旧財閥系、譜久村厳堂の孫、聖(みずき)が失踪したのは3年前だった。
いわば名家のご令嬢が失踪したのだ。
大きな事件として大々的な報道もされようとおもいきや、この事件が表にもれることはなかった。
事件は、単に『事故死』として処理された。
失踪劇の顛末は巧妙に秘匿され、
今やその事件を知るものはごくわずかとなった。
そして、詮索するものはより少なく、今も生きているものは…。
去年のこと、厳堂は一人の養女を迎え入れた。
彼女は聖と同い年であった。彼女の名は…『聖』。
現在、聖は私立凰卵女学院中等部に通う、ごく普通の女学生となった。
旧家の令嬢が普通もないものだが、確かに彼女はごく普通の慎ましやかな生活をしていた。
その影に過去を隠して。
最終更新:2011年04月02日 04:06