よしざーさんの災難


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ダークネスの諜報部員吉澤ひとみは、今日も機嫌よく夜道を歩いていた。

「かーっちょいーぜかっちょいーぜ!ヘイ!FUFUFU!」

機嫌がいいあまり、今は亡き某グループの歌など口ずさんでいる。
サビのこの部分以外の歌詞は正直うろ覚えだったが、「かっちょいー」という響きがなんとなく気に入っていた。
あと、それに合わせて拳を突き出すのが楽しかった。
ちなみに機嫌がいい理由は特にない。
機嫌よく歩く夜道の方が気分がいいからであって、それ以上でも以下でもなかった。

「かーっちょいーぜかっちょいーぜ!ヘイ!FUFUFU!」

人通りのない住宅街で、そこしか分からないものだから延々その部分を繰り返す吉澤ひとみ。
そんな彼女の前に、一つの影が現れた。

「ええかげんにせぇいうとんねん!ほんまお前らは揃いも揃って!」
「おう、何だよお前かよ」

関西風のイントネーションに、ドスのきいた声。
宿敵リゾナンターの一人、光井愛佳である。
光井はミナミの帝王バリの眼光で吉澤を睨みつけていた。

「暦はもう12月に入っとんねん!受験も最後の追い上げの時期なんや!3丁目の和也君が浪人したら責任取れんのか!」
「はぁ?受験だ?」
「大体なんやねんその歌!あんなエロみっともないオバハンらの歌よう恥ずかしげもなく歌えるわ!」
「ちょ、待ていくらなんでもその表現はダメだろお前」
「アホか!2ちゃんねる行ってみぃ!もっと腐れた言葉が飛びかっとるわ!例えばなあ――」
「あーわかったわかった!わかったからそれ以上言うな!」
「ネットでアイドル叩くことでしか自己主張できひんカスどもにどうこう言われる筋合いないんじゃボケ!」
「だからわかったって!その辺でやめとけって。っつーかオレ関係ねーじゃん。何でオレ絡まれてんだよ」
「言うとくけど2ちゃんでボロクソ言われた八つ当たりちゃうからな!」
「イライラすんのがわかってんなら見なきゃいいだろうが!っていうか見んなよJK」

吉澤のもっともなツッコミに一瞬言葉に詰まった光井は仕切直しを図る。

「大体あんたはセコいねん!」
「な、何がだよ」
「リゾスレのあんたのキャラ、いっつもええ役ばっかりやないか!何いっつもシリアスにカッコよく決めとんねん!」
「なこと知らねーよ!別にオレが頼んだわけじゃないっつーの」
「時にはリゾナンターを影から見守ってみたり、ときには容赦なく圧倒してみたり、終いにはあろうことか単独でクールに主演張ったりしくさってからに!」
「だから知らねーってんだよ!ってかオレよりミキティや梨華ちゃんの方がずっと出番多いだろうが!」
「あの人らの扱いがどんなんか知らんのか?そらたまにはええ扱いもあるけど酷いもんやで?あんただけや、ええ思いばっかりしとんの!」
「オレだって裏切られて殺されたりなんだかんだしてんだよ!」
「その後幽霊になって後輩見守るとか復活して魔女に復讐するとか結局かっこええやないか!『魔女狩りの時間だ』やて?痺れたわボケ!」
「お前だって名言いっぱいあんだろうが」
「当たり前や!スレタイ読まんかいスレタイを!っていうか誰がいじらめられっこやねん腹立つ!なんやねんその設定!」
「今さらそんな根幹部分に文句つけてどうすんだよ…」
「しかも予知能力者て!未来予知て!地味やねん!愛佳かってサブマシンガン両手に構えて『魔女狩りの時間だ』言いたいいうねん!」
「だからんなこと2年半も経ってから言ってもよー」
「あ!そや!あれもや!あの某シリーズの中で梅酒飲むシーン!かっこよすぎんねん!あんたどんだけええとこもってくんや!愛佳酒飲むシーンなんて一回もあらへん!」
「いや、お前未成年だろうが」
「やかましいわ!テキーラ灰皿で飲ませんぞコラ!こちとら人間国宝様や!」
「うぉい!やめとけってそういうの!色んな意味で!っつーかそんな超時事ネタ、まとめサイトで後から読んだ人さっぱりわかんねーだろうが」
「そんなささいなとこやなくて全体的にわからへんわこんなもん!大体まとめサイトに入れてもらう気でおるんがおこがましいわ!」
「そりゃまあ確かにそう言われりゃ返す言葉もねーけどさ…」

いい加減うんざりし始めた吉澤の様子を素早く見て取り、光井はしゅびしいっ!と指を突きつける。

「ほら!また!自分だけちょっと冷めた感じでクールにキメようとしとるやろ!そういうとこがセコいんやっちゅうねん!セコイヤチョコレートやっちゅうねん!」
「古っ!読者の8割方知らねーよ」
「狼板のオッサン率舐めんな!」
「なあもうカンベンしてくれよ……」
「出た。ほうでっか。慣れへんコメディタッチのお話はやっぱり疲れまっか。さすがシリアル路線の人は言うことが違いまんなあ」
「マジうぜーこいつ……」

先ほどまでの気分のよさもどこへやら、近年稀に見る勢いで面倒くさい事態に遭遇してしまった不運を嘆く吉澤に、再びしゅびしいっ!と光井の指が突きつけられる。

「ほんならそろそろ白黒つけたるわ!」
「勝手に絡んできといてそれかよ。まあいいや、この無駄な時間を終わりにできるんだったら」
「竹内力さんが…ちごた、萬田銀次郎はんが言うてはった」
「……は?なんだよいきなり」
「『ワシ等の歩くゼニの道は並みの人間の歩める道やない…狼が牙をむきあうけもの道でんねや』……いうてな」
「だからなんだよ!今それ関係あんのかよ!」
「愛佳かってかっこええ名言がほしいんや!爽やかなんやなくてイカツイ系の名言をリゾスレに刻みたいんや!」
「だからって何の関係もないタイミングでしかもパクった名言を刻もうとすんな!っていうか刻まれねーよ!」
「せいやっ!」
「うおっ!あぶねー!何すんだよ!おま、それチェーンソーじゃねーか!」
「何回言わすんや!これは我が家に代々伝わる破魔・除霊道具の『キラーソー』や言うとるやろ!」
「知らねーよ!ってか都合が悪くなったからっていきなり振り回すな!ご先祖様が泣くぞ?」
「や、やかましわ!昔のエライ人がこう言うてた。『悪党はなぁ、存在するだけで罪なんや。悪党に人権はない』……いうてな」
「お前が言ったんじゃねーかそれ!ふざけんなよ!っていうかむしろお前の方が悪――」
「せいやっ!」
「うわっ!だから都合が悪くなったからって……ちょまっ!待てって!」


そんなこんなで。
今日も街の夜は静かに(?)更けてゆく。
もちろん、3丁目の和也君の勉強は今夜もはかどるはずはなかった。