心の傷を癒す


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東京の空が赤く染まった。その日、都内の一軒家から火がでて、周りの家屋をも巻き込んで大火事となった。

「亀井隊長!あの家屋の中に人が残っているそうです。」
消火及び救助活動を行っているのは亀井隊長。絵里の父親である。

「中に入って探すぞ!」
「了解。」

隊長は酸素ボンベを担ぎ、燃えている家の中に入った。

すでに家の中は火に包まれていた。早くしないと建物が崩れてしまう。
「誰かいないか、返事をしてくれ!」

リビングにたどり着くと夫婦と思われる男女と中学生ぐらいの少女が横たわっていた。
「要救助者3名発見。急いでくれ。」

隊長の無線で隊員が二名駆け付けた。
3人は救助者を担いで急いで外に出た。

ガラガラガラ!
それと同時に建物が崩れ落ちた。

翌日、さゆみの両親の病院にて
絵里は父のいる部屋に向かった。父の着替えを持ってきたのだ。

「絵里、どうしてここに。」
「お母さんが職場に電話したらここにいるって聞いたから。はい、これ。」

絵里は着替えを父に渡した。
「実は昨日の火事で両親を亡くした女の子が気になってな。」

絵里の父親は火事の犠牲者にはいつも気にかけており時間があればアフターケアを手伝っているのだ。
絵里が父のいた部屋の中を覗いているとやけどを負った少女がいた。

「やけどが治せないほどひどいうえに両親を亡くしたのがとてもショックだったらしい。」
少女の目には輝きがなかった。患者名には福田花音と記されていた。

喫茶リゾナントではガッタスの吉澤が飯を食べていた。
「じゃあ、あの火事は放火なんですか?」
「そうだ、おまけに発火能力を使ったものらしい。」

れいなは注文のコーヒーを吉澤の元に届けながら息まいていた。
「そいつには何人もの人がひどい目にあっとる。絶対ぶちのめすとよ!」

そしてリンリンも息まいていた。
「火をもてあそぶなんて許せません。田中サン、やりましょう!」

「何勝手なことを言ってるの!そういう仕事は警察がするものよ。そうでしょ、吉澤さん。」
「まぁそうだな。最近警察にも超能力犯罪専門の部署もできたみたいだし。うちらが請け負うのは警察が手に負えない場合のみかな。」

そんな時、さゆみの携帯が鳴った。
「あっ、絵里からだ。もしもし。」
「もしもし、さゆ。ちょっと相談なんだけど。」

絵里から電話を受けたさゆみは病院に急いだ。
さゆみが病室につくと絵里と花音がいた。

「絵里、今度ちゃんと奢ってよ。能力使ったことがばれるとまたお母さんに怒られるんだからね。」
「大丈夫だって、誰もいないんだし。」
「あなた誰ですか?」
「あっ、このお姉さんがさっき話していたさゆだよ。花音ちゃんのやけどを治してくれるの。」
「はじめまして、道重さゆみです。話は絵里から聞いたわ。」

花音は絵里の話した話について半信半疑のようだ。
「本当に私のやけどを治してくれるんですか。」
「うん、安心して。ちょっとだけ動かないでね。」

さゆみは手を包帯で巻かれている位置に持っていった。そして念じると・・・
「えっ!」

花音は何かを感じて包帯を外し、手を当ててみた。
「治ってる、やけどが治っている!」
「よかったね、でもこれは3人だけの秘密ね。」
「うん。」

花音の目に輝きが戻った。

すると廊下の方から
「刑事さん、困ります。まだ完治していないんですから。」
「ですが、あの子は昨日火事のただ一人の生存者なんです。何か見てるかも。」
「いけません、あの子は心に深い傷を負ってるんです。下手に事件のことを聞いたらどうなるか。今日のところはお引き取りください。」

どうやら刑事たちは帰ったようで病室にさゆみの母が入ってきた。
「ごめんね、花音ちゃん。あれ、さゆみあなたどうしてここに・・・」

さゆみの母の目にやけどが完全治っている花音が映った。容易に何があったかが想像できた。

「さゆみ・・・あんたって子は!」
「ごめんなさい!」

さゆみは足早に病室を後にした。
「あはははは。」
絵里が逃げるさゆみを見て、笑っていると花音の顔は真剣なものになっていることに気付いた。

2週間後、花音は病院を退院した。その後、花音は親戚がいないためにかつてれいなが過ごした孤児院で過ごすことになったのだが・・・
喫茶リゾナントに電話がかかっていた。
「先生、わかりました。町中で見たら声をかけてみます。はい、失礼します。」

ガチャン!
「れいな、あの電話は孤児院の院長先生?」
「うん、絵里が前に病院で会った花音という子が学校が終わった後に夜遅くに帰ってくるらしいとよ。」
「そんな風な子には見えなかったの。れいなじゃあるまいし。」
「何言うんとや。そういえば絵里は?」

その頃、絵里は花音の通う中高一貫校にいた。
「お姉ちゃん、何してるの?」
そこにいたのは妹の彩花だった。
「しー!なんでもないの。あっ!」

校門から花音がでてきた。絵里が後を追おうとしている。
「花音を追ってどうするのよ。」
「えっ、彩花知ってるの?」
「うん、部活が一緒だしずっと仲良くしてるの。」
「じゃあ、花音ちゃんが学校終わった後、何してるのかわかる?」
「さぁ?お姉ちゃん。花音のストーカーをしてるの?」
「違うわよ、さぁお家に帰りなさい。」

