『つゆうらら』


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部屋の灯りも、テレビも点けない。
そのかわりカーテンも閉めない。
むき出しの窓と対面するように座り、青白い光を浴びる。
湿りけを多分に含んだ外気が、徐々に身体に纏わりつく。
それは決して私を苛立たせるものではなかった。

この家は、ひんやりしている。
扉も。床も。ざぶとんもぜんぶ。
なのにどうしてか、優しく感じる。

手を握ってみた。すぐそばにあった左手を。
私の右手が里沙ちゃんの左手を包み、その二人をでかいタオルケットが包んでいる。
ああ、これは一つの星。
コアは私たちだ。
すると里沙ちゃんが空いているほうの手を伸ばし、テーブルの上のカップを取った。

ずいぶん前に私が煎れたものなのに、美味しいとまだ言ってくれる。
煎れたときは、客のくせに働くな、と怒られたけど。


ずずっと啜る音が響く。

だんだんとタオルケットが里沙ちゃんの肩からずり落ちていく。
私は不安になって素早くそれをかけ直した。
里沙ちゃんが微笑む。
だから私は里沙ちゃんの右手からカップを奪い、コーヒーをぐびぐび飲んだ。
えー自分のあるじゃん、と小言が聞こえたが気にしない。
これが正解だと思ったから。

空になったカップを元の位置に戻すと、里沙ちゃんが、いつの間にか私の肩からずり落ちたタオルケットを直してくれた。
里沙ちゃんのひんやりした手が私の首筋に触れてなんだかこそばゆい。
身体をゆらゆら揺らして、甘えてみた。里沙ちゃん。里沙ちゃん。

なぁに、愛ちゃん。

いつもの優しい声は青白い光に溶けて、湿気となり、私の睫毛をついと濡らした。