『妄想コワルスキー・Full throttle』(前)


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【こんな話だったよ】
人類の宝『凡奇湯』を守るべく、一人戦い続ける誇り高き戦士、新垣里沙。
(己の肉体をボン。 キュッ。 ボン! とすべく欲望の虜となり、一人相撲を取り続ける新垣里沙)

喫茶リゾナントに救うおっぱい亡者どもの手から「凡奇湯」への招待状を奪取すべく虎口に飛び込んだ里沙。
(「凡奇湯」への招待状を盗み出さんと、喫茶リゾナントの郵便受けに腕を突っ込んだは良いが、抜けなくなった里沙)

苦境に陥った里沙を救ったのは、莫逆の友にして情人高橋愛の存在だった。
(苦境の里沙の気を紛らわせたのは、愛と露出プレイや幼な妻プレイに興じるという妄想だった)

鋼鉄の罠を打ち砕いた愛のサイコキネシス。
(能力とか諸設定はかなしみ戦隊なんでそこんとこヨロシク)

危機を脱した里沙を待ち受けるものは?
(いつまで続くんだろうかこの与太話)


「愛ちゃん、ずいぶんと激しかったね」

「そ、それは里沙ちゃんがあーしをそうさせたんよ」

「見てごらん。 パックリと大きく開いて」

「や、恥ずかしい」

「恥ずかしがることないじゃん。 ほら自分の手で確かめてごらん。この赤くなったところを」

「里沙ちゃんのいけず」

「そんなこと言わないの。私と愛ちゃんは長いつきあいなんだからさ」

「やめるがし、やめるがし」



「使えなくなっちゃったね、この郵便受け」

「サイコキネシスで内側から破壊してしもうたからの」

新垣里沙と高橋愛の二人は燃えないゴミと化した郵便受けをながめていた。
郵便受けの差し入れ口に腕を突っ込んだまま抜けなくなった里沙を救うために、愛が念動力を発揮したのだ。

「郵便配達とか新聞配達とかの人が来たら不便じゃない」

「まあええよ。 別にそんなに高いものでもないし。 れいなに電話してホームセンターかどっかで買ってきてもらうから」

里沙の柳眉が逆立った。

「えっ、今何て言ったの愛ちゃん」

「そやかられいなに電話かメールして買ってきて・・」

「ふーん、れいないないんだ?」

「うん。 友達に会いに行くから今日は午後から休みにして欲しいって」

嘘だ、あのわがまま気まま勝手し放題の女に友達なんかいるはずがない。
どうせ見栄を張ってゲーセンか一人カラオケで時間を潰してるに違いない。 
大都会の中の無縁社会で孤独死すればいい。
ふんいい気味だ。

でも、待てよ。
いくら高橋愛があの泥棒猫に甘くたって、半日も休めばそれだけの給料はカットするだろう。
いるわけでもない友人をいるように装うためだけに、それだけの収入減をよしとするようなタマだろうか。
否。
あの女が半日も仕事を休むにはもっと他に理由があるに違いない。

ま、まさか決して高額とはいえないリゾナントの給料に不満を抱き、善良な一般市民から金を巻き上げようと、暴行恐喝の悪事にまで手を伸ばしているとでもいうの!!

許せない、れいな許せない。
あんたがどこでどんな不祥事を起こしたって私の知ったことじゃない。
でも連帯責任とかみんなで頭を下げるとかそんな事態だけは(ry

郵便受けから腕が抜けなくなった私が人目をはばかり、孤軍奮闘していたのはひとえにあの女のせいだ。
もしもそんな醜態をあの性悪女に見られたら、「凡奇湯」を守るという私の純粋な気持ちを邪推されたに違いない。

「あれ、ガキさん。 こんなところでなにやっとうよ。 ハハーン、さては「凡奇湯」への招待状をちょろまかそうとしたっちゃね。
ほんま胸の貧しい人間は考えることも貧しいっちゃ。ハハハハ、ガキさんどうしたと。何震えとると。 ハハハ、ガキさんの団子が揺れよるけん」

そんな風に嘲られるのがイヤだったばかりに、誰の助けも呼ばなかったのだ。
寒空の下で頑張ったのだ。
それをあの女め。
リゾナントを訪れた時、店の主みたいにデカい態度でいやがるくせに、こんな時に限って何故いないのだ、あれ?
これじゃまるでれいなに居て欲しかったみたいなのだ。
私はあの女の影に脅えて時間を無駄にしたことが腹立たしいだけなのだ。

