「Vanish!(4) 『狂気に移りうる愛情』」


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(4日目)

FROM みや
TO  れーな
 田中さん、おはようございます!今、学校に向かうバスの中です
 隣に座ったおじさんの臭いにもうダウン寸前!! ×0×
 昨日は時間が本当になくて、全然話しできませんでしたよね(涙)
 今週の日曜日に何か予定ぁりますかぁ?夕方からでいいので、一緒に遊びに行きませんか?
 みやは田中さんのお話をしっかり聞きたいなぁ!!今日もぉ仕事頑張ってくださいねっ♪

●月★日(金) PM 5:30

学期末のこの時期になるとテストが近づいてくる。優等生の光井は学校の図書室ではなく、都立図書館で勉強する。
光井のカバンはその日あった授業のノートと参考書が詰め込まれ、はじきれんばかりになっている。
「あれ、愛佳?今日も図書館行くの?明日、休みなんだから少しくらい休めばいいのに。 
これからユリナとカラオケ行くんだけど、一緒に行かない?たまには気分転換しようよ」
「ありがとう、でも今度のテストはしっかり勉強したいから、またさそってえな。ほな~」
クラスメイトにバイバイと手を振りながら光井は最寄りの駅へと駆け出した。

道には少し雪が降り積もり、急いで走ると濡れてしまうので注意がいる。滑らないように早足で光井はかけていく。
夕方ということもあり、駅前にいるのは学生が目立つ。それから、遊びの帰りと思われる中学生や小学生もいる。

勉強する前に光井は軽い夕食を取るために駅前のコンビニに入った。
奥の棚においてあるお茶とサンドイッチを光井はかごに入れレジに並んだ。
前のお客が支払いをしているのを待っていると、お金の落ちる音がした。
ふと視線を下にすると光井の足元に数枚の硬化が転がってきていた。

「お金落ちましたよ。はい、どうぞ」
光井はしゃがんで目の前に落ちていた硬化を拾い、支払いをしていた前のお客に渡した。
「ありがとうございます」

―ぺこりと頭をさげて彼女の手の平に小銭を置こうとした瞬間

             バチッ

―静電気が走った

まさかこのような場所で静電気が起こると思わない光井は驚いてしまった
「すみません、私、静電気が起こりやすいんです。びっくりしました?」
(そんな体質もあるんやなあと)と思いながら、軽く謝っているその人を見ていた。

「次のお客様、どうぞ」
コンビニの店員の声が聞こえたので光井はかごをレジの上に置き、カバンから財布を取り出した。
目を上げると先ほどのお金を拾ってあげた女の人は店から出て行ってしまっていた。
「あれ、近くの高校の制服やよね…いいな、あっちの方がかわいい制服やし…」
自分の着ている制服の胸についている赤いネクタイを無意識に触っていた。

●月★日(金) PM 7:00

「ふぅ~今日も忙しいっちゃね~、愛ちゃん、コーヒー入れて~」
「また?はい、れいな」
高橋がれいな用のマグカップに砂糖を大量に入れた特製の激甘コーヒーを注いで渡した。
「愛ちゃん、ありがとう。そういえばね、今日の朝、こんなメール来たと」

れいなは朝に届いた雅からのメールを高橋にみせた
「今週の日曜日にみやが遊びに行こうって誘ってくれたと。
 れーなも昨日しっかり話しできんかったやけん、もいっぺん会いたいんよ。
 愛ちゃん、お願い休みちょうだい!この通り!!その分明日頑張るから!!」
れいなが手のひらを合わせて頼み込んだのをみて、高橋は何も言わずこくんと頷いた

「ほんとう!愛ちゃん、ありがとう!本当に優しくて大好きよ!
 でも、れーなの代わりにサユに手伝い頼むから、愛ちゃんの負担は増やさないようにするっちゃ」

「なんの話してるんデスか~」
「あ、リンリン、こんな時間に珍しいね。どうしたの?バイト、今日はいいの?」
中華料理屋でバイトしているリンリンが来るのは大抵夜遅く、閉店後であることが多いので非常に珍しい。
「店長が用事があるので、夕方ノお店お休してマス。リンリン、高橋サンのお手伝いに来まシタ!」

