『VanishⅡ~independent Girl~(8)』 - 8


※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。



(8)
高橋の光をさえみは真正面から受け止めたのだろう、さえみの周囲は煌びやかな光に包まれ、動かなくなった
「やったの?」
先程からさえみの放つ光の兆候は何も感じられないのでそう感じるのは当然であろう
「・・・かもしれナイデス」
そうは言うもののリンリンは気を抜かずにいつでも炎を放てるようにと手には飴を構えている

さえみの姿がようやく確認できるくらいに光が弱まってきた
光を受けたさえみは地面に片膝をついて座っていた
何も反応が無く、思わず「死んでるの?」なんて久住は声に出してしまう

「ククククク・・・」
さえみが笑い始めた
生きていて良かったという思いとなぜ笑っているのかという思いが全員に浮かんだ
「あなたに必要なのは…あくまでも『さゆみ』なのであって、私じゃないのね・・・」
確かに8人が思い浮かべたのはさゆみであって、さえみではなかった

「私はさゆみにも求められていないし、あなた方にも求められていない」
ふらふらとさえみは立ちあがる
「私は誰にも必要ない存在…どこにも居場所はない…必要ないんだぁぁぁぁ」
さえみは大声を上げる
「や、やばいって愛ちゃん、れーな達、事態を悪化させたんやなと?」
「愛ちゃん、どうしようか?」
「そんなこと言われても全然予測できなかったわけだし、こうなることを」
光を放った高橋は地面に膝をついたままで動けずにいる

「キャー、小春の、小春の腕が、右腕が!」
「久住さん、しっかりしてください!早くさえみさんから離れましょう」
光井とリンリンが久住の肩を支えて駆けだす
「さえみサンの視線から逃れマショウ!高橋サン達も早くしてクダサイ」
ジュンジュンも光井達の後を追う

「田中っち、愛ちゃんの右肩支えて!私は左肩支えるから」
「愛ちゃん、れーなの肩に腕回すと!」
「ちょっと、待ってよ、二人とも!さえみさんをこのままにしてしまったら、本当にどうなるのかわからないんだよ」
じたばたする高橋に新垣が真剣な表情ながらも目に涙を浮かべながら問いかける
「だからって何が出来るのよ、これ以上私達にさ
 攻撃も効かないし、話も聞いてくれない、しかもさえみさんの心は崩れる寸前なのよ」
「そうや、愛ちゃん、ここは一旦引いて、仕方ないけどダークネスに頼むことにするっちゃ
さっき言っとたやろ?マルシェなら『さえみを止められる』って。ここは頼るしか」
「…あっしはここに残る」
高橋の言葉は静けさに満ちていた

「は?愛ちゃん、何言うとると?」
れいなが思わず高橋の肩から腕を外したので、高橋は地面に倒れ込む
「愛ちゃん、ここに残って何をするつもりっちゃ?もう何も出来んやろ?
 一人で立つことだってままならんのに何する気や?」

「・・・何もすることはできないよ。ここでこうやって座ってさえみさんに消されるのを待とうと思ってる
 たださ、れいな、ガキさん。さえみさんからさゆを奪ったのはあっしらやろ?
 甘い考えだけどさ、もしかしたら、あっしが消えたらさえみさんの怒りが消えるんじゃない?」
高橋はゆっくりと自分の意思で新垣に支えられた左腕をそっとはずす
「あっしが消えることくらいでさえみさんの心に何か変化が起きるかもしれない
 もしかしたらそのことでさゆがまたさえみさんを抑えてくれるかもしれないし、憎しみが薄まるかもしれない
 それに…少なくともあっしは無駄死にする気はないよ」
高橋は足を投げ出して、頭を抱えたままのさえみを眺める
(あと一回くらいなら跳べるからさ)

れいなと新垣を見て高橋は微笑んだ
「ほら、れーな、ガキさん、あっしがいなくなったら誰が他の子を指示すんの?
 あっしがいなくてもみんな自分を誇れるだけ強くなったんだからさ」
そして前を見て「さあ、行って、あっしの分まで生きて」と小さく言った

「アホなこというやないと、愛ちゃん!!誰が愛ちゃんが犠牲になることなんて望むと?
 愛ちゃん、おらんで誰がリゾナンターすると思うと?」
そしてれいなは高橋の頬をぶった
「れいな?」と高橋は思わず目を丸くしてしまった
「愛ちゃんがおったかられーなはここまで来たとよ、みんなと一緒だから来たっちゃ!!」

「そうだよ、愛ちゃん、愛ちゃんだけが消えるなんてそんなこと私もさせないから」
「ガキさん?」
そういい新垣は自分自身の腕と高橋の腕をロープで結び付けた
「・・・愛ちゃんのおかげで私はダークネスの呪縛から解き放たれたの
 でも、まだ私は恩返しをしていない。それなのに先に死ぬ?そんなことさせないわよ」

「愛ちゃん」「死ぬときは」「「一緒」」「だよ」「っちゃ」
二人は高橋を挟むようにして座りこんだ

「こんなことして誰がこれからダークネスと戦うんや!?」
「大丈夫っちゃ、小春や愛佳がおると。みんなに託すと。さあ、れいな達でさえみさんを止めると」
れいなが白い歯を見せて高橋に微笑んだ

「いや、すみまへんが田中さんのお願いといえどもそれはお断りさせていただきますわ」
「そうなのカナ☆」
高橋、新垣、れいなの三人が振り返ると久住、光井、リンリン、ジュンジュンの4人が立っていた
「何しとると?みんな、早く逃げると!!」
「田中サン、さっき高橋サンに言いました、高橋サンのいないリゾナンターはリゾナンターじゃナイト
 それはリンリン達も同ジク思ってイマス。皆サンとリンリンはもっと一緒にイタイ」
「それに三人の犠牲で救われて平和になっても、ジュンジュンの心、全然平和ジャナイ!!」

「だからってみんなくる必要ないじゃない!」
「新垣さん、さっきから頑張っているんですけど、愛佳、もう何も視えないんですわ
 きっとこれって世界が終わりってことか愛佳が消えるってことやと思うんです」

尚も光井の言葉は続く
「世界が終わればそれまでです。
 でも愛佳が消えたら世界が終らないかもしれないやないですか?せやったら愛佳も世界を救いたい」
高橋の目を見て光井は微えみ、ピースを向けた
「高橋さん、愛佳でも世界を救えるかもしれない時が来ましたよ」

「小春も死ぬのは怖いけど…みんなと一緒だったら怖くないもん」
そう言って新垣に久住は両手で抱きついてきた
「ガキさ~ん、小春とガキさんはいつまでも相方ですからね!!」
「うんうん、わかった小春」

とここで高橋があることに気がついた
「ちょっと、ちょっと、小春、右手、右手!!
「え、なに?なに?あれ?小春の腕がある?」
全員の視線が久住の右腕に集まる
確かに消されたはずの右腕が再生していた。更には
「愛ちゃん、右手戻っているよ!」
先程光を放った時には消えていた高橋の右手首も戻っていた
「なんや?何が起きているんや?」

そう光井が呟いた瞬間、7人を強烈な風が包みこんだ
そして彼女が言った
「ごめん、約束守れそうにないや」
その声は風の外から聴こえた

そして彼女―亀井はゆっくりと消えている右腕の代わりに左腕で笑顔のまま7人に手を振った