『天使の救済』


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M日本支部
「なっち、なっちはおらんか?」

M日本支部長の稲葉が安倍なつみを探していた。
「さきほど、散歩に出かけると言って出ていかれたんですが・・・」
「またかいな、報告書も出さずにどこをほっつき歩いてるんや!」

その頃、なつみは町中を歩いていた。
目指しているのは町中の小さな開業医の家だった。

ピンポーン!
「ごめんください!安倍です。」
「あら、安倍さんだ。どうしたのさ。」

応対したのは小さな女の子だった。
「あら、ヒノコちゃん。先生はいるかな。」
「いるなのさ、先生!黒尾先生!」

すると中から目つきの鋭い全身黒の服を着た男が現れた。
「中に入ってくれ。」
「おじゃまします。」

なつみは黒尾と呼ばれた男に案内されて診察室に入った。
「珍しいですね、患者さんがひとりもいないなんて。」
「なぁにこんな日だってあるさ。それほどみんなが元気という証拠だ。」
「それはいいことですね。あっ、それで約束通りお金振り込んでおきましたから。今月の援助費。」
「いつも済まない。」

黒尾はあたりを見回した。
奥の手術室には町の開業医としてはあり得ないほどの医療設備が整えられている。
この開業医・黒尾はかつて有能な外科医として活躍していたが、今の医療体制に疑問を持ち、病院を辞め、開業医として養女のヒノコとともに新しい人生をスタートしていた。
しかし現実は甘くはなかった。資金が少なかった黒尾は設備や薬が不足し十分な治療を施すことができない場合が多々あった。
また無償で患者を見ることがあるため運営に苦しんでいたのだが、そこに手を差し伸べたのがなつみだった。

「あっ、そろそろいかないと。じゃあまた来ます。」
「ああ、どこか悪くなったら言ってくれ。」

なつみが次に向かったところは・・・
東京都内の建設現場だった。
そこは今度、新しい超高層ビルが建設されることになっており、大勢の作業員が汗水流して働いていた。

「皆さん、お昼ですよ。」
なつみがおにぎりを持って、現れた。

「うひょー!天使のおにぎりだ!」
「もうやだな、天使だなんて。」
「こんな辛い作業をずっとやってられるのは天使がケアしてくれるおかげですよ。」

建設現場を後にしたなつみは再び町を散歩していた。

「ひったくりよ!」

目の前で女性が男にバックをひったくられた。
男はなつみの前を通り過ぎようとした。

「止まりなさい。」
なつみの一声で男は石のように動かなくなってしまった。
動かなくなった男の腕からバックをとったなつみは女性の元に向かった。

「はい。」
「ありがとうございます。あのできればお名前を。」
「名乗るほどのものじゃありませんから。それより早く警察を呼んだほうがいいですよ。」

そういってなつみはその場を後にした。

そしてなつみが最後に向かったのは・・・
「どうも院長先生。」
「あら、安倍さんいらっしゃい。」

れいながかつて暮らしていた孤児院だった。
「こないだの騒動の時はすいませんでした。私が海外出張していたばっかりに。」
「いいえ、あの子たちのおかげで事なきを得ましたから。」

この孤児院は以前、暴力団に土地をだまし取られ、つぶされようとしたがリゾナンターの活躍で元の持ち主に返された。

「今後はちゃんと管理にも目を行き届けますから。」
「気にしなくて結構ですわ。それにあなたには十分助けられているわ。ここの維持費もあなたが援助してくれている。」

実は孤児院はなつみが資金をだして建てられたものであった。
管理は信用できる人物を選び、院長先生をはじめとする職員もなつみが子供たちを預けるにおいて信用できると感じた人たちを選んだのだ。

なつみが帰ろうとすると・・・
「ねぇ、なつみお姉ちゃん。久しぶりに来たんだから、歌を歌ってよ。」
「わかったわ。じゃあみんな集まって。」

なつみは大広間に子供たちを集めた。

「じゃあ、はじめるわね。」

♪~♪~♪~

なつみの歌はまるでカナリアのように美しかった。

なつみが歌い終えると子供たちが盛大な拍手をした。
「じゃあ、みんなまたね。」

子供たちが手を振って見送られながらなつみは孤児院を後にした。

M日本支部
「ただいま。」
「おかえり、なっち・・・」

そこには仁王立ちをしている稲葉の姿が・・・
「どうしたの、そんな怖い顔をして・・・」
「いったい何時間散歩しとんねん。さっさと報告書をださんかい!」

天使の影の救済を知るものは少ない。
しかしいつか天使があなたの前に現れるかもしれない。