リンリンは満面の笑みでシャツの腕をまくりあげてながらカウンターに入ろうとする。
「ありがとうリンリン。でもね、今はちょっと余裕あるから大丈夫よ。リンリン、ご飯食べた?」
「マダで~す。そういえば夕ご飯マダでした!!高橋サン、何か食べたいデス!!」
いつもお腹ぺこぺこなリンリンを見て高橋は冷蔵庫から野菜を取り出し、トントンと刻み始めた

高橋の料理ができるまでリンリンはカウンター席に座り、カバンから筆ペンを取り出し何かを書き始めた
二階から下りてきた田中がリンリンが来ていることに気づき声をかけた
「あれ?リンリン、こんな時間に来るの珍しいやん。何を書いとうと?」
そう言ってリンリンの書いている物を覗き込んだ。しかし、すぐに額にしわをよせて離れた。

「れいな、何書いてあった?」
キッチンにいる高橋が野菜炒めを作りながら、れいなに尋ねてきた
「・・・読めん。全部、漢字で書かれていると!リンリン、なんて書いてあるんよ?」

「これはデスネ、リンリンの中国の友達から来た手紙の返事デス!!この前、また会いタイって来たので返事書いてマス!
 メールでもいいんですけど、手紙の方がいつまでも手元に残りマスし、いくらでも書けるデス!
 手書きのほうが温カイから、リンリン、手紙を書いてマス!内容は秘密事項!」

完成した野菜炒めと焼きそばをリンリンの前に置きながら、高橋が手紙を覗き込んだ
「リンリンは本当にいい子だね。友達から来た手紙とか、メールの返信よりも何倍も嬉しいからね~
 何度も読み返すと文字一つ一つの温もりが伝わってくる気がするし…
 私も誰かに書いてみようかな~」
集中して手紙を書くリンリンを愛おしげに高橋はじっくりと眺め始めた
「あ、高橋サン、そんなにミラレルとヒジョーに書きにくいデス・・・」

れいなはリンリンの前に置かれた野菜炒めをつまみ食いし、携帯をいじりはじめた
「れいなも昔の友達に今度、会うっちゃよ!今度、リンリンにも紹介するけん、楽しみにしとって!
 …送信っと」
暫くすると高橋とリンリンの携帯にメールが届いた
「『アドレス替えました 田中れーな』??れいな、今アドレス替えたの?」
「アドレス替えて、友達とのつながりを再確認するっちゃ!」
残念ながら宛先不明で帰ってきたメールが数件あったのをみて、うつむき加減のままれいなは言った

●月★日(金) PM 7:00

「あれ?矢口さん、お帰り早かったですね。ここ空いてますよ」
マルシェが夕食のコロッケを幹部専用の食堂で食べていると、矢口がふらふらと部屋に入ってきた
「あ~もう、おなかすいた~まったく、仕事は書類ばかりでつまらないし・・・」
ぶつぶつと独り言には聞こえない大きさの独り言を呟きながらマルシェの向かいに座った
矢口はお腹をさすりながらマルシェの食べているコロッケをじっと見ていた
ごくっとつばを飲み込む音が矢口の喉からもれ、腹の虫が空腹を告げた
「(クッ)…矢口さん、おひとつどうぞ」
目に涙を浮かべながらマルシェは空腹の先輩に貴重な一個を差し出した

「まったくここのご飯も出て来るの遅いんだから~マルシェいなかったらおいら空腹で死んでいたよ」
コロッケを美味しそうにほおばりながらも、相変わらず口から出るのは愚痴ばかり
「矢口さん、大変なんですね」
「あったりまえじゃん、ほぼオリメンのおいらは常に忙しいのさっ。実験室にこもってばかりのマルシェと違ってね」
そうこうしているうちに注文した中華丼が出てきた

「そういえば、あの調査はどうなりましたか?」
「調査?なにそれ?」
箸を止めることなく矢口は中華丼のどんぶりを持ち上げてがっつくように食べ続けている
「あのボスから頼まれていた雅とかいう子の調査ですよ」
「そんなの知らないよ。だって、おいら昨日からずっと部屋にひきこもってるんだから」

(昨日の夜に飛び出し、一日もしないうちに帰ってくること自体が異常だよね。
 実際に調査に言ったことは事実だし、それは私が知っている。
 対能力者においての準備はトップクラスにするこの人が能力にかかったとは思いにくいし…
 それに、脳にダメージを与えるような大きな怪我はしていないよし…どういうこと?)

