Pleasures


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フロア全体に、恋人はサンタクロース♪の英語版が流れている。
クリスマスかぁもう12月かぁと感慨深げに思っていると、なぜだか胸がトクンと高鳴った。
あれ……?知ってる。知ってる雰囲気が近づいてくる。
けど、ここに現れるなんて。
普段はしていないフチ有りの大きなメガネをかけているが、あれはまさしく

「……カメだよね?」
「うへへ、カメイのお出ましだよーん」 
「てか場所教えてないし……なんでいるの?」

このビルで働いていることは、メンバー全員知らないはずだ。
動揺を隠せない私を見て、にやりと笑う亀井絵里。

「それはぁーこの前ガキさんのおうちに遊びに行ったじゃないですかー。
そしたらエリ見つけたんですよ、カバンの中から覗くガキさんのテーキ入れを!
これはと思ってガキさんトイレ行ってるうちに超高速でメモって~。
だって見つかったらエリ絶対怪しいから!見つからないようにささっと書いたの。
で、ここのどこかだろうなーって思ったから、かいてんちゃく……
開店直後から探してたってわけ♪」

いつもの私なら、最後の最後で噛んじゃったね~、残念!と真っ先につっこむ。
だがそれよりもこの駅直結型ビル【FIVE☆STERS】の開店時間は朝10時だ。

「うぇ~~今夕方じゃん、4時じゃん!暇だね~~!相当暇人ですよ亀井さん!」
「まぁ逆に?暇つぶしにガキさん探してたって感じ?」 
「でたよ上から目線ー。あ、また靴下屋で靴下買ったの?袋でかくない!?」
「まぁまぁまぁ。それは置いといて、お願いがあるんです」
「見ての通り仕事中なんだけどなぁ」

再び、にやりと笑う亀井絵里。



「せーの、亀井絵里に似合うコーディネートを考えちゃおーう!」

そう言って拳を天に突き上げれば、まるでどこかの深夜ラジオのようなコーナーが始まった。

「ガキさんにはですねぇ、エリに似合うコーディネートを考えてもらいます」
「それさっきも聞いたよ」
「じゃぁ行きますよ~、ヨーイスタート!」
「はやっ。ちょっと待ってよ考えますから、あなた何が着たいの?スカート?ワンピ?パンツ?なに系?」
「そうねぇ~ワンピースが良いわ。デート風にお願いできるかしら?Tokyo Walker的な、雑誌のね」
「いきなりのマダムキャラでTokyo Walkerと来たか……でもすごい良くわかる」

平日のこの時間は人が少ない。
お願い=お仕事だったし、他のスタッフも今までのやりとりで「新垣さんのお友達なのね」と察しているだろう。
しょーがないなぁ、ここはカメに付き合って、ガキコーデってやつを見せてやろうじゃん!

「てかなにデート行くの?カレシぃ~?、は有り得ないから、分かったさゆみんでしょ~。
あ、そうそう……オススメはこれなんだけど」

持ってきたのは、紫色のひざ上ワンピース。ぶっちゃけうちの商品で一番可愛いのだ。

「きれいな色ね~」
「でしょー。インナーは黒のタートルネックかな。あとファーとか巻いてさ、」

ライトグレーのラビットファーマフラーを巻いてみせる。

「あらいい感じ……いーじゃなぁぁぁい♪」
「うおっ。きまプリ好きだねぇ。でもね、周りがびっくりしちゃうから、歌わないで。
ま、とりあえず着てみよーよ!試着室はあちらでございまーす……違う、レジ入っちゃダメ!!」
「いーじゃなぁぁぁい♪」
「良くない全然良くない!」

☆☆

暴走するマダム亀井を試着室に放り込み、その間に次なるアイテムを用意する。
よくよく考えると、いつもお茶したり戦いに行ったりしてる仲間を接客するのは、妙な感じだ。
でも楽しいなぁ~!
カメは、同性の私から見てもスタイルが良くて可愛い。(本人の前では決して言わないが)
色んな服を着せたくなるのだ。

