『たなかれいにゃの災にゃん』


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田中れいなは、今日もご機嫌で夜道を歩いていた。

「マジですかスカ、どんな時でもポジティブ~で、めっちゃキラキラ花咲かそぉー♪」

あまりにご機嫌過ぎて、本日4月6日発売の新曲のサビなんか歌っている。
べっ、別に宣伝なんかじゃないけんね!
少しでも多くの人に買ってほしいなんて思ってないっちゃよ!?

 ・・・そうそう、少しくらい歌詞を載せても大丈夫であることは過去の災難シリーズなどで立証されているのでご安心を。
日本音楽著作権協会もそこまで暇じゃなかったみたいです。


とにかく、今日れいながご機嫌の理由。
それは、れいなが秘密裏に組織する部隊「田中軍団」の構成員が今日で7人になったからだ。
このままいけば、夢の“友達10人”もそう遠い日の出来事ではないかもしれない。

田中軍団とは、時々もらうお店の休日に暇を持て余していたれいながそれとなく結成した、
近所の中高生から成る特殊部隊である。
主な活動内容は、みんなでカラオケ行ったりブログで仲良しアピールしたりすること。
どの子も明るくて面白くて、いい子たちばかりだ。
ちょっとばかし元気が良過ぎるせいか、隊長のれいなそっちのけで盛り上がっていることも多い気がするのだけど。
なお、この際だから、なぜか田中軍団の構成員は全員年下でなかなかれいなに
同世代のお友達ができないことについては考えないでおくことにした。


「きっといつかはファミリ~をっ、しょおかいーさせーてー♪」

今日も楽しく行われた田中軍団の極秘会合(という名のカラオケ3時間飲み放題コース)。
だがその帰り際に、れいなは妙な話を吹き込まれた。


――――出るんですよ、ジョンソンが。


そう囁いてきたあの子の顔は、恐怖に引きつっていた。


なんでもこの近くには最近“ジョンソン”と呼ばれる不審者が現れるらしい。
すらりと伸びた手足に、腰まで届くような長い髪。
そのジョンソンはマスクを装着しており、道行く人の前でマスクを外しては「ねえ、笑って」と真顔で呼びかけるという。
なんだか、ホラー映画と都市伝説をミックスしたような話だった。

もちろんれいなはそんな話を鵜呑みにしたりはしない。
そりゃあ怖いことは怖かったが、別に斧持って追いかけてきたり、自分のほうが間違えているにもかかわらず
「あんた振り付け間違ってるよ」と的外れな指導をしてくるわけでもなさそうだし。
いざとなったらぶん殴って逃げればいいや、と楽観的に構えていた。

しかし、そんなれいなの前に一つの長~い影が現れる。

「ねえ、そこの小さいの」
「・・・・・・」
「こら無視すんな。あんただよあんた。そこの、でっかいサングラスつけてる女」
「えっ、れいな?」

声をかけられ、立ち止まる。
最近サングラスを新調したれいなは、お気に入りのそれを頭にのせて歩いていた。
なので「サングラスつけてる胸のでっかい女」とはれいなのことだ。
そもそも、周りに他に人いないし。

れいなを呼び止めたのは背の高い女だった。
髪も長いし手足も長いけど、マスクはしていない。
しかしれいなはその女の顔に見覚えがあった。

「おまえっ!ダークネスの!」
「え?圭織のこと知ってるの?」

間違いない、この女はダークネスに所属する予知能力者だ。

「あぁ、よく見たらあたしもあんたのこと知ってるわ。リゾナンターの・・・山田だっけ?」
「はっ!?誰!」
「あ、ごめん間違えた。山田は寿退社した同期の名字だったよ。えっとー・・・・・・藤江?」

田中じゃ!

山田はともかく、どっから出てきた藤江って。
かすりもしてないんですけど。
もしや、どこぞのご当地アルファベットアイドルか。
前に狼のスレで見かけただけだけど、そんな名前の人がいたような気がする。
試しに中国から撤退した大手検索サイトの窓に入力してみたら関連ワードがそれっぽかったし。

まあ、そんなことはどうでもいいので。
早く終わらせて帰りたいれいなは、ツッコミの勢いに任せて素早く間合いへ入り込んだ。

「ダークネス、覚悟!」

渾身の力を込めて拳を打つ。
大抵の敵はいつもこれでKOだ。
れいなの拳をくらって立ち上がれた者などいない。

ただ、どんな一撃も当たらなければ意味はないということで。

「ディアー」
「なにっ!?」

変なかけ声と決めポーズによって、れいなの攻撃は避けられた。
予知や大袈裟な技とかじゃなく単に女が仰け反っただけなのがムカつく。
おまけに、リーチが違いすぎて続けざまに放った回し蹴りも届かないっていう。

「終わり?じゃあ次は圭織の番ね。よっこらせっと」

するとジョンソンはどこからともなく麻袋を取り出した。
ちらりと見ただけでその重量感が伝わってくる。
れいなは距離をとり身構えた。
何が飛び出すかわかったものではない。

「せー・・・のっ!ズダダダダダダダー!」
「うひょお!!」

飛び出したるは、飛び道具。
距離をとった意味はありませんでした。
ありませんでした。

「ちょっ!なにしとーよあんた!」
「機関銃ぶっ放してる」
「そーじゃなくて!・・・のわっ!」
「予知能力者には予知能力者なりの戦い方ってもんがあるの。だって予知だけとか地味じゃん?」
「そーゆー問題じゃ・・・うへっ!」
「あ?圭織の戦い方にケチつける気?予知能力者怒らしたら知らないから、ホント」
「どこが予知能力者のたたか・・・・・・に゛ゃーっ!!」

コピペでしょうか。いいえ、ちょこっと。


機関銃の嵐によってステップを踏まされるれいな。
カラオケの余韻などすでにどこかへ吹っ飛んでしまった。

「カ・イ・カ・ン・・・!えへへ、一度言ってみたかったんだよね」
「知るかぁー!!」

そんなこんなで。
今日も街の夜は静かに静かに更けてゆく。
ちなみに、3丁目の和也君はこの一連の流れのおかげで逆に集中力とスルー力がつき、
二度目の受験は隣でYahoo!知恵袋を使っている人を見つけても動揺することなく乗り切ったとかなんとか。