『VanishⅡ~independent Girl~(8)』 - 6


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(6)
さえみの淡い光が近づいて来た時、れいなは後悔した
(これで死ぬんやったら、もっとお腹一杯アイス食べればよかった)と
ただ光に包まれても不思議と痛みは感じなかった
(消えるって意外と感覚残っとるとね・・・パパ、ママ、一度でいいから逢ってみたかったと)
そしてれいなは瞳を閉じた

(・・・)

「起きろよ」

(あ、こういう時にありがちな声っちゃね、その割に口が悪い天使っちゃね)

「起きろって」

(れいな、昼間の仕事と正義のお仕事で頑張ったとよ、少しくらい休ませて欲しいと)

「いつまで寝てんだよ」

(頑張ってガレットくらい覚えたし、さっきまで戦っていたとよ。うるさい天使やね)

「ふざけんな、いつまでそういているつもりだっつうの!!」

バチーン!

れいなは頬を思いっきりぶたれて目が覚めた
「なにすると!!天使なんやから少しは優しくしてくれてもええっちゃ・・ろ!?」
「んあ?誰が天使だ?」
目の前にいたのは吉澤であった
「あ~れいな、地獄行きかいな・・・そんな悪いことしとらんのに・・・」
「あ?誰が地獄行ったって?」

「ちょっと吉澤さん、戦うの止めてくださいよ」
マルシェが割って入ってきた
「マルシェ?やっぱお前も地獄行きかいな…仲間は多い方がいいっちゃね」
そんなれいなの肩を誰かが叩いた
「いや、田中っち、冗談きついから。まだ私達死んでいないから」
新垣だった
「え?れーなまだ生きとると?でも確か、さえみさんの光に包まれてしまったはずやけん」
というものの周りを見渡すとリゾナンター全員、マルシェ、吉澤、雅、熊井が全員揃っていた
「それにここ何処と?観たことある気もするけん…」

「ここはあんた達が戦っていた城の前に広がっていた森よ」
「誰や?」
れいなには聴き覚えのない声だった
「こっちよ、こっち」
声のする方を振り向くと手に琥珀色の瓶を手にした女が木にもたれかかってこちらを眺めていた
「誰や、オマエ?」
いつでも戦えるようにとれいなは構えた

「ちょっとれいな、この人に一応お礼を言ったほうがいいよ、助けてもらったんだから…敵とはいえさ」
「いらないわ。別にあんた達を助けに来たわけじゃないし、『偶然』マルシェの近くにあんた達がいただけよ」
そういい女は瓶に口をつけて、中身の液体をぐびっと飲んだ
「…愛ちゃん、誰?この人?」
「ダークネスの保田さん」
「な?ダークネスやと?何しに来たと!?」

「だからあせんなって、れいな」
ポカッと吉澤がれいなの頭を強く叩いた
「人の話は最後まで聞け」

そんな落ち着きのないれいなを尻目にマルシェは礼儀正しく保田の元へとお礼を言いに行った
「保田さん、本当にありがとうございます。危ない所でした、助かりました」
「いいって、酒交わす約束でしょ?死なれたら困るのよ、私としても、組織としても」
「それでもよく間に合いましたね、ぎりぎりでしたよ」
「助かったんだから文句いわないでほしいけどね」

マルシェと言葉を交わす保田の姿を見ながら新垣は彼女のことを思い出した
(保田圭―ダークネスの幹部の一人だけど何の仕事をしているか不明な人
マルシェのような科学者でも、吉澤のようなスパイでもなくて結局何をしているのかわからなかった
確か能力は『時間停止』―某大なエネルギーと引き換えに一定時間時間を止められるハズ)
ダークネスに所属していた新垣ですらそれしかわかっていない、それが保田圭であった

「しかし、まさか吉澤さんも助けているとは思ってもいなかったですよ」
「フフフ、優秀な幹部を失うわけにはいかないでしょ?あら?」
マルシェと保田が話している時に空に淡い光が登っていった
「さえみさん、まだ荒れている様ね」