絵里は花音を追跡した。

花音は町中を何時間も歩いていた。そしてあたりを見回していた。
そしてその後を絵里がつける。

(この数日間ずっと何か探してるみたい。)
絵里は2週間前の花音の姿を思い出した。
(あの決意を秘めた眼はもしかして・・・。)

花音は廃ビルの中に入っていった。

廃ビルの最上階にひとりの男がいた。周りには放火事件に書いてある新聞の束があった。
花音は男の姿を確認するやいなや学生カバンから包丁をだし、男に向かって突進した。

ガシッ!
「えっ!」
花音の腕を絵里がつかんで物影に引っ張り込んだ。
「どうしてここに。」
「あなたの様子がおかしかったから、何日か後をつけたのよ。やっぱりお父さんとお母さんの仇をうちたいの。」
「あいつは私のパパとママを焼き殺した男なんです。」
「それでもあなたが人殺しになっちゃいけないわ。さぁ、早く警察に。」

絵里が花音を連れていこうとした時に周りを炎の壁が塞いだ。
「きゃあ!」
「けっ、こんなところにかわいいお嬢ちゃんがふたりも来るとは。徐々に苦しめてから焼き殺してやる。」
絵里は花音を炎から守るために抱きしめた。
しかし熱さが二人を襲い、だんだん意識をなくしていった。
(熱い、このままじゃあふたりとも・・・)
「うおりゃー!」
誰かが男にとび蹴りを喰らわせた。
男は取り押さえられた。そしてその人影をよく見ると・・・

「絵里、大丈夫と!」
「れいな!」
「大丈夫デスカ?」
リンリンもいた。

「でも、どうしてここに?」
「アヤカちゃんがリゾナントに来てくれてカメイさんの事を伝えてくれたんです。」

絵里がリンリンと話している隙に花音は包丁を再び握りしめた。
「パパとママの仇!」

包丁を持った花音の前に絵里が立ちふさがった。

「どいてください!」
「どくわけにはいかない。花音ちゃんを人殺しになんてさせないわ。」
「どいて!」

花音は包丁を突きつけた。それを絵里が素手で刃のところを掴んだ。
「絵里!」「亀井サン!」

絵里の手から血が流れている。
「あっあっ・・・」
花音は絵里の血を見て動揺している。

「どう、嫌な気分になるでしょう。人に傷をつけるだけでも心は傷つくの。命を奪ったらあなたの心はさらに傷ついて、
取り返しのつかないことになるの。あなたの両親もあなたが人殺しになるのを望んでないわ。」
「うううう・・・・」

花音は涙を流しながら包丁を床に落とした。
「ねぇ、帰ろう。」

花音はハンカチを取り出して、絵里の手に巻いた。
「ごめんなさい!ごめんなさい!」

すっかり忘れられていた男はその場を逃げようとしたが・・・
「まだあんたへのお仕置きはすんでないちゃよ。」
「そうですよ、火をもてあそぶ奴には火の本当の怖さを教えるヨ。」

れいなは拳を鳴らし、リンリンは手に炎を灯しながら男に迫る。
「やめろ、やめてくれ!」

後日、喫茶リゾナントに花音が尋ねた。

「亀井さん、先日はどうもすいませんでした。」
「いいのよ、傷はきれいに治ったし。」

絵里は手を花音に見せた。
「誰のおかげなのかな?また無茶をして。」
「そうね、私たちにも相談なしに勝手なことをして。」

さゆみと里沙が今回のことについてあらゆる突っ込みを受けた。

「それよりも花音ちゃん、孤児院はどうとよ?」
「ええ、孤児院の先生や子供たちもみんなやさしくて。」
「それはよかったと。」

「それにしてもあの放火犯をあそこまでボコボコにしなくても。」
カウンターで吉澤がコーヒーを飲みながら愚痴をこぼしていた。

「あれでも手加減したとよ。」
「体内発火してないだけでもめっけもんデ―ス。」
「何が手加減だよ。あいつここ数日、まともに口を聞けていないみたいだぞ。警察の連中は取り調べができないって怒ってたぞ。」

ガランガラン!
すると絵里の父が店に訪れた。
「やぁ、ここにいると聞いたのだが。」
「あら、お父さん。」
「えっ、カメのお父さん。」

絵里の父はカウンターに座った。
「ここが絵里の言っていた店か。なかなかいい店ですね。」
「ありがとうございます。絵里からお父さんのことは聞いてますよ。とても勇敢な方だって。」
「いいえ、当然のことをしているまでです。」

すると花音はあることを思い出した。
「亀井さんのお父さんはお笑いができるんですよ。」
「えっ、それどんなものですか。リンリン、興味があります。」
「いや、ひとりでやるのは恥ずかしいな。絵里、お前も手伝え。」

絵里は親子そろって席を立った。そして父は絵里の耳元で囁いて絵里は理解したようでうなずいた。

するとふたりは耳たぶを掴み、折り曲げて叫んだ。
「餃子!」

その時、喫茶リゾナントに冷たい風が吹き荒れた。
全員の思考回路が停止した。あのリンリンでさえ口を開けたまま静止している。
「カメのセンスはもしかして・・・」
「お父さん譲りなんかのぉ・・・」

しかしその中で笑っていたのは・・・
「くくくく・・・」
花音だけであった。しかしそれでも花音にとっては傷が癒えたことによる心からの笑いであることは絵里にはわかっていた。