『咀嚼強化月間 -Corners of earth-』





『咀嚼強化月間 -Corners of earth-』


モグモグモグモグモグ。

 「ねえねえガキさんガキさん」
 「何よー」
 「覚えてます?昔話たことあったじゃないですかー」
 「カメと話したことなんていくつあると思ってんのよ」
 「そういう話じゃなくて、っていうかガキさんがこれ言いだしたんですよ?」
 「だから何よー」
 「ほら、えーっとアレですよ…アレですよ」
 「やめてよー忘れちゃったーみたいなオチとか突っ込めないんだから」 
 「ガキさんの事情を絵里にあてはめられても困るんですけどー」
 「カメより私が困ってるんだけどね今」

モグモグモグモグモグ。

 「で、思いだしたの?」
 「えっと、あ、そうそうアレですよアレ、地球の話」
 「地球?そんな話したっけ?」
 「地球の地面をほって、貫通して出る時に頭からでるのか足から出るのかっていう奴」
 「あーーーー懐かしいねーーーなに、それ覚えてるの?」
 「や、話の内容はぜんぜんですよ?そんなあんなこととかこんなこととか
 話してたことなんて覚えるほうがすごいです」
 「あー…で、それがどうかしたの?」
 「や、だからーあの答えってどうなったのかなって」
 「えー唐突すぎるでしょ、今思いだした私にそれの答えを求めるってどういう事よ」
 「だって元はといえばあれってガキさんが言ったんじゃないですかー。
 自分の発言には責任もってくださいよー」
 「カメにそんなこと言われたくないからね。責任なんていう文字すら似合わないんだから」


モグモグモグモグモグ。

 「でもよくよく考えたら頭からってことはないですよねきっと。
 だって地面を真下にほってったら普通は足じゃないですか?」

 「でも真下に掘るからって足からでたら逆立ちででるってことでしょ?
 そういうチカラでも持ってたら話は別だけどさ」
 「逆立ちのチカラとかあるんですか?っていうかなんのチカラですかそれ」
 「いやいや、そういうことじゃなくて。ん?ああもうカメが変なこというからー」 
 「だって逆立ちのチカラってなんですか?ガキさんもしかして逆立ちできないの?」
 「逆立ちのチカラとかじゃなくてさ、あっちの人からしてみれば地面から
 足が生えてくるってことでしょ?ホラーじゃん」
 「でも頭ってことはどうやってほり進むのかってことですよ、こお飛びこむみたいな
 体勢でってことですよね?どうやって着地するんですか?」
 「いやいや着地できるから、そのまま空にポーンとか放りだされないからね。
 ちゃんと重力っていうのが働いてるんだから」
 「サイエンスですね」

  「っていうかさ思ったんだけど、真下って何があるの?」

モグモグモグモグモグ。 

 「そうだ」
 「ね、真下って普通の地面って訳じゃないよね?もしも海だったら?山だったら?」
 「や、でもそれは事前の調査でってヤツですよ。それでほる場所を選ぶとか」
 「でもそのルートじゃないといけないってなったら海にももぐらなくちゃいけないし
 もしかしたら山の中から登山しなきゃいけなくなるかも」
 「そのときはほら、リタイアっていう手もありますよね」
 「えーーリタイアするのーー?」

 「ガキさん、諦めも肝心っていうことばがあるのも人生ですよ?」
 「待って。何も1人で行くってことはない訳よね?みんなで行けばなんとかなるかも」
 「ガキさんは人まで巻き込むの好きですよねー」
 「地球に相手するために1人で挑めないでしょうが」
 「まあそうですよね、ある意味で地球規模ですよねこの話」

モグモグモグモグモグ。

 「というかぶっちゃけちゃいますけど、地球一周すれば済む話な気もしてきた」
 「ちょっと、いきなりリアルな話にしないでくれる?それに一周したら地面を
 歩いてるから意味ないでしょうが」
 「だって絵里達は人間ですよ?人間ならそこに行きたいなら歩くのが基本です」
 「もっともなこと言ってるけど、カメは絶対に車でしょ?」
 「それもほら、人間のチカラってヤツですよ?」
 「でもほる為に費用つかうならそっちの方が安いような気もしてきた」
 「それで自分がほしいものを買う方がよくないですか?」
 「カメの言うことだからなんか納得いかないけど、それもアリかもっていやいや。
 話の趣旨が変わってるから、いいのそれで?」
 「考えすぎて絵里もう飽きちゃったんですけど」
 「飽きないでよ、自分で振ってきたんでしょうが」
 「ガキさんに返還したんで、絵里はフリーですよ?」
 「なによそれー」