ガチャっと扉が開く。

「ねぇ見て可愛くない?!ガキさんさすが!ごいすー」

もうマダムキャラは飽きたみたい。

「ダテにアパレル店員やってませんから~☆
可愛いじゃん!今履いてるショートブーツも良いけど、こういうのも似合うと思うよ」
「なるほどー!これも履いてみていい?」

スッキリとした黒のロングブーツ。うんうん、脚長に見えるね。
ついでに試着中に持ってきていたコートも羽織らせた。ツイード素材だからファーマフラーと相性◎だ。

「はぁ~~なんかエリむかついてきた」
「え!?何でよ」
「可愛すぎ。ガキさんセンスありすぎ。天才」
「分かりにくいから!もっとストレートな表現プリーズ!」
「ごめぇんこれが精一杯!」
「はいはいはいはい。で、どうすんの?亀井絵里に似合うコーディネート考えたわけだけど」
「あ、そうですねぇ。じゃぁ発表しまーす!ガキさんは……ガキさんは……合格~~!!亀井絵里は……満足~~!!
あのーこれ全部ください。着て帰るんでタグも取ってください」

おおっ、良いお客さんだ。ありがとカメはん。でもね、合格発表のときの顔、やばかったよ。

☆☆☆

ワンピース    \15,750
タートルネック  \ 6,930
ツイードコート  \35,700
ファーマフラー  \12,600
ロングブーツ   \18,900

「5点で89,880円でございまーす」
「カード……2回払いで!」
「こちらのカードは止められてないですか?お客様」
「ちっちっちっ。お姉さん安心しなせぇ。もーあんなヘマはしませんぜ」
「破産するのだけはやめてよね」

会計が済み、元々着てきた服をショップ袋に入れて、店の出口まで見送る。
時刻は17時を回ったところ。あっという間に一時間経っていた。

「うへへ、ありがとーございました」
「いやこちらこそだよ。楽しかったし。最初カメが来たときは何事かと思ったけどね」
「ガキさんまだお仕事?」
「私は7時上がりだから、あともーちょい頑張る。カメはこれからデートかぁ~いいなぁ~私も遊びたいよー」
「エリ待ってますよ」

にこりと笑う亀井絵里。

「エリ待ってますから、残業しちゃダメですよ?」
「えっ?ちょっと……」

カメはそう言うと、私の話も聞かないで歩き出してしまった。
どこで待ってるとか教えてよ。まったく適当なんだから。
なんか顔が熱い気がするのは……うー、やっぱり気のせいってことで。

☆☆☆☆

仕事を終え、外の空気に数時間ぶりに触れる。
街路樹のイルミネーションが遠くまで連なっており、きれいだなぁもう12月だなぁと感慨深げに思っていると、
胸がトクンと高鳴った。

知ってる雰囲気が私を待っている。
それが嬉しくて、私の心もイルミネーションされたみたい……なんつって。
あー今のなし!なしね!

すると知ってる雰囲気が、心底小ばかにしたような口調で絡んできた。

「ガキさん今超サムイこと考えてたでしょ」
「うっさいなぁ~。あれはなしになったの」
「あ、このあとどうしますか?ノープラン亀井です」
「名前になっちゃったよ。てかその言葉聞くといつも思うんだけどさー、もしプランあったらプラン亀井ってこと?」
「ほんとだー!このあとはご飯食べて寝るだけ。プラン亀井です。てことですよねー!」
「そうなんだけど……私もいるんだからプランに組み込んでよ」

しばし考えるプラン亀井。

「このあとはガキさんのおごりでご飯を食べるプランの亀井です」
「それもなんか違くない?」
「つべこべ言わない!行きますよ!」
「え、走るのー!?」

胸の高鳴りは響き合い、冬の夜を駆け抜けた。

☆☆☆☆☆

ノノ*^ー^)・e・)おわり。