ザ・誕生(バースデー)前編


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彼女は悲しみに沈んでいた。


自分に他の人間とは違った力があると気付いたのはあれはまだ小学生の頃。
成長に伴い次第に強くなる力に、両親は彼女をある機関に預ける事を決めた。
そこは彼女のような人間を集め、一般社会と軋轢を起こさずに生活できるよう
教育を施し、かつその能力を社会のために役立てる事を目的とする機関。

やがて大人になり、自信の能力を完全に制御出来るだけの精神力と社会性を
身に着けた彼女は、ふと故郷に帰りたくなった。

東京から飛行機で1時間半、さらに空港からバスで1時間以上の故郷は、しかし
彼女の記憶にある風景とは全く違う姿になっていた。


子供の頃に遊んだ広場には大きなビルが。
よく家族で行ったあの海も埋め立てられ、砂浜もなくなってしまっている。

そしてあの頃は山にも海にも溢れていた生命力が今ではすっかり衰えてしまって、
何より、人が生活している気配がほとんど感じられない。

自然と引き替えに手に入れた便利。
それでも所詮都会からずいぶん離れたこの地から人が出て行くのは止められず、
後に残されたのは結局、見る影もなくなったコンクリートに覆われる山肌や海岸線。
昼間でもほとんど人通りのない寂れた駅前の商店街。

彼女は思う。
いったい人間はどれだけの自然を犠牲にして、それで何を手に入れてきたのか。
それでみんなが幸せになっているのならまだしも、世界中、いやこの国ですら、
みんな何かの悲しみを、憎しみを抱えて生きている。
こんなことがこれからもあちこちで繰り返されていくのか。

否、むしろ人間の存在そのものがストレス。
ストレスが、地球を駄目にする。
このまではいずれ――――ならばいっそ、、。




――――――――――――――――そして彼女は闇となった。


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