そうこうしているうちに矢口は夕食を食べ終わり、お茶を飲み始めた
「そういえばよっしーはどうしたの?まだ、任務終わらないの?ちょっと頼みがあるんだけどな~」
「吉澤さんはまだお帰りになっていないようですよ。なんか、情報屋に扮して潜入しているらしいですよ
 ところで矢口さん、ちょっとこの後お時間いただけませんか?」
「マルシェが珍しいね~なに?新しい薬でもできたの?それともおいらに相談事かい?
 そうだ、マルシェに作ってほしいものがあるんだけどさ、ナイフでこう先がくねって曲がった…」
水を飲んで口を潤したマルシェは矢口を引き連れ、自分の研究室へと戻って行った

●月★日(金) PM 7:00

亀井と道重は二人で遊びに出掛け、両手にいっぱいの買い物をしていた
「えへへ、いっぱい買っちゃったね♪こんなに買っちゃって今月はピンチかも~」
「さゆみも結構買ったけど、エリよりは計画的に買ったから大丈夫。
 もし、困ったらうちにおいでよ~」
「じゃあ、ふつつかな者ですが、今夜からよろしくお願いします」
「何それ~」
「サユだって嬉しいくせに♪」
亀井が冗談半分で頭を下げているのを見て道重はアハハと笑い始める

二人は約束していた洋菓子のお店を回り、その味をメモして回っていた
道重の卒業後、二人でお店を開くための参考になるような味を探し求め、アイデアを出し合っていた
だが、実際メモに書かれたことは、お世辞にも綺麗とはいえない字でかかれた落書きと奇妙な絵だけであった
道重が覗き込んでもかろうじて「おいしい♪」だの「いちご」としか解読できそうになかった

「も~エリがまかせて!って言ったから頼んだのに、これじゃどのお店がよかったとかわからないじゃん!!」
道重は少しばかりご立腹な様子であるが、亀井はどこ吹く風、全く気にしないで笑っている
「え~大丈夫だって~エリのこの優秀な頭で美味しいお店は覚えてるから~」
「じゃあ最初に言ったお店の名前は?」
「・・・・ほら、あれだよ、あれ。わかるよね、あれ!」
「…覚えていないってことね。もぅ」
「そういう日もあるよ~エヘヘ~ご飯食べに行こうよ~」

そんな二人は道重の講義終了後、すぐにこの場に来て片手で数えきれないくらいのケーキ屋を訪れている
普通に考えるならばお腹いっぱいで動けないハズであるが、この二人ときたら
「そうだね。少し怒ったらお腹すいちゃった。どこ行こうか?」
「エリ、サユが行きたいところでいいよ!」
      • いっこうに食欲は尽きないようである

「じゃあ、あっちにあるお店にしよう。友達がね、この前個室のいいお店だって教えてくれたから」
二人は表通りからすこし外れた小さな路地にあるそのお店に向かって歩き出した

比較的そのお店までは距離があり、二人はぺちゃくちゃと話しながら歩いていた
気になるブランド品、大型の書店で「月島きらり」の握手会が明日開かれること、愛ちゃんの訛などネタは尽きない
どれもこれも大したことはない話題であるが笑いあっているとなんだか楽しくなってしまう
亀井はヘラヘラ笑いながら歩くので、道重は車道に入らないか心配しつつも仲良く歩いている

「確か、この通りだったと思うんだけどな~エリ、××っていう看板見つけたら教えてよ」
「ほ~い…う~ん、ないね~」
道重は内心(エリは探す気がないんだろうな)と察しながら携帯を片手に必死に探していた
キョロキョロと辺りを見渡していると「あの、すみません」と後ろから声をかけられた

振り向くと自分とほぼ同じ、もしくは少し上の年齢の女性が立っていた
手には何かの書類を持っているようで服装は非常にラフな格好で、メガネをかけている
「あの、ちょっとお尋ねしたいことがあるんですけど…」
長年の経験からして路上でこうやって声をかけて来るときはいい話は絶対にあり得ない

「あの、今、さゆみ達急いでいるんで、ごめんなさい」その一言を言う前に隣にいた亀井が先に口を開いた。
「どうしたんですか~」
相変わらずの空気を読まないのんびりした口調でメガネの女性に優しく声をかける。
道重は無意識に亀井の腕を掴んでいた。メンドクサイことに巻き込まれる前に逃げるために

