『幕間~未来→現代~』


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「なんか変な感じだな~」
聖は周りを見渡して一人呟いた

ふわふわとまるで海の中にいるようでもあり、空から落ちているようでもある―それが時間を遡っている今の感覚
周りの景色は何も見えないが不思議と自分の姿だけは光にでも包まれているようにはっきりと捉えられる

「今、私って珍しい体験しているんだよね。きっと世界中探してもほんの一握りしかいないだろうな~」
左手に付けた時計の針が普段とは反対に回っていることで自分が過去に向かっていることを改めて確認できた

ふと足元に視線をむければそこには持参したカバンと光井に手渡されたカバンが置かれている
「よかった、一応足にこの荷物達を結んでおいて。どこか行ってしまったら大変だもん」
聖はそう言って光井から渡されたカバンのチャックを開けた

まず最初に取りだしたのは茶色の封筒だった
「なんだろ?これ?」
それは光井が聖に向けて書いた手紙だった

『DEAR ふくちゃん
 最初にこの手紙を読んどると思う。
 ふくちゃんを送ったことで力を使い果たしたからこれが最後の予言になっとるかもなw
 冗談はさておき、一番最初に忠告しとくわ

 絶対にふくちゃんは『未来から来た』ってことを言ってはあかんで!
 未来を変えるために行ったんやから、変に思うかもしれん。でも仕方がないんや

 ダークネスにも愛佳のような予言者がおるのはしっとるやろ?
 相手さんは真っ先に未来を変えようとするふくちゃんを狙うはずや
 自分の身を危険から守るために言ってはあかんで!
 高橋さんになら言ってもええのかもしれんけど、あまり多くの人にいうてはダメや』

それから愛佳達にとっての過去、今向かっている過去にとっての未来に起きたことも言ってはあかん
愛佳達にとっての『過去』に起きた事件を言うた時点で『未来』で起こることが確定しまうんや
未来を変えにいったんやから意味がないやろ?賢いふくちゃんならわかったよね?』

「リーダー・・・ちょっとややこしい手紙ですよ・・・説明上手く出来なかったんですか…
 つまりこういうことですか。
 例えば目の前にサイコロを一回ふる。私はすでに③の目が出ることを未来で知っているとします
 それで『③の目が出る』と過去に戻って言うと、サイコロの目は③が出る
 でも『③の目が出る』と言わなかったら、①とか②とかも出る可能性があるということですね
 もちろん③の目がでることもありえるけれども・・・」
聖は自分なりの解釈を終え、再び手紙を読み始めた

『とりあえずふくちゃんの出身地は東京ってことにしといたで。カバンの底に偽装出生届あるから
 それから生活に困るやろうから、お金も多少多めに入れておいたで』

カバンの底を探ると百万円の束と身分証明を示す書類が見つかった

「えっと、名前、譜久村聖、出生地、東京都●●、家族構成・・・ん?え?ちょっと!」
書類に書かれたことを一つ一つ確認していった聖はある部分に驚きの声を上げ、光井からの手紙に目を写した

『そんでな、一つあやまらなきゃあかんことあんねん、ふくちゃんに
 実は偽造書類を作るときにふくちゃんの生まれた年を10年間違えてしもうたんや~
 ほら、過去にいくわけやから一から作らないとアカンやろ?そんとき愛佳、計算間違えてもうたんや
 でも、訂正効かんくてな~ほんま、ごめんな~(笑)』

「(笑)じゃないですよ!なにしてるんですか、リーダー!これじゃあ、私14歳ってことになるじゃないですか!
 『まあ、高橋さんにあったら全ては大丈夫やで~』って何が大丈夫なんですか!」

『そんであとこの封筒に写真を3枚入れといたわ』

一枚目は喫茶リゾナントと書かれた看板のある建物の写真
裏には『これがリゾナンターの本部、リゾナントや。住所は●●やで~おすすめは「うええおええ丼」と書いてあった

「これが喫茶リゾナント…」
建物の名前は何度となく聞いたことがあったが、聖はその存在をみたことがなかった
「リーダーリゾナントの話しするとき嬉しそうだったな・・・きいていたよりもかわいいお店だな」