モグモグモグモグモグ、ゴックン。

 「ふう、30回っていうのは意外と大変ですね」
 「グミ1つ食べるのに何分かかってるのよ」
 「かめばかむほど味がでる、これ一石二鳥じゃないですか?」
 「あ、バス来た。ほらカメいくよー」
 「うわ話逸らされた。ガキさんグミもーいっこー」
 「自分も持ってるんだから自分の食べなさいよー」
 「いーつまでもーふたりーでいーたいー♪パーンがひとーつならーアハハハハ」
 「自分ウケしてないでちゃんと乗って。全くー」



ブーン。バスが走る。走る。目的地へと走っていく、そんな道筋。

地球規模な話。
地面を掘ってまで知りたかったものはあきれるほど単純なもので。
でもチカラに頼らなくても彼女の言うとおり、人間は地球の裏側にだって行ける。

少しずつ整理して、少しずつ理解して、少しずつ答えを見つけて。
きっとそうしていつかは―― なんてね。



完全にヤケです(土下座)
忍者の件で試し投下だったんですけどあの世界観を出すのは無理だった…。
一応元ネタはこれです↓






          ◇          ◇          ◇

『咀嚼強化月間 -Corners of earth- part.2』


シャクシャクシャクシャク。

 「ねえねえガキさんガキさん」
 「なによ今度はー」
 「うへへ、絵里いいものを見ちゃったんですよー」
 「いいもの?」
 「ガキさんさーお昼なに食べました?」
 「!?べ、別になんでもいいでしょうが」
 「おやおや?絵里がお昼になにを食べたか聞いてるだけなのに
 なんで顔をそらすんですか?」
 「何が言いたいのよ」
 「いやーガキさんも非行に走るようになったんですね」
 「意味わかんないから」

シャクシャクシャクシャク。

 「でも絵里びっくりしましたよーお店があるのに
 ガキさんがあんなことをねー、まあ好き好きだからいいんですけど」
 「あのね、なんかおおげさに言ってるけどちゃっちゃと言いたいなら言えば?」
 「お、開き直りですか?」
 「開き直りでもなんでも私は怒らないから」

  「というか悪いの?私がカップラーメンを食べちゃいけないの?」

 「本格的な飲食店でインスタントラーメンを食べるってある意味で邪道ですよね」
 「邪道って、あのねー…」
 「しかも何味でしたっけ?ふんふん、しょうゆ味?いやー昭和ですね」
 「っ、あのさ、そう言ってるカメだってラーメン食べるでしょうが、この前さゆみん
 から聞いたんだからね、情報なんていくらだって持ってるんだから」
 「いやいや、別に食べていいんですよ?でも時と場合によるじゃないですか。
 絵里が言いたいのは何で『リゾナント』でしょうゆ味のカップラーメンを食べたのか」

 「だいたいさーカメって愛ちゃんに感謝してる?仕入れてるものだってバカに
 ならないのにほぼ無料当然で食べさせてくれてるんだから。
 ちなみに私はその分とか払ってるからね一応」
 「むう、失礼ですねーちゃんと感謝してますよ。敬意を払って食べてますよ。
 愛ちゃんの真心を一身に受けていただきますって力を込めて手を叩き
 米粒一つのこさずにキレーに食べてごちそうさまでしたって満面の笑顔浮かべて
 それからデザートを要求してます」
 「いや、要求しちゃダメでしょ、そこは遠慮しようよ」