亀井が笑顔で問いかけてきたのを見てメガネの女性はほっとした様子だった
「あ、よかった~みんな、止まってくれないから…あの、えっと、駅ってどっちですか?」
道重もほっと小さく安堵のため息をつき、自分の行動を思い返し少しばかり反省した。
ただこの場所で資料を持ち、メガネをかけた女性というだけで怪しいことと勝手に推測したことを申し訳なく思った。
そうやって思い改めて見直せば、メガネをかけているとはいえところどころにくだけたような印象を感じる。
おそらくかけているメガネもファッションの一つなのだろう

道重が注意深く考える癖を持つようになったのに対して亀井は昔とほとんど変わらない。
直感が働くというのか、何となく動くだけで良い結果を生みだすことになることが多い。
この適当さには見えない力が働いているのかもしれない、と道重はたまに羨ましく思うときがある。

道重がこのように考えているうちに、亀井は女性に駅への道を教え始めた。
「駅はですね~ここから、まっすぐ行って~・・・ですよ~」
非常に大雑把な説明だが、ポイントは押さえられており非常に分かりやすい
女性はその道を忘れないように視線を上に向け、頭の中で整理しているようであった。
そして一度では覚えきれないようで二、三度説明してもらいようやく理解したようである

道重がぼうっと亀井を見ていると女性の方に頭を下げ、女性が髪の毛に手を伸ばしている
どうやら髪の毛に綿毛か何かが付着していたようで、亀井は取ってもらっているようだ
道を教えたのに恰好だけはなぜか亀井がお礼を言っているように頭を下げている格好になって妙におかしい

「ありがとうございます、亀井さん。ご丁寧に。本当に優しい方ですね!」
「ねえ?きいたぁ?サユゥ、エリ、いい人だって、エヘヘ・・・」
お礼を言われて嬉しそうにくねくね体を動かして道重の方を亀井はむいた。
道重はいつものことと思いつつ「よかったねえ」と適当にあしらった。

「ありがとうございました」と女性は道重の方にも一礼をして駅へと歩き始めた。
しかし、ほんの数歩歩いたところで女性は転んだ。どうやら、凍っていた路面で滑ったようだ。
歩道に手からついたので、運よく手袋をしていたとはいえ何らかの怪我をした可能性が高い。
思わず道重と亀井は駈け寄っていった。

「イテテ・・・」尻もちをつき、ちょっと恥ずかしげに顔を赤くして座り込む格好になっていた。
大丈夫ですか?と言いながら道重は手を差し出した。
必死に冷静を取りつくろい、すいませんと道重の手を取って女性は立ちあがった。

手を触れた瞬間に道重はちょっと掌に痛みが走ったような気がし、女性にさし出した掌に何か付いていないか見返した。
「ありがとうございます。本当に」というお礼の声を聞きながら道重は掌にくっついていたトゲを取り除いた。
「気を付けてくださいね。駅はあっちですからね」
駅への方向を指さし、道重は優しい声をかけ、女性はお礼をして駅の方向へと走って行った。

「さあ、エリ、お店探し再開しよ」
道重は亀井の手を握り、亀井もぎゅっと握り返した。


●月★日(金) PM 8:00

図書館で勉強中の光井の机に置いておいた携帯電話がブルブルと震えた。
夕食を一緒に取っていた亀井と道重のお店のテーブルの上に置いたあった携帯電話がブルブルと震えた。

3台の携帯に届いたメールは全て同じで、文章はほんの一文のみ
『アドレス替えました 田中れーな』

「田中って誰やろ?」
「ねえ、『れーな』って誰だっけ?」
「さゆみにも来たの、知らないのこの人。なんか怖いね…」

三人は何も考えず届いたメールをすぐに削除した。

●月★日(金) PM 8:30

計画は順調のようね…素直に嬉しいわ
しかし、まさかこんなに簡単に行くなんて思わなかった…才能かしら?

でも、明日はあの人と…おそらく一番難しいあの人との接触だから…
メンバーのなかで一番慎重で、強力な精神系能力者のガキさんに接触するんだから

田中さんへの愛がこんなに深いなんて、あの人が知ったらきっと喜ぶでしょうね…
フフフ、想像するだけで笑みがこぼれてくる…

おっといけない、そろそろあのお店が終わるころね。急いでいかないと・・・

                         あと5人・・・