とはいえ過ぎたことをクヨクヨ悔やんだってしょうがない。
進むべき道を行け 笑う門には福来るなのだ。
れいなが不在だということは、「凡奇湯」からの招待状を密かに入手できる可能性が増えたということだ。
それは大変喜ばしいことだ。
あの女が何処で何をしようと放っておけばいい。
私は「凡奇湯」からの招待状を手に入れて旅立てばいい。
あの女が気が付いた時、私は究極体に進化している。
グフ、グフフフフフフフフ、グフグフフフフ。

「何か体の芯から冷えちゃったって感じ。何か温まるものを作ってよ」

郵便受けの中に郵便物は無かった。
入っていた金の現物取引の広告はセールスマンが直接投函している。
ということは、今日の郵便物は既に愛の手で回収されたのだろう。

里沙の胸が高鳴った。
勿論それは心臓の心拍数が上昇したということであって、
里沙のバストがアップしたということではない。
れいなが、あの猜疑心の強いれいながいない、ということはリゾナントには私と高橋愛の二人っきり。
何このうるさい姑はいない夫婦水入らずで今夜は新婚気分。



「ちょっ里沙ちゃんふざけるのは止めて。 今包丁持ってるから危ないし」

「ぷはっ、たまんないケツしやがって。 一度でいいから働いてる愛ちゃんの後ろからこうしたいと思ってたのだ」

「里沙ちゃんの変態」

「そうさ、私は変態だよ、それがどうしたのさ。おぼこい愛ちゃんに教えてあげよう。 一口に変態と言っても色々あるんだ。
例えば自分が変態だということを他人に指摘されると急激に萎えるタイプ。 その逆に他人に指摘され晒されると一気に燃えるタイプ。
私はどちらかというと後の方」

「ちょっ痛い。 なんであしのお尻を鷲掴みにするがし」

「ハァハァ、いい尻、いい尻」

「痛い。やめて。そんなことする里沙ちゃんなんて嫌いやよ」

「オッケー!! イヤよイヤよも好きのうち。 反抗する奴隷のお尻ペンペン。 スパンキングコース入ります~」

「痛いから。本当にふざけるのはやめて」


愛が頭から湯気か上りそうな剣幕で怒っている。

「里沙ちゃん! ちょっとおいたが過ぎるよ」

いきなりヒップを鷲掴みにされたり、平手打ちされたりしたことを責める。

「ゴメンゴメン」

里沙は平謝りした。
今日はたまたまれいなという邪魔者が居なかったのでつい羽目を外してしまった.。
しかしこんなことで愛の怒りを買っては元も子もない。
今私の目的はただ一つ。

ボン。 キュッ。 ボン! 人類の宝。
ボン。 キュッ。 ボン! 輝かしい未来へのパスポート。
ボン。 キュッ。 ボン! さようなら、泣き虫な私。
ボン。 キュッ。 ボン! こんにちは、アルティメットなボディ。

なんとか愛をなだめてカウンター内の厨房に誘導する。
いくら怒りを買ったって、そこは長年連れ添った古女房。
里沙のために何か作り始める。
そんな愛を一方の眼で見つめながら、もう一方の目はカウンターの橋に無造作に置かれた郵便物の束を捉えていた。

まったくまだ営業時間中なのにカウンターの上に置いちゃってさあ。
お客さんがいないからいいけど、こういうところは大雑把なんだよねえ。
その辺はれいなの方がきちんとしてるというか、接客のプロ意識が高いというか。
まあリゾナントの売り上げが自分の食い扶持に直結するから当たり前といえば当たり前なんだけど。
その点この人ももっと見習った方がいいよね。
え? 今あたしれいなのことを評価してた?
あの油断も隙も見せられない泥棒猫のことをきちんとしてるとか思わなかった?
デレてるの? 私デレてるの、ねえねえ。

まあいい。
あの中に中澤からの招待状があるなら抜き取ろう。 そして、いざ行かん「凡奇湯」へ。

れいなは外出中。
お客さんは不在。
今、リゾナントの中にいるのは私と高橋愛の二人っきり。
そして高橋愛はカウンターの中で作業中。
頑張れ、私。 私なら出来る。

さり気なく近づいて何気なく手にとって悪気なく抜き取ればいい。
そう、それはスパイだった私にとっては容易いこと。
今ふと思ったけどひょっとしたら、この瞬間のために私はスパイという人から蔑まれる職業に就いていたのかもしれない。
いや、きっとそうだ。
神は私を「凡奇湯」へ導くために、スパイという道を歩ませたのだろう。
全ては人類の宝を守るための神の企てだったのね。
そう思えばあの苦しかった日々にも意味があるように思えてくる。

