『■ タイムオブヘル -矢口真里- ■』


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 ■ タイムオブヘル -矢口真里- ■

「おいおいなんだありゃあ…!くそっ!『コイツも』なのか!?」
全体を見渡せる離れたビルの屋上に移動していた矢口は砕かんばかりに歯を食いしばる。

矢口は混乱していた。
【能力阻害(インぺディメント;impediment)】が効かないだとぉ?
またかよ!またなのかよ!ふざけんじゃねえぞ。

矢口はライフルのスコープを譜久村の顔にあわせる。
同性ですら思わず引き込まれそうになる。
端正でふくよかな頬、ひかえめで奥ゆかしい口元。14歳の瑞々しい肌艶。

「ちっブサイクがっ!能面みたいなツラしやがってっ!」

嫉妬。
能力者である以前に、雌として、生物として自分の方が劣っている。
そう直感する。だが、認めない。矢口という女が認めるわけがない。
怒りの矛先が容姿に対する嫉妬へと向くにつれて、
不思議と冷静さが戻ってくる。

ちょっと待てよ…、『同じ』じゃねえぞこれは。

『同じ』じゃねえ。

矢口は忌まわしいあの敗北の夜を思い出す。

―もし矢口の能力が、物理的、視覚的にもっとわかりやすい能力だったなら、こんな誤解はしていなかったかもしれない。

あのときのオイラは能力を使う以前に封じられていた。
そうだ、最初から『発動していなかった』んだ。
それが「あの化け物」の力…。

だが、今のはちがう。
今、あのガキにオイラの【能力阻害】は確かに効いたんだ。
今度こそ勘違いじゃない。確実に効いた。
再び発火能力が復活したカラクリはわからない。
だが、一度でも効いたのなら、かければまた効くはずだ。
何度能力が復活しようがそのたびに何度でもかけ直せばいい。
矢口に自信が戻ってくる。


「みてろよ…、すぐに化けの皮を剥がしてやるっ!」

矢口は再び【能力阻害(インぺディメント;impediment)】を発動するため意識を集中する。

そのときだった。

「どういうことなのか聞かせてくれない?矢口。」

ふいに背後から浴びせられた言葉に、矢口は硬直した。


世界が、静止していた。


この能力は…、この能力者は…。

「け、圭ちゃん?…」

世界が静止した中で、その女性―保田圭―は、もう一度訪ねた。

「だから、これはどういうことなのって聞いてるの。」

地…地獄だ…。

矢口は力なくライフルを取り落とした。








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