■ サクリファイスフレンド -スマイレージ- ■
「矢口さんはこちらの期待以上の働きをしてくれていたわ。」
福田花音は邪悪な笑みを浮かべた。
「プライドが高くて、それでいて卑屈。
打算的で合理的、それでいて感情的で衝動的。」
チッ。まるで私ね。
「矢口さんが一時の恐怖で私達に屈服したと言っても、
当面の危険が去れば、こみ上げる屈辱感に耐えられなくなる…
あのままおとなしく縮こまっているはずはないもの。」
「読み通り、撒いておいたリフューズナンバーの記録を掘り返してくれた。
躍起になってみんなの痕跡をたどってるわ。
そして…」
「フクちゃんに辿り着いた…」
前田憂佳が悲しげに言葉を継いだ。
「うん。いずれ仕掛けてくるわね。」
「…」
「憂佳、フクちゃんに同情してる?」
「フクちゃんも私達同様『処置を受け』てたし
一年も前からすでに覚醒している…
どのみち隠しきれなくなるのは時間の問題だったわ。」
「うん…それはわかってる…。」
「大丈夫よ。このプランがうまくいけば、リゾナントの皆さんがフクちゃんを守ってくれる。
そして同時に、計画の成否もわかる。」
「リゾナントの皆さんが何の疑いもなくフクちゃんを受け入れる、
それはそのまま『光井さんの予知を封じることに成功している』ということだわ。」
「そうしたら…そうしたら…、私達の勝ちよ。」
福田花音はふたたび邪悪な笑みを浮かべた。
でも前田憂佳は知っている。心の中で彼女が震えていることを。
前田憂佳は知っている。
彼女が、『あの人と同じ予知能力者』、光井愛佳を誰よりも恐れていることを。
最終更新:2011年04月02日 04:12