家族から引き離され、ダークネスの一員として働くことを強いられた幼き頃。
自分を偽って潜入したリゾナンターとダークネスの狭間で揺れ動いたあの日。
作戦の為なら仲間である私の命など紙切れのように扱う組織の非常さを知ったあの時。
捕らわれた家族を救うために向かった海上の監獄で知った非情な真実。
私が闇の王の娘だったという衝撃的な真実をに打ちのめされたあの瞬間。
どれをとっても辛く苦しい思い出だ。

だが一番辛かったのは、一番苦しかったのは、一番ダークネスを心から許せないと思ったのは……

……ダークネスからの給料が銀行に振り込まれていないことを知ったあの時だ。

「ちょっと、どういうことですか。今月の給料が振り込まれていないんですけど!!」

「落ち着いて下さい。 まずあなたの識別」

「自動引き落としにしていたマンションの家賃が入金されてないって大家さんから言われて大恥かいちゃったじゃない!!!」

「だからそれは何かのミスだと思われます。 直ちに調べますからあなたの識別コードを」

「うるさいわねえ、識別コード識別コードって私がこれまでどれだけあんた達に電話で連絡してきたって思ってるの。声ぐらい覚えなさい。 
私の識別コードは2121。 コードNO2121 新垣里沙とは私の事よって、ちょっと黙り込まないで何とか言いなさいよ。 このままバックレるつもり」

「……新垣里沙…お前は我がダークネスを裏切ったではないか。 それを何故今更…?」

「確かに私はあんた達みたいな極悪非道の輩とは縁を切ったわよ。 
でもだからといって私がまだダークネスに所属していた間の労働の対価を支払わないだなんて、どこまで腐った了見をしてるの。 
許さない。私はあんた達のことを許さない。 ダークネスなんて必ず私の手で壊滅してみせる。 
でも、潰れる前に私に未払い分の給料を支払いなさいってば、ちょっと卑怯じゃない。電話を切ってそれで終わりにするつもり。 ふざけるんじゃないわよ!!」

私は不当な要求なんて何一つしていない。
私はダークネスを裏切った。
退職願いこそ出していないが、その時点で月給制の給与の支払いがストップすることに何の異論も無い。
だが私自身がダークネスから離脱したと認識した時点までの報酬は日割り計算で受け取る権利があるはずだ。
それなのに支払わないのだ。
私の銀行口座に振り込まないのだ。
いくら悪の組織だといっても非常識にも程がある。
ま、まさか私に給料を支払うのが惜しくなって、裏切り者のレッテルを貼り、襲撃したとでもいうの。
何てブラック企業!!

正義の味方である私がこのまま泣き寝入りなんてすることなどできやしない。
未払い給与の支払いを求めて5分おき電話をかけたら私の携帯の番号を着信拒否しやがった。

機種変換しようにも金がない。
リゾナントから電話してやろうと思ったら、れいなが目を光らせている。
八方塞とはこのことだ。
まったくどうしてくれよう、あの人間の屑どもめ。
あの金があれば安倍さんの写真集が何冊買えると思っているのだ。

安倍さんは天使なのだ。
安倍さんの写真集は聖典なのだ。
安倍さんの身体に直接触れるなんてそんな大それたことは出来ないけど、写真集なら触れられるのだ。
安倍さんの身体を抱くことなんて絶対出来ないけど、写真集なら重さを実感できるのだ。
それをあのダークネスのクソ野郎どもが、給与の支払いをケチったお陰で、安倍さんの最新写真集なんて680冊しか買えなかったのだ。

許せない。
723冊の安倍さんの写真集に囲まれて至福の時を迎えるという夢を打ち砕いた奴らダークネスの存在が許せない。
許せないったら許せない。
だが、今は敢えて目をつぶろう。
もう少し、あと少しで「凡奇湯」に手が届くのだ。

おお、神よ。
私はあなたの期待に応えます。
今から「凡奇湯」への招待状を手に入れて見せます。
そして「凡奇湯」へと向かい、邪悪な者達の手から「凡奇湯」を守ってみせますとも。
おお、神よ。 私を守りたまえ。

高まる胸の鼓動を抑え、郵便物を束ねたものが置いてある所へ近づいていく。
厨房の愛は調理に気を取られ、里沙の動きに関心を示さない。

もう少し、あと少しで手が届く。
きっとある。きっと届いている。
「凡奇湯」への招待状はきっと届いている。

つかむ。つかみとってみせる。
「凡奇湯」への招待状、アルティメットなボディ。

里沙がリゾナントに届いた郵便物に手を伸ばそうとしたまさにその瞬間。

「ガキさん、何してるの」

「な、何であんたがいるの」

天使のような微笑を湛えた道重さゆみが立っていた。

人類の秘宝「凡奇湯」を守るべく、誇り高き戦士新垣里沙の戦いは続く。



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