『ダークブルー・ナイトメア~1.夢の入り口』


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「こっちです!」

怪しい人を見かけたというさゆみの案内に導かれ、リゾナンター9人は街外れへと駆けつけた。
ダークネスの手の者と思わしき連中は、最初にさゆみは発見した際とほぼ同じ場所でなんらかの作業に熱中していた。

リーダーの愛は、自らを鼓舞するかのように大きく声を張り上げる。

「そこで何をしてる!」

一斉に振り向く不審者たち。
数は3人。いずれも屈強な体格の持ち主だ。
全員、本物の拳銃のような形をしたスプレー銃らしきものを握りしめている。
銃口からは硝煙やスプレーの代わりに禍々しい闇のオーラが噴出され、そのオーラがドームのように一帯を覆い尽くしていた。

「・・・俺たちは結界を張っているだけだよ。ちょいと人に頼まれてね。誰も入って来れないように、と言われている」
「私たち入ッテルやん!」
「当然だろ?君たち用に設定されてるんだから。俺たちとリゾナンター以外は誰も入れないようになっている」

結界。
一般人が戦いを目撃して騒ぎにでもなったら、いろいろと面倒なことになるということか。
しかし、愛にはどうも腑に落ちないことがあった。

――――なんで、9人全員を招き入れた?

これみよがしに巨大な結界を作って全員を呼び寄せるより、小さな結界を複数作って
こちらの人数を分散させたほうが向こうにとっても都合がよかったはず。彼らにそれができないとは思えない。
今まで何度もダークネスの刺客を打ち破ってきた共鳴の力だって、知らないはずはないだろう。

愛はリンリンの顔を見た。
単純に、踏んできた場数だけなら彼女のほうが愛や里沙よりも上だ。
敵の不可解な行動の裏に隠された意図を見出すのは、仲間の誰よりも早い。

リンリンは首を横に振った。
射るようなその目が、愛に訴えかけている。
相手の狙いを考えることよりも、今は敵の動きを止めるほうが先である、と。

愛は、首を縦に振ってそれに応えた。

「詳しい話はあとで聞く!ガキさん!絵里!」
「あいよっ!」
「わかってますって!」

愛の指示を受けた里沙が、鋼線を敵の手足に巻きつけて自由を奪う。
それと同時に、絵里が風をピンポイントに絞って敵の手からスプレー銃をはたき落とした。

「愛ちゃん後ろです!気ぃつけて!」

気の緩みかけたその瞬間、愛佳が愛に注意を促した。
愛が攻撃を受けるビジョンでも視えたのだろう。
愛は瞬間移動の力を使って立つ場所を変える。

するとその直後、ほんの一瞬前まで愛が立っていたところに右脚を突き出した男が降り立った。

「チッ!」

右脚を突き出したというよりも、背後から飛び蹴りをしようとして失敗した男というべきか。
肌は浅黒く、刈り上げられた頭。
アジア、いや中南米系の人間だろうか。
いずれにしても里沙の鋼線に捕らわれた男たちの仲間とみて間違いなく、その実力は相当のものだ。
いくら死角で身を潜めていたのだとしても、愛たちは誰一人としてこの男の存在に気がつかなかったのだから。

「後ろから狙うとか汚いっちゃん!正々堂々勝負しろぉ!」
「女の子をキックなんて許せナイ!」

れいなとジュンジュン。リゾナンターの中でも特に血気盛んな二人が、愛を襲おうとした4人目の男に飛びかかる。
しかし男はいとも簡単にれいなとジュンジュンの攻撃を避けると、素早い動きで
鋼線によって身動きの取れない仲間たちのそばへ駆け寄った。

「どこまで終わった?」
「こっちの作業は全部終わってる。あとはワグネル、おまえの一発だけだ」
「わかった」

うなずくと、4人目の男は腰にさげたホルダーから何かを取り出した。
先程、絵里が吹き飛ばしたものとよく似たスプレー銃。
その形状は、先程のものよりもやや丸みを帯びているように見えた。
他と異なるデザイン。それを所持する4人目の男。

――――やばい!

身体中の感覚という感覚が、愛に激しく警告をしている。
あれを撃たせてはいけないと。

「さぁーせるかー!!」

危険性を認識しているのかいないのか、小春は電撃を飛ばしてスプレー銃の破壊を狙う。
しかし小春のコントロールは絵里ほど優れておらず、電撃は男の2メートル手前で逸れて外れた。

「あーっ!」
「仕上げだ」

電撃が逸れるのを見届け、男はスプレー銃の口を天に向けた。

「やめっ・・・!」

ゆっくりと引き金が引かれる。
愛はその様子をただ見ていることしかできなかった。



がくりと膝が折れる。
頭が重い。体を支えることができない。
蹲る。
いや、横たわる。
体中の全神経が言うことを聞かなくなり、愛はその場に倒れこんだ。

わずかに残った感覚を必死に働かせ、周囲の状況を確認する。
誰かが崩れ落ちる音。誰かが倒れる気配。
愛のわかる範囲では、仲間たちはみな似たような有り様だった。

立たなきゃ。
立って戦わなきゃ。

頭ではそう思っていても、体がまったく動かない。
それどころか、次第に頭のほうもぼんやりしてきた。
何か考えなくてはいけないのに、頭がぐるぐる回って考えがまとまらない。
この感じはなんだろう。
何かに似ている気がする。だけど思い出せない。
なんていうんだっけ、この感じ。
世界が回って自分が沈んで、何もかも遠ざかっていくこの感じ。


「あ・・・・・・」

答えに辿りついたのと意識が遠のいたのは、ほぼ同時だった。
薄れゆく意識の中、愛は思う。

――――ものすごく眠い時と、同じ・・・・・・



愛の意識は、夢と現実の境界がわからなくなるほどの深く深い場所まで落ちていく。
仲間たちも同じだろう。
次に目覚める時はこれまで自分がどこで何をしてきたか思い出せないくらいに、沈み込む。

でも、大丈夫。
きっと、覚えているかどうかなんて大した問題ではないはずだ。

どうせすべては、夢の中の出来事なのだから。