(50) 771 名無し募集中


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俺は超能力を持っている。いわゆる読心術というやつだ。

年功序列が常の極道の世界で、俺のような若造が、幹部にまで上り詰められたのはそのお陰だ。

俺は今、巨大なショッピングモールの建設プロジェクトを任されている。
建設に必要な土地の買収は、残すところ児童養護施設のみとなっていた。
ところが、この施設の園長が、頑なに売却を拒否している。
やっかいな事に、金や暴力での地上げに屈する様子が無いらしい。
着工まであまり時間が無い。早急に決着を着ける為、俺が出向くことになった。

施設に着くと、門の前に職員がずらりと並んでいた。
真ん中に立っていた園長だと名乗る老人が、俺に言った。

「お帰り下さい。ここは子供達を教育する場所です。あなたのようなヤクザが顔を出していい場所ではない」

こいつらは、俺を園内に入れる気すら無いらしい。いいだろう。俺は大声で喋りながら職員達の心を探った。

「さすがに、教育者ってのは御立派ですねぇ!きっと、やましい事の一つも、隠し事の一つも無いんでしょうね!」

職員達の頭に自分の知られたくない秘密がよぎる。それをすかさず読み取り、俺は言った。

「まさか、児童の親御さんと不倫したり、違法なわいせつDVDを所持していたり、夜のお店でバイトしている先生などは居ませんよねぇ」

職員達の顔が青ざめる。今度は一人づつ、舐める様に思考を読み取り、目を覗き込みながら言ってやった。


「先生はずいぶんと奇妙な趣味をお持ちで。ムチや蝋燭がお好きなようで……

 ……あなた万引きで捕まった事があるね。前科持ちなら我々の仲間だ。

 ……こいつは酷い!あなたの御主人が自殺した理由はあなたの浮気ですか!

 ……園長!あなたの女装姿を生徒たちに見せてあげたらどうですか?」

職員達は凍り付いて、言葉を発する事も出来ないでいた。

「人に言えない秘密は誰にでもある。こんな事を園児たちが知ったら、施設としては成り立たないでしょうね」

職員達の心はすでに逃げ出している。

「いかかです?園長。悪い話ではないはずですよ。みなさんの退職金だって充分払える金額です」

園長は涙を溜めて俺を睨んでいる。70歳を越した老人の涙目は、何ともグロテスクだった。


「汚い顔で見るな、ジジイ。早く決めろ」俺は耳元で囁く。

『!!!!!』――――と、次の瞬間! 心臓にヒヤリと冷たいものを感じた!!!

鼓動が早くなり、冷や汗が溢れ出た。

目の前が暗くなり、視野が狭まる。俺はその場に膝から崩れ落ちた。

心臓に走る激痛。自分の命が揺れているのが分かった。

*1  脳内に誰かの思念が響く。

「誰だっ!」思わず叫んだ。俺以外に能力者がいる!どいつだ?声の出どころを探ろうとしたが激痛がそれを許さない。

「止めろっ!お前らの秘密、全部ばらすぞっ!」

心臓が潰れるのがわかる。のた打ち回り、地ベタ掻きむしった。

*2  脳内に流れ込む思念。

「わ、わかった!分かったから、は、離してくれぇ!頼む!タ、助ケ、助ケテェ!」

*3  まるで野に犬を放つようにそう言われ、俺は転がるようにして、その場から去った。