『新たなる出会い 生田衣梨奈 編』


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東京のとある道路に一台のリムジンが走っている。
中の運転席には初老の男、後部座席には制服を着た中学生の女の子がいた。

「お嬢様、転校初日はいかがでしたか?」
「うん、楽しかった。みんな私に話しかけてくれて友達がたくさんできるかも。」
「そうでございますか。」

でも、なんか変。みんな話しかけてくれるけど、何か距離を感じる。
具体的には言えないけど、本当の友達になれない気がする。みんな私を単なる興味本位でしか見ていない気がする。
最近の衣梨奈の環境は人の温かさや信用を感じられないものだった。
大企業のトップとして君臨する父、そしてそれを手助けする母。
ふたりとも東京に進出してからというものも仕事の話しかせず娘への関心が薄れている。
そういう環境の中で人への信頼というものが衣梨奈自身からなくなろうとしているのかもしれない。

ふと外を見ると窓から大きな木が見えた。
衣梨奈はその木に何かを感じた。

「じい、止めて!」

リムジンが止まると衣梨奈は車から飛び出していった。

衣梨奈は公園の中に入り、その大きな木の目の前にたった。
(なんだろう、この木は他の木とは違う。何か大きな力がみなぎっている。)

衣梨奈はその木に耳を当てた。
(教えて、あなたのその大きな力はなんなの?教えて。)

衣梨奈は力を発揮した。彼女の力は植物と会話することである。
彼女はこの大きな木が経験した記憶をたどっている。

かつて人々に愛されていたこの大きな木は転落事故をきっかけに遠ざけられ、そして邪悪な気と共鳴したために変貌していき、
木自身の意思とは違い、人々に危害を加えようとしていた。
しかしそこに現れた9人の少女たちが自らの命をも顧みず、人々だけでなく木の命も救った。

(あの人たちは何者?なんだか、心が惹かれていく。会ったこともないのに。変な気持ち・・・でも暖かい。)

衣梨奈はさらに木の記憶を見ると元に戻った木の周りには近所の人たちが触れ合っている。そしてその中にあの9人の少女たちがいる。

(あの暖かい雰囲気。私もあの中に入ってみたい。)

衣梨奈の目には涙が流れていた。
自分の人を信じられない環境にはない真の温かい関係。
衣梨奈は心の底からそれを望んでいた。

「どうして泣いているの?」

後ろから声をかけられた。
そこにいたのは木の記憶を通して見た9人の少女のひとりだ。

「あなたは・・・この木を救った人・・」
「どうして、そのことを?」
「木の心を聞いたんです。」
「そう・・・私は新垣里沙。あなたは?」
「生田衣梨奈です。」

里沙と衣梨奈は公園のベンチに座った。
「あなたたちは一体何者なんですか。あの記憶の映像を見る限り普通の人たちじゃないと思うんですが。」
「私たちはあくまで普通の一般人よ。ほんの少しだけ戦えるだけ。」

その返答に衣梨奈は納得できないようで少し首をかしげた。

「あなたの仲間?どうしてあんなに楽しそうなんですか、あの記憶ではどの人も年齢がばらばらみたいで芸能人やこの国の人じゃない人も・・・」
「そんなのは関係ないわ。年齢や国が違うから芸能人だからなんて関係ないの。みんなの心が共鳴しあった仲間なの。」
「共鳴・・・」
「実はあなたの心の声が聞こえてきてね。この公園に来たの、あなたの不安で誰かを求めるその心が私を呼んだの。」
「私が・・・・あなたを・・・」
「そう、だから多分私とあなたはいい友達になれると思うんだ。」

衣梨奈はまだ里沙の話を半信半疑に思っているようだ。

「それともうひとついいですか?」
「何?」
「なんであの木を救おうとしたんですか、一歩間違えれば命を落としていたかもしれないのに。」
「うーん、その答えを言うには上行こうか。」
「えっ?」

里沙と衣梨奈は木の上へと登った。
「ふぅー、さすがに愛ちゃんみたいにひょいひょいとはいかないな。疲れちゃった。」

下で衣梨奈も一息ついた。
「ほら、見てこの景色。」
「うわー、すごい!」

そこには大木から町の景色が一望できた。
夕暮れ時ということもあり、太陽の光が街の風景を幻想的にしている。

「この木はこの街の人々にとっては思い出がたくさん詰まっているの、お金では買えないふれあいも生まれた。私たちはそれを守るためにほんのわずかな可能性に賭けたの。」
「それがこの木を救った理由ですか。」
「まぁ、そんなところかな。」

その時・・・
ズルッ!
里沙が足を滑らせた。あまりに足場の少ない所に立っていた上に登りきった気の緩みからのことだった。

「新垣さん!」
(まずい、さすがにこのままじゃあ!)
たしかにこのまま落ちたらさすがの里沙も一貫の終わりである。

(どうしよう!)
“力を使え”
衣梨奈の心に誰かが語りかけた。

「誰!」
“力を使え!私も手を貸す!”

「お願い、あの人を救って!」
衣梨奈が願うと大木から根っこがでてきて、里沙の体に巻きついた。
それにより里沙は転落をまのがれた。
衣梨奈は急いで木から降りてきた。

「ありがとう、助かったわ。」
「私、どうして・・・さっきの声は・・・」
「たぶん、この木の声じゃなかったのかな。あなたと共鳴して、私を助けた。」
「これが共鳴・・・なんだか、すごい力がでた気がします。」

すると・・・
「お嬢様、どこにいるのですか!」
「あっ、じいの声だ!ごめんなさい、そろそろいかなきゃあ。」
「待って、もしよかったら。」

里沙がカバンからチラシを出した。
「喫茶リゾナント?」
「私の友達がやってる店で私もよく来るからもしよかったら来てみて。」
「はい。」

衣梨奈は走り去っていった。

「お嬢様、何かあったのですか?」
「よくわからない。ただ、なんだか暖かい心を感じたの。」

そして翌日、生田邸にて・・・
「じゃあ、行ってきます。」
「お気をつけて。」

使用人たちに見守られて衣梨奈は家を後にした。

(自分で確かめよう、共鳴っていったい何なのか。)

人と人をつなぐ共鳴を探るために衣梨奈は人生で大きな一歩を踏み始めた。