「藤本さん、あなたは何か思い違いをしている」
里沙の口調は意外と穏やかだった。
しかしその穏やかさが却って美貴の心胆を寒くさせていた。
いやっ、こいつマジでヤバいぜ。
「いいですか、藤本さん。 確かに私は夜とはいえ公衆の往来の真ん中で何一つまとわない下半身をあらわにしている。
そのことを否定はしません」
それはそうだろう。 ばっちり履いてないんだから。
「ですが、私は私のことを露出狂であると指摘したあなたの言葉を否定する。 何故なら…」
私は露出狂ではないのだから。 里沙の論旨は単純明白だった。
「露出狂とは己の裸体を人前に晒すことで性的な興奮を得られる倒錯者を意味します」
里沙の口舌に異論はない。
その意を表すべく、美貴は小さく頷いた。
「ですから今不特定多数の人間が通る可能性のある道の中央で、下半身をあらわにする私のことを露出狂と見紛ったあなたの愚かさを笑いはしない」
いや、露出狂だろうという美貴の思考を感知したのか、里沙の語気が強くなった。
ですが、間違いは正しておかないといけない!!! 里沙は叫んだ。
「確かに私はパンツを履いていない。 でもそれは何も履いていない下半身を人目に晒して性的な興奮を得る為に履いていないんじゃない!!」
大声で叫んだ為、少し声が枯れたのか一息置いた。
最終更新:2011年09月03日 20:44