ザ・誕生(バースデー)後編


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                                                                                    自らをあえてDarknessと呼んだ彼女の周りには、やがて同じ思想を持つものが集まり、
またその能力ゆえに迫害を受けた者の集う場所ともなった。
そうしていつしかかつて彼女が所属していた機関を遙かに越える規模の組織へと進化し、
またそれに対峙するべくかつての機関も変化を遂げた。
ASA=YANと呼ばれる元・エスパー研究所である。

DarknessとASA=YANが各地で戦いを繰り広げているある日、彼女は副官を呼び寄せた。
組織のナンバー2、元はといえばASA=YANの主力部隊の設立メンバーであったが、
司令官との対立から袂を分かち、現在の地位に至る。


「――引退、ですか?」

ナンバー2、中澤は自分の耳を疑った。
無理もない。「彼女」が語ったこととは、自分が一線を退こうと考えていること。
ひいてはその後任を中澤に任せたいということだったからである。
もちろん副官である以上、後任に自分が指名されることは驚くに値しない。
しかし、引退とは。

今では組織を率いる立場にもかかわらず戦線に参加する彼女は、先日も自分と共に敵の
一部隊を殲滅したばかりである。引退を口にするような力の衰えも見られない。
それなのに何故、と問いただす中澤に彼女は答える。

「私がオバサンになっても現役のつもりではいたけれども」

もちろん力は衰えていない。それどころか以前より強くなっているのを感じる。
しかしそれ故に制御が難しくなっているのだと彼女は語った。

このまま行けば敵のみならず味方も危険に晒すことになる。
そうなる前にこの力を封印するというのが彼女の決断であった。

自らに対して精神制御を施し、幼少期へ退行させる。
ただしそれには依代となる身体が必要になるため、実行にはまだしばらくの時間を要した。

数ヶ月の探索の末、選ばれたのは一人の少女。
先日市街地での交戦の際、巻き込まれる形で生命を落とした一般人である。
幸いにして身体に損傷はほとんど無く、ただ意識だけが戻らないままにその生涯を閉じた。
中澤の密命により依り代となるべき存在を探していた秘密部隊により速やかにその身体は
回収され、中澤の元へ届けられた。

準備が整い、早速封印作業が開始される。
さすがに自分で自分を封印するというのは困難なため、数人の精神操作系の能力者が
補助に付いた。

処理は成功し、少女は目覚めた。
自分が闇と呼ばれる存在であった頃の記憶は能力とともに封印された。

なおこのことは極秘裏に行われ、中澤の他には実際に立ち会った数人の能力者以外には
詳細は知らされていない。
そして少女は訓練生の一人として組織に加わえられた。

 * * *

それから数年の時が流れ、その間に敵はASA=YANからリゾナンターに変わった。
今は一人の戦士として成長した彼女を見て中澤は思う。
やがて来るであろう最終決戦の時、彼女はもちろん戦線に立つであろう。
状況によっては封印が解かれてしまうかもしれない。
その時はおそらく誰一人――――。


コードネームm411。
彼女はまだ自分の真の姿を知らない。


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