『■ スキームエンスキーム -矢口真里・市井紗耶香- ■』


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 ■ スキームエンスキーム -矢口真里・市井紗耶香- ■

日暮れが、近付いて来ている。

「eg-0xx…13歳、能力は【残留思念感知(オブジェクトリーディング;object reading)】ねぇ…」
矢口は改めてターゲットのデータを確認した。
「今はふくむら…みずき…譜久村聖…14歳…か。こんなガキ拉致んの楽勝すぎんだろ」
矢口の独り言は続く。
「残ってる情報見る限りじゃその的中率も、とても実用には程遠いし、典型的なクズ能力者じゃん。
測定から一年経ってるったって現在の能力もたかが知れてるにきまってる」
そう、心配無いはずだ…、よぎる不安を無理矢理に打ち消す。
「そんなクズを捕獲するのにイチイを呼んだわけ?」
「うるせーな。なんも聞かねーで協力するって約束したろ!」
「まあ、いいけどね」
こいつ…なんかやつれたな…矢口は久しぶりに会った戦友にふとそう思った。
市井はだいぶ以前から前線に出ることはなくなっていた。
最強とまでは言えないものの、組織内でも上位の能力者であった市井がなぜ突然出世コースをも外れ、裏方に回ったのか。
矢口は矢口なりにその理由を理解していたが、あえてその真相を深く知ろうとはしてこなかった。
そんなことは、どうでもいいことだった。

組織内に裏切り者がいる。市井に話したのはおおむねその一点のみだった。
裏切り者はリフューズナンバーを使い、「なにかを画策している」。
自分のセリフとも思えない支離滅裂とした話の内容ではあったが、市井はなにも聞かず協力することを承諾してくれた。

エッグの育成は組織でもかなり上位の人間たちが運営してきたプロジェクトだ。
そのプロジェクトの「廃棄物」をほとんど痕跡も残さず外部へ持ち出し、あまつさえ「あんな化物に改造する技術力をもつ相手」…
どう考えてもそんなことが出来るのは「組織」それ意外にありえない。
であればうかつに幹部連中に情報を漏らすわけにはいかない。
可能な限り自分一人で調べる必要があった。
その過程で下部構成員クラスの内通者を大量にいぶり出すことには成功した。
ときには泳がせ、ときには拷問し、少しづつ疑問の解明につながる情報を集めていく。
そして、矢口は、ある疑念に辿りついていた。
矢口にとって考えたくない結論、あってはならない真実。
そして、その疑念が「間違いであることを証明するには」もはや直接廃棄物を捕獲し情報を得るしかないと決断したのだ。
調査の過程で「まず確実に裏切り者ではない」幹部も何人かは判明していた。
だが、どこから情報が漏れるかわからない。矢口は他の幹部を引きこむのはまだ危険だと判断した。
それよりも先に知っておくべきことがあった。
結局下手な小細工をしなくてもいい方法…記録を消す必要がない―組織が関心を持っていない相手。
となれば閑職の市井ぐらいしか選択の余地はなかった。

それにしても…矢口は思う。
譜久村聖を拉致するだけならコイツの能力で充分だろう。
仮に「能力の増幅」が行われていても、どのみち非戦闘系の能力者だ。何とでもなる。
「あの化け物」のようなけた外れの改造はそうそう成功しない。
それが、矢口なりに調べた結果得た確証だった。
そう、不完全とはいえ、すでに矢口は「廃棄物」達と…、何より「和田彩花」に行われた「おぞましい事」の概要を掴んでいた。
そして同時に「和田彩花」攻略の手掛かりも。
ただ、オイラとコイツだけでそれが可能なのか…それが不安だった。
だがそれもまた先の話だ。
自分の身辺を監視し、やつらに情報をリークしていたスパイはすでにこちらで掌握し、偽の情報を流してある。
今日のところはやつらと遭遇する可能性はまずない。

ピー。インカムにセンサーからの警告音。

「よし、予定通りターゲットを乗せた車両がポイントAを通過した。市井、アレ準備してくれ。」

「もう…始めてる。」

超…、超キメぇ…。
矢口は心の中で毒づく。
コイツの能力…オイラ、マジで嫌いなんだよな…。

日は沈み…、全てを暗闇が包んでいく中、不気味な音が地を満たしていく。

キチキチ…キチキチキチ…








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