シャクシャクシャクシャク。

 「で、それでしょうゆ味のカップラーメンを受け流したと思ったら大間違いですよ?」
 「なんでそこまでこだわるのよカップラーメンに」
 「ガキさんともなると料理好きでってイメージがあるのに、あんなズバズバ
 すすってる姿を見ちゃった日には笑いが止まりませんよ」
 「ムカツクねー、てかいくら『リゾナント』が私たちのでも一応マスターの
 愛ちゃんの許可はとっておくもんでしょうが、勝手に使って仕込みが出来なかったら
 誰が責任をとるの?電気代や水道代だってバカにならないんだから」
 「そこが考えの違いですよね、ガキさん1人でやろうとするからいろいろと
 突っ込まれちゃうんですよ、仲間をもっと大事にしなくちゃ」
 「つまり共犯を作るってこと?そっちの方がタチが悪いでしょうがー」
 「大丈夫ですよ、その子にはそれなりの量を提供するつもりです」
 「よけいに罪を重たくさせてどうするのよ、しかも報酬にしては単純じゃない?」
 「まあ言葉は悪くなっちゃいますけど、騙すって手もありますよね」
 「食べることにどんだけ必死なのよ」

シャクシャクシャクシャク。

 「で、美味しかったですか?しょうゆ味のカップラーメン」
 「そこ強調しなくていいから。んーでも期待外れだったかな、よくCMしてたから
 ちょっと楽しみにしてたけど」


 「まぁしょせんはカップラーメンですよね」
 「うん作ってる人に謝ろうか、そこまで努力を踏みにじるってどんだけよ。
 簡単にけなすけど美味しいものを作ってくれる事に敬意を払ってるんじゃないの?」
 「じゃあガキさんの代わりに絵里がお礼言ってあげますね、ありがとーっ」
 「いやいや、私のお腹に言われても困るから………あ」

ベシャ。

 「あ、ああああああっ」
 「あーあ、私知らないからね、カメが落としたんだから、そのガリガリ君」
 「しかも外れたー」
 「また買ってくれば?」
 「あっ、そうだガキさんが当ててくれればそれをカメがもらってあげますよ」
 「ヤダよー」
 「さっき絵里が仲間は大事にしなきゃって忠告してあげたのにっ」
 「63円のアイスでなにムキになってんの」
 「じゃあほらガキさん早く食べてくださいよ、アイス買いに行くから」
 「ちょっと揺らさないでって、あ、あああああっ」



126円プラス200円のある夏日。
いつも誰かに感謝して、いつも誰かを想う。
それはいつでも、いつまでも。甘い味はいつも夏の味。

しょっぱい味がする時はきっとそう、刹那さに想うあの頃。




          ◇          ◇          ◇

『咀嚼強化月間 -Corners of earth- part.3 完。』


モグモグモグモグモグ。

 「ねえねえガキさんガキさん」
 「なにー?」
 「絵里ねー前から思ってることがあるんですよぉ」
 「んー?言ってみなー?」

  「この世から虫がいなくなればいいのになって」

 「…ねえそれって今言わなきゃいけないこと?」
 「こんな時だから言うんですよ?というかガキさん、さっき
 足元見てましたけどもしかして、やられました?」
 「そんな言い方しないでよ。思いだしただけでもゾワっとするから。
 あーこんなことならもっとして来るんだった、スプレー」
 「ガキさん思いださせないでくださいよー、絵里もさっき
 さされたばっかりなんですからー」
 「いやいやいや、話題にしたのあなただからね」

モグモグモグモグモグ。

 「カメってホント虫だめだよね。アリでもキャーキャーいってるし」
 「でも絵里ね、ある話を聞いてちょっと改めようと思ったんですよ。
 もう少しあの虫という生物を大人の目線で見れるようにって思えるようになりました」
 「なんか我が子にみたいな発言してるけど、その結果どうなったの?」
 「とりあえずほら、分かり合わなきゃいけないわけですよ結局は。
 手と手をとりあってーはちょっとレベル高いけど、同じ目線で語りかけようと」
 「で、実践してみたの?」
 「そこはーまあほら、徐々に?何事も最初が肝心っていうじゃないですか」
 「つまりやってないって事?」
 「ん?んーまぁ言ってしまえばそうですよね」
 「改めるだけ改めて満足しただけじゃないの」



