『VanishⅡ~independent Girl~(8)』 - 7


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(7)
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さえみの元へと戻る足取りは重かった
何をすればいいのかわからなかったのだから
(決して愛ちゃんに打開策が浮かんでいるわけではない。ただ、あの場にいられなかっただけなんだ)

初めは「さゆみを取り戻す」ことから始まった戦いがいつの間にか「さえみの暴走を止める」ことに移っている
優しいさゆみの影でさえみがここまで思いつめていたことに気がつかなかったのは―ある意味仕方ないのだろう
『共鳴』という絆を運命的なものとして捉えてしまい盲目的になってしまったのだから
共鳴の絆に誰よりも近くいたのに、絆に入れなかったその存在を見落としていたのだから

体力もある程度回復し、自分の足でさえみのもとへと向かって先頭で走る高橋に光井が声をかける
「高橋さん、どないします?さえみさんを止めなあかんわけですけど」
「・・・止めるにはさゆを起こすしかない、と思う。
ただ、今のさえみさんはさゆに拒否されているからなんとも言えない。光ですら…」
「希望があるなられーな達は愛ちゃんに付いて行くとよ!
またれーな達が時間を稼ぐけん、さゆへの思いを込めた光を撃つとよ!」
れいながこんな状況でもほほ笑んでくれたので高橋は少し心が軽くなった

さえみに近づくにつれて光の濃度は増していくようだった
あちらこちらの壁や木々に穴があいていたり、瓦礫が積み重なっている
しかしリゾナンターは光井の予知の指示で各自は光を回避していき、さえみの姿を目視できる距離まで近づいた
高橋の作戦―光の攻撃を知ったメンバーはそれぞれの位置に着く

れいな、亀井、久住、リンリンはさえみの注意をひく
光井は光に当たらないように指示を出し、新垣が光井を守る
そしてジュンジュンは高橋を背負い逃げる

遠距離からカマイタチ、雷、炎が放たれて、さえみは自身の身を守ろうとそれらを消しさる
れいながちょこまか動きさえみの視線に当たらないように気をつけながら走り続ける

「リンリン、2秒後に左から来ます。亀井さん、かがんでください!」
光井の指示は止むことなく、新垣も光井を守ろうと必死だ

ジュンジュンはなるべく高橋の集中を邪魔しないように動かず、光井の指示が入った時だけ動く
「…高橋サン、道重サンを頼みマス」
上から崩れ落ちてきた瓦礫をパンダの筋肉質な腕が払いのける

時間にしてほんの一分なのだろう
高橋の声が7人の心に届いた
(ありがとう、みんな、準備できたよ)

(愛ちゃんよろしく!)(愛ちゃん、さゆをよろしくね)(愛ちゃん、頼むと)
(お願い、光よ道重さんを取り戻させて)(高橋さん、愛佳の思いも込めさせていただきます)
(道重さん、戻って来てクダサイ)(高橋サン、任せマシタ)

7人の仲間を思う気持ちも高橋の心に届き、それらは力となって高橋の体にしみわたる
築きあげてきた信頼、かけがえのない時間、忘れられない思い出、そして世界を守りたい願い
全てを詰め込んだ光は眩しい輝きを放ち、高橋の掌の上で浮かんでいる

「さえみさん、あっし達の思い受け取って!!」
光がさえみに向けて放たれた

光は何者に遮られることなくさえみに向かって伸びていく
さえみが光の存在に気付き、消そうと睨みつける
漆黒の瞳で睨まれた存在は何でも消してきた

しかし、この光だけは消せなかった
さえみの瞳に映ったのはただの光ではなかったのだから

さえみは光の中に見た
―笑いながらココアを差し出す高橋の姿を
―目を三日月にしながら亀井をしかる新垣の姿を
―自信満々にこげたホットケーキを出すれいなの姿を
―馬鹿みたいに笑って自分にケーキを食べさせようとする亀井の姿を
―興味深々な目で自分に近づいてくる久住の姿を
―カウンターで勉強しているのを邪魔して怒っている光井の姿を
―一緒にバナナを食べているジュンジュンの姿を
―奇妙な動きでみんなを笑わせているリンリンの姿を

消せなかった、消してはいけないような気がした

だってそれは

さゆみにとって大切な記憶だったのだから