「そうやった!愛ちゃん、さえみさんどうしようかいな?」
空にはまた淡い光が登り、数羽の烏が空へと飛んで行った
「なんとかしてさえみさんの暴走を止めんと危険っちゃ!
 れいな達でなんとかせんと、本当に今のさえみさんやったら全てを破壊するかもしれんっちゃ」
「それはそうだけど私達にできることって何かあるの?」
「田中さんの逆共鳴はどうなんですか?道重さんと共鳴する間柄なんですから」
「小春、それはもうとっくに試していると!でも出来んかった
れーなはサユと共鳴していて、さえみさんと共鳴しているわけじゃないけん、効果なかったとよ」
そうしている間にも何か大きなものが倒れた音が聴こえて来た

「光井サンの予知でも何も見えないんデスカ?」
「あ~リンリン、何も視えないんや…本当に何のいいアイデア浮かばへんわ、これほど悔しいことないわ」
「おい、お前らはイイノカ?何もシナイデ?」
ジュンジュンがマルシェ達に問いかけた

「え~だって私達の目的は世界を手中に収めることですから
邪魔な存在は消してもらえればそれに越したことはないわけですし、ねえ?吉澤さん」
「ん?おう、まあ、力を持たない弱い奴が消されたところで別に俺らには関係ないし」
もう吉澤はさえみのことなどどうでもいいというように保田から瓶を受け取り、中の液体を口にしている
「それに俺達にはさえみを『止める方法』があるしな」

「お願いマルシェ!教えてよ、敵味方関係なくて、友達として教えてよ」
新垣がマルシェに頭を下げた
「え~それは無理だって。マメ、友達だったけど、今は敵・・・あ、だけど、熊井ちゃんをくれたら」
「それはダメっちゃ!!世界を救うために一人を犠牲にする、そんなことれいなにはできん!
 なあ、そうっちゃろ、ガキさん?」
「も、もちろんだよ、そんなことできるはずないでしょ」
新垣の返答にマルシェは唇を尖がらせた

なにかいい方法は無いか…考えていくだけでも非常に時間は過ぎていく
「あ~もう、とりあえずみんな戻るよ!」
高橋は仲間達にさえみの元へと行く指示を出す
「ちょっと愛ちゃん、保田さんに助けてもらって、また向かうの?」
さすがにマルシェが驚きの声を上げる

「確かに死ぬことになるかもしれんな。だけど、ここで何もしないよりは最大限のことをしたい
 さゆのためとかもう関係ない、今はさえみさんから世界を救う
 不器用だけど目の前にあることから向き合わないといけないんだよ、本当は
 手に余るくらいの敵だとしても自分自身の力を信じていかないとできることもできないしさ
 それに、あっしらが死んだらあんたらラッキーでいいんじゃない?」
そういい高橋は走り出し、7人の仲間が後を追った

「それじゃあ、帰るわよ」
保田が二人に声をかけた
「うっす、帰って飲み直しましょう」と帰ろうとする吉澤にマルシェはついつい声をかけてしまった
「待ってください。いいんですか?このまま帰って?」
「んあ?何言ってんだマルシェ?ああ、そうか、熊井ちゃんを連れて帰るんだったな」

唐突に自分の名前が出たので熊井は不器用ながらも構え、雅も熊井の前に立ち吉澤を睨みつけた
「熊井ちゃんは渡しませんよ」
「おいおい、おまえだけでなんとかなると思ってんのか?」
威嚇する吉澤であったが・・・
「こら、よし子やめなさい。それから、マルシェも帰るよ」
保田が吉澤をたしなめた
「え?俺はいいですけど、マルシェが文句言いますよ」
「いいから帰ります。マルシェ、先輩からの命令と思いなさい」
「は、はい、わかりました」
保田の前に空間が裂け、保田、吉澤、マルシェの三名は去っていった

残された二人は肩の力がどっと抜け、熊井は膝から崩れ落ちた
無理もないのだろう、ずっとさえみの傍にいたのだから
「疲れた…さえみさんから人を遠ざけるのにずっと獣化していたから…
野菜を取りに行った時も人に見つからないようにしなきゃいけないし…ああ、本当に疲れた」
「そうだったの、熊井ちゃんお疲れ様。だけど、どうしようさえみさん暴走しているよ
 田中さんとか高橋さんが向かっているけど、何とかなるっていう保障もないし」
「どちらにしても私はもう動けないから休んでいいよね?」
熊井は地面に大の字になって寝転び、雅はれいな達のことを思い、無事であるようにと祈った