 「じゃあガキさんは嫌いなものに対して素直になれます?なれないですってば。
 だってさっきだって逆に先制攻撃うけたばっかりなの忘れたんですか?」
 「そこは大人として臨機応変によ。こんなこともあろうかと私は常に
 塗り薬持参で動いてるんだからね」
 「もしかして出動時も?」
 「当然。え、なによその目は」
 「こお戦ってるときにやられたらその場でシャシャッと塗っちゃう感じですか?
 え、まさかこの前もそんなことしてたんですか?」
 「そんな戦ってる時に塗らないわよっ。終わったあとに決まってるでしょうがっ」


モグモグモグモグモグ。

 「ていうか持ってるなら貸してくださいよ。何一人だけ安心感持っちゃってるんですか。
 あの時に絵里だって二箇所もかまれてたんですよっ?ほらこことここっ」
 「あんな状態のなかで塗り薬の貸し借りなんて出来ないから。
 しかも終わったあともカメなにも言わなかったし、確実に忘れてたでしょ?」
 「しょうがないから叩いてたんですよテイッテイッて、そしたらそうなんですよっ。
 かゆみがなくなって難を逃れられたんですっ、どうですかこの臨機応変の対応」
 「自分で納得してえばられてもって感じだよね。私の対応を無視しないように」
 「今度それと同じの買ってきてくださいよ、ついででいいんで」
 「カメが自分で買ってこなきゃ意味ないでしょうが、種類だっていろいろあるのに」
 「やだなーガキさんを信頼しての発言じゃないですかー」
 「じゃあ私も一緒についてってあげるから今度買いにいこ?」
 「えー…はーい」


モグモグモグモグモグ。

 「…あっ!」
 「ん?どしたの?」
 「油断したーっ」
 「あーさされた?」
 「かゆいかゆい…ううう」
 「待って待って、ほら塗り薬。わたあめ持つから」

 「うん…絵里、もうくじけてもいいですか仲良くなるの」
 「変に親密になるのも考えものだけど、一方的なのも問題だよねぇ。ほらちゃんと塗る」
 「はあ、分かち合うって難しいですよね…でもつぶしたくないんですよ、それは無理。勘弁」
 「カメくらいになると携帯用のスプレーでも持ったら?よし、それも今度買おう。お揃いの買う?」
 「なんかそっち系でおそろとか素直に喜べない…」
 「いいじゃん、そろそろ私も買おうかと思ってたところだし、あ、カメ時間時間っ」
 「ふぇー?」
 「ふぇーじゃない、そろそろ皆と合流しないと花火が始まっちゃう。愛ちゃんに電話しないと」
 「絵里ーこっちーっ」
 「あ、あんな所に見慣れた顔が。おーいシゲーッ、虫さされのシゲーッ」
 「シゲシゲ叫ばないでよっあと一言余計っ、せっかく探しにきてあげたのに」
 「え?もうみんな集まってるの?」
 「そうですよ、もう二人とも食べ歩きしすぎなの、さゆみ携帯忘れたのも忘れてて連絡とれなくてー」
 「なにそれー。あ、わたあめあるけどいる?」
 「ってこれ絵里の食べかけやん。いーらーなーいー」
 「ほら二人とも行くよ、せっかく場所を確保してもらってるのに見逃す気ー?」
 「あ、ガキさん背中に毛虫が」
 「…え、うぇええええええええ!」
 「アハハハガキさん今の顔と動きさいっこーっ♪」


打ち上げられた大輪。
燃え出した導火線に込められた願いは火の粉を散らせて轟かせる。
雷鳴の先には星空。
夜空に煌めくは奇蹟の向日葵。

二人が持つお揃いの風車と重なる大輪に想うのは、ある夏日の夢。
また今度。今度。
遠い日々にありがとう。隣の君にありがとう。
またね。




「終わりよければすべてよし」という言葉を作った人を今尊敬しました(何
こういうのであれば冷やし中華編とかすいか編とかプール編もあるんですが
あまりダラダラと書くのもあれなので最後にします(苦笑)

ちなみに書き手は花火大会数十分前に大雨が降って中止になって
見れなかったという出来事がつい1週間前にありましたc□~

元(?)となった動画はこちら↓











最終更新:2011年08月28日 09:59