏡によって遮られているのをいいことに、愛は二人から遠ざかった。
もしも顔を見てしまえば、旅を続けられなくなると思った。
鏡の通路の中を走っていくと、出口らしき所に行き当たった。

高橋愛がいた。

一瞬鏡に映っている自分の姿だと思った愛だが違っていることに気付く。
夏服を着ている愛に対して、冬物の黒のジャケットにマフラー。
愛が蒸し暑いミラーハウスの中にいるのに、冷たそうな雨の降る街角に佇んでいる。
同じなのは鏡の向こうの愛も涙を湛えているぐらいだ。

一つの世界には、一人の高橋愛しか存在できないという【空間裂開】能力者である中澤の言葉は覚えている。

ならばあの鏡の向こうは違う世界なのか。
並行世界を巡るたびの中で初めて出会ったもう一人の自分とコンタクトを取ろうと鏡の前に駆け寄る。
鏡というよりも分厚いガラス?
向こう側の愛もこちらに気付いたようだ。
声を上げているようだが、全く聞こえない。
大きく目を見開き、ガラスを叩いている。
チカラで伝えようとする意志は、見えない障壁に阻まれて伝わらない。

やがて雨の中の愛は、何かを伝えようとゆっくりと大きく口を開く。

リップシンク? 雨の中の愛の唇を一つずつ読んでいき、合っているかどうか同じように口を開いていく。

ア・ナ・タ・・?・・・・・・・・

自分の言いたいことを全て伝えることが出来たと確信した雨の中の愛は、お願いという風に手を合わせると雨の中に歩を進めていく。
待ってと叫ぶ愛の目の前で、雨に打たれた向こう側の愛の身体は、透き通り、色を失い、消えていった。
消滅のdropが音もなく地上に落ちていく。

【次回予告】
雨に打たれて消えていったもう一人の高橋愛。 彼女からのメッセージを伝えるために、愛は奔走する。
やがて明らかになっていく2年前の集団失踪事件。そして新たなる失踪者。
「一体誰がこんな惨いことを」 やがて愛の前に姿を現した裏切り者。
「私は仲間を裏切った。 たとえ怪物に堕ちてでも…生きたかった」
次回モーニング戦隊リゾナンターR 第20話 「Deserter」 全てを繋いで裏切りを糺せ!