未来は一つ―――その考えは、今でも変わらない。
だけど…どうしても頭から離れないことがある。
自分が変えた“未来”はどこへ行くのだろう。
訪れなかった“未来”はどこに消えたのだろう。
自分の選択によって変えられてしまった“未来”は一体どこに―――
かつて“視”た“未来”の中、今日この日を…私の18歳の誕生日を笑顔で祝ってくれていたあの人。
それなのに、その日を実際に迎えた現在(いま)、あの人は私の隣にはいない。
私は本当に正しい未来の中にいるのだろうか。
正しい選択をしてきたのだろうか。
胸を締め付けるような不安が襲ってくる。
「光井さん、お誕生日おめでとうございます!」
「おめでとうございまーす!」
「―――?」
そのとき――
明るいいくつもの声が私の耳に届いた。
現在へと戻ってきた意識が、何人もの笑顔に迎えられる。
同時に、“未来”の中であの人が言っていた言葉が不意に甦った。
――ずっと傍にいるからさ。これからも…ずっと一緒だよ――
そのときにあの人が浮かべていた、少し照れたように笑顔とともに……
その笑顔に釣り込まれるように、私の頬にも自然と笑みが浮かぶ。
あのとき“視”た“未来”の中には、確かにあの人の笑顔があった。
でもその代わり、今現在ここでこうして実際に自分を祝ってくれている彼女たちの笑顔はなかった。
そういうことなんだ。
やっぱり……未来は一つなんだ。
今度こそ、その本当の意味を理解できた気がした。
「訪れなかった“未来”」もまた、そのたった一つの未来の中に内包されて生き続けているのだと。
どこにも行ってなどいないのだと。
今目の前にある、この新しい笑顔たちとともに、ずっと私の傍にあるのだと―――
「ありがとうなー」
初々しい笑顔たちに「オトナのスマイル」を返し、私はもう一度噛み締めるように言った。
「ほんまに…ありがとう」
“未来”の中の……そして未来の中のあの人へのお礼の言葉を。
最終更新:2011年01月12日 20:38