二枚目は9人の女性が写った写真だった
ポニーテールにした茶髪の女性を中心に9人の女が笑顔でカメラにピースサインを向けていた
裏には『これが愛佳のおった時のリゾナンター9人や。最強のメンバーやったんや』と
「へえ、これが伝説の9人・・・あ、これ、リーダーだ!若・・・くもないかな?
 でも、9人と言うことは・・・」
聖の顔が一瞬曇り、「やっぱり」と呟き、写真を伏せた

三枚目の写真には二人の女性が写っていた
一人は聖でもすぐにわかった、光井だと。そしてもう一人―それは
「この人が高橋愛、リゾナンターのリーダー」
髪を編み込んでいる高橋は予想していたよりも小柄で華奢であった
「可愛い人だなあ・・・でも最強の戦士なんだよね・・・この人のもとにこれからいくんだよね
 未来を変えるために、自分自身を変えるためにこの人のもとで学べられるんだ」
期待をこめた視線で写真を眺めた

聖が持参したのは足もとにある小さなスポーツバッグと背中にしょい込んだリュックの2つだけだった
      • いや、その2つだけが彼女の全ての持ち物だ
彼女は全てを奪われた、ダークネスの手によって
ぼろぼろになったリュックサックには彼女の数少ない思い出の品がつめられている
母親からもらったぬいぐるみや家族全員で撮った集合写真・・・
目の前で両親を殺され、家に火をつけられた光景は忘れられず、今でもうなされることがある

「・・・未来を変えなきゃいけない、私のためにも、世界のためにも
リーダーから託されたこの任務、絶対に成功させてみせる!
あれ?なんだこれ?」
光井から貰ったカバンの底に何かが入っていたのを聖は気がつき、取り出した

それは「A」と「R」と書かれたボロボロのお守りだった
「これってもしかして・・・」
言い終わるよりも早く、聖の体を眩しい光が包んだ
「あ、出口!?」

                ★   ★   ★   ★   ★   ★

「ハァハァ・・・これで終わりや、ハァハア・・・」
膝をついて息を整える光井の周りにはたくさんの男達が倒れた姿があった
光井は手に持っていた日本刀を鞘に戻し、座り込んだ
「なんとか過去への入り口は守ったで、ふくちゃん、過去にちゃんといけたんやろうか?」

「へえ、何してたのかと思ったけど過去への扉開けたんだ、無駄だっていうのにさ」
「誰や!」
「わたしだよ」
女が光井の目の前に唐突に現れた

「・・・いつからおったんや」
「え~ずっとずっとみっつぃが戦っているの見てたよ~強くなったね」
「・・・なんや高みの見物決めてたんか?ダークネスのくせに手を貸さんかったんか?」
「みっつぃを見てたの。それにその刀、使ってくれてるんだ」
女は光井の持っている刀を指差した
「・・・切れ味鋭いから使ってるだけや」
「へえ、じゃあ、その切れ味鋭い刀、返してよ、それ、もともと私のだし」
女が光井に近づこうとしたので、光井は慌てて立ち上がり刀を構えた

「あれ?どうしたの?返してよ。ん?もしかして戦う気?」
何も言わずに構える光井、笑顔のまま近づく女
「・・・できれば愛佳かて戦いたくないわ。でも仕方ないやろ、あんたはダークネスなんやから」
「ねえ、みっつぃわかりあおうよ。何回も言ってるじゃない、こっちにおいでよ
 理想の能力者だけの世界を作ろうよ、一緒にさ。そしたらあのときみたいに一緒に笑えるんだよ」

光井はきっぱりと言った
「それなら断る。それに愛佳はもう『能力者』やない。全て使いきってもうたわ」
それを聴いて愕然とする女
「マジで!みっつぃ、もう予知できないの?
 ・・・そっか、残念だよ、本当に」
そう言って女は光井に向けた視線を下におろした

「じゃあ、もう興味ないや」

ドスン

女の指先から放たれた赤い稲妻が光井を貫いた
光井は驚きの表情でゆっくりと倒れ込む

「な、なにするんや・・・」
「え~みっつぃが能力者じゃないならもう会う必要ないし、ボスに始末しろって言われてたからちょうどいいカナ」
笑顔で女は光井にウインクを投げた

「バイバイ、みっつぃ」
「ま、待てや、久住